在庫管理における先入れ先出しとは?|メリット・デメリットも解説

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  • 在庫管理における先入れ先出しとは、商品を入庫した順に出荷することを指す
  • 在庫管理で先入れ先出しを行うメリットは、在庫の長期滞留防止に繋がることである
  • 在庫管理で先入れ先出しを徹底するためのポイントは、適正在庫を保つことである

在庫管理における先入れ先出しとは、商品を入庫した順に出荷する、在庫を取り扱う業種の基本的なルールです。本記事では、先入れ先出しを行う必要性を交えて、メリット・デメリット、在庫管理において先入れ先出しを徹底するためのポイントを解説します。

目次

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  1. 在庫管理における「先入れ先出し」とは
  2. 在庫管理で先入れ先出しを行うメリット
  3. 在庫管理で先入れ先出しを行うデメリット
  4. 在庫管理で先入れ先出しを徹底するためのポイント
  5. 在庫管理システム導入で先入れ先出しを効率化
  6. まとめ

在庫管理における「先入れ先出し」とは

「先入れ先出し」は在庫管理の方法で、商品や資材の流れを制御するために広く使用されています。先入れ先出しでは、最初に入庫された商品が最初に出庫される原則が適用されます

これにより、商品の鮮度や品質を維持しながら、古い在庫が長期間保管されることを防ぎます。先入れ先出しは、食品業界や製造業・小売業・倉庫管理など、在庫を持つほとんどの業種で使用されています。

先入れ先出しを行う必要性

先入れ先出しは在庫管理の重要な原則であり、商品や資材を効果的に管理するために必要不可欠です。ここでは、その必要性として、以下の2つの項目について解説します。

品質を維持するため

先入れ先出しを用いることで、古い在庫が最初に使用されるため、商品が長期間保管されずに済みます。特に商品の賞味期限や新鮮さが重要な食品業界では、先入れ先出しによって品質不良や商品の期限切れを防ぎます。

同様に製造業や小売業においても、この方法を用いることで古い在庫が陳列されることを防ぎ、商品の品質を確保できます。また、資材や原材料の場合も、新しいものから使用することで製品の品質に影響を及ぼすリスクを軽減します。

適切な在庫管理を行うため

先入れ先出しは、適切な在庫管理を確立するために必要不可欠です。在庫が整理されておらず、品目が無秩序に保管されているような状況では、古い在庫が優先的に使用されないため、商品の劣化や期限切れが頻発します。

また、整理されていない在庫は追跡が難しく、正確な在庫レベルや資産の評価が困難です。先入れ先出しの適用により、商品の品質を維持し、無駄な廃棄物や品物の損失を減少させられます。

先入れ先出しを行わないと企業の信用を損ねる

古い在庫が長期間保管され、先に入庫された商品の出荷が後回しになると、商品の品質悪化や有効期限が過ぎてしまうリスクが高まります。

品質の低下はブランドの評判に悪影響を与え、競争力を低下させます。クレームなどの原因にもなり、企業の信用そのものに深刻な影響を及ぼす可能性があります。先入れ先出しを実践することは、企業の信用と持続的な成長にとって非常に重要です。

在庫管理で先入れ先出しを行うメリット

在庫管理において、先入れ先出しを実施することには多くのメリットがあります。この方法を採用することで、在庫の効果的な管理が可能となり、組織の運営効率と信頼性を向上させます。以下では先入れ先出しのメリットについて詳しく解説します。

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在庫の長期滞留防止に繋がる

先入れ先出しは、在庫の長期滞留を防ぐ効果的な手法です。この方法を採用することで、古い在庫が常に最初に使用されるため、新しい在庫が適切にローテーションされ、長期間保管されることを防ぎます。

これにより、商品・資材の劣化や期限切れのリスクが軽減され、品質が維持されます。劣化や期限切れは利益の損失にも繋がるため、この方法は利益損失の防止策であるとも言えます。

倉庫・棚などのストック場所が整頓される

先入れ先出しでは古い在庫が優先的に使用され、新しい在庫が後回しになるため、倉庫内の在庫が常に動き、整理されます。収納スペースが最適に活用され、商品や資材が混在したり、奥底に埋もれたりすることを防ぎます。

倉庫内が整頓されると、品物のスムーズな取り出しと保管が容易になり、作業効率が向上します。また、適切な整理が行われることで、品物の損失や劣化が減少します。

企業の信用度が上がる

ここまで見てきたように、先入れ先出しを徹底することにより商品や資材の品質が確実に維持され、顧客に高品質な製品やサービスを提供できます。品質の一貫性は顧客満足度を向上させ、顧客からの信頼を築く基盤となります。

