大規模プロジェクトの管理方法|失敗例や成功のポイントも解説
Check!
- 大規模プロジェクトは携わる人数が多く期間も長いため、管理が複雑になりがちである
- 大規模プロジェクトを管理する際は、PMやPMOの設置が必須である
- 大規模プロジェクトを成功させるには、スコープの明確化や管理の標準化が重要
企業のプロジェクトには、100名以上が携わるような大規模なものもあります。大規模プロジェクトの管理は複雑なため困難な部分も多く、成功へ導くにはノウハウが必要です。この記事では、大規模プロジェクトの管理方法を、失敗例や成功のためのポイントなどを交えて解説します。
おすすめ記事
大規模プロジェクトとは
大規模プロジェクトとは、プロジェクトの達成までにかかる所要時間が長く、数多くの利害関係者が関与し、費用が莫大なプロジェクトのことです。橋やトンネルの建設、都市の再開発、QR決済システム開発などが、大規模プロジェクトに該当します。
しかし、実際のところ、大規模プロジェクトには明確な定義はありません。大規模プロジェクトという言葉は一般的に、「所要期間が1年以上」「100名以上の人員が関わる」「1000万円以上の費用を必要とする」などのプロジェクトを指して使われています。
プロジェクトは、大きなものだけではありません。イベントの開催やチーム内の業務改善など規模の小さなプロジェクトもあります。このような予算も少なく、関わる人員も少ない規模の小さなプロジェクトは、小規模プロジェクトと呼びます。
項目 | 目安 |
---|---|
携わる人数 | 100名以上 |
かかる費用の金額 | 1000万円以上 |
プロジェクトの期間 | 1年以上 |
大規模プロジェクトの問題点・失敗例
大規模プロジェクトは、利害関係者が数多く関わり、所要期間が長く、工数も多いためプロジェクト達成までにはさまざまな問題や失敗が起こりえます。ここからは、大規模プロジェクトで発生する問題や起こりがちな失敗例について解説します。
\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/
大規模プロジェクトの問題点・失敗例
コミュニケーションが滞る
大規模プロジェクトは、外部と協働で業務を進めていくことが多いため、コミュニケーションが滞ることも多いです。コミュニケーションが上手く取れていないと、業務がストップしてしまうことも多々あります。
意思疎通が円滑でないと、あるタスクを進める際に、どの部署の誰に許可を取ればいいのかわからず業務を止めざるを得ないといった事態も起こります。関係者に送ったメールの返信待ちで、1日潰れてしまうという事態も否定できません。
プロジェクト管理が困難
大規模プロジェクトは、プロジェクト達成までに1年以上の所要期間を要し、かかる費用も膨大です。取引先や行政機関、金融機関、各種団体などの外部と協働でプロジェクトを進めるため、業務に携わる人員も多く複雑な要素を含んでいます。
このため、大規模プロジェクトでは、プロジェクトをスムーズに管理できないことがあります。プロジェクトを円滑に進めるため、各業務の知識に精通した人員の確保とともに、プロジェクト全体を管理するスキルを持った人材が必要です。
業務が標準化されていない
大規模プロジェクトでは、業務を標準化しないままプロジェクトを進めてしまうという失敗もあります。大規模プロジェクトは、多くの利害関係者が業務に関わるため、業務の標準化がなされていないと品質の低下や納期の遅延を招く場合が多いです。
業務が標準化されていないと、各タスクにおいて個人の判断で業務を行うことになり、このため想定していた品質とはかけ離れた成果物が出来上がるといったことが起こります。
大規模プロジェクトのように人員の構成が複雑な場合は、最低限の品質を確保するため、各チームリーダーから意見を集め、業務の標準化を行う必要があります。
スケジュール管理ができていない
大規模プロジェクトを進める際に、適切なスケジュール管理は非常に重要です。多くの人員が関わる大規模プロジェクトは、仕様やスケジュールの変更の際、情報共有に時間もかかります。
さまざまな要因の影響を受けるため、大規模プロジェクトのスケジュール管理が適切でない場合、納期の遅れが起こる可能性が高いです。大規模プロジェクトには、補修・改修など業務を進めつつ日程を調整するケースや天候などの外的要因に左右されるケースもあります。
納期に遅延しないよう、スケジュール管理を適切に行い、日程の定期的な見直しと情報共有の迅速化が必要です。また、プロジェクトのスケジュールに余裕を持たせておくことも大切になります。
作業工数を把握できていない
大規模プロジェクトを進める際に、作業工数が把握できていないため、プロジェクトが失敗してしまったというケースもあります。作業工数の把握が甘いと、一つひとつのタスクに必要な作業量が把握できません。
