WBSとガントチャートの違いとは？メリットや作り方を詳しく解説

プロジェクトの進捗管理において重要な役割を担うWBSとガントチャートですが、書き出す内容が似ていることもあり、両者の違いはわかりにくいです。本記事では、WBSとガントチャートの違いやそれぞれのメリット、作成手順などを詳しく解説しています。

目次

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1. WBSとは
2. ガントチャートとは
3. WBSとガントチャートの違い・関係性
4. WBSとガントチャートを作成する手順
5. WBSとガントチャートの作成・運用はプロジェクト管理ツールがおすすめ
6. まとめ

WBSとは

WBS（Work Breakdown Structure）は、プロジェクト管理とプロジェクト計画のための重要なツールです。プロジェクト全体を小さなタスクや作業パッケージに分割して、活動を管理しやすくリスト化します。

細分化した作業をまとめた進捗管理表そのものを指すこともあり、「作業分解構造図」とも呼ばれます。プロジェクト成功に必要な全作業が把握でき、タスク洗い出しの漏れを防ぎます。

また、プロジェクト進捗管理の別の方法としてガントチャートがあります。本記事では、混同しがちなWBSとガントチャートの概要や活用するメリット、それぞれの違い、作成する手順などを解説します。

WBSのメリット

WBSは、プロジェクトの成功のための計画や実行、監視、制御の過程を効果的に管理し、進捗を追跡する能力を有しています。そのため、進捗管理を重要視するビジネスシーンでは、頻繁に使用されます。ここでは、その中の主な3つのメリットについて解説します。

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プロジェクト全体の作業を整理できる

WBSは、プロジェクトを階層的な構造に分解するため、全体が見えにくい大きなプロジェクトでも、管理が容易になります。プロジェクト全体が複雑でも具体的に何をすべきかが明確になり、制御可能なタスクや活動に分かれ、管理しやすくなります。

また、プロジェクト全体の要素を整理し体系化するため、プロジェクトの個々の要素を考慮し、漏れや抜けがないことが確認できます。これにより、プロジェクト全体が正確性や一貫性が保たれる点がメリットになります。

さらに、プロジェクト構造が視覚的に表現されるので、プロジェクトリーダーやメンバー間で全体構造を共有することができ、コミュニケーションもより向上します。その上、プロジェクトの進行状況がわかりやすくなり、チーム内の共通認識も強化されます。

工数やスケジュールの見通しを立てられる

WBSは、プロジェクトを小さな作業タスクに分割します。この分割されたタスク毎の工数により、プロジェクト全体の工数を累計して推定することが可能になります。

また、各作業のタスクにはリーダーが割り当てられ、その作業に必要な工数が予め計画されます。そのため、リーダーは、どのタスクにどの程度のリソースが必要であるかが把握でき、リソースの効果的な割り当てが可能となります。

WBSにより、詳細な作業タスクの依存関係が明確化されるため、プロジェクトの工数とスケジュールを効果的に捉え、管理することが可能となります。これにより、作業の遅延を最小限に抑えられ、プロジェクトを成功に導くことができるようになります。

各作業の役割分担ができる

WBSは、プロジェクト全体を階層的な構造に分解し、大きなプロジェクトを管理可能な小さな単位に分割します。各階層はツリー構造で表わされ、各タスクの範囲や役割が明確になります。

分割された作業タスクには責任者が割り当てられ、それぞれの作業に対するリーダーシップと責任を負います。これにより、誰が何を担当するかが明確になり、適切な進捗管理が期待できます。

WBSのデメリット

WBSは、プロジェクト全体の作業パッケージを細かいタスクに分解し、定義する階層的なアプローチを採用しており、プロジェクト進捗管理において有用なツールです。一方で、いくつかのデメリットも存在します。

WBSを使用する際には、このデメリットを認識しておくことが重要です。ここでは、WBSもデメリットとして、以下の2点について詳細に解説します。

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作成・編集に手間がかかる

WBSは、プロジェクトを詳細に分解するため、各作業パッケージが細かく定義される必要があります。そのため、プロジェクト内の各タスクや活動を特定し、それに対応する階層を設計し作成するために、時間と手間がかかる点がデメリットになります。

一般的に、プロジェクトの進行中には変更が発生することがあります、WBSを使用する場合には、全体の計画が変更されるごとに編集が必要となります。変更の度に、WBSの中で担当するタスクと全体の変更点との関連を確認し、再編集するには手間がかかります。