製品・サービスが信頼性のあるものと認識されることで、取引先や顧客からの信頼が高まり、企業の信用度が向上します。

顧客満足度向上に繋がる

在庫管理における先入れ先出しは、顧客満足度向上にも繋がります。先入れ先出しの徹底により、商品の品質や適正な在庫数の維持、また、保管場所が整理整頓されることによる作業効率の向上が実現可能です。

そのため、出荷までの時間を短縮し、顧客のもとへより迅速に品質が保たれた商品を届けられます。さらに、賞味期限切れの商品を誤って出荷してしまうといったミスの防止にも有用であり、トラブルやクレームを未然に防ぎます。

商品が手元に届くまでのスピード感や品質の安定性は、顧客の満足度を左右する重要な要素であるため、先入れ先出しの徹底により顧客満足度向上を狙えるでしょう。

在庫管理で先入れ先出しを行うデメリット

在庫管理で先入れ先出しを実施することには多くのメリットがありますが、一方で、デメリットも考慮する必要があります。以下では、先入れ先出しのデメリットについて詳しく解説します。

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在庫管理で先入れ先出しを行うデメリット

  1. 管理するデータ量が増える
  2. 作業工数が増える

管理するデータ量が増える

先入れ先出しを徹底的に実行するには、個々の商品や資材の入庫日付、数量、期限などの詳細なデータを適切に記録・追跡する必要があります。このことにより、在庫データの複雑性が増して管理作業が煩雑になり、負担が高まる可能性があります

また、データ量の増加はデータベースや在庫管理システムにも影響を与えるため、これらの適切な保守と更新が必要です。こうした管理を行うためには、データの整合性と正確性を維持しつつ、効率的に作業を行えるデータ管理プロセスを確立する必要があります。

作業工数が増える

先入れ先出しを適用するには、古い在庫を新しい在庫よりも優先的に取り出す必要があります。そのために、従業員はより頻繁に在庫をチェックし、必要な商品や資材を選定しなければなりません

また、商品のラベリングや期限切れの監視など、追加のタスクが発生することもあります。これらの追加作業は時間とリソースを要し、労力とコストが増加します。

組織は、このデメリットを認識し、先入れ先出しを実施する際には適切なトレーニングや自動化技術の活用を検討することが重要です。

在庫管理で先入れ先出しを徹底するためのポイント

在庫管理において先入れ先出しを徹底することは、効果的な品質管理と経済的な在庫運用を実現しますが、適切に行うにはしっかりと運用体制を整える必要があります。以下では、先入れ先出しを徹底するためのポイントについて詳しく解説します。

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商品状態の区別を明確にする

在庫管理で先入れ先出しを徹底するためには、入荷時に商品状態を一目で判別できるような工夫を施す必要があります。特に、商品の劣化が起こりにくく賞味期限・使用期限の記載がない衣類や雑貨などの商品は、古いものと新しいものの区別が難しいです。

例えば、入荷日やロット番号を記載したシールを貼り付けたり、カラーシールで色分けしたりするなどして、視覚的に商品の状態を区別できるようにしましょう。従業員の誰もが判別できる工夫を施すことが、先入れ先出しの徹底に繋がります。

在庫の置き方を工夫する

先入れ先出しでは、基本的に「古いものが手前に、新しいものが奥に」くるように在庫を補充するのが原則です。コンビニの飲料売り場を想像するとわかりやすいでしょう。来店客は手前から順に商品を手に取るようになっており、商品が少なくなれば奥から補充されます。

古い在庫が新しい在庫と混ざっていたり、古い在庫を取り出しにくい配置になっていたりすると、作業効率が悪くなり、ミスも発生しやすくなります。先入れ先出しの原則に沿ってピッキングしやすくなっていれば、出荷までの時間も短縮可能です。

入荷時のストックルールを設定する

在庫管理で先入れ先出しを徹底するためには、まず入荷時のストックルールを設定しましょう。ルールを定めることで、古い商品が常に前に出され、新しい商品が後方に保管される、という先入れ先出しの原則がきちんと守られるようになります。

また、商品の保管場所に明確なラベリングやマーキングを施し、古い商品が一目で分かるようにします。さらに、定期的な在庫点検と品質評価を行い、期限切れや劣化が検出された場合には迅速に対処します。

ルールがあることで、先入れ先出しの原則に反することなく、この手法のメリットを最大限活かせるでしょう。

先入れ先出しを「どの程度重視するか」も重要

先入れ先出しはさまざまな分野の企業で有効ですが、全ての商品で必ずしもこの手法を徹底しなければならないわけではありません。

賞味期限のある食品や使用期限のある医薬品、劣化の早い素材などは、先入れ先出しを徹底する必要があります。しかし、文具や衣類など商品の鮮度が品質にそれほど影響しない商品の場合、人員や工数を増やしてまで先入れ先出しを行うメリットは少ないでしょう。

