滞留債権とは?発生する原因や影響・予防対策・回収方法を解説

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  • 滞留債権とは、未回収の債権のうち支払い期日までに入金されていない債権のこと
  • 滞留債権は、放置すると黒字倒産や社会的信用失墜などのリスクがある
  • 滞留債権の回収方法としては、話し合い、催促状、法的措置のステップがある

滞留債権とは、まだ回収していない債権のうち支払い期日までに入金が確認できなかった債権を指します。滞留債権は放置すると自社へのダメージが大きいため、管理・回収を徹底し発生を防ぐことが大切です。この記事では滞留債権の原因や影響、回収方法などを解説します。

目次

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  1. 滞留債権とは
  2. 滞留債権が発生する原因
  3. 滞留債権が及ぼす影響・問題点
  4. 滞留債権を発生させないための対策
  5. 滞留債権が発生した場合の回収方法
  6. 未回収の債権を「貸倒損失」に計上する条件
  7. 債権管理システムで債権の管理を効率化
  8. まとめ

滞留債権とは

滞留債権とは、支払いの期日を超過しても未払い状態が続いている債権のことです。この場合の債権とは、貸付金や売掛金をはじめとする金銭債権を指します。

また、滞留債権はあくまで将来的な回収が見込まれる債権のことを指し、取引先の倒産などで回収が不可能となった債権は滞留債権には含まれません。

売掛が発生してから支払い期日が到来するまでの間の債権は未収入金と呼ばれますが、支払い期日を超過すると滞留債権という名称に変わります。また、発生した滞留債権は、支払いが滞留されている期間によっても分類されます。

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長期滞留債権・長期未収入金との違い

滞留債権と似た言葉に、長期滞留債権と長期未収入金があります。これらは支払い期日を超過した期間によって使い分けられます。長期滞留債権とは支払い期日の6ヶ月後〜1年のものを指し、長期未収入金とは支払い期日の1年後以降のものを指します。

支払予定日を過ぎた期間
滞留債権支払い期日〜6ヶ月後
長期滞留債権支払い期日の6ヶ月後〜1年
長期未収入金支払い期日の1年後〜

不良債権との違い

滞留債権と不良債権はどちらも支払い期日を超過した未払金です。このうち、回収見込みがあるものが滞留債権と呼ばれるのに対し、回収の見込みがないものは不良債権と呼ばれます。

滞留債権は、支払いを遅延している取引先に対して督促などの働きかけを行うことで回収できる可能性があります。一方、不良債権は取引先の倒産などで回収がほぼ不可能な状態のものを指します。

債権の滞納から短期間で不良債権化するケースは稀であり、多くの場合は滞留債権の期間を経て不良債権に変化します。そのため、滞留債権を長期間放置しないことが不良債権化の防止に繋がります。

滞留債権が発生する原因

滞留債権の発生原因は、大きく2つに分類できます。取引先に原因があるケースに加え、自社が原因で滞留債権が発生するケースもあります。ここでは、これら2つのケースについて詳しく解説していきます。

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取引先に原因があるケース

取引先の原因として代表的なものが、経営悪化による資金面での問題です。資金繰りが悪化して売掛金の支払いが滞ると、支払い期日を超過しても入金が行われない場合があります。

また、請求書の確認漏れや支払いミスなどのヒューマンエラーが原因となる場合もあります。手作業で経理処理を行なっている企業では、書類の紛失や支払い期日などの誤認に加え、入金忘れなどが発生する可能性があります。

これらの原因のうち、後者であれば督促の連絡によって改善されることが多いです。しかし、経営悪化が原因で滞留債権が発生している場合は、不良債権に移行する可能性が高くなるため、早めの対処が望ましいでしょう。

自社に原因があるケース

自社に原因があるケースでは請求書の発行漏れや送付漏れなどが挙げられます。また、支払い期日の記載ミスによる認識の相違や、入金処理の誤りなども原因の一つです。

自社側の原因の多くが経理処理上の人的ミスによるものであり、これによって取引先との関係悪化を招いてしまう場合もあります。自社が原因で滞留債権が発生することのないよう、正確な処理を行いましょう。

