固定資産管理とは?業務フローやおすすめの管理方法を詳しく解説

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  • 固定資産管理は、無駄な経費の削減や、適切な固定資産運用のために必要である
  • 固定資産管理をする方法には、エクセルによる管理と、システムの導入がある
  • 固定資産管理を行う際は、管理ルールの共有や日頃の現場管理が大切になる

固定資産管理とは、企業が所有する固定資産を正確に把握することです。固定資産を正確に把握・管理することで、適切な固定資産運用が行えます。本記事では、固定資産管理の必要性・業務の流れ・管理方法の他、管理を行う際のポイントとシステム化がおすすめな理由も解説します。

目次

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  1. 固定資産管理とは
  2. 固定資産管理の必要性
  3. 固定資産管理業務の流れ
  4. 固定資産管理の方法
  5. 固定資産管理を行う際のポイント
  6. 固定資産管理における課題
  7. 固定資産管理のシステム化がおすすめの理由
  8. まとめ

固定資産管理とは

固定資産とは、企業が所有する資産のうち、1年以上の長期にわたって保有される10万円以上の資産のことです。なお、固定資産は販売目的であってはならず、自社で使用されるものに限定されます。

固定資産管理とは、このような固定資産の内訳・金額・取得価額などを正確に把握し、管理を行う業務です。固定資産管理には、減価償却などの経理的な処理に加え、棚卸や現物資産の管理などのさまざまな業務が含まれます。

固定資産の状況を管理し、正しい減価償却処理を行うことで法人税の節税効果が得られます。また、資産の状況を把握することで買い替えや保守のタイミングを最適化できます。適切な固定資産管理は企業の健全な運営に不可欠であると言えます。

参考:第1款 固定資産の取得価額 | 国税庁

固定資産の種類

固定資産は、有形固定資産・無形固定資産・その他の資産の3種類に分類されます。ここでは、それぞれの内容について解説します。

有形固定資産

有形固定資産とは、固定資産の中でも形のある資産のことを指します。有形固定資産は物理的に存在する資産であるため、現物管理が必要となります。有形固定資産の具体例は以下の通りです。

  1. 土地
  2. 建物
  3. 建物附属設備
  4. 車両
  5. 工具
  6. パソコン
  7. 物理サーバー
  8. 什器

無形固定資産

対して、固定資産の中で実体をもたないものは無形固定資産に該当します。代表的なものには権利やソフトウェアなどがあり、物理的な存在がなくとも価値を有する資産です。以下に具体例を記載します。

  1. 特許権
  2. 営業権
  3. 商標権
  4. のれん
  5. 仮想サーバー

投資その他の資産

投資その他の資産とは、企業間における取引関係を維持したり、経営支配を行うことを目的に保有する資産のことを指します。投資その他の資産に分類されるもののうち、代表的なものは以下の通りです。

  1. 長期貸付金
  2. 有価証券
  3. 出資金
  4. 敷金
  5. 保証金

固定資産管理の必要性

企業運営において、固定資産管理は重要な役割を担っています。固定資産管理により経費の削減や節税による恩恵を得られるほか、資産の不正利用を防止する効果があります。ここでは、固定資産管理の必要性について詳しく解説していきます。

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無駄な経費を削減するため

固定資産管理は、固定資産の現物管理を行い無駄な経費を削減するために不可欠な業務です。固定資産管理によって、企業が保有する資産の取得時期・金額・内容・損耗の状態などがわかります。

これらの情報に基づき、余分な固定資産の購入や不要なメンテナンスなどの実施が行われていないかをチェックすることができます。また、現物を実際に確認することで、今後の購入や修理にかかる費用の見通しを立てられるというメリットもあります。

適切な現物管理が行われない場合、台帳と実際の固定資産の状態に乖離が生まれる原因となります。また、実際の資産価値を正確に見積もることができず、無駄な買い替えによるコストの増大や過大評価による固定資産税の増加をはじめとするデメリットに繋がります。

正確な固定資産税の算出のため

固定資産は企業の資産であり、固定資産税の課税対象となります。固定資産税を正確に算出するためには、管理によって固定資産の実態をしっかりと把握することが必要です。

固定資産管理により、償却が完了した固定資産や不要となった固定資産をスムーズに廃棄することができます。これにより、課税対象となる資産を必要最小限に留め、余分な資産への課税を回避する節税効果が得られます。

適切な固定資産運用のため

固定資産管理は、固定資産を適切に運用する上でも重要な役割を担っています。固定資産がいつ購入され、どの部署の誰がどのように使用したかを管理することで、資産の状態把握に繋がります。

このような管理によって資産の故障や劣化を早期に把握でき、修理や買い替えなどのタイミングを適切に判断できます。また、保管場所や使用状況を含めた管理を行うことで、紛失や破損などの隠蔽防止にも繋がります。

固定資産には従業員が日常業務で使用する備品や機器が多く含まれており、横領や個人的利用などのリスクを孕んでいます固定資産の状態把握を徹底することで責任の所在が明確になり、さまざまな不正利用を監視する効果が得られます。

