ソフトウェアは固定資産として減価償却できる?計上基準や方法を解説

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  • ソフトウェアの多くは無形固定資産として減価償却できる
  • ただし、受注により制作を行なったソフトウェアは減価償却の対象とはならない
  • 自社利用目的のソフトウェアは、購入金額や特例によって会計処理方法が異なる

会計上におけるソフトウェアには、市場販売目的のもの・受注制作のもの・自社利用目的のものなどがあり、減価償却できるかどうかはこれらの目的によって異なります。この記事では、無形固定資産として計上できるソフトウェアの種類や減価償却方法などを解説します。

目次

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  1. ソフトウェアは無形固定資産として減価償却できるか
  2. ソフトウェアの種類と資産計上方法
  3. ソフトウェアの減価償却期間
  4. 市場販売用ソフトウェアの減価償却方法
  5. 自社利用ソフトウェアの資産計上および減価償却方法
  6. 固定資産管理システムでソフトウェアの仕訳も容易に
  7. まとめ
  8. タイプ別|おすすめの固定資産管理システム
  9. 業務をさらに効率化!関連サービスはこちら

ソフトウェアは無形固定資産として減価償却できるか

業務に使用するソフトウェアは、会計上「無形固定資産」として定義される場合が多いです。この場合のソフトウェアには、コンピュータ内に設定されたプログラムに加え、パッケージソフトに含まれるシステムの仕様書やフローチャートなどの文書類も該当します。

ただし、企業で購入したソフトウェアのすべてが、無形固定資産として減価償却の対象となるわけではありません。

例えば、自社での利用目的で購入したソフトウェアが、企業の費用削減効果や将来の収益獲得に貢献しないことが明らかな場合は、無形固定資産として計上しないのが一般的です。

無形固定資産に該当しない場合は、購入した年度においてソフトウェア購入代金の全額を費用として計上することになります。なお、無形固定資産に該当する場合も、使用目的によって償却年数や勘定科目などが異なります。

参考:研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針|日本公認会計士協会

無形固定資産とは

固定資産の種類を解説する図

無形固定資産とは、目には見えない資産のことです。固定資産と聞くと土地や建物をイメージしますが、会社の場合は特許権や商標権などの売上を生み出せるものも資産に該当します。

ソフトウェアは企業を運営する際に重要な役割を果たしますが、目には見えません。そのため、ソフトウェアは無形固定資産に含まれます

\無形固定資産と有形固定資産の違いはこちらの記事をチェック/

有形固定資産とは?無形固定資産との違いや減価償却の方法も解説

有形固定資産とは、企業が長期的な使用を目的として所有する、実体のある資産のことで、土地・建物・機械などが含まれます。本記事では、有形固定資産と無形固定資産の違い、会計処理で必要となる減価償却、仕訳方法や勘定科目などについてわかりやすく解説します。

減価償却とは

定額法と定率法の違いを解説する図

減価償却とは、固定資産の購入にかかった費用を一括計上せず、使用可能と認められる期間において分割計上する会計処理のことです。

自動車や建物などに代表される減価償却資産は経年により資産価値が減少するため、経年に応じた分割計上を行うことで、資産の状況と資産によってもたらされる収益の関係に矛盾が生じにくくなるという効果があります。

減価償却の計算方法には定額法と定率法の2種類があり、ソフトウェアの場合は定額法を用いるのが一般的です。なお、ソフトウェアの耐用年数が経過した後の価値である「残存価額」は0円です。

一般的に、無形固定資産の残存価額は0として計上されることが多いです。これは、無形固定資産の多くが使用期間中に完全に価値を消費するものとみなされるためです。

参考:減価償却のあらまし | 国税庁

ソフトウェアの種類と資産計上方法

ソフトウェアの種類と資産計上方法をまとめた表の画像

ソフトウェアは、使用目的によって3つに分類されます。市場販売目的または自社利用目的のものは減価償却の対象となりますが、受注制作のものは減価償却の対象ではありません。これらはそれぞれ資産計上の方法が異なるため、内容を把握しておきましょう。

ここでは、3種類のソフトウェアと資産計上の方法や範囲について解説します。

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市場販売目的のソフトウェア

市場販売用ソフトウェアの資産計上方法について解説する図

市場販売目的のソフトウェアとは、ソフトウェアの原本となる製品マスターを作成し、その複写の量産販売を目的としたものです。市場販売に使用するための製品マスターは無形固定資産と見なされ、減価償却の対象となります。