滞留債権が及ぼす影響・問題点

滞留債権は、自社にとってさまざまな悪影響を及ぼします。ここでは、滞留債権が及ぼす影響や問題点について取り上げ、詳しく解説していきます。

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消滅時効制度による回収不能

滞留債権の消滅時効制度とは、一定期間を超過した未回収債権が消滅するという仕組みです。時効の期間は債務が発生した時期や内容などによって異なりますが、2020年4月以降に発生した売掛金の場合は5年と定められています。

消滅時効制度は民法によって定められており、一旦消滅時効が成立してしまうと後から回収を行うことは非常に困難になります。入金の督促などによって時効を延長することができるため、回収不能になる前に対策を行いましょう。

黒字倒産

黒字倒産とは、帳簿上は黒字経営となっている企業の資金繰りが悪化し、支払不能により倒産に至ってしまう状態のことです。黒字倒産はキャッシュフローの悪化によって発生するため、滞留債権による入金の遅延は大きな原因の一つです。

売上が発生してから売掛金が支払われるまでの期間が長いと、支払いにかかる費用が不足してしまう場合があります。そのため、多額の滞留債権を抱えている企業は黒字倒産のリスクが高まっていると言えます。

社会的信用の失墜

滞留債権は、滞留している側の企業だけでなく、滞留債権を回収できない企業側の社会的信用も低下させます。債権回収を履行する能力が低いと見なされるほか、取引先の質が悪い企業といった印象を与えるためです。

売掛金に対する滞留債権の割合が高いと、資金繰りの状態が悪いとの判断に繋がり、企業の評価が下がります。そのため、社会的信用が必要となる融資の借り入れなどの場面では不利な要素となります。

滞留債権を発生させないための対策

滞留債権は企業にさまざまなデメリットをもたらします。滞留債権を発生させないためには、定期的な回収状況の確認や与信管理の徹底など、債権管理をしっかり行うことが有効です。ここでは、これらの対策方法について解説します。

債権管理とは?債権管理業務の仕事内容や流れ・ポイントを解説

債権管理とは、企業の売掛金や貸付金などの債権を管理する業務のことです。債権を漏れなく把握・回収することは、企業の健全な資金繰りに繋がります。この記事では債権管理の具体的な仕事内容や業務の流れ、ポイントなどをわかりやすく解説します。

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定期的に回収状況を確認する

滞留債権の発生を未然に防止するには、取引先ごとに売掛金の金額・支払い期日・回収状況などの情報を定期的に確認することが重要です。通常と異なるタイミングで行われる入金や、売掛金額の増大などを見逃さないようにしましょう。

これらの作業は正確に行う必要があるため、必要に応じてダブルチェックなどを取り入れ、丁寧な確認を行いましょう。これによって、自社側のミスの早期発見や取引先のミスによる単純な支払い忘れによる滞留債権の多くを解消できます。

与信管理を徹底する

与信管理とは、取引先から売掛金を回収することができなくなるリスクを見極め、適切な対策をとることです。取引上のリスクが高い企業と取引を行うことは自社に不利益をもたらす可能性があるため、取引を開始する際には与信管理を行いましょう。

与信管理では、取引先の経営状況や社会的な信頼性などを総合的に加味します。これによって取引先の信用の度合いを判断し、取引を行う金額の見直しを行います。

また、新規の取引を開始するときだけでなく、取引中にも定期的に実施することが望ましいです。与信の結果に応じて取引金額の調整を行ったり、場合によっては取引を解消したりするなどの対策を取ることができます。

売掛金の回収を怠らない

支払い期日を超過した売掛金は放置せず、迅速な回収作業を行いましょう。売掛金が発生してから支払いが行われるまでの期間は、取引先にサービスや商品を無償で提供している状態です。そのため、期間が長くなればなるほどキャッシュフローは悪化します。