このため、一つの業務に対する作業量が少なくなり、スケジュールが遅れ、品質の低下が起こります。プロジェクトの遅延や品質低下を起こさないように、工数とタスク達成にかかる所要時間、業務に携わる人員の処理能力を事前に確認しましょう。
要件が曖昧になっている
プロジェクトは、要件定義・詳細設計・構築といった流れで進めていくため、各プロセスの要件が明確に定まっていないと、全体の方向性が定まらず、失敗する可能性が高まります。
特に、大規模プロジェクトには多くの利害関係者が関わるため、途中で要件を変更すると混乱を招いて、余分な時間とコストがかかる点も問題です。そのため、事前に要件を明確に定めておくことが重要になります。
大規模プロジェクトの管理方法
近年、大規模プロジェクトを進める際、プロジェクト全体を管理する役職とプロジェクトの管理をサポートをする部署が設置されるようになっています。ここからは、大規模プロジェクトの管理方法を解説します。
\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/
大規模プロジェクトの管理方法
PM(プロジェクトマネージャー)を設置する
大規模プロジェクトの管理には、PM(プロダクトマネージャー)の設置が必須と言えます。大規模プロジェクトは完成までにかかる所要期間が長く、工数も関わる人も多いため、プロジェクトを俯瞰的に見て適切に管理する人員が必要です。
この大規模プロジェクトを管理する役目をPMに与え、プロジェクトの全体をマネージメントを任せます。PMは、プロジェクトの進捗状況を把握し、標準化された方法で品質の管理を行い、すべての意思決定に責任を持ちます。
問題のあるメンバーには指導も行い、顧客とのコミュニケーションもPMの役目です。PMはある工程で問題が起こった場合、その部署の人員とともに解決にも動きます。PMは関係各所と調整を行う役職でもあるため、専門的な知識とともに経験や人望も求められます。
PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)を設置する
大規模プロジェクトの管理には、PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)の設置が必須です。PMOとは、PMがスムーズに業務を進められるようにサポートを行う常設部署のことを言います。
PMはプロジェクトの総責任者で、重要事項を決定する役割を担っています。しかし、大規模プロジェクトは、人員が数多く関わるため、すべてに目が行き届かず、PM1人ではプロジェクトの管理は困難です。
このため、大規模プロジェクトの管理には、PMOの設置が非常に重要です。PMOはPMが正しく意思決定できるようにサポートを行い、利害関係者との調整、人材や資金の管理などプロジェクトが円滑に進行するように組織横断的にPMを支援します。
大規模プロジェクトの進行方法
大規模なプロジェクトを進行する際は、まず、目標や要件を明確に定義して全体に周知することが必要です。これにより、プロジェクト進行中に方向性が曖昧になったり計画が停滞したりするリスクを防げます。
次に、タスクを徹底的に洗い出して可視化します。この時に、タスクごとの作業内容や工数、優先順位を定めておくことで、スムーズな進行が可能です。
その後、実際にプロジェクトを進行していきます。プロジェクトが予定通りに進行しているか、定期的に進捗状況を確認しましょう。プロジェクト管理ツールなどのITツールを活用するのも効果的です。
最後に、プロジェクトに区切りがついたら全体の振り返りを行い、今後に活かせるノウハウや改善点を見つけて共有しましょう。大規模なプロジェクトはリスクも伴いますが得られるメリットも大きいので、ぜひそのメリットを次回に繋げてください。
- 目標や要件を明確にして計画を立てる
- タスクを洗い出して可視化する
- 進捗状況を確認しながら進行する
- プロジェクトを振り返り改善点を共有する
大規模プロジェクトを成功させるためのポイント
管理が難しい、コミュニケーションが円滑にいかないなど、大規模プロジェクトには問題点もありますが、適切に管理することでプロジェクトは成功に導けます。ここからは。プロジェクトを成功に導くためのポイントを解説します。
\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/
大規模プロジェクトを成功させるためのポイント
プロジェクトのスコープを明確にする
大規模プロジェクトを成功に導くためには、プロジェクトのスコープを明確にすることが重要です。スコープとはタスク、リソース、スケジュール、目標などプロジェクトを達成するために必要なすべての要素のことを言います。
