ITILに基づくインシデント管理とは?メリットや課題などを解説
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- ITILに基づくインシデント管理を行うと、インシデントによる被害を最小限に抑えられる
- ITILに基づくインシデント管理には、問題管理や情報共有に関する課題がある
- ITILに基づくインシデント管理を適切に行うには、ナレッジベース作成や問題管理が重要
ITILとは、ITサービスマネジメントのベストプラクティスをまとめたものであり、ITILに基づくインシデント管理を行うことで、インシデントへの早期対応が可能になります。本記事では、ITILに基づくインシデント管理のメリットや課題について分かりやすく解説します。
目次
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ITILとは
ITIL(IT Infrastructure Library)とは、ITサービスマネジメントのベストプラクティスをまとめた参考書のような書籍です。「アイティーアイエル」や「アイティル」と呼ばれ、ITの現場で働くエンジニア向けに提供されています。
ITILにはIT運用における知識・ノウハウが集約されており、ITサービスマネジメントを体系的に行うためのフレームワークとして世界中で広く採用されています。現場でIT運用上の問題が生じた場合には、その問題を解決に導くための指南書としても活用されます。
ITILは、ITサービスマネジメントの分野に欠かせないフレームワークです。ITILを正しく理解して導入することで、ITサービスマネジメントを効率的かつ効果的に行えます。
ITILとは|意味・バージョン・導入メリットをわかりやすく解説
ITILとは、ITサービスマネジメントにおける成功事例をフレームワークとして体系化した書籍群のことです。本記事では、ITILを正しく理解するために、ITILの歴史・バージョンの特徴・構成要素の他、導入のメリットや成功ポイントについても解説しています。
ITILに基づくインシデント管理とは
ITILにおけるインシデント管理とは、インシデントが業務に与える悪影響の可能性を最小限にとどめ、迅速に業務を復旧させるために行うすべての工程を指します。
インシデントによりユーザーの業務が停止すると、自社やカスタマーに損失を与えるリスクが発生します。リスクを回避するためには、システム部門の担当者が速やかに状況を把握し、適切に問題を解決するための対策を講じることが求められます。
インシデント管理においては、システム部門でインシデントを解決するための対策案の立案・実施・復旧を行うことが重要です。
問題管理との違い
問題管理とは、インシデントの原因を明らかにし、再発しないように努めるプロセスのことです。今起きているインシデントの早急な対応はインシデント管理が行い、同じインシデントを繰り返さないような対策を行うのが問題管理です。
特定のインシデントに対しどのようなインシデント管理で解決したかという情報は問題管理において非常に有益なため、問題管理とインシデント管理間でのスムーズな情報共有が求められます。
ITILに基づくインシデント管理のフロー
ITILに基づくインシデント管理は、以下のフローに沿って行います。各フローについて、詳しく解説していきます。
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ITILに基づくインシデント管理のフロー
インシデントの検出・記録
まずは、インシデントを検出して記録しましょう。インシデントの検出方法には、ユーザーからの報告や管理ツールのシステムアラートなどがありますが、いち早くインシデントを検出して対応するには、ツールによる自動検出が有効です。
インシデントを検出したら、システム管理者がインシデントの発生日時や事態の内容について記録します。詳細な記録を残すことで、同じようなインシデントが起きた際に活用できます。
インシデントの分類・優先順位の設定
インシデントが検出された後は、インシデントの種類や影響範囲などで分類し、優先順位を決めます。分類は緊急性などあらゆる観点で細分化します。細分化により適切な担当者を配置でき、スムーズなインシデント管理が行えます。
煩雑な分類では適切な担当者配置が行えず、インシデントの解決が遅れ、結果として顧客満足度の低下を招き、ユーザー離れが起きてしまいます。
インシデントの対応策を策定
インシデントの優先順位と担当者を設定したら、次は自社のナレッジベースを参照し、過去のインシデント事例を確認しながらインシデントの対応策を策定します。
対応策を決める際には、インシデントの影響範囲・緊急性などを考慮し、適切なコミュニケーションを図りながら実行することが大切です。
ナレッジベースに似たような事例のデータがあり、一次対応で済みそうな場合は一次担当者に割り振ります。しかし、解決の糸口になりそうな事例データがなく、一次対応で処理できない難易度の高いインシデントの場合は、経験豊富な上位者に対応を依頼します。
インシデントの解消・進捗管理
インシデント解消の際には、進捗管理を行いましょう。インシデントの原因・処理内容・インシデント解消までの所要時間などを記録するようにします。再発防止策も記載しておけば、今後のインシデント対応に役立ちます。
再発防止策が有効に機能しているかを判断するには、インシデント解消後も一定期間は経過観察をしていく必要があります。
進捗管理は、再発防止策の有効性を確認してインシデント管理の改善につなげるために必要なプロセスで、他部門とスムーズに連携して適切な対応をするためには、進捗状況を社内で共有することが大切です。
インシデントの解決・クローズ
インシデント解決後は、速やかに周知を行います。関係者への経過報告・問い合わせの回答・ユーザーに対する周知をし、必要であればフォローも行います。
再発防止策が有効に機能しているか経過観察をし、インシデントが再発せず対応の必要がなくなった段階でナレッジベースに記録します。この時点で、インシデントは解決・クローズとなります。
ITILに基づくインシデント管理を行うメリット
ITILに基づいてインシデント管理をすると、インシデント発生時の対応をマニュアル化でき、インシデントの防止に繋げられるといったメリットがあります。それぞれのメリットについて、以下で詳しく解説します。
