ITILとは|意味や導入のメリット、資格についてわかりやすく解説

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  • ITILとは、ITサービスマネジメントにおける成功事例をまとめた書籍群のことである
  • ITILを導入することで、顧客満足度を上げるだけでなく、コスト削減も可能になる
  • ITILの導入を成功させるためには、問題管理と変更管理も行う必要がある

ITILとは、ITサービスマネジメントにおける成功事例をフレームワークとして体系化した書籍群のことです。本記事では、ITILを正しく理解するために、ITILの歴史・バージョンの特徴・構成要素をはじめ、導入のメリットや成功ポイントについても解説します。

目次

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  1. ITILとは
  2. ITILの歴史
  3. ITTLのバージョン
  4. ITILの構成要素
  5. ITILを導入するメリット
  6. ITILの導入を成功させるポイント
  7. ITILの認定資格とは
  8. まとめ

ITILとは

ITIL(Information Technology Infrastructure Library)は、ITサービスマネジメントの成功事例やノウハウを集約して書籍化したコンテンツです。簡単に言うと、ITサービスマネジメントにおける教科書のようなものになります。

ITILは、ITサービスの計画・提供・運用・改善を効果的に行うためのガイドラインを提供し、組織がITサービスの品質向上とコスト削減を実現するのに役立ちます。ITILは国際的に認識されており、ITサービス業界でも広く採用されています。

ITILはITプロセスの標準化と効率化に焦点を当て、組織におけるビジネス目標達成貢献します

ITILの歴史

ITILは、英国政府が経済的な課題に直面し、効率的なITマネジメントの必要性を認識したことから、1989年に発行されました。ITを効果的に活用してコスト削減を実現し、サービス品質を向上させる方法を模索しながら、成功事例を集めたものが初のITILマニュアルです。

その後、ITILは民間企業や国際的な組織にも広まり、ITサービスマネジメントのベストプラクティスとして認知され、現在でも広く利用されています。 ITILは組織がITマネジメントを戦略的に管理し、ビジネス目標を達成するための貴重な枠組みとして進化し続けています。

ITTLのバージョン

ITILは、その進化の過程で複数のバージョンが登場し、2019年にはV4がリリースされています。それぞれのバージョンには異なるフレームワークやプラクティスが含まれており、ITサービスマネジメントの領域でベストプラクティスを提供しています。

ここでは、ITILのV2・V3・V4バージョンについて、それぞれの特徴や進化に焦点を当てながら解説します。

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ITTLのバージョン

  1. V2
  2. V3
  3. V4

V2

V2は、1999年から2004年にかけてリリースされたITILのバージョンです。このバージョンでは、初期の40冊以上のITIL V1の書籍を整理したり、重複を排除したりして、新しいITの概念を組みつつ7冊の書籍にまとめられました。

特に「サービスサポート」と「サービスデリバリ」の2冊が中心となり、ITサービスマネジメントにおける重要なプロセスやガイドラインが詳細に説明されています。ITIL V2は、ITサービスの効率性と品質向上に貢献し、ITILが世界的に普及したバージョンです。

V3

V3は2007年に初版が公開され、その後2011年にアップデートされたバージョンです。V3では、従来のITIL V2のコンセプトであるサービスサポートとサービスデリバリを受け継ぎつつ、新たに「サービスライフサイクル」の概念が追加されました。

これにより、ITサービスの管理と提供をより包括的に理解し、実行するための新しい枠組みとして、5冊の書籍に凝縮されているのが特徴です。 

V3は、サービスライフサイクルを「サービスストラテジ」「サービスデザイン」「サービストランジション」「サービスオペレーション」「継続的なサービス改善」の5つのフェーズに分割し、それぞれのフェーズに関する詳細なガイダンスを提供します。

ITサービスの計画・設計・移行・運用・改善という、各段階における最良のプラクティスを提供することで、組織のITサービス効率化をサポートします。

V4

V4はITILの最新のバージョンで、2019年にリリースされました。このバージョンでは、デジタル時代の要求に合わせて大幅な変更が施されています。

V4は、ITサービスを提供する側と受ける側が協力して価値を創造する「サービス価値連鎖」を強調しています。つまり、従来のビジネス中心のアプローチから、組織が消費者に対するITサービスへと転換しています。

また、プラクティス(実践的な方法論)の概念導入に伴い、全34のプラクティスが提供され、大まかに「一般管理プラクティス」「サービス管理プラクティス」「技術管理プラクティス」へと分類されます。

V4はビジネスとITの連携を強化し、変化する市場に適応するための柔軟なアプローチを提供しています。これにより、組織は効果的なITサービスと持続的な価値の実現が可能です。

ITILの構成要素

ITILは、組織が効果的にITサービスを管理し、顧客に高品質のサポートを提供できるような支援を行います。ここでは、ITILの構成要素としてコンテンツの詳細を解説します。