ストックルールを作る際は、「その商品にとって先入れ先出しはどの程度重要か」「現場の従業員が取り組みやすいか」といった観点からも考えることが重要です。

適正在庫を保つ

適正在庫を保つことは、過剰在庫の発生や無駄なコストの発生を防ぐためにも重要です。入荷数量を需要に合わせて適正に設定しておきましょう。

適正在庫が保たれず、過剰に在庫が発生してしまった場合、在庫管理の作業工数や情報量が増え、先入れ先出しにおいても作業が煩雑になってしまいます。効率的に先入れ先出しを行うためにも、適正な在庫量を把握し、それを常に保てるようにしましょう。

適正在庫を維持するには、需要の変動や季節的な変化に対応するため、適正在庫料を定期的に見直し調整します。これに加え、正確な在庫予測とリードタイムの管理が必要です。

作業員へ周知する

在庫管理で先入れ先出しを徹底するためには、作業員への周知も不可欠です。まず先入れ先出しの原則とその重要性を明確に伝えるトレーニングプログラムを設けます。従業員には古い在庫が優先的に使われることや、品質の維持が目的であることを理解させます。

また、作業員にはラベリングやマーキングによる在庫の識別方法を教育し、古い商品を簡単に特定できるようにします。定期的なリマインダーやミーティングを通じて先入れ先出しの実施を継続的に強調し、作業員の協力を促進します。

さらに、作業員からのフィードバックやアイデアを募集することで、システムやプロセスの改善に役立てられるでしょう。作業員への周知は、組織全体が先入れ先出しの原則を徹底するための重要なステップとなります

抜き打ちチェックを行う

定期的に在庫をランダムに選んで検査し、先入れ先出しが正確に実施されているかどうかの抜き打ちチェックを行いましょう。抜き打ちチェックは従業員の意識を高め、先入れ先出しの実施を促進するのに有効な手段です

また、管理者が定期的にチェックを行うことで、ルールが遵守されているか監視し、必要に応じてトレーニングや指導を提供できます。抜き打ちチェックは先入れ先出しの正確性と透明性を維持するための重要な手法と言えます。

3Sを徹底する

在庫管理で先入れ先出しを行う際のポイントとして、整理・整頓・清掃の3Sを徹底することは非常に有益です。

まず、「整理」では不要な在庫を削減し、在庫が過度に蓄積するのを防ぎます。「整頓」では商品や資材を適切に配置し、古い在庫が前に出るように確保します。「清掃」は衛生状態を維持し、品質を保つのに役立ちます。

これらの3Sを徹底することで在庫管理が効率的になり、作業員は古い在庫を容易に特定できます。さらに、作業環境を改善し、従業員のモチベーションを高める効果も得られます。

在庫管理システム導入で先入れ先出しを効率化

在庫管理システムは、商品や資材の受発注、在庫の追跡、品質管理、需給の予測など、在庫に関する一連のプロセスを自動化し、効率化するツールです。このシステムを活用することで、先入れ先出しを効率的に実現できます。

システムは在庫アイテムに日付情報を関連付け、古い在庫を自動的に最初に出庫対象とするため、手動での管理ミスを減少させます。また、在庫のリアルタイム追跡や分析機能を提供し、在庫の状態を正確に把握できます。

これにより、古い在庫の滞留を最小限に抑え、品質の維持をサポートします。最適な在庫水準の設定や需給の予測もシステムで行えるため、効率的な在庫運用が実現され、コスト削減や品質向上に貢献します。

在庫管理システムとは?機能や種類、メリット・デメリット解説

在庫管理システムとは、在庫情報や棚卸しなどの在庫管理に関するデータの管理ができるシステムです。本記事では、在庫管理システムをよく知らない・導入を検討している方に向けて、在庫管理システムのメリット・デメリットや選び方、さらにWebで自作できるのかを解説します。

まとめ

在庫管理における先入れ先出しは、商品や資材を最初に入庫したものから優先的に出庫する在庫管理手法です。先入れ先出しには、在庫の長期滞留を防ぎ、品質を維持できるメリットがあります。また、倉庫やストック場所が整頓され、効率的な管理が実現します。

一方で、デメリットも存在します。先入れ先出しの実施に伴い、管理するデータ量が増加し、正確な在庫情報を維持するための負担が増します。また、従業員へのトレーニングや品質管理も必要です。

このようなデメリットを払拭するために、データ管理の自動化や可視化ができる在庫管理システムの導入は有力な手段です。システム導入も視野に入れながら、先入れ先出しによって製品の品質向上を目指しましょう。

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