管理会計と財務会計の違いとは?目的や効率的に行う方法も解説

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  • 管理会計とは、経営者が経営を管理する上で必要な情報をまとめた会計のことである
  • 財務会計とは、投資家や債権者などの外部の人々に向けた会計処理方法のことである
  • 管理会計と財務会計は、利用者や目的、集計単位などさまざまな違いがある

管理会計と財務会計は、どちらも企業の会計を行う上で重要な役割を担っています。しかし、言葉が似ていることもあり、どちらがどう違うのか分からない方もいるでしょう。本記事では、管理会計と財務会計の違いや行う目的、システムを利用して効率的に行う方法を解説しています。

目次

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  1. 管理会計とは
  2. 財務会計とは
  3. 管理会計と財務会計の違い
  4. 管理会計・財務会計を効率的に行う方法
  5. まとめ

管理会計とは

管理会計とは、簡単に言うと文字通り、企業が社内で管理を行うための会計を指します。経営者・管理者は、原則として、管理会計情報をもとに、経営の意思決定を行ったり、原価低減や業績改善のための施策を講じたりします。

管理会計における会計情報は、あくまでも社内で任意に使用するものであるため、いかにして管理会計における会計情報を作成するかは会社によって異なります

適切な経営の意思決定を行ったり、業績評価を正しく行って施策を講じたりができるように、自社に最適な管理会計制度の構築を目指します。

管理会計を行う目的

管理会計は、経営者・管理者などが自社の経営状況を把握し、経営の意志決定に活用するために行う社内への情報提供が目的です。管理会計は、それぞれの企業が任意に行うもので、社外への公表もしないため、法律による規制などはありません。

また、管理会計において、経営状況を把握するための不可欠な情報については、会社ごとの独自ルールによって運用されています。例えば、経営戦略や長期的な経営計画策定のための抽象的情報や、部門ごとの予算・目標といった具体的情報などがあります。

管理会計を行う方法

管理会計は、主に予算管理・原価管理の2つの方法があります。このタイトルでは、2つの管理方法について詳しく解説します。

予算管理

予算管理は、次年度または中長期的(3〜5年程度)な期間で予算を管理しつつ経営に活用するための管理方法を指します。

企業における予算とは、売上目標や利益目標のことです。予算は、新年度のスタート前や新たな中期経営計画のスタート前に立てられるのが一般的です。予算を月単位や四半期における実績と比較することで、予算に対する達成度を把握します。

例えば、4〜6月期の売上予算が5,000万円に対して、同期間の売上実績が4,000万円であれば8割達成となり、予算に対してどれ位達成できていないかが可視化できます。

原価管理

収益とコストから、現状でどれほどの利益が得られているかを確認することは経営において不可欠であり、確認するための一つの方法が原価管理です。販売商品・サービスにどのくらいの原価がかかっているのかを管理し、価格設定や在庫調整を行います。

原価管理を行う際に、製造業ならば原材料・部品コスト、販売業ならば仕入単価などを確認しますが、同時に人件費や設備費なども加算し、正しい原価を算出しましょう。

原価の目標額と実際の発生額を比較分析し、無駄な部分があれば改善によるコスト削減で、利益を出す体制を構築します。

財務会計とは

財務会計は、企業の財務情報を外部に公表するための会計を指します。資産・資金の財務状況や、どの位の利益を出しているかを表した経営成績などを開示します。

ここでの外部とは、株式を保有する投資家や主に金融機関などの債権者、税金を管理する税務署などの利害関係者です。従業員も利害関係者と言えますが、この場合は社外の関係者だと捉えれば理解しやすいでしょう。

利害関係者への財務情報の公表により、自社への投資を促進したり融資を受けられたりなどのメリットがあります。財務会計は法律で義務づけられているため、すべての企業が実施する必要があります。

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財務会計を行う目的

企業が財務会計を行うのは、財務諸表(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書など)を用いて、企業外部の利害関係者(ステークホルダー)に対し、企業の財政状況と経営業績を公開するのが目的です。

ステークホルダーとは、株主・取引先・仕入先・主に金融機関などの債権者など、外部の利害関係者を指します。財務会計の実施で、外部ステークホルダーに自社の経営状況を通知し、外部ステークホルダーはそれをもとに投資や取引の意思決定を実行します。

財務会計の機能

財務会計の主な機能として、情報提供機能と利害調整機能の2つがそれに当てはまります。このタイトルで2つの機能の概要と具体的な例を解説します。

情報提供機能

情報提供機能とは、外部の利害関係者に対し、投資や融資の判断材料である情報を提供することです。何も情報が公開されていない企業に投資する投資家は存在しないでしょう。

投資家が企業に投資するかどうかを検討するとき、意思決定の大きな判断材料が、財務諸表などの公開情報です。銀行などの金融機関が企業に融資する場合も判断材料として扱われます。

金融機関は、企業の財務諸表をもとにして、企業の財産・返済能力・収益力などを認識します。情報開示がなければ、その企業の資産・負債・収益の状況が把握できないため、金融機関は融資可否の判断ができません。

利害調整機能

利害調整機能は、企業外部の利害を調整する機能です。利害調整の具体例として、株主と債権者の利害関係が該当します。まず、株主は企業から少しでも多くの配当金を受け取りたいと考えるのが通例です。

