建設仮勘定とは?仕訳方法・減損会計・減価償却についても解説

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  • 建設仮勘定とは、建設中の有形固定資産が完成するまで一時的な計上を行う勘定科目
  • 建設仮勘定に計上できる資産として建物・構築物・機械・船舶・車両・土地などがある
  • 建設中の資産の価値が工期中に大幅な低下をした場合は、減損会計の対象となる

建設仮勘定とは、建設中の有形固定資産が完成するまで一時的に計上を行う勘定科目です。計上できる資産としては、建物・構築物・機械・車両などが挙げられます。本記事では、建設仮勘定の仕訳方法、年度またぎの際の処理方法、減損会計・減価償却などについて解説します。

目次

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  1. 建設仮勘定とは
  2. 建設仮勘定に経費計上できる有形固定資産の種類
  3. 建設仮勘定の仕訳
  4. 建設仮勘定の年度またぎ
  5. 建設仮勘定の減損会計
  6. 建設仮勘定の減価償却
  7. 建設仮勘定の税金
  8. 建設仮勘定で認識しておくべきポイント
  9. 建設仮勘定で不正を防ぐためには
  10. まとめ

建設仮勘定とは

建設仮勘定とは、建設中の固定資産が完成するまで一時的に計上する際の勘定科目のことです。読み方は「けんせつかりかんじょう」で、「建仮」と略されることもあります。建設仮勘定として計上できるものには、建物・構築物・機械・車両などがあります。

建設仮勘定は基本的な会計処理で頻繁に使用されないため、何を計上できるのか、どのように仕訳を行うのかがわからない方も多いでしょう。本記事では、建設仮勘定として計上できるものについてをはじめ、仕訳処理などについてもわかりやすく解説します。

参考:第3節 課税仕入れ等の時期|国税庁

建設仮勘定の重要性

建設仮勘定を端的に説明すると、固定資産が完成するまでにいくら費用が発生したのか帳簿を付けておくための勘定科目です。固定資産が完成する前にも、手付金や設計料などの支払いが発生するため、都度帳簿を行わなければ残高が一致しなくなってしまいます。

そこで、帳簿が一致しないことを避けるために、「建設仮勘定」という仮の勘定科目を使用し、帳簿付けを都度行います。また、建設仮勘定は固定資産が完成した後に、建設仮勘定を一括で固定資産勘定(本勘定)に振り替える作業が必要です。

参考:第1款 固定資産の取得価額|国税庁

建設仮勘定に経費計上できる有形固定資産の種類

建設仮勘定では、経費計上できる有形固定資産の種類が存在します。建設仮勘定に計上できる有形固定資産としては、以下の7種類が挙げられます。ここでは、具体的な例について解説します。

種類詳細
建物(付属設備含む)工場・事務所・電気設備・冷暖房設備など
構築物トンネル・橋・貯水池・塀・防波堤・堤防など
機械および装置(付属設備含む)コンベヤー・起重機等の搬送設備など
船舶(水上運搬具含む)漁船や貨物船の運搬費など
車両その他陸上運搬具自動車や鉄道・航空機運搬費など
工具や器具、備品工具や備品(耐用年数1年以上のもの)
土地経営上使用する土地・駐車場・資材置き場・社宅敷地など

参考:財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則|e-Gov 法令検索

建設仮勘定で処理するもの

建設仮勘定として処理するのは、建設中の建物や構築物など、経営目的として使用することを前提としたものです。建設仮勘定で処理する具体的な例には、以下のようなものが挙げられます。

  1. 建設に必要な資材や部品の費用
  2. 建設目的のための設計料や労務費
  3. 建物や構築物などの建設に必要な手付金や中間金
  4. 建設のために取得した機械の購入費用

また、建設仮勘定は企業の売買目的ではなく、長期間自社で使い続けるものが有形固定資産の対象となります。建築後に顧客へ売却する予定のある建物の中間金などは、棚卸資産として流動資産へ計上しなければならない点に留意しましょう。

参考:財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則|e-Gov法令検索

建設仮勘定の振替処理

建設仮勘定は、工場・工事が完成した際や、固定資産の引渡しを受けた際などは本勘定に振り替えます。決算時には漏れがないか、残高明細を作成して確認することが大切です。

特に、減価償却が実施されないと損益にも影響がでるため、固定資産への振替漏れには注意が必要です。また、長期にわたって建設仮勘定とされているものがある場合には、建設が中止になった際、速やかに損失処理を行って今後の見通しを検討しましょう。