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サービス・ストラテジ

サービス・ストラテジは、組織がビジネス目標を達成し、競争力を維持するためにどのようにITサービスを活用するかを計画し、戦略を策定するための基盤です。

サービスポートフォリオの管理、市場調査、ビジネスケースの開発、リスク管理などの活動を包括しながら、組織全体のビジョンと課題に合致したITサービスの設計と提供を支援します。

組織はサービス・ストラテジを活用することで、適切なリソースの割り当て、運用の最適化、顧客満足度の向上など、戦略的な目標の達成につなげることができます

サービス・デザイン

ITILの要素であるサービス・デザインは、ITサービスの効果的な設計と計画に焦点を当てます。ビジネス要件と顧客ニーズに合わせてサービスを設計し、品質・セキュリティ・コストを最適化するのが特徴です。

また、サービスを持続可能にする過程をデザインし、ビジネスの価値を最大化します。サービス・デザインは、新しいサービスの開発と既存のサービスの改善に向けて適用され、ITに戦略的なパートナーとしての価値を見出します。

サービス・トランジション

サービス・トランジションでは、ITサービスの変更や移行を管理します。主に、新サービスの導入や既存サービスの変更に伴う計画、変更管理、資産管理、リリース、テスト、変更の評価、ナレッジ管理などが挙げられます。

これらの過程を通じて、変更のリスクを最小限に抑えつつ、サービス提供の品質と連続性を確保します。サービス・トランジションは、新しいサービスの効果的な立ち上げや既存サービスの改善を支援することで、ビジネス目標との整合性を導き出す意味合いがあります

サービス・オペレーション

サービス・オペレーションは、ITサービスの日常的な運用を管理する業務です。主要な6つのプロセスとして、インシデント管理・イベント管理・要求実現・問題管理・施設管理・アクセス管理があります。

サービスの安定性や品質を維持し、障害への対応や変更リクエストの処理を効率的に行います。さらに、サービスデスク・技術管理・アプリケーション管理・IT運用管理といった4つの機能も取り扱い、ITサービスの円滑な運用を支援します。

継続的なサービス改善

ITILは継続的にサービス改善を行い、ITサービスの持続的な進化と最適化を促進します。定期的なPDCAサイクル(計画・実施・評価・改善)を通して、サービス提供に関わる全フローを見直し、問題の特定から効率化・品質向上までを実現するのが特徴です。

このプロセスは、変化するビジネスニーズに適応しながら持続的な競争力を維持するために不可欠であり、サービス品質と効率性を向上させる方法として重要視されます。

ITILを導入するメリット

ITILはITサービスの効率性・品質・顧客満足度の向上を支援し、組織のITプロセスと戦略を合理化するため、ITILの導入で組織に数多くのメリットをもたらします。ここでは、ITILを導入するメリットについて解説します。

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顧客を意識したITサービスが可能になる

ITサービス管理の問題点として、エンジニア目線になりがちであることが挙げられます。例えば、ITサービス管理を実際に行なうのは現場の技術者が多いため、本来は必要のない技術や機能が導入されてしまうことが考えられます。
しかし、ITILの導入により、ITサービスの問題や満足度を数値として可視化できるため、エンジニアにも顧客寄りの意識を持つように促すことが可能です。

顧客満足度を向上させられる

ITILは、効率的なサービス提供・インシデント管理・問題解決方法の改善を通じて、サービスの品質を高めます。これにより、顧客へのサービス提供がより迅速かつ信頼性の高いものとなり、顧客の要求や問題に対処するスピードと効果が向上します。

また、ITILは顧客からフィードバックを収集し、サービス設計や運用に反映させる仕組みづくりを行います。つまり、顧客の期待に合致するサービスを提供することで、顧客満足度を向上させられるため、長期的な顧客関係の構築に貢献するでしょう。

インシデント減少・レジリエンス強化になる

ITILの導入によるリスク管理により、インシデントの減少とレジリエンスの強化が実現します。例えば、ITILは既存のプロセスを改善しつつ、変更管理や問題解決を効果的に行うためのガイドラインを提供します。

予防的な対策を講じることでインシデントを減少させ、同時に迅速かつ効果的な対応手段を用意することでレジリエンスを高めます。その結果、システムの信頼性が向上し、サービス提供時の中断が減少します。

このように、ITILの導入によってビジネスの連続性が確保され、顧客満足度や信頼性の向上、コスト削減といった多くのメリットを得ることができます。

コストを削減できる

ITILはプロセスの効率化と最適化を促進し、リソースの適切な配分と無駄を削減します。これにより、過剰なダウンタイムや無駄なリソースの使用を減らし、運用コストを最小限に抑えることができます

また、問題解決の効率化や、変更管理によるリスク軽減もコスト削減に寄与します。さらに、効果的なリソースの配置によって人件費を最適化し、生産性の向上にもつながります。

組織はこれらの改善を通じて、ITサービス提供にかかるコストを削減し、顧客を意識した効果的なサービスを提供することができます。

市場環境の変化に対応しやすくなる

ITILはプロセスの改善と効率化によって、ビジネス要件の変化に対応する柔軟性を高めます。具体的には、変更管理や問題解決のプロセスを通じて、新しい要求や課題に対し迅速に対応し、サービスの適応性を向上させます。