入金が遅れたことを確認したら、関連部署の担当者と速やかに連携をとり、催促の連絡を入れることが重要です。その際、自社側のミスがないことを十分に確認しておきましょう。

取引先に経営難による資金繰りの悪化などが無く、故意に滞納されたものでなければ多くの場合速やかな入金が行われます。回収作業を怠らず、滞留債権の早期解消に繋げましょう。

滞留債権が発生した場合の回収方法

滞留債権が発生した場合、さまざまな回収方法があります。まずは取引先との話し合いから開始し、状況に応じて書面の発送を行いましょう。ここでは、話し合いから法的手段の検討に至るまでの回収方法について解説します。

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取引先と話し合う

取引先との関係性にもよりますが、滞留債権の発生が一時的なものであることを考慮し、まずは話し合いから始めることが望ましいと言えます。支払いの遅延にはさまざまな理由が考えられるため、先方の事情をヒアリングすることで解決に繋がる場合が多くあります。

例えば、経理作業を人間が行っている以上、常にヒューマンエラーが発生する可能性があります。話し合いによって誤認や誤解を解消できれば、取引先との関係を悪化させずに滞留債権を回収しやすくなります。

また、話し合いによって明確な問題や原因が判明しない場合や、迅速な支払いが行われない場合は先方の経営状態が悪化しているケースもあります。このような可能性を探るためにも、まずは話し合いの場を設けてみるのがおすすめです。

催促状・督促状を送る

話し合いによる解決が難しい場合や、先方との連絡が取れない場合には催促状や督促状の送付が効果的です。催促状と督促状は意味合いや強制力の度合いが異なり、状況に応じて使い分ける必要があります。

以下は、催促状と督促状の違いをまとめたものです。

送付物内容
催促状支払いを求める意向を示す
督促状支払いを強く要求し、法的手段の前段階とする

内容証明郵便を送る

内容証明郵便とは、誰が・いつ・どのような内容を・誰宛に送ったかが記録されるサービスで、差し出しや受け取りの記録が必要な法的書類などに多く用いられます。

話し合いによって解決に至らなかった場合、法的な手段を視野に入れ、内容証明郵便によるやりとりを開始します。内容証明郵便による書面の送付は受け取り側に心理的な負荷を与える場合が多く、自社の姿勢を示す効果も得られます。

また、滞留債権の支払いを求める書面を内容証明郵便で送付することによって、時効の消滅を中断させる効果があります。

法的な手段を検討する

話し合いや書面の送付を経てもなお支払いが行われない場合は、法的な手段を検討しましょう。法的な手段により解決を試みた場合、取引先との関係は修復が難しくなることが多くあります。そのため、あくまで最終的な手段であると認識しておきましょう。

弁護士への依頼によって訴訟を起こし、差し押さえで回収する方法は多くの費用と時間がかかり、自社にとってもダメージが大きいと言えます。まずは、公正証書の作成や民事調停などの手段を検討し、金額に応じて少額訴訟などを検討することがおすすめです。

未回収の債権を「貸倒損失」に計上する条件

債権の回収ができない場合、勘定科目を「貸倒損失」に計上することで税金の支払いを減らせる場合があります。ここでは、未回収債権を貸倒損失に計上するための条件を3点取り上げ、それぞれについて解説します。

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債権の切り捨てが認められた場合

債務者の破綻や長期的な滞納が続いた場合、債務の切り捨てが認められる場合があります。以下の条件に該当するものは債権が切り捨てられ、損金処理をせず貸倒損失に計上することができます。

  1. 会社更生法や民事再生法などの法的な手続きによって切り捨てられた金額の全額
  2. 債権者の協議に基づく合理的な基準によって切り捨てられた金額の全額
  3. 債務超過の長期化により、書面によって債務の免除を行った場合(書面に記載された免除額のみ)

債権の全額が回収不能になった場合

債務者の能力や状況を客観的に判断し、債権の全額が回収不能であると判断された場合も貸倒損失への計上が可能です。ただし、債権が一部でも回収可能である場合は認められないため、担保物なども全て処分しておく必要があります。