一方、企業の仕入れ先や銀行は、安定した取引や返済のためにできるだけ資金の貯蓄をしてほしいと考えるかもしれません。企業外部の利害関係者は、財務管理によって開示された財務諸表などを元に資金の流れを把握します。

株主はどの程度の配当金が受け取れるか、債権者は企業がどういったことに資金を投資しているかが把握できます。これにより、企業外部の利害関係者は、それぞれの予測に基づく利害調整が可能です。

財務会計のルール

財務会計を行う際は、企業が所在する国や地域で定められたルールを守る必要があります。ここでは、財務会計のルールについて解説します。

財務会計は会計基準に基づいて行う

会計基準とは、財務会計において財務諸表を作成する際のルールのことです。株主や債権者など企業の利害関係者は、開示された財務諸表などの情報により利害調整や融資の判断を行います。

財務諸表のルールが定まっていなければ、利害関係者が過去や他企業の業績と比較できず、判断ミスをしてしまうことにも繋がるため、企業は会計基準というルールに基づいて財務諸表を作成しなければなりません

なお、会計基準は国や地域ごとの慣習や政治経済を反映するため、国や地域ごとに詳細が異なります。日本の場合、主に企業会計基準委員会という組織が作成・改善を行い、公表しています。

参考:現在適用されている会計基準等|企業会計基準委員会

会計基準は世界で統一されつつある

前述したように、会計基準は国や地域により詳細が異なりますが、経済のグローバル化に伴い、会計基準を世界的に統一する流れが広まっています。それを受けて国際版の会計基準として定められているのが、「IFRS(国際財務報告基準)」です。

日本ではIFRSを全面的に採用はしていませんが、会計基準の内容をIFRSに近づける取り組みが行われています。また、グローバル展開する企業の中には、任意でIFRSを採用している企業もあります。

参考:IFRS会計分類法2024|IFRS

参考:IFRSの基礎知識|日本公認会計士協会

管理会計と財務会計の違い

管理会計というのは、経営者や責任者が、経営の判断材料としての活用を目的とした会計のことです。財務会計とは異なり、あくまで内部資料として活用されるため、実施義務はありません。

一方で、財務会計は、企業の外部利害関係者への情報開示を目的とした会計を指します。利害関係者に対する自社の経営成績・財務状況の情報開示は、義務であり責任でもあります。そのため、財務会計は法律や規則などで規定された会計基準で実施されます。

わかりやすくまとめると、以下のような違いがあります。

管理会計財務会計
目的経営者や責任者が経営の判断材料として活用するため企業の外部利害関係者に経営成績を開示するため
利用対象企業内部企業外部
活用する会計情報の種類区分別の会計情報など企業全体の会計情報
対象期間自由に決められる一般的には1年。または半年・四半期など定められた会計期間
方法会社ごとに必要なデータを抽出する法に基づいて決まった形式でまとめる

管理会計・財務会計を効率的に行う方法

管理会計システムをうまく活用すれば、数値を管理するための業務に要する時間を削減し、本来の目的である自社の経営戦略の検討に時間を費やすことができます。

また、財務会計システムの導入で、データ収集から財務諸表の作成まで、ほとんどの業務の自動化ができるため、財務会計業務の大幅な効率化が可能です。

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管理会計・財務会計を効率的に行う方法

  1. 管理会計システム
  2. 財務会計システム

管理会計システム

管理会計システムとは、企業内の予算管理や原価管理を行うための会計システムを指します。自社の売上や経費などのデータを収集し、組織全体の収支を分析するための集計・グラフ作成が可能です。

部門ごとの詳細な予算管理ができたり、今後の数値のシミュレーションができたりする機能もあります。

管理会計システムの活用で、Excelへの入力・集計・分析に要する時間が短縮され、業務の効率化が可能です。また、日ごとの変化が即座にデータ化されるため、瞬間的な経営状況の把握ができて、的確な経営戦略の策定・判断に効果的です。

財務会計システム

財務会計システムは、企業の経営状況などを開示するために作成する財務諸表の作成などを担うシステムを指します。企業の経営活動において、自社の経営情報を外部の利害関係者に開示することは、取引を行っていくうえで重要です。

財務会計システムには、定常的に行う仕訳入力のサポートや決算書の自動作成、帳票出力などの機能が搭載されています。財務会計業務の内容を幅広く備えているため、面倒になりがちな会計業務の効率化につながります

まとめ

管理会計と財務会計は、その目的に違いがあります。管理会計は、経営者などが管理の実行にあたり、有益な情報を開示するためのものです。経営陣向けの会計であるため、すべての会社に管理会計を行う義務はなく、各会社が経営の目的に合わせた導入が可能です。

一方で、財務会計は、社外の利害関係者向けに情報を開示するためのものです。株主・投資家・銀行などの債権者が、会社の経営状況を的確に把握できるようにするために行われます。法律で規定されている財務会計については、すべての会社が対応する義務があります。

このように、管理会計と財務会計は同じ会計といった一つの範疇ですが、目的などが大きく異なります。違いに注視するとそれぞれの特徴や意義も理解しやすいでしょう。

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