EVMとは?プロジェクト管理を効率化する指標・数値・覚え方まで解説

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  • EVMとは、プロジェクトの進捗状況を金銭価値で分析・管理する手法のこと
  • EVMにより、スケジュールとコストを加味しながらプロジェクトの進捗管理ができる
  • EVMには多数の指標があるが、プロジェクト管理ツールを使えば分析がしやすくなる

EVMとは、プロジェクトの進捗状況を金銭価値で分析・管理する手法です。EVMを活用することで、スケジュールだけでなくコスト面でも計画通りに進捗しているかが把握できるようになります。この記事ではEVMの概要やできること、指標の算出方法などを解説します。

目次

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  1. EVM(アーンドバリューマネジメント)とは
  2. EVMでできること・メリット
  3. EVMを構成する4つの計測値
  4. 進捗が把握できる7つの指標
  5. EVMの覚え方
  6. EVMの管理にはプロジェクト管理ツールがおすすめ
  7. まとめ

EVM(アーンドバリューマネジメント)とは

EVM(Earned Value Management)とは、プロジェクトの進捗状況とコストパフォーマンスが計画通り進んでいるかを分析し、算出するために使用される手法です。

EVMは、1960年代にアメリカで生まれたプロジェクト管理の技術で、主に大規模な工学プロジェクトや国防関連プロジェクトなどの複雑なプロジェクトで広く利用されています。EVMの原則と手法は、今もなお重要な役割を果たしています。

EVMでできること・メリット

プロジェクトの遂行にはスケジュールとコストどちらも加味するEVMが効果的ですが、一元管理によるメリットは主に2つあります。ここからは、EVMを活用する2つのメリットを解説します。

コストオーバーを防げる

EVMはコストとスケジュールの2つを一元管理できるため、コストオーバーを防ぐことができます。プロジェクトが期日通りに完遂できたとしても、予算をオーバーしていれば成功とは言えません。

コストとスケジュールを一元管理することで、進捗の遅れやコストオーバーが発生していないかなどが同時に把握できるため、期日も予算も守ったプロジェクト進行が可能となります。

問題の早期発見が可能

EVMは計画と実績などを数字で表すため、早い段階で問題に気付けます。計画よりも実績の数値が低い場合は、増員などの対策を早い段階で判断できます。

進捗だけでなくコストも同じように計測されるため、オーバー気味かそうでないかの把握が容易に行えます。問題の早期発見・対応は、プロジェクトの成功に大きく貢献します。EVMで使用される数値については、次の章で詳しく解説します。

EVMを構成する4つの計測値

EVMは、4つの基本的な計測値があります。これらの計測値は、プロジェクトの状況を把握し、サポートするのに役立ちます。以下に、EVMを構成する基本的な4つの計測値について解説します。

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PV(Planned Value)

PV(Planned Value)は、「計画予算」と訳され、プロジェクトの計画の期間内に達成されるべき価値や進捗の予定を示す計測値です。つまり、プロジェクトが特定の時点でどれだけの予算を要するか計算したものです。

例えば、1か月のWeb開発プロジェクトで1週間後までに特定の機能の50%が完成することが計画されている場合、1週間後のPVはその50%に相当する予算を示します。これにより、1週間目までにどれだけの予算がかかるべきかを計算することができます。

PVはプロジェクトで設定された目標と、特定の時点での進捗状況を比較するために使用し、プロジェクトの進行状況と予算との整合性を確認できます。

AC(Actual Cost)

AC(Actual Cost)は、「実コスト」と訳され、プロジェクト管理において実際に発生したコストや費用を示す計測値です。プロジェクトの期間中に対して、実際にいくらお金を支出したかを表します。

プロジェクトが予算内で遂行されているか、予算を超えているかを把握するための重要な情報です。ACを通じてプロジェクトのコスト状況を把握し、必要に応じて調整を行うことで、予算管理とコストコントロールを適切に行うことができます。

EV(Earned Value)

EV(Earned Value)は、「出来高」と訳され、プロジェクト管理において実際に達成した進捗を示す計測値です。プロジェクトの期間中にどれだけの価値を生み出したかを表します。

PV(Planned Value)は、プロジェクトが特定の時点でどれだけの予算が必要かを計算したプロジェクトの予算計画であるのに対し、EVは実際の進捗に基づいた出来高を示すという点に違いがあります。

EVとPVを比較することにより、プロジェクトの進行状況とコストの差異を算出し、プロジェクトが計画通りに進行しているかどうかを把握できます。分析により遅れが検出された場合は、適切な対策をとることができます。

BAC(Budget At Completion)

BAC(Budget at Completion)は、「完成時総予算」と訳され、プロジェクト全体の予算を示すものです。つまり、プロジェクト完了までにかかる予算の合計額です。

BACはプロジェクトの初期計画段階で設定され、プロジェクト全体の予算目標を定めるのに便利です。例えば、Web開発プロジェクトのBACが200万円であれば、プロジェクトが完了した時点の総予算は200万円となります。

BACはプロジェクトの予算管理やコストコントロールの基準として使用され、プロジェクトのコストが予算内に収まっているかどうかを判断できます。

進捗が把握できる7つの指標

上記の計測値であるBAC(Budget at Completion)、EV(Earned Value)、PV(Planned Value)、AC(Actual Cost)などは、計測値を組み合わせて計算することで、プロジェクトの進行状況やコストに関するさまざまな指標を導き出すことができます。

以下では、これらの計測値を用いて導き出せる7つの指標について解説していきます。

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SV(Schedule Variance)

SV(Schedule Variance)は、「スケジュール差異」と訳され、プロジェクトが計画通りに進行しているか、あるいは遅れているかを評価する指標です。SVは以下の計算式で導き出すことができます。