進捗に合わせて修正する必要がある

プロジェクトが進行するにつれて、タスクや作業パッケージの進捗状況が変化することがあります。このような場合には、新たなタスクの追加や変更、またはタスク完了に伴い、WBSの修正や編集が必要となり、保守や更新に時間や手間を要します。

WBSは階層的なツリー構造を持つため、依存関係が明確でない場合は、タスク間の関連性を理解するのが難しいことがあります。特に複雑なビッグ・プロジェクトでは、タスクの依存関係が複雑に交差し、タスク間の関連性がわかりにくくなります。

WBSは通常、プロジェクトの初期段階で作成され、後半のタスクやフェーズが細かく分割されないことがあります。そのため、プロジェクトの後半部分のタスクやリソースのニーズが不透明であり、プロジェクトの全体像が把握できないことがあります。

ガントチャートとは

ガントチャートは、20世紀初頭にアメリカ人の機械工学者のヘンリー・ガントによって考案されました。プロジェクトの進捗を管理するために、プロジェクトの各段階を細かく作業単位まで展開して階層として表示し、全体の作業の流れおよび進捗状況を表します。

WBSによって洗い出した作業項目をもとに、縦軸に細分化したタスク・担当者・開始日・終了日をリストアップします。横軸に各タスクの作業期間を表示し色付けすることで、横向きに伸びる棒グラフから進捗状況が視覚的に把握できます。

やるべきタスクや進捗状況が一目で確認できる反面、タスク同士の関係性をグラフ上で把握することができません。Aの作業が完了していないために、Bが開始できないという事態に発展しないよう注意が必要です。

ガントチャートのメリット

ガントチャートは、プロジェクト管理において、プロジェクト全体のスケジュールや進捗を一目で把握できる非常に有用なツールです。そのため、プロジェクト管理者やチームメンバーにさまざまなメリットをもたらします。ここでは、その中の以下の3点を解説します。

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プロジェクト全体の進捗を可視化できる

ガントチャートは、タスクの作業状況を時間軸上に横バーで表示する視覚的なツールです。横バーはタスクの期間と進捗を表示し、一目で理解できる可視化された情報となります。そのため、プロジェクト全体の状況を容易に把握できる点が大きなメリットになります。

また、タスク間の依存関係が視覚的に表現されます。タスクバーの位置と重なり具合から、どのタスクが他のタスクに依存しているかが明確化されます。依存関係が可視化されることにより、タスクの実行順序や相互関係、遅延の影響などが把握しやすくなります。

ガントチャートでは、プロジェクトの重要な目標やイベントなどをマイルストーンとして◆形などで表示できます。この表示により、プロジェクトの重要な段階や目標が強調され、監視しやすくなり、全体スケジュールの最適化や問題の早期解決が容易に行えます。

チーム内でタスク状況を共有できる

ガントチャートは視覚的なツールのため、プロジェクトのタスクやスケジュール、進捗が一目で把握・理解できます。これにより、チームメンバーは、バーの長さや位置を見て、タスクの進行中や完了などの状況を簡単に把握でき、チーム全体の協力が促進されます。

ガントチャートにより、各タスクに割り当てられている担当者がわかり、タスクのバーによってタスクの進捗状況も可視化されます。また、メンバーは自分の責任範囲を明確に理解し、タスクの適切な管理と協力が促進され、全体のタスクの達成が効果的に行われます。

さらに、ガントチャートを使用して、プロジェクト全体を管理し、進捗を監視することができます。これにより、プロジェクトリーダーは、リアルタイムでプロジェクトの進捗を追跡して、状況に基づいた調整などの意思決定や対応が迅速に行えます。

専門知識がなくても扱いやすい

ガントチャートは、視覚的なツールのため、タスクやスケジュールがバーで可視化されて表現されます。そのため、専門知識がなくてもガントチャートを見てタスクの進捗状況やスケジュールの状況を容易に把握できます。

ガントチャートでは、縦軸にタスクの項目として担当者名や開始日、完了日などを配置し、横軸にはタスクや活動が時間軸上にバーで表示されます。このバーの長さや位置を調整することで、タスクの期間とスケジュールを設定できます。

ガントチャートを作成する場合は、この縦軸・横軸の配置のルールに従えば、専門知識がなくても図表の作成が可能です。簡単なチャートの理解や操作により、ガントチャートは広範なプロジェクトの進捗管理のために利用ができます。

ガントチャートのデメリット

ガントチャートは、プロジェクト管理において、タスクの進捗状況を可視化する優れたツールです。ただし、いくつかのデメリットもあるため、採用前に確認しておきましょう。ここでは、デメリットとして以下の2点の詳細を解説します。