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ITILに基づくインシデント管理を行うメリット
インシデント発生時の対応をマニュアル化できる
ITILに基づいてインシデント管理を行った場合、インシデントを細かく分類し、原因・処理内容・インシデント解消までの所要時間などをナレッジベースに記録・蓄積しているため、インシデント発生時の対応をマニュアル化できるメリットがあります。
インシデントが発生した際にナレッジベースを確認すれば、解決の糸口が見つかる可能性が高まり、迅速な解決への近道となります。また、対応がマニュアル化されていることで、担当者ごとに異なるプロセスで作業を行う事態を回避し、業務を標準化することが可能です。
今後さらにナレッジベースにデータが蓄積されていけば、一時対応で解決できるインシデントが増え、迅速な解決や作業効率の向上にも繋がります。
インシデントの防止に繋がる
ITILに基づくインシデント管理は、インシデントの防止にも繋がります。インシデントの原因を特定して再発防止策を講じるプロセスを定めているため、再発のリスクを低減することが可能です。
また、インシデント発生のたびに対応策を講じて対処を重ねていくうちに、インシデント管理能力が高まり、今後発生する可能性があるインシデントを迅速かつ適切に抑え込めるようになります。
その結果、インシデントを効果的に防止しつつ安全にサービスを展開でき、顧客満足度が向上するなどの効果も得られます。
ITILに基づくインシデント管理の課題
ITILに基づくインシデント管理の課題には、「問題管理ができていない」「情報共有の体制が整っていない」などが挙げられます。以下で、その2つの課題について解説します。
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ITILに基づくインシデント管理の課題
問題管理ができていない
問題管理とは、インシデントのクローズ後に原因究明や解決策を確立することです。インシデント管理は早急な業務復旧が最大の目的となっており、インシデントがクローズした段階で終了とし、問題管理までは行っていないという企業も多いのが現状です。
問題管理を行わない場合、次に同じようなインシデントが発生した際に再度解決案を模索する必要が生じ、早急な対応が困難になります。問題管理を実施すれば、既知の原因によるインシデントの再発を防止し、影響を及ぼす範囲を最小限に留めることが可能です。
インシデント管理同様、問題管理も重要な業務であることを担当者に周知し、インシデント管理だけでなく問題管理まで行うようにしましょう。
情報共有の体制が整っていない
情報共有の体制が整っていないと、進捗状況の把握ができず、過去の事例を参照するのに余分な手間と時間がかかってしまいます。また、エスカレーションの際に、一次対応で行った処理を再度行ってしまうなどの二度手間が発生するケースもあります。
インシデント対応に無駄な時間や手間がかかると、インシデントによる悪影響のリスクが高まります。それにより、サービスの質が低下して顧客離れに繋がる恐れもあるため注意が必要です。
インシデント発生の際は、その都度ナレッジベースに情報を記録しましょう。そして、自社に合った方法でナレッジベースを管理し、適切な情報共有を行うことが重要です。
ITILに基づくインシデント管理を適切に行う方法
ITILに基づくインシデント管理を適切に行うには、3つのステップがあります。以下で、それぞれのステップについて詳しく解説します。
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ITILに基づくインシデント管理を適切に行う方法
ナレッジベースを作成
インシデント対応のマニュアルとも言える、ナレッジベースを作成します。一次担当者に割り振られる問い合わせは、難易度の低いものが多いため、ナレッジベースを作成しておけば一次対応窓口で解決できてしまうケースがほとんどです。
担当者の知識・スキル・経験には個人差があるため、中には一次担当者では処理しきれないケースもあります。その場合は上位責任者へと引き継がれますが、多くの事案を一次対応窓口で処理できるため、ナレッジベースの作成は業務効率化にも貢献します。
ナレッジベースは、一次対応の効率化・対応業務の標準化に着目し、一次担当者向けのものを作成しておくのがおすすめです。
オペレーションルールの策定・周知
一次対応で解決できない事案はエスカレーションを行ないますが、エスカレーション先の中から適した部門の選定を行い、業務を適切に引き継ぐにはオペレーションルールの策定が重要です。
業務を適切に引き継ぐことができれば、業務に費やす時間や手間を減らせます。インシデント管理は迅速な業務復旧が目的のため、エスカレーション先の選定方法や伝達方法を細かく定めたオペレーションルールを策定・周知すれば、その目的を達成しやすくなります。
問題管理・変更管理の実施
変更管理は、復旧作業でシステム変更が必要な場合、提供中のサービスに与える影響を低減するために行います。今後も同様のインシデントが発生する可能性を鑑み、問題管理で原因究明や解決策を確立し、変更管理でサービスに与える影響を抑制していくことが重要です。
問題管理・変更管理の実施により、同様のインシデントが発生した際に迅速に対応し、安定したサービス品質を担保できます。問題管理・変更管理を実施して、IT運用の効率化を図りましょう。
まとめ
ITILには、ITサービスマネジメントのベストプラクティスが集約されており、ITILに基づくインシデント管理を行うことでインシデントへの早期対応・被害の抑制が可能になります。
一方で、ITILに基づくインシデント管理には、問題管理ができていないケースや情報共有に関する課題もあります。ITILに基づくインシデント管理を適切に行うためには、ナレッジベースの作成やオペレーションルールの策定・周知が重要です。
本記事を参考にしながら自社に適した管理体制を整備し、効果的なインシデント管理を行いましょう。
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