また、債務者が確かに回収不能であるという状態を証明するための資料は債権者側が提示しなければなりません。

取引停止後に一定期間売掛金が支払われない場合

取引停止から1年を経過しても売掛金が支払われない場合も、貸倒損失に計上することができます。この場合、対象となるのは受取手形や売掛金などの債権に限られます。

また、1年以上が経過した売掛債権以外に、売掛金額が少額で取り立ての費用が売掛金額を上回るような場合も損金計上が可能です。

債権管理システムで債権の管理を効率化

債権管理システムとは、債権の管理にかかるさまざまな業務を効率化してくれるツールです。債権管理システムによって、債権情報の把握・入金管理・消込作業に加え、債権回収に必要な書類の作成なども行えます。

また、債権に関わる情報の一元化によって支払い状況の把握が容易になり、確認にかかるミスの削減と作業時間の短縮が見込めます。債権管理には正確な状況把握とそれに応じた対応が不可欠であり、システム導入による効率化が望ましいと言えます。

債権管理システムとは?主な機能や選ぶ際の比較ポイントも解説

債権管理システムとは、債権情報や入金情報などを一元管理することで債権を適切に把握し、管理を効率化するシステムです。この記事では、債権管理システムの主なタイプや機能、導入のメリット・デメリットや、比較すべきポイントなどについてわかりやすく解説します。

債権管理システムを選ぶポイント

債権管理システムを導入する場合、どのような基準で選べば良いのでしょうか。ここでは、特に重要なポイントを3つ取り上げます。

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導入にどれくらいかかるか

製品によっては導入するのに数カ月かかる場合があります。そのため、システムによる管理に移行したい時期を踏まえて導入期間を考慮するようにしましょう。

また、債権管理システムを導入する際、社員へのレクチャーが必要になります。システムに慣れる時間も必要になるので、この点も考慮しておく必要があります。

どのような付随機能があるか

債権管理システムには、単に債権管理を行うための機能のほかに、さまざまな便利な機能が付随している場合もあります。例えば、督促管理機能、データ分析・レポート機能などです。自社のニーズに合わせてこうした付随機能も確認しておく必要があります。

製品によっては請求書発行機能や入金管理機能が搭載されている場合もあるため、債権管理以外も同時にシステム化したいと考えている場合は要チェックです。

システム利用者を想定する

債権管理システムによっては設定方法や使い勝手が異なるため、利用者のスキルを想定する必要があります。利用者の簿記や経理の知識レベルに合わせて、細かい設定ができるもの、簡単な操作で使えるものなど、基準を決めておきましょう。

既存システムと連携できるか

債権管理システムと既存システムを連携することで、仕訳データを会計管理システムに出力できたり、入金消込を自動化できたりします。データの正確性が向上したり、管理業務をより効率化できるメリットがあります。

システム同士の連携可否や連携方法はそれぞれ異なりますので、選定時に既存システムとの互換性があるか確認しておきましょう。

おすすめの債権管理システム3選|選び方や導入時の注意点を解説

債権管理システムとは、顧客や取引先の債権管理・回収業務を効率化できるシステムのことを言います。債権管理システムごとに効率化できる範囲が異なり、自社に適したシステム選びが難しいのがネックです。本記事では、おすすめの債権管理システムや選び方を解説しています。

まとめ

支払い期日を超過した売掛金は滞留債権と呼ばれ、期間に応じて長期滞留債権や長期未収入金へと変化します。滞留期間が長期になるほど回収が難しくなる傾向にあり、1年を経過したものは不良債権と呼ばれます。

滞留債権の放置は自社のキャッシュフローの悪化を招き、黒字倒産の原因となります。また、時効制度により回収が不能になるリスクや、社会的な信用低下などのさまざまなダメージをもたらします。

滞留債権の回収には、話し合いや書面の送付など多くの手間がかかるため、法的な手段に至る前に速やかな回収を行うことが望ましいです。債権管理システムの導入も検討しながら、スムーズで正確な債権回収と滞留債権の発生防止を目指しましょう。

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