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工数を把握しにくい

ガントチャートは、主にタスクの期間や進捗を表示するために使用され、各タスクの詳細な工数などの情報は直接表示されません。そのため、タスク毎の工数などの情報の把握は難しくなります。

また、大規模で複雑なプロジェクトの場合、ガントチャートに表示されるタスクが非常に多くなることがあります。多数のタスクを管理する際にも、個々のタスクの工数がガントチャート上で表示されないため、全体の工数を把握するのは煩雑で困難となります。

ガントチャートは、タスクの期間や進捗を把握するのに優れたツールですが、工数に関する詳細な情報を把握するのは難しいことになります。工数管理が必要な場合は、専用のプロジェクト管理ツールやスプレッドシートなどを併用することが推奨されます。

タスク同士の関係が見えにくい

ガントチャートは、主にタスクの期間を表示するための視覚的なツールです。そのため、全体のスケジュールや進捗を確認するのに役立ちますが、タスク同士の依存関係を明確に表示するのは難しくなります。

ガントチャートは、時間軸に基づいてタスクを配置し、横バーによって開始日や完了日、期間などを表示します。この機能の設定により、タスク同士の関係を明確に表現することが難しくなり、表現したとしても理解しにくく見づらくなることが想定されます。

このようにガントチャートには、タスク同士の詳細な関係性や依存関係を表示するのには制約があります。そのため、タスク間の詳細な依存関係を明示し管理するためには、別のツールや方法を検討する必要があります。

WBSとガントチャートの違い・関係性

WBSは、プロジェクトの全体の作業項目を漏れなく洗い出した後に、より細分化してタスクや要素に分割して整理し、プロジェクトの全体像を明確にします。プロジェクト全体のタスクが階層的なツリー構造で表現され、それぞれの要素は上位の要素に関連付けられます。

ガントチャートは、縦軸にタスクの作業内容を配置し、横軸を時間軸として、タスクの開始日や終了日、進捗などを視覚的に表示します。これにより、プロジェクトのタスクのスケジュールを計画して追跡する、プロジェクト進捗管理が可能となります。

端的に違いをまとめると、WBSはプロジェクトに必要なタスクをすべて洗い出したリスト、ガントチャートはタスクのスケジュールを管理するもので、得意とする管理対象が異なります。

精度の高いガントチャートにはWBSが必要不可欠

WBSとガントチャートは、プロジェクトの管理に多く使用されています。両者は似ていますが得意とする管理項目が異なるため、タスク処理に必要なリソースの管理はWBSで行い、全体のスケジュールはガントチャートで管理するという併用がおすすめです。

ガントチャートの作成はWBSをベースに行い、WBSの細分化の精度はガントチャートに反映されます。互いに切っても切れない関係性があるため、プロジェクト進行やプロジェクトマネージャーには必須ツールとなるでしょう。

WBSとガントチャートを作成する手順

プロジェクトの効果的な管理と可視化のために、WBSとガントチャートを組わせて利用することがプロジェクト管理のために有効になります。ここからは、WBSをもとにガントチャートを作成する具体的な手順を解説します。

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WBSを作成

プロジェクトを効果的に管理し、成功に導くために、WBSとガントチャートを的確に作成することが重要です。ここからは、WBSの作成手順として以下の1から5までの項目を順番に解説します。

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タスクの洗い出し

WBSの作成手順としてまず最初に、プロジェクトの目的とスコープを明確に定義し、範囲を理解することがWBSを作成するための基盤となります。WBSの構造はツリー状になり、プロジェクト全体の上位レベルからタスク・サブタスクの下位レベルへと分解されます。

次のステップとして、プロジェクトに関連する全てのタスクを洗い出します。方法としては、プロジェクトチームなどでブレインストーミングを行い、アイデアを自由に出し合います。ここでは、何が必要かをリストアップし、漏れがないようにすることが重要です。

タスクの洗い出しは、プロジェクトの成功に向けた基盤を築く重要なステップとなります。不明確なタスクや活動を特定し漏れをなくし、計画を立て、プロジェクトを効果的に実行するためのベースとなります。

作業を分解

作業項目を分解する方法として、まずはプロジェクトが達成すべき主要な成果物を特定します。これらの成果物はWBSのトップレベルの要素となり、次に、それらを細分化して階層構造を設計します。WBSはツリー状の構造を持ち、上位から下位へと分解されます。

タスク間の依存関係を識別し、WBS内でこれらの関係を明確化します。依存関係はタスクの順序付けや優先度設定に役立ちます。また、文書化して共有が可能な形式に整理し、チャートやリスト、テーブルなどを使用して、情報を視覚化しやすくします。

