発注とは?注文との違いや発注業務の流れ、発注書の注意点も解説

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  • 発注とは、一般的に商品・設備・サービスの調達を取引先に依頼するときに使われる言葉
  • 親事業者は下請業者に対し、発注書で正式な依頼内容を伝えることが義務付けられている
  • 発注書を保存する際は、保存期間や電子帳簿保存法の要件を厳守しなければならない

発注とは「注文や依頼」を意味する言葉で、一般的なビジネスシーンにおいて商品・設備・サービスの調達を取引先に依頼する際に、発注書を介して使用されます。本記事では、発注と注文の違いや発注業務の流れ、発注書を発行する際の注意点などについて詳しく解説します。

目次

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  1. 発注とは
  2. 発注と注文の違い
  3. 発注書とは
  4. 発注管理とは
  5. 発注業務の流れ
  6. 発注書に関する注意点
  7. 受発注管理はエクセルで行える
  8. 受発注管理システムで発注業務を効率化
  9. まとめ

発注とは

発注は、企業や組織が必要な商品やサービスを提供してくれる会社や取引先に、注文や依頼をすることです。

例えば、オフィス用品を必要とする場合、それらの用品を販売している会社に対して、何をどれだけ必要かを伝える手続きを指します。簡単に言えば、あるものを手に入れるために必要なステップや手続きです。

正確な発注がないと、必要なものが不足したり過剰になったりすることがあり、企業にとって無駄な出費や問題が生じるため、非常に重要な業務です。

発注と注文の違い

「発注」「注文」には、法的に厳密な違いはなく、用途によって使い分けられています。ここでは、発注と注文の違いについて詳しく解説します。

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「発注」が使われるケース

「発注」とは、通常、企業や組織が商品やサービスを取引先から購入する際に使用される用語です。発注は、一般的に公式な文書である「発注書」を介して行われます。

企業や組織が商品を購入する場合、特に大量の商品やカスタマイズされたサービスを必要とする際には発注が実行されます。

発注書は法的な拘束力を持つことがあります。この法的な拘束力により、取引の透明性が高まり、将来の紛争を予防するのに役立つ重要な文書となります。

「注文」が使われるケース

「注文」は、商品やサービスを要求する行為を指す用語です。注文は書面で行うことがありますが、口頭で行われることも考えられます。そして、注文は発注の前段階として認識され、具体的な取引条件を含むことは少ない傾向があります。

例えば、レストランで食事を注文するときや、オンラインショッピングで商品を購入するときに「注文」が使われます。注文は、個人の好みや需要に合わせて行われ、一般的には法的な拘束力を持ちません。

発注書とは

発注書は、企業や組織が特定の商品やサービスを購入する際に使用される文書であり、主な目的は取引の詳細情報や条件を取引先に通知することです。一般的に発行は義務ではないですが、特定の業界や契約においては義務化される場合もあります。

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法的な拘束力を持つ

通常、発注書は特定のフォーマットに従って作成され、企業や組織のロゴ、連絡先情報、発行日、発行者の名前、供給業者の情報、注文の詳細(数量、品名、価格、納期など)、支払い条件、署名欄などが含まれます。

この文書は取引の透明性を高め、将来のトラブルを予防するために重要です。なお、発注書は一般的に法的な拘束力を持つため、契約条件に違反した場合、法的な措置が取られる可能性があります。

発注書に記載する項目

発注書を発行する際には、以下の項目が通常含まれます。これらの項目は、取引の明確さと円滑な進行のために重要です。

  1. 発注者情報
  2. 受注者情報
  3. 発注日
  4. 納期
  5. 商品/サービスの詳細
  6. 支払条件
  7. 発注者の署名
  8. 受注者の署名

各項目は、発注書が双方の合意を確立し、取引の透明性を確保するために使用されます。特に、大規模な取引や法的な要件が存在する場合、さらに詳細な情報が必要になることもあります。

注文請書との違い

発注書と間違われやすいものとして注文請書が挙げられます。注文請書は、注文を受領したことを相手に伝えるために使用する書類を指します。仮に口頭のみで受領したことを伝えた場合、証拠が残らずに後々の言った言わないのトラブルへと発展します。

したがって、注文を受けたことを書類でも証明できることにより、注文内容の詳細を把握しやすくする目的もあります。また、注文請書には発行しなければならない法的な義務は存在しないため、その点でも発注書とは大きな違いが生じます。

発注管理とは

発注管理とは、業務に関わる原料・資材・商品などの仕入れを管理する業務です。発注業務では発注書を作成することに加え、仕入れに関わる一連の作業が予定通りに遂行しているかを確認しなければなりません。

そこで、在庫状況の把握・適切な補充作業・発注先の管理とスケジュール調整など、一元的な発注管理が求められます。効率的な発注管理を実現することにより、過剰在庫や在庫不足を防ぎつつ、不良在庫にかかるコストの発生を削減できます。