ただし、製品マスターとなるソフトウェアを作成するための研究開発にかかった費用は、研究開発費の科目で経費計上します。

受注制作のソフトウェア

受注制作のソフトウェアとは、取引先からの受注により制作を行なったソフトウェアのことです。この場合のソフトウェアは自社が長期にわたって保有する資産ではなく、完成した時点で取引先への納品を行うため固定資産には該当しません。

会計上、受注制作のソフトウェアは棚卸資産として処理します。そのため、減価償却の対象とはなりません。

自社利用目的のソフトウェア

自社利用目的のソフトウェアとは、自社での利用を目的として開発したソフトウェアや、社内業務の効率化を目的として購入したソフトウェアのことです。経費精算ソフト・勤怠管理ソフト・年末調整ソフトなどが該当します。

自社利用目的のソフトウェアによって企業に収益がもたらされる場合、無形固定資産として処理を行うため減価償却の対象となります。この場合、導入時にかかる設定費用なども含めることができます。

クラウド型ソフトは経費処理になる

減価償却の対象となる資産は、企業が購入し長期にわたって保有するものであるという前提があります。そのため、サービスへアクセスして使用するタイプのクラウド型のソフトウェアは固定資産には該当せず、月額料金を経費として処理する必要があります。

ソフトウェアの減価償却期間

ソフトウェアの減価償却期間は目的によって異なります。ここでは、市場販売目的のソフトウェアと自社利用を目的としたソフトウェアの償却期間について詳しく解説します。

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市場販売目的のソフトウェアの償却期間

市場販売目的のソフトウェアの償却期間は、原則として3年以内と定められています。ただし、合理的な理由がある場合は3年以上に設定することも可能な場合があります。

税務上のソフトウェアの耐用年数は5年と定められており、会計上の償却期間と異なります。そのため、両者の減価償却額が一致しない場合があるという点に注意しましょう。

自社利用目的のソフトウェアの償却期間

自社利用を目的としたソフトウェアの償却期間は5年です。自社利用目的の場合は税務上の耐用年数も5年となり、会計上の償却期間と一致します。

なお、自社利用目的のソフトウェアのうち、研究開発に使用するものは償却期間が3年になります。用途によって年数が異なるため、混同しないよう注意が必要です。

参考:No.5461 ソフトウエアの取得価額と耐用年数|国税庁
参考:研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針|日本公認会計士協会

市場販売用ソフトウェアの減価償却方法

市場販売目的のソフトウェアを制作した場合、見込販売数量もしくは見込販売収益に基づく方法で減価償却費を計算した後、販売可能期間に基づく均等配分額とを比較し、額の大きい方を採用します。ここでは、具体的な計算式と見込販売量の見直しについて解説します。

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見込販売数量または見込販売収益を基にする理由

市場販売用ソフトウェアの減価償却費は、見込販売数量もしくは見込販売収益に基づく方法で計算します。これは、費用と収益をより合理的に一致させるためです。具体的には、以下のようなメリットがあります。

・ソフトウェアの売上発生のタイミングに合わせて減価償却費用を計上することで、実際の収益と費用をより正確に対応させられる
・実際の販売状況に基づいて減価償却を行うため、企業の財務状況がより正確に反映される
・見込販売数量や収益に基づくことで、販売状況の変動に応じて減価償却費用を柔軟に調整できる

上記のようなことから、販売計画や市場の変動に対応できる方法といえます。

減価償却の計算方法

市場販売用ソフトウェアの減価償却費の計算方法を解説する図

見込販売数量に基づいた減価償却費は、未償却残高×各年度の実際販売数÷各年度期首の将来見込販売数によって求められます。また、販売可能期間に基づく均等配分額は、未償却残高÷残存有効期間で求めることができます。

例えば、見込販売数量で計算した場合、未償却残高が300,000円、見込販売数が初年度100個、2年目以降は50個のケースでは、初年度の減価償却費は300,000円×100個÷(100個+50個+50個)=150,000円となります。

これは、販売可能期間で計算した場合の300,000円÷3年=100,000円を上回っているため、150,000円が減価償却費として計上されます。

見込販売数の見直しについて

上記の計算で使用する見込販売数や販売収益は、あくまでも期首時点で見込まれる予測値であり、時代やニーズの変化によって変動することが考えられます。そのため、毎期ごとに見直さなければなりません。