プロジェクト達成のために、必要な要素をスコープとして明確に定義しておくと、大規模プロジェクトを成功に導ける可能性は高まるでしょう。大規模プロジェクト進行中にスコープで定義した予算や期間、タスクと実際の数値を定期的に照らし合わせて、修正を図れます。
プロジェクトの中間で進捗を把握する
プロジェクトの中間で進捗状況を把握することも、大規模プロジェクトを成功に導くための重要なポイントです。プロジェクトの進行中に複数ある工程の進捗状況を確認することで、各工程の問題点を洗い出し、改善を図れます。
この結果、プロジェクトの品質や納期を維持しながら、プロジェクトの完了へと舵を取れます。大規模プロジェクトを成功に導けるよう、複数ある工程が定めた目標の通り行われているか定期的に評価しつつ、プロジェクトを進めるといいでしょう。
積極的なコミュニケーションを図る
大規模プロジェクトを成功に導くために、リーダーがメンバーと積極的にコミュニケーションを取ることも大切です。リーダーがメンバーと積極的に関わり、意思疎通が円滑に行われると、目標に向かっての共通認識が持て、全員が目標に向かって努力する体制を作れます。
大規模プロジェクトでは、リーダーとメンバー、メンバー間のコミュニケーションを円滑にするために、コミュニケーションツールも活用されるようになりました。情報共有には、メッセージアプリやグループウェアなどが使用されています。
PMBOKに基づいて管理を標準化する
PMBOKに基づき、プロジェクト管理を標準化して進めると、大規模プロジェクトを成功に導ける可能性が高まります。PMBOK(Project Management Body of Knowledge)とは、アメリカで考案されたプロジェクト管理基準のことです。
PMBOKでは、プロジェクト管理が「コスト管理」「スコープ管理」などの10の知識と「計画」「実行」などの5つのプロセスとに分けられています。そして、各プロセスで何を管理すべきか体系化されまとめられています。
プロジェクトの管理の手法に定まったものはありませんが、大規模プロジェクトの品質・費用・納期を効率的に管理するために、PMBOKの体系化された知識とノウハウは大いに役立てられるでしょう。
プロジェクト管理ツールを活用する
大規模プロジェクトを成功させるために、プロジェクト管理ツールを利用する方法もあります。プロジェクト管理ツールは、仕事の管理のために開発されたアプリケーションで、複雑かつ工数も多い大規模なプロジェクトの管理に非常に役立つツールです。
プロジェクト管理ツールには、タスクの進捗状況を管理できる機能やスケジュールと工数の関係を把握できる工数管理機能が実装されています。また、チームのメンバーのコミュニケーションを円滑にする情報共有機能も搭載されています。
さらに、グラフで進捗状況を視覚化できるガントチャートも便利です。ガントチャートでプロジェクトの現状を見ると、進捗状況の把握も容易になり、各工程の優先度も明らかにできます。
プロジェクト管理ツールを導入することで、大規模プロジェクトの工数や進捗状況を効率的に管理できるでしょう。現在地を把握しづらい大規模プロジェクトでの現状の確認、抜け漏れの防止、問題への素早い対処も可能にする便利なツールです。
\プロジェクト管理ツールについてはこちらで解説/
プロジェクト管理ツールとは?メリットやデメリットについても解説
プロジェクト管理ツールとは、スケジュールやタスク管理といった、プロジェクトの進行を効率化してくれるツールです。本記事では、プロジェクト管理ツールについて、機能やメリット・デメリット、導入する際の注意点などを詳しく解説しています。
まとめ
大規模プロジェクトとは所要期間が長く、費用も大きく、関わる人員が多いプロジェクトのことです。明確な定義はありませんが、一般的に、「所要期間1年以上」「人員100名以上」「費用1000万円以上」を費やすものを大規模プロジェクトと呼んでいます。
大規模プロジェクトは期間が長く、費用も膨大、関わる人員も多いため、プロジェクトの管理が困難であるという難点を持っています。業務の標準化やスケジュール管理、作業工数の把握など、疎かにできない要素も多いです。
これらのプロジェクト管理が適切に行われていないと、品質の低下や納期の遅れを招きます。そのため、専門知識を持ち、マネジメント能力に長けたPM(プロジェクトマネージャー)を設置し、大規模プロジェクト全体の管理を任せるケースが多いです。
その際には、PMをサポートするため組織横断的に動けるPMOも創設します。大規模プロジェクトを成功に導くためには、スコープを明確にする、プロジェクトの中間で進捗状況を把握する、PMBOKに基づきプロジェクトを進めるなどの対策も必要です。
大規模プロジェクトのマネジメントに、プロジェクト管理ツールを導入するのも良い方法です。プロジェクト管理ツールにはタスクの進捗管理、情報共有、工数管理などの機能が実装されており、効率的なプロジェクトの効率的な管理に役立ちます。
この記事に興味を持った方におすすめ