EV(出来高) – PV(計画予算)=SV

SVの計算結果が正の値であれば、プロジェクトは予定よりも進んでおり、一方、SVが負の値であれば、プロジェクトは予定よりも遅れていることを示します。

CV(Cost Variance)

CV(Cost Variance)は、「コスト差異」と訳されます。これは、プロジェクトのコストパフォーマンスを評価するために使用されます。CVは、プロジェクトの実際のコストと予算との差異を示します。CVは以下の計算式で導き出すことができます。

EV (出来高)- AC(実コスト)=CV

CVの計算結果が正の値であれば、プロジェクトは予算内で進行しており、一方、CVが負の値であれば、プロジェクトは予算を超過しており、コストに対する過支出をしているということになります。

SPI(Schedule Performance Index)

SPI(Schedule Performance Index)は、「スケジュール効率指数」と訳され、プロジェクトが計画通りに進行しているかどうかを示す指標です。SPIは、以下の計算式で導き出せます。

 EV(出来高) / PV(計画予算)=SPI

SPIの計算結果が1より大きい場合、プロジェクトは計画通りに進行しています。SPIが1未満の場合は、プロジェクトは計画よりも遅れており、スケジュールが遅れていることを示します。

SPIを適切に監視することにより、プロジェクト遅延の早期識別とスケジュールの調整が可能となります。

CPI(Cost Performance Index)

CPI(Cost Performance Index)は、「コスト効率指数」と訳され、プロジェクトの実際のコストと予算との比率を示し、予算に対する実績を示す指標です。CPIは以下の計算式で導き出すことができます。

 EV(出来高) / AC(実際のコスト)=CPI

CPIの計算結果が1より大きい場合、プロジェクトは予算内で進行しており、CPIが1未満の場合、プロジェクトは予算を超過しているということになります。CPIを監視することにより、予算超過やコスト増加を早期に検出し、必要な対策を講じることができます。

ETC(Estimate To Completion)

ETC(Estimate to Complete)は、「残作業コスト予測」と訳され、プロジェクトが現在のペースで進行し続けた場合、残りの作業を完了するためにどれだけの追加予算が必要かを評価するのに使用されます。ETCは以下の計算式で導き出すことができます。

 (BAC(完成時総予算) – EV(出来高)) / CPI(コスト効率指数)=ETC

BACからEVを差し引き、その結果をCPIで割ることによって、残りの作業を完了するためにどれだけの追加予算が必要かを導き出すことができます。

EAC(Estimate At Completion)

EAC(Estimate at Completion)は、「完了時コスト予測」と訳され、プロジェクトが現在のペースで進行し続けた場合、最終的にかかるであろう予算を予測するために使用されます。EACは以下の計算式で導き出すことができます。

 AC(実コスト) + ETC(残作業コスト予測)=EAC

EACは、プロジェクトが現在の進行状況で続行する場合、最終的なコストがいくらになるかを示します。ETCと似ていますが、あとどれだけのコストが必要なのかを表すETCと、プロジェクト開始からのトータルを表すEACと覚えましょう。

EACはプロジェクトの実績と進捗を反映させるため、リアルタイムのコストコントロールに有用です。

VAC(Variance At Completion)

VAC(Variance at Completion)は、「完了時コスト差異」と訳され、プロジェクトが完了した際の予算と実際の予算との差異を示します。VACは以下の計算式で導き出すことができます。

 BAC (完了時総予算)- EAC(完了時コスト予測) = VAC

VACの計算結果が正の値であれば、プロジェクトは予算内で完了することが予想でき、余剰予算があることを示します。一方、VACが負の値であれば、プロジェクトは予算を超過して完了することが予想され、不足予算があることを示します。

EVMの覚え方

EVMや計算式を覚えるのは、どうしてもハードルが高く感じがちですが、以下のポイントを押さえると簡単に覚えられます。

【S】が付く単語スケジュールに関連すること
【C】が付く単語コストに関連すること
【E】が付く単語出来高に関連すること

EVMの管理にはプロジェクト管理ツールがおすすめ

プロジェクト管理ツールは、プロジェクトの計画、実行、監視、制御などの各段階で、タスク、リソース、進捗、コストなどのプロジェクトに欠かせない業務を効率的に管理するためのソフトウェアです。

特にEVM(Earned Value Management)の管理において、プロジェクト管理ツールは非常に役立ちます。

プロジェクト管理ツールは、EVMに必要な数値を直接入力するだけでEVMグラフを作成することができます。そのため、EV(Earned Value)、PV(Planned Value)、AC(Actual Cost)などの値を手動で計算する手間を省くことができます。

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まとめ

EVM(Earned Value Management)は、プロジェクトの進捗状況とコストパフォーマンスを分析し、算出する方法です。

プロジェクトのスムーズな進行には、スケジュールとコストの両方を適切に管理する必要がありますが、EVMを活用することで、これらを一元管理することができます。この統合管理により、プロジェクト全体の状況を簡単に把握することが可能です。

プロジェクトマネージャーや関係者は、作業の進行状況・かかった費用を迅速に確認できるため、遅延や問題を早期に発見できるメリットがあります。

EVMを効果的に活用するには、プロジェクト管理ツールの使用が非常に有効です。これらのツールは、プロジェクトの進捗、予算、コストに関する情報を一元管理し、リアルタイムで可視化できるため、プロジェクトの状態を把握しやすくなります。

数値入力だけで自動計算やグラフ作成が可能となり、EV(Earned Value)、PV(Planned Value)、AC(Actual Cost)などのEVM指標を手軽に把握できるため、EVMの効果的な管理においては、プロジェクト管理ツール導入がおすすめです。

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