持続可能な経営につなげるためには、発注にかかわるフローを最適化し、徹底された品質管理の元で余裕のある管理体制の構築が重要です。

発注業務の流れ

発注業務は流れを理解して行うことが大切です。ここでは、発注業務の基本的な流れについて詳しく解説します。

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見積もりを依頼する

最初のステップは、必要な商品やサービスについての見積もりを依頼することです。見積を依頼する際は、数量、品質基準、納期など、詳細な情報を提供し、希望条件を明確に伝えましょう。

複数の取引先から見積もりを取得し、それらを比較検討することが重要です。この工程は、異なる提供業者からの提案を収集し、コストと品質のバランスを見つけるのが目的です。

そして、予算と品質の要件に適合する最適なオプションを選択します。ここで慎重な検討を行うことにより、発注業務のスムーズな進行とコスト効率の向上につながります。

発注する(発注書の発行)

見積りの内容が承認されたら、発注書の発行を行います。発注書は、提供業者に対して正式な依頼内容を伝えるための公式な文書です。

発注書作成の際には、まず発注する商品やサービスに関する詳細情報を集める作業から始めます。これには、数量・品質基準・価格・納期などが含まれます。

そして、発注者と提供業者の詳細情報、発注内容、納期、支払い条件などを含む発注書のフォーマットを作成します。なお、記入する際には、情報の正確性を確認することが非常に重要です。

発注内容を明確に伝えるために、詳細な説明や特別な要件を具体的に記載することが求められます。

納品物を検品する

発注が完了して商品が納品されたら、納品物の検品作業に移ります。最初は数量の確認を行います。発注書に記載された数量と、実際に届いた数量が一致しているかを確認しましょう。

次に、品質の検査を行います。発注した商品やサービスが、指定された品質基準を満たしているかを確認するのが大切です。また、損傷や破損がないかをチェックし、商品に問題がある場合には配送業者と発注元に連絡しつつ、状況を写真やメモで記録しておきます。

品物が問題なく検品を通過した場合、受領確認を行い、正式に納品を完了させます。納品物の検品は慎重かつ確実に行い、発注内容が満たされていることを確認しましょう。

支払処理を行う

商品やサービスが正常に納品され、検品も合格したら、支払処理を行いましょう。支払処理は取引の最終ステップです。

支払処理を行うためには、提供業者から送られてくる請求書を受け取ります。請求書には、支払期日、金額、支払い方法などが記載されています。請求書を詳細に確認し、誤りがないことを確認しましょう。

また、支払期日を確認して期日を厳守しなければなりません。仮に期日を逃すと、延滞料金が発生する可能性があります。

発注書に関する注意点

発注書はビジネスにおいて重要な役割を果たす文書ですが、正確さと適切な作成が求められます。ここでは、発注書にはどのような情報を含めるべきか、どのように誤りを避けるか、法的な側面から、効果的な発注書の作成に向けた注意点を詳しく説明します。

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「親事業者」は発行が義務付けられている

「親事業者」とは、ビジネス上で特定の商品やサービスを発注する主体です。親事業者は下請事業者(提供業者)に対して、正式な依頼内容を書面で伝える文書である「発注書」を発行することが法律で義務付けられています。

親事業者は下請法に従い、受注者に対して4つの義務「書面の交付」「支払期日を決める」「書類の作成・保存」「遅延利息の支払い」を遵守しなければなりません。

この発注書は、業務内容・納期・価格・支払い条件などの重要な情報を正確に記載することで、取引の透明性を高め、紛争を未然に防ぐための役割を果たします。

参考:親事業者の義務|公正取引委員会

発注書の保存期間を守る

発注書の保存期間は法人と個人事業主で異なることがあります。

法人/個人事業主保存期間
法人7年間以上
個人事業主5年間

法人として発注書を発行する場合、法令により7年間以上の保存が求められます。なお、災害損失欠損金が生じた場合には10年間の保存が必要です。

個人事業主の場合は5年間の保存が必要です。発注書は取引記録や税務申告に必要な情報を含むため、正確な情報の保管が法的に義務付けられています。また、法令や規則が変更された場合には、最新の要件に合わせて保存期間を確認しなければなりません。

電子帳簿保存法に注意

電子データで発注書やその他の帳簿を保管する場合、電子帳簿保存法を遵守する必要があります。電子帳簿保存法とは、主に企業や個人事業主が電子データを使用して帳簿を管理し、保存する際の基準とルールを定めた法律です。

この法律は、保存する電子データが完全で正確であることを確保するためのガイドラインとなり、データの改ざんや誤りから守るための措置を規定しています。

電子帳簿保存法に適合することで、電子データを使用した発注書も法的な効力を持ち、納税申告や監査の際にも認められることがあります。そのため、法令を順守し、発注書の電子データを適切に管理・保存することが非常に重要です。

参考:電子帳簿保存法の概要|国税庁

収入印紙が必要なケース・不要なケースがある

収入印紙は、税金や手数料、特定の取引に関連する収入の証明として政府が発行する証票で、法的な取引に使用されることがあります。収入印紙には金額が印刷されており、取引金額に応じて選択できるさまざまな額面が用意されています。