固定資産管理業務の流れ

実際の固定資産管理業務では、会計処理や固定資産台帳の管理に加え、現物に対する管理ラベルの付与や棚卸などを行います。ここでは、これらの業務の流れやポイントについて詳しく解説していきます。

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会計処理を行う

固定資産管理における会計処理は、固定資産を購入し、支払いが完了した時点で行われます。固定資産の品目や購入金額によって税法上の耐用年数と償却率が定められているため、正しい内容を確認するのがポイントです。

企業が保有する固定資産のうち代表的なものを例に挙げると、パソコンの法定耐用年数は4年・社用車などに用いられる普通自動車は6年・金属製キャビネットは15年となっています。

また、減価償却の計算方法は定額法と定率法の2種類があり、減価償却費の種類ごとに計算方法を統一する必要があります。それぞれの計算方法にメリット・デメリットがあるため、自社の状況に応じた適切な計算方法を取り入れましょう。

固定資産台帳に記載する

固定資産台帳とは、固定資産の取得から廃棄までの状況を記載するための役割を担っています。固定資産の内容・量・現在の状態を記録するもので、会計処理が完了した固定資産の情報は新たに取得した固定資産の情報を固定資産台帳に記載します。

固定資産の正しい状態を管理するためには、常に新しい情報を抜け・漏れのないよう台帳に記載することが重要です。企業によって異なる場合もありますが、一般的な固定資産台帳には以下の項目が記載されます。

  1. 資産名
  2. 固定資産管理番号
  3. 取得価額
  4. 取得年月日
  5. 供用年月日
  6. 除去年月日
  7. 数量
  8. 耐用年数
  9. 管理部門
  10. 用途
  11. 償却方法

固定資産台帳は固定資産管理に不可欠な台帳であり、税務申告時には提出の義務があります。そのため、正確に記載し、実態との乖離がおこらないよう適切な管理を行いましょう。

なお、固定資産以外にリースによる資産を保有している場合は、リース物件管理台帳の作成・管理が必要です。リース物件管理台帳には、一般的に以下の項目が記載されます。

  1. 物件名
  2. リース会社名
  3. 契約番号
  4. リース期間
  5. 支払総額
  6. 1月あたりの支払額

管理ラベルを貼る

固定資産管理台帳への登録が完了したら、固定資産に対して管理ラベルの貼付を行います。管理ラベルには台帳に記載された固定資産と現物を紐付けるという目的があり、これにより台帳の内容と資産の実態を照らし合わせることが容易になります。

管理ラベルの記載事項例は以下の通りです。

  1. 資産名
  2. 固定資産管理番号
  3. 取得年月日
  4. 型式
  5. 管理者名
  6. 購入先
  7. 保守契約先

管理ラベルを貼るときは、使用中に記載内容が消えないよう耐久性のある素材を選びましょう。また、内容の書き換えやラベルの除去を勝手に行わないよう、従業員に対する周知も必要になります。

管理ラベルの内容を手入力で作成・確認すると時間や手間がかかるため、近年では管理ラベルをバーコード化するケースも増えています。専用リーダーでの読み取りによって棚卸がスムーズになるなどのメリットがあります。

棚卸を行う

管理ラベルを貼って管理している固定資産は、定期的な棚卸によって現状の把握を行います。棚卸は通常年に1〜2回程度行い、これによって資産の移動・廃棄・売却などの情報が管理台帳に反映されているかどうかを確認します。

棚卸作業のポイントは、資産の実態が固定資産台帳の記載内容と一致しているかどうかを正確に把握することです。例えば、故障したまま放置されている資産は価値を有していないため、そのままでは資産とは言えず、修理などの対応が必要になります。

また、従業員が無断で固定資産を処分していたり、業務上不要になったものが残存していないかどうかのチェックも棚卸のタイミングで行います。

固定資産管理の方法

固定資産管理の方法は大きく2種類に分けられ、エクセルによる管理または固定資産管理システムを利用する方法があります。ここでは、それぞれの管理方法におけるポイントについて解説します。

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エクセルで管理する

エクセルで固定資産管理を行う場合、固定資産管理台帳の無料テンプレートをダウンロードする方法が一般的です。テンプレートには固定資産管理台帳の項目があらかじめ記載されており、必要に応じて項目の変更や追加などを行いカスタマイズできます。

固定資産管理は、企業によって管理を行う項目や台帳の様式などが異なるため、テンプレートを使用する前におおよその枠組みを定めておくのがポイントです。また、エクセルで減価償却の計算を行いたい場合は、計算式が正確に反映されているか確認しましょう。

固定資産管理システムを利用する

固定資産管理システムとは、固定資産管理にかかる会計処理や固定資産台帳の作成などを効率化するためのツールです。

固定資産管理システムの多くは複数名での同時編集が可能であり、最新の情報がリアルタイムで反映されます。そのため、各部門の担当者が棚卸や固定資産管理台帳の入力を直接行うことができ、正確な内容を効率的に取得できるというメリットが得られます。