建設仮勘定の仕訳

建設中の固定資産における支出を計上する際には、具体的にどのような仕訳を行うのかイメージしづらいです。ここでは、いくつかのパターンに分けて仕訳方法を詳しく解説します。

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建設を発注して費用を支払ったとき

自社の事務所の建設が決まり、発注の際に手付金を支払った際の仕訳では、以下のように計上します。

【例:自社事務所を1億円で発注し、手付金を当座預金から1,000万円支払った際の仕訳】

借方貸方
勘定科目:建設仮勘定勘定科目:当座預金
金額:10,000,000金額:10,000,000

引渡しを受けて振替処理を行うとき

自社の事務所が完成し、有形固定資産を勘定科目に振り替える際の仕訳では、以下のように計上します。

【例:事務所完成後に建物の引き渡しを受け、支払い残金9,000万円を当座預金から支払った際の仕訳】

借方貸方
勘定科目:建物勘定科目:当座預金勘定科目:建設仮勘定
金額:100,000,000金額:90,000,000金額:100,000,000

建設が中止になったとき

有形固定資産の建設が中止になった場合は、「特別損失」という勘定科目を利用して、以下のように仕訳を行います。

 【例:店舗の建設を計画を予定し、1,100万円の建設仮勘定として計上していたが、建設が中止になった際の仕訳】

借方貸方
勘定科目:特別損失勘定科目:仮払消費税等勘定科目:建設仮勘定
金額:10,000,000金額:1,000,000金額:11,000,000

建設仮勘定の年度またぎ

建設仮勘定の状態で工期が年度をまたいだ場合でも、完成して引き渡しを受けるまでは建設仮勘定として計上します。

【例:昨年末に5,000万円の工場建設を発注、手付金として500万円当座預金から支払った際の仕訳】

借方貸方
勘定科目:建設仮勘定勘定科目:当座預金
金額:5,000,000金額:5,000,000

次に、年度をまたいで工場が完成し、建設費用の残金を支払った際は、建設仮勘定を固定資産に振り替える仕訳を同時に行います。

【例:年度をまたいで工場の引き渡しを受け、残金4,500万を当座預金から支払い、工場(建物)を取得した際の仕訳】

借方貸方
勘定科目:建物勘定科目:当座預金勘定科目:建設仮勘定
金額:50,000,000金額:45,000,000金額:5,000,000

建設仮勘定の減損会計

減損会計とは、市場価格が低下している固定資産の帳簿価額を、実態に合わせて減額する会計処理のことです。資産の見込まれるキャッシュフローなどを算出し、投資額が回収できないと判断された際に損失処理を行える仕組みです。

建築仮勘定においては、建設中に大幅価値の低下が生じた場合に減損の対象となります。例えば、建設時は1億円の資産価値があった店舗でも、老朽化や地域環境の変化などによって収益性が低下すれば、資産価値も同様に低下します。

その際、原状の資産価値を見直し、差額が発生した分を損失計上するのが減損会計の処理です。また、1億円の資産価値が5,000万円の収益しか見込めなくなった場合は、5,000万円分の減損会計処理を行います。

参考:2 償却費の損金経理|国税庁

建設仮勘定の減価償却

減価償却とは、事業で使用する固定資産を、それぞれの耐用年数に応じて分割して経費計上を行う会計処理のことをいいます。建物などは固定資産に分類されますが、建設仮勘定は減価償却の対象外です。

建設仮勘定は建物などの固定資産が未完成な状態の際、使用開始前にかかる費用を帳簿付けするための勘定科目です。減価償却費には、「事業の用に供したときから」という条件があります。したがって、使用前に計上する建築仮勘定は減価償却費として認められません。

減価償却費は固定資産の引き渡しを受け、事業用に供した日から起算することができます。また、年度の途中で減価償却を開始する際は月割計算を行い、減価償却費として計上する形となるため注意しましょう。

