AI契約書レビューは非弁行為か?|論点とガイドラインを解説

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  • AI契約書レビューは、AI技術を用いて契約書修正案などを提示してくれるサービスである
  • AI契約書レビューは、弁護士法72条に違反する可能性があるとして論議されていた
  • ガイドラインの公表により、法的に争いがない取引に関する契約は適法とされている

AI契約書レビューは、契約書の文書データをAIが自動でチェックする便利なサービスですが、非弁行為に当たるのではないかという議論もあり、法務省よりガイドラインが公表されました。本記事では、非弁行為となるのかの論点と、ガイドラインに基づいた見解などを解説します。

目次

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  1. 法務省からのガイドライン公表
  2. そもそも非弁行為とは
  3. AI契約書レビューが非弁行為となり得るのかの論点
  4. 法的に争いがない取引に関する契約は「適法」
  5. AI契約書レビューを利用する際の注意点
  6. AI契約書レビューの全面無償化の動き
  7. まとめ

法務省からのガイドライン公表

近年では、AIの活用がさまざまな分野で広まっています。法務分野も例外ではなく、AIを活用した契約審査支援ツールが急速に普及しています。しかし、AIによる契約審査に関しては、以前より弁護士法で規制されている「非弁行為」との関連性が問題視されてきました。

そのため、法務省は2023年8月1日、契約書をAIが審査するサービスについてガイドラインを公表しました。

参考:AI等を用いた契約書関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について|法務省

参考:新事業活動に関する確認の求めに対する回答の内容の公表|経済産業省

そもそも非弁行為とは

非弁行為とは、法律事務に関連する業務を、弁護士資格を持たない者が行うことを指します。

弁護士は法律事務を専門的に行うための資格を持っており、法的なアドバイスや法律に則った代理・弁護を行うことができますが、弁護士資格を持たない者が同様の業務を行うことは、法的な規制に違反する非弁行為とされます。

弁護士法では、非弁行為に関する規定が「法律事務の取扱いに関する取締り」として、72条・73条・74条が定められています。これらの弁護士法について、以下で詳しく解説します。

参考:弁護士法|e-Gov法令検

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非弁行為に関する規定

  1. 弁護士法72条
  2. 弁護士法73条
  3. 弁護士法74条

弁護士法72条

弁護士法72条では、非弁行為(法律事務を弁護士以外の者が行うこと)を禁止しています。法律事務とは何か、弁護士または弁護士ではない者が行えることを明確に定めています。

つまり、法律に関する専門的な仕事をするには、弁護士の資格が必要とされると規定しています。弁護士資格を保有しない他の人物・専門家が、法的なアドバイスや法的な業務を行う場合、その行為自体が非弁行為となり、法的な問題が生じることを意味しています。

弁護士法73条

弁護士法73条は、非弁行為に対する法的な規定・違反行為に対する罰則に関する法律です。法律事務を行う権利や専門性を持たない者が、弁護士の業務に干渉することを禁止し、それに対する制裁を規定しています。

73条には、非弁行為を行う者は厳格な罰則を受ける可能性があり、罰金・懲役刑または弁護士資格の免許取り消しといった処分も含まれるとされています。

つまり、法的な制裁を設けて非弁行為の防止を促進し、法務業務の質と信頼性を保つことを目的としています。

弁護士法74条

弁護士法74条は、非弁行為によって得られた報酬や利益に関する規定です。仮に非弁行為によって金銭的な報酬や利益を得た場合、その報酬や利益に対する取り決めを定めています。

具体的には、非弁行為で得られた報酬や利益は法的に問題があるため、弁護士法に違反します。したがって、74条は非弁行為によって得られた資金を適切な弁護士に還元し、不正な報酬や利益の発生・取得を防ぐことを目的としています。

AI契約書レビューが非弁行為となり得るのかの論点

AI技術を活用した、AI契約書レビューが非弁行為に該当するかどうかの判断は、弁護士法72条に該当するかどうかが重要な焦点です。従来までは、「その他一般の法律事件」に当たる可能性と「鑑定」の部分に該当するかが争点となっていました。

しかし、2023年8月1日に法務省が公表したガイドラインにより、AI契約書レビューについての明確な基準と認識が示され、これまでのグレーゾーンが一部解消されました。

つまり、AI契約書レビューはガイドラインに基づいた判断が行われるため、非弁行為に該当するかどうかが明確化されつつあります。

法的に争いがない取引に関する契約は「適法」

法務省が2023年8月1日に公表したガイドラインにより、AIを活用した契約書のレビューが法的な争議のない取引に関連する契約に対しては「適法」であることが明確に規定されました。

このガイドラインでは、AI契約書レビューにおいて、システムに登録されたひな形と契約書の文言を比較し、相違がある場合、AI契約書レビューは鑑定に該当しないとの判断が下されました。

その結果、法的な争議の発生が少ない取引に関する契約において、AIを導入した契約書レビューは適法であることが認められました。

参考:AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について|法務省

参考:新事業活動に関する確認の求めに対する回答の内容の公表|経済産業省

AI契約書レビューを利用する際の注意点

AI契約書レビューは、契約書の作成・審査・管理といった業務を効率化できるサービスですが、非弁行為を含めたいくつかの注意点があります。特に、法務省が公表したガイドラインで規定されているもの以外は違反であるとされるため、以下の点に注意が必要です。

  1. 入力者の内容から契約書の案が提示される
  2. 法的なリスクに関する具体的な数値の提示
  3. 管理している契約書の内容への法的リスクの提示

基本的に、作成された契約書に関して、定められたひな形・文言といったテンプレートに相違があった場合に、正しいテンプレートに反映されるようなケースは適法とされます。

よって、AI契約書レビューを利用する際には、サービスがAIを活用してどのような提示を行うのかを詳細に確認することが重要です。

AI契約書レビューの全面無償化の動き

従来まで有償による提供がされてきたAI契約書レビューは、法務省が2022年10月にグレーゾーン解消制度において、「違法の可能性が否定できない」と回答しました。それを受け、AI契約書レビューに関するサービスの全面無償化の動きが加速化しています。

この動きは、弁護士法74条に伴う正当な弁護士への還元にもつながり、利用者の費用負担軽減にも貢献します。クラウド上で契約書の全条文を自動でチェックすることにより、法的なリスクを迅速に回避することができます。

参考:契約書レビューサービスの提供|法務省

まとめ

近年、AIを活用した契約書レビューが急速に普及しており、その合法性に関する懸念点がありました。しかし、法務省からのガイドライン公表により、AI契約書レビューが適法であるかの判断に明確なラインが設けられました。

AI契約書レビューは、契約書の文言とシステムに登録されたひな形との相違がある場合、法的な争いがない取引においては「適法」と認められています。

つまり、AIは契約書の文言の一貫性を確認するだけでなく、法的なアドバイスを提供せず、鑑定にも該当しない範囲での利用が許可されています。

法的な争いのない契約書や文書のレビューにAIを導入することは適法であり、法務における業務効率化と精度向上に大きく貢献するでしょう。

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