固定資産管理システムにはさまざまな種類がありますが、耐用年数の設定や減価償却費の計算などを自動で行えるものが多いです。また、システムによって固定資産の情報が一元化されるため、資産の状況が複雑な場合も現状の把握がスムーズになります。

さらに、税法改正への自動対応機能を備えたものなら、計算方法が自動的に反映され、正確で効率の良い固定資産管理が可能になります。

固定資産管理を行う際のポイント

固定資産管理を行う際は、社内で管理ルールを共有し、現場管理の徹底を行うことが重要です。ここでは、これらのポイントについて詳しく解説していきます。

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管理ルール・ガイドラインを共有する

固定資産を取得する際は、業務に必要と認められたものを適切な金額で購入する必要があります。また、取得後の固定資産は企業が保有する資産となるため、使用状況や廃棄などに関する情報の管理を行わなければなりません。

これらの管理をスムーズに行うためには、管理ルールや固定資産の使用にかかるマニュアルを社内で共有することが重要です。購入・処分・廃棄の状態を管理部門が速やかに把握できるよう、申請書や稟議書などの運用方法を定めておきましょう。

さらに、固定資産の管理不足は社内不正の原因となり得るため、複数の部門を経由した承認体制を導入することも有効です。情報の透明性を高め、適正な管理を目指しましょう。

日頃の現場管理を徹底する

固定資産の多くは日常的な現場において使用されます。管理部門だけで全ての固定資産の状況を把握することは難しく、現場管理担当者の協力が不可欠です。

現場管理を徹底し、新しい資産を購入した場合や廃棄を行なった場合は速やかに担当部署への報告を行うことを義務付けるとともに、現場従業員の固定資産管理への意識を高める工夫を行いましょう。

固定資産管理における課題

固定資産管理を行う際、さまざまな課題に直面し失敗することがあります。ここでは、ありがちな2つの点を取り上げます。

税法や会計基準に準拠する必要がある

固定資産管理と深い関わりのある減価償却は、税法や会計基準に準拠して行うことが求められます。また、償却資産の耐用年数や償却率は規定があり、それに従って減価償却をします。

しかし、現在は日本独自の会計基準からIFRSという世界基準に転換する企業が増えているため、その流れについていく必要が生じます。最近の税法や会計基準を熟知している必要があるので、経験や知識が浅いと難しいと言えます。

管理が行き届かない

固定資産の取得・除去・移動・廃棄などの現状をリアルタイムで把握しなければなりませんが、人力では困難です。また、企業が所有する固定資産が多くなるほど、管理負担は増えていきます。

加えて、固定資産の管理部署と使用部署が異なる場合は、管理を徹底しにくくなります。これでは、固定資産管理台帳と現物が一致しないという事態を招く可能性が高くなります。

固定資産管理のシステム化がおすすめの理由

固定資産管理を行う際は、固定資産管理システムを導入してシステム化することがおすすめです。ここでは、システム化がもたらすメリットについて解説します。

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固定資産管理のシステム化がおすすめの理由

  1. 固定資産を一元管理できる
  2. さまざまな償却方法に対応できる

固定資産を一元管理できる

固定資産をシステム化していない場合、エクセルなどで作成した固定資産管理台帳へ手入力による情報の更新が必要です。また、データの統合や検索などの機能が備わっていないため、必要な情報を取り出すために多くの手間がかかります。

固定資産管理システムの導入により、システム上で全てのデータを一元管理することができます。これにより常に新しいデータが整理され、必要な情報を必要なときに簡単に探し出せるというメリットが得られます。

また、計算方法や計算内容が自動的に反映されるため、手入力によるデータの入力ミスや税法改正にかかる変更漏れなどのリスクが軽減されます。

さまざまな償却方法に対応できる

近年では企業のグローバル化が進み、それに伴い会計基準を世界基準のものに変更する日本企業が増加しています。手作業で管理を行なっている場合は大きな負担がかかりますが、固定資産管理システムの多くはこのような変更にも柔軟に対応できます。

固定資産管理システムでは、減価償却の計算方法の変更や一括償却・繰延資産をはじめとするイレギュラーな処理への対応が可能です。これにより、自社のニーズに応じた適切な計算方法を選択できます。

おすすめの固定資産管理システム|選ぶ際の重要なポイントを解説

固定資産管理システムとは、企業が保有・使用する土地や建物などの固定資産の情報を適切に管理するためのシステムです。本記事では、固定資産管理システムの導入を検討している方のために、おすすめの固定資産管理システムや選び方、導入時の注意点を詳しく解説しています。

まとめ

固定資産管理とは、企業が所有している資産の状態を正確に把握し、必要な管理を行う業務です。固定資産は品目によって異なる償却年数が定められており、正しい会計処理が求められます。

また、固定資産管理には会計処理や固定資産台帳の作成などのさまざまな作業が必要であり、スムーズな管理を行うために社内のルール設定や現場の協力が求められます。

固定資産管理を効率化するためには、固定資産管理システムの導入がおすすめです。システムによる固定資産の一元管理や多様な償却方法への対応を行い、正確な固定資産管理を実現しましょう。

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