参考:No.2100 減価償却のあらまし|国税庁

建設仮勘定の税金

建設仮勘定を計上する際、消費税や固定資産税(償却資産税)の適切な処理が求められます。ここでは、建設仮勘定の消費税・固定資産税について解説します。

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消費税

建設仮勘定の消費税は、建設仮勘定に計上する支払いであっても、資材の購入や役務の提供の際に税額控除を行います。役務の提供とは、部分的に工事が完成したケースなどです。

仕入税額控除は原則課税期間に行うため、資材の購入や役務の提供があった際に仕入れ額控除を実行します。

また、別の方法として、部分的な役務の提供の際などに課税仕入れとせず、すべての工事の引き渡しを受けた日に課税期間における課税仕入を処理する方法もあります。建築工事は長期間に渡って行われることが多いため、このような処理が認められています。

ただし、工事着工前の手付金などは役務の提供があったと認められず、課税仕入の対象外となるため注意が必要です。

参考:No.6483 建設仮勘定の仕入税額控除の時期|国税庁

固定資産税(償却資産税)

固定資産税(償却資産税)とは、土地や建物など固定資産の所有者に対してかかる地方税です。毎年1月1日に所有している固定資産にかかる税金で、資産の価値によって税額が決まります。

建設仮勘定を行う資産は未完成であるため、固定資産税の対象外です。固定資産税は、建設工事が完了し、登記申請を行って固定資産課税台帳に登録されてから課税されるようになります。

参考:固定資産税|国税庁

建設仮勘定で認識しておくべきポイント

建設仮勘定は通常の仕訳で頻繁に使用するものではありません。そのため、誤った認識で仕訳してしまうと後々のミスにつながります。特に、以下のようなポイントを認識しておきましょう。

自家建設では取得原価に算入できる

建設仮勘定として計上できるのは、有形固定資産の建設が完成するまでにかかった費用のみです。つまり、有形固定資産の完成までに発生した支出に該当しないものは、建設仮勘定として計上できません

ただし、固定資産を自家建設した場合、借入資本の利子で稼働前の期間に属するものは取得原価に算入できるとされています。よって、自家建設の製造原価を計算する際、取得原価の計算も合わせて行いつつ、完成したときに本勘定に振り替えましょう。

参考:第一 企業会計原則と減価償却|会計基準R

仕訳のミスが取得価額を減少させる

建設仮勘定で仕訳しなければならないものを他の勘定科目で仕訳すると、1つのミスが固定資産の取得価額を減少させてしまいます。取得価額の減少は仕訳の整合性が保たれないだけでなく、付随する費用についても把握しづらくなります

例えば、仮払金・前払金・消耗品費など、使用頻度が高い勘定科目で誤った仕訳をしてしまうと、後に固定資産に係る費用が正確に集計できません。そのため、固定資産限定の勘定科目を設定したり、補助科目でわかりやすく集計したりなどの対策を講じましょう。

建設仮勘定で不正を防ぐためには

建設仮勘定は、建設に関係がない支出を建設仮勘定に計上することにより、費用を減少させて利益を増大させるという不正リスクがあるため、危険性が高い科目といえます。不正を防ぐためのポイントとして、以下のような事項に注意しましょう。

  1. 建設仮勘定とは無関係なものが混入していないか、未払分の計上漏れがないか
  2. 建設仮勘定として計上すべきものが費用として処理されていないか
  3. 本勘定振替すべき建設仮勘定が漏れなく振り替えられているか
  4. 前期以前に当期に工事中止となるなど固定資産計上の見込みがなくなったものについては、当期に建設仮勘定を取崩して費用計上しているか

これらの管理ポイントに留意し、建設仮勘定の過大計上・計上漏れ・振替漏れ・取崩漏れが起きないように、管理体制を構築するようにしましょう。

まとめ

建設仮勘定とは、建設中の有形固定資産が完成するまでに、一時的に計上する際の勘定科目です。建築工事では、手付金や設計料など、完成前に支払う費用が多くあります。

その際、建設仮勘定という勘定科目を利用すれば、完成前の費用の帳簿付けが行えるようになります。一時的な費用でも都度会計処理を行うことにより、残高が一致しないという問題を防げます。

また、建設仮勘定に経費計上できる有形固定資産の種類は豊富にあるため、事前にどのような費用が建設仮勘定として経費計上できるのか確認が必要です。建設仮勘定に該当する経費がある際は、本記事の内容を参考に適切な仕訳を行いましょう。

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