作業項目の分解により、プロジェクトのスコープが明確になり、何が含まれているかが定義され、プロジェクトの方向性が確立されます。また、不明確な作業や活動を特定することにより、プロジェクトを効果的に実行するための強固な基盤となります。

タスクを処理する順序の設定

タスクを処理する順序の設定として、各タスクの依存関係や作業の順序関係を明確にします。これにより、あるタスクが別のタスクの前提条件となる場合や、後続のタスクが前のタスクに依存する場合などの状態が明確化されます。

次に、各タスクの重要度と優先度を評価しますが、この段階では、プロジェクト目標とスケジュールに影響を与えるタスクが高い優先度を持つことになります。続いて、クリティカルパスを特定します。

クリティカルパスは、プロジェクトの最も長い連続したタスクの組み合わせであり、プロジェクトの完了日に影響します。次に、人や資源、予算などのリソースを考慮し、タスク毎に割り振ります。この時、特にクリティカルパス上のタスクに重点を置くことが重要です。

タスクの構造化

タスクの構造化では階層的なアプローチが行われ、プロジェクト全体の目標や成果物がトップレベルに設定されます。それらをサブタスクに分割し、さらに細かい作業タスクに分解します。そして全体がツリー構造の階層構造になり、プロジェクト全体が可視化されます。

タスクの構造化によって、タスク間の依存関係が識別され、どのタスクが他のタスクの前提条件となるか、または他のタスクに影響を与えるかが明確になります。これにより、タスクの順序付けや優先度設定が可能になります。

タスクの構造化はプロジェクト管理の基本であり、プロジェクトの成功に向けた全体の俯瞰図となります。構造化されたタスクは、プロジェクト全体の効率性と透明性を向上させ、問題が発生した場合などの影響度を明確にして、早期解決につながります。

担当者と期日の決定

細分化したタスクごとの期日と担当者を設定します。期日の決め方はさまざまですが、最終期日までの日数から逆算するのがベターです。ただし、作業の重さや重要性などを考慮した調整が必要です。

タスクの細分化によりどのタスクにはどんなスキルが必要なのかがわかりやすくなっているため、得意分野やスキルを考慮して適材適所な担当者を配置しましょう。

WBSをもとにガントチャートを作成

WBSをもとにプロジェクトの全体的な作業項目を漏れなく洗い出します。項目を細かいタスクに分解して、各要素を明確化します。WBS構造は階層的なツリー構造で表現され、上位レベルから下位レベルへと細分化されます。

WBSの各要素としてタスクに名前や担当者、期限などの詳細情報を追加します。これにより、各タスクの内容と責任が明確になります。WBSに基づいて分割された、各タスクの開始日と終了日を決定し、タスク間の依存関係を考慮して、順序付けを行います。

各タスクを開始時期の順番で、ガントチャートの縦軸に配置していきます。横軸にタスクの開始日や完了日、期間などに従って横向きに棒グラフを記入していきます。ガントチャートをチーム内で共有し、プロジェクトの進捗を透明化して管理を明確にします。

WBSとガントチャートの作成・運用はプロジェクト管理ツールがおすすめ

WBSとガントチャートを効率的に作成するには、プロジェクト管理ツールの導入がおすすめです。プロジェクト管理ツールは、タスク間の依存関係を自動的に計算し、WBSやガントチャートに反映することができます。

これにより、タスクのスケジュールが自動的に更新され、タスクの遅延や進捗がリアルタイムで可視化されます。また、手動で計算や調整を行う必要がなくなり、プロジェクトのスケジュール管理が正確で容易になります。

プロジェクト管理ツールの導入は、プロジェクトの計画や実行、監視、および制御を効率化し、プロジェクトの成功確率を向上させます。特に大規模で複雑なプロジェクトでは、ツールの導入がおすすめです。これにより、大プロジェクトの目標達成が可能となります。

まとめ

WBSはプロジェクトを階層的に分解し、全体から詳細な要素へと細分化します。主な目的はプロジェクトのスコープ定義とプロジェクト全体の構造を整理することです。ガントチャートは、タスクの時間的な進捗を示し、タスク間の依存関係を可視化します。

WBSはプロジェクトのスコープと構造の整理と理解に焦点を当て、ガントチャートはタスクのスケジュール管理と進捗追跡に役立ちます。これらのツールはプロジェクト管理の異なる側面を支援し、プロジェクトの最終的な成功に向けて組み合わせて使用されます。

プロジェクト管理をする際には、WBSとガントチャートを組み合わせて利用し、最適なプロジェクトの進捗管理のために有効に役立てましょう。