その結果、もしも減価償却費が未償却残高を下回った場合は、減価償却費の補正計算を行うとともに、損失や費用として計上する必要があります。

また、市場販売目的で制作されたソフトウェアの原本は減価償却の対象となりますが、制作過程にかかった費用や、ソフトウェアの改良にかかった費用は研究開発費に該当する点にも注意が必要です。

自社利用ソフトウェアの資産計上および減価償却方法

自社利用目的のソフトウェアは、金額によって減価償却の期間や仕訳方法が変わります。ここでは、価格ごとの償却方法と仕訳について個別に解説していきます。

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10万円以下の場合

10万円以下のソフトウェアを導入した場合は、少額減価償却資産として経費計上します。また、勘定科目は消耗品費となり費用に該当するため、減価償却は行いません。

9万円のソフトウェアを現金で購入した場合の仕訳は以下の通りです。

借方貸方
勘定科目消耗品費勘定科目現金
金額90,000円金額90,000円

30万円以下の少額減価償却資産は全額消耗品費として計上できるという中小企業者等の少額減価償却資産の損金算入に関する特例がありますが、10万円以下のものや一括償却資産の損金算入制度の適用を受けるものは該当しないため注意が必要です。

参考:No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

10万円以上20万円未満の場合

導入したソフトウェアの価格が10万円以上20万円未満の場合、一般的には一括償却資産として会計処理を行います。また、減価償却の期間は3年となります。

15万円のソフトウェアを現金で購入した場合の仕訳は以下の通りです。

借方貸方
勘定科目一括償却資産勘定科目現金
金額150,000円金額150,000円

ただし、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例により、消耗品費として取り扱うことも可能です。

15万円のソフトウェアを現金で購入し、消耗品費として計上する場合の仕訳は以下の通りです。

借方貸方
勘定科目消耗品費(償却不要)勘定科目現金
金額150,000円金額150,000円

20万円以上30万円未満の場合

20万円以上30万円未満のソフトウェアを導入した場合は、無形固定資産の取り扱いになります。また、この場合の勘定科目は「ソフトウェア」となります。ソフトウェアの償却期間は使用目的によって異なるため、目的を確認し正しい処理を行いましょう。

25万円のソフトウェアを現金で購入した場合の仕訳は以下の通りです。

借方貸方
勘定科目ソフトウェア勘定科目現金
金額250,000円金額 250,000円

なお、この場合も金額が30万円未満であるため、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例を適用することができます。

25万円のソフトウェアを現金で購入し、消耗品費として計上する場合の仕訳は以下の通りです。

借方貸方
勘定科目消耗品費勘定科目現金
金額250,000円金額 250,000円

30万円以上の場合

30万円以上のソフトウェアを購入した場合、20万円以上のものと同様に「ソフトウェア」の勘定科目で仕訳します。なお、30万円を超えると中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の対象とはならない点に注意が必要です。

35万円のソフトウェアを現金で購入した場合の仕訳は以下の通りです。

借方貸方
勘定科目ソフトウェア勘定科目現金
金額350,000円金額 350,000円

固定資産管理システムでソフトウェアの仕訳も容易に

固定資産管理システムとは、固定資産の会計処理や取得後の管理にかかるさまざまな業務を自動化させ、効率化を進めるためのツールです。

固定資産管理システムの機能によって、ソフトウェアをはじめとする無形固定資産の仕訳や、複雑な減価償却の計算も簡単に行うことができます。

ソフトウェアの会計処理には、研究開発費との区分や使用目的に応じた取り扱いの変更などの注意点があります。固定資産管理システムの導入によってこれらの複雑な作業を自動化できるため、効率的なソフトウェアの固定資産管理が実現します。

\詳しくはこちらの記事をチェック/

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まとめ

ソフトウェアの多くは無形固定資産に該当しますが、ソフトウェアがもたらす収益効果や購入代金によって減価償却ができるものとできないものがあります。また、目的に応じて仕訳の勘定科目や償却年数などが異なります。

ソフトウェアは市場販売目的のもの・受注制作のもの・自社利用目的のものの3つに分類され、このうち受注制作のものは減価償却ができません。それ以外のものは金額によって処理方法が変わるため、正しい処理を行いましょう。

ソフトウェアの仕訳や管理を効率化させるには、固定資産管理システムの導入がおすすめです。システムの導入により、正確で効率的な経理処理を目指しましょう。

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