発注書に収入印紙が必要かどうかは、取引の金額や性質に依存します。以下では、収入印紙が必要なケースと不要なケースを紹介します。

収入印紙が必要なケース

通常、取引金額が1万円を超える場合には収入印紙が必要です。この金額を超える取引において、発注書には収入印紙を貼付ける必要があります。収入印紙は、取引の法的な証拠として用いられ、取引金額に応じて貼付金額が決まります。

また、発注書の発行で契約が成立する場合についても、収入印紙の貼付が必要です。それは、発注書が契約の証拠となるためです。例えば、製品の発注やサービス提供に関する正式な契約を記載した場合には、収入印紙が必要となります。

収入印紙は、取引の透明性を高め、法的な拘束力を持たせるための重要な要素となります。そのため、取引金額が一定額を超える場合や契約成立時には、収入印紙の貼付を忘れないようにしましょう。

収入印紙が不要なケース

取引金額が1万円に満たない場合、収入印紙は必要ありません。例えば、数千円の小口の商品を発注する際には収入印紙を貼付ける必要はありません。また、発注書が法的な契約書の一部でなく、あくまで発注の依頼書として機能する場合も、収入印紙は不要です。

近年では、電子化された発注書や電子発注書が一般的に使用されており、これらの電子文書にも収入印紙は必要ありません。また、電子発注書は通常、紙の発注書と同じ法的効力を持つため、収入印紙に関する手続きが不要です。

内容に間違いがないか確認する

発注内容が誤っている場合、不必要な商品やサービスを誤って発注してしまう可能性があり、コストの無駄や在庫の過剰が生じることがあります。

したがって、発注する商品やサービスの金額が正確であることを必ず確認しましょう。特に、数量や単価、消費税などの計算が誤っていないかを注意深くチェックします。正確な発注内容を確認することで無駄を減らし、予算の効果的な管理が可能です。

郵便方法を確認する

発注書は、一般的に「信書」に該当します。そのため、メール便などの一般的な郵便方法を使用して発注書を送付することは違法行為であり、懲罰や罰金の対象となる可能性があります。

このような行為は、郵便法第4条違反に該当する可能性が高いため、信書の送達に関しては細心の注意が必要です。なお、発注書の送付においては、信書の性質を理解し、適切な送達手段を使用してビジネス取引を行うことが重要です。

参考:信書の送達についてのお願い|総務省

受発注管理はエクセルで行える

手軽に受発注管理を行う方法として、Excel(エクセル)やスプレッドシートを活用した管理方法が挙げられます。エクセルは通常業務で触れる機会が多く、操作方法についても慣れ親しんだ人がほとんどでしょう。

また、スプレッドシートであれば情報共有がしやすく、受発注管理業務に役立てられます。しかし、どちらも低コストで利用しやすいというメリットがある反面、シートの基盤を作成したり、リアルタイムな情報共有ができなかったりするデメリットも持ち合わせています。

エクセルとスプレッドシートの活用で効率化を図れますが、関数・テンプレートを使用した管理が必要です。これには一定の知識が求められるため、全社的なデジタル化・DX化を推進するなら、システムの活用がおすすめです。

受発注管理システムで発注業務を効率化

受発注管理システムは、企業や組織が日常の発注業務を効率化し、スムーズに運営するためのソフトウェアツールです。システムには、顧客からの注文情報を受け付け、その情報から正確な発注書を自動的に生成する機能があります。

従来の手作業に比べて、注文情報を手入力する手間を省き、人為的なエラーを最小限に抑えることができます。また、在庫管理や納期管理などの重要な業務もシステムが自動的にサポートし、迅速で正確な取引が可能です。

さらに、受発注管理システムは顧客情報を一元管理し、過去の注文履歴や特定の顧客における好みを迅速に確認する際に役立ちます。

また、発注業務に受発注管理システムを導入することで、効率化・正確性向上・カスタマーサービス向上・エラー削減など、多くのメリットを享受できます。

受発注管理システムとは?メリット・デメリット、機能も解説

受発注管理システムとは、受注システムと発注システムの機能を併せ持ったもので、受発注に関する一連の業務をデジタルで行えるシステムです。この記事では、受発注管理システムのメリット・デメリットのほか、導入が推奨される企業や選び方も解説します。

まとめ

発注は、企業や組織が必要な商品やサービスを提供してくれる会社や取引先に、注文や依頼をすることです。発注は取引先に対して正式な依頼を行う行為であり、その際には発注書が使用されます。

発注書には取引条件や詳細情報が含まれ、法的な拘束力を持つことがあります。よって、発注書の作成には、収入印紙の必要性や発注内容の確認、電子帳簿保存法の遵守など、慎重な注意が必要です。

発注業務の効率化や正確性向上を図るためには、受発注管理システムの導入がおすすめです。このシステムは発注プロセスを自動化し、注文情報の正確な記録と管理をサポートします。そして、在庫管理や納期管理など、重要な業務も効率的に行うことが可能です。

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