また、サービスデザインやストラテジにおいてビジネス目標との整合性を導き出し、競争力を維持します。ITILの枠組みは、変化に対応しながら持続的な改善を支援することにあるため、組織が市場の動向に適応し、継続的な成功を達成するのに役立ちます

ITILの導入を成功させるポイント

ITILの導入を成功させるためには、いくつかの重要なポイントを把握し、組織にとって価値あるものにすることが大切です。ここでは、ITILの導入を成功させるポイントについて詳しく解説します。

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3つの「P」を意識する

ITILの導入を成功させるためには、Process(プロセス)・Person(人)・Product(ツール)という3つの「P」を意識することが重要です。 

Process(プロセス)は、組織内のプロセスをITILのガイドラインに合わせて再評価し、効率化や改善を行うことであり、文書化と定期的な監視が重要です。

Person(人)は従業員のことで、トレーニングと意識改革が必要です。ITILの理念を理解し、サービスの品質向上に向けて協力することで、適切な役割分担が行えます。 

Product(ツール)は、適切なテクノロジーを導入することで、プロセスをサポートする役割を担います。適切なツールを活用することで、データの収集・分析・自動化が可能となり、業務の効率と品質が向上します。 
これらの「P」をバランスよく組み合わせ、継続的な改善と適応を促進することで、ITILの導入を成功へとつなげることができるでしょう。

社内研修で情報の共有化を行う

組織内で情報を適切に共有することにより、プロセスの透明性を高め、チーム全体が目標に向かって協力できるようになります。また、情報共有と合わせて問題と課題が迅速に議論され、解決策の共有によって効率性が向上し、運用における混乱を減少することができます。

また、情報の共有化は知識の蓄積と継承を支援し、組織全体での学習と成長を促進します。例えば、社内研修でITILのベストプラクティスを持続的に採用すれば、組織の運用を改善するための基盤を整えられるでしょう。

問題管理と変更管理を行う

問題管理は潜在的な問題を特定し、根本の原因を解決することで再発を防ぎます。そして、変更管理は新しいサービスや変更の影響を評価し、リスクを最小限に抑えながら変更を実施します。これにより、システムの安定性が向上し、インシデントの発生を減少させます。

問題管理と変更管理は能動的なアプローチを提供するため、サービス品質と顧客満足度を高めるのに役立ちます。組織全体がプロセスを遵守しながら効果的に実施することで、ITILの導入の成功や運用プロセスの最適化につながります。

専用ツールを導入する

ITILを運用するには、専用ツールの導入がおすすめです。例えば、インシデント管理ツールは問題の早期発見と対応を支援し、効率性を高めます。ツールはデータの一元化と自動化を実現し、情報の透明性を高めつつ迅速な意思決定を可能にします。

また、専用ツールの導入はITILのプロセスを簡素化し、運用の品質向上に貢献します。組織全体がデータを共有しながら効果的に活用することで、顧客満足度の向上や競争力の強化が実現するでしょう。

ITIL資格保有者の採用を行なう

ITILの運用には一定の知識とスキルが必要ですが、人材の育成に時間やコストをかけられない場合もあるでしょう。その際は、ITサービスの管理・運用全般に関する知識を保有している、ITIL資格保有者を採用するのも1つの方法です。
専門的な知識を持った資格保有者を採用すれば、サービス品質や効率性の向上はもちろん、組織全体のレベル向上など多くのメリットが期待できます。

ITILの認定資格とは

ITILの認定資格とは、ITサービスマネジメントとITILに関する理解と専門知識を証明できる資格であり、イギリスのAXELOS社が認定を行なっています。現在提供されているのは、ITIL®︎ 4認定資格です。

資格体系としては、基礎的なITIL®︎ファンデーションの終了後、ITIL®︎マネージングプロフェッショナル(MP)、ITIL®︎ ストラテジックリーダー(SL)、ITIL®︎ プラクティスマネージャ(PM)という3つの資格ラインと、拡張モジュールに分かれています。

さらに、3つの資格ラインを全て取得すると、自動的にITIL®︎マスターが付与されます。資格取得に向けた学習を進めることで、自然とITサービスマネジメント及びITILに関する理解を深められます

まとめ

ITILは、ITサービスマネジメントのベストプラクティスを提供し、組織に多くのメリットをもたらします。ITILを導入することで、サービス品質と効率性の向上、問題の早期発見と解決、変更管理の効率化、リスクの最小化などが実現します。

また、組織内でのプロセスの標準化と最適化により、コスト削減とリソースの効果的な利用も実現可能です。さらに、ITILは顧客満足度と競争力を高め、ビジネスの連続性を確保できます。

ITILは現代のデジタルビジネス環境で必要不可欠なフレームワークであり、組織にとっても競争優位性を築くための強力なツールです。

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