ERPとAI(人工知能)の関係とは?AI活用のメリットを解説

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  • AIの中でも特に注目されている技術として、ディープラーニングや自然言語処理がある
  • ERPとは、ヒトやカネといった企業経営において重要な資源を一元管理できるシステム
  • ERPとAIを活用して人材評価や需要予測に用いると、適切な人材管理や在庫管理が行える

ERPとは、ヒト・カネ・モノ・情報の企業経営で重要な資源を一元管理できるシステムです。現在、さまざまな分野でAIの活用が広がっていますが、ERPも例外ではありません。本記事では、ERPとAIの関係やAIとERPを組み合わせた場合のメリットなどを解説します。

目次

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  1. ERPでも活用が進むAI
  2. そもそもAI(人工知能)とは
  3. ERPにおいてAIを活用するメリット
  4. ERPでAIを活用する際の課題
  5. まとめ

ERPでも活用が進むAI

ERPとは、「Enterprise Resources Planning」の略で、企業の持つ資源「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」を一元管理するシステムを指します。会計・人事・生産・物流・販売などの業務を一箇所にまとめることができるため、経営状況の見える化が図れます。

データを統合することで業務が効率化し、経営状況がリアルタイムに把握できるため意思決定もスムーズに行えるといったメリットがあるERPですが、近年ではAIを搭載したERPも登場し始めています

ERPと基幹システムの違い

基幹システムとは、企業の主要な業務を個別に支えるシステムを指します。特定のシステムを指す言葉ではなく、生産管理システムや人事管理システムなど、各業務で使われているシステムの総称です。

一方ERPは、前述したように会計・人事・生産・物流・販売など企業内の業務を一元管理するシステムです。

基幹システムにもAIが搭載されていることはありますが、すべての業務データを統合しているERPにAIが搭載されていることで、企業が得られるAIの効果も大きなものになるでしょう

AIはERPの活用を強化する

ERPは企業全体でのデータ活用を促進するシステムです。データドリブンな経営を支援するとともに、各業務のデータをスムーズに連携することで、異なる基幹システム間での転記ミスも防止できます。AIはこういったデータ活用をさらに強化してくれます。

具体的には、AIの搭載によってより高度なデータ分析ができるようになり、ERPに蓄積された大量のデータをさらに有効活用できるようになります。また、AIによるタスクの自動化などにより、大幅な業務効率化にもつながります。

AIの処理能力によって、従来のERPでは成し得なかったことや手動では限界があるようなことまで効率的にできるようになり、データ活用の幅が広がります

そもそもAI(人工知能)とは

AIとは「Artificial Intelligence」の略で、日本語で「人工知能」の意味を持つ言葉です。一般的には、人間の思考プロセスと同じような形で動作するプログラム、という定義がされています。

AIは、人間の知覚・知能を模倣する技術でデータを分析・判断して、提案・課題定義・問題解決などを行いす。近年、AI技術は業務システムやアプリケーションでも多く取り入れられており、多くの企業で活躍しています。

AI普及のきっかけともなった新たな技術

近年になってAIが急速に普及した背景には、新たなAI技術の登場があります。中でも「ディープラーニング」「自然言語処理」「生成AI」は注目の技術です。これらが登場したことによって、AIの活用範囲は一気に広がりました。

ディープラーニング

ディープラーニング(深層学習)は機械学習の一種です。機械学習は、コンピューターが自動でデータ群の関連性や規則性などを見つけ出すための学習手法で、ディープラーニングはそれをさらに発展させたものです。

ディープラーニングは人間の脳神経カイロをモデルにしており、情報を処理する階層が多いのが特徴です。他の学習方法よりもデータ処理の階層が多いため、より複雑な判断や予測が可能になります。

画像、テキスト、音声など幅広いデータを扱うことができ、医療から製造業までさまざまな分野で活用されています。

自然言語処理

自然言語処理(NLP)とは、間が書いたり話したりしている言葉=自然言語をAIが処理する技術です。コンピューターはプログラミング言語など「人工言語」で処理を行いますが、この技術によって人間の言葉をインプット・アウトプットできるようになります。

自然言語処理を用いれば、AIは人間の指示を理解し動作を行ます。問い合わせへの回答、翻訳や要約、ソフトウェアのプログラミングなどに活用されており、さまざまな作業をコンピュータで実現しています。

また、SNSやチャットなどで人間が生み出す大量のテキストデータをAIが分析できるようになり、いわゆるビッグデータの活用にも貢献しています。

生成AI

生成AI(Generative AI)は、テキストや図表、画像、音声、映像などさまざまなコンテンツを自ら生み出す能力を持ったAIです。従来のAIは与えられたデータを分析するものでしたが、生成AIは学習したデータをもとに新たなコンテンツを創造することができます。

生成AIは、情報の特定や予測ではなく、コンテンツの生成を目的としてデータの関係やパターンを学習します、学習には、ディープラーニングや自然言語処理の技術も使われています。

ERPでの例を挙げるなら、売上データを分析して購買の傾向を特定したり売上予測を行ったりするだけでなく、それをわかりやすく表や図、レポートなどにまとめることができる、というのが生成AIの特徴です。

ERPにおいてAIを活用するメリット

ERPにおいてAIを活用するメリットは多いです。ERPとAIを組み合わせて活用すると、需要予測が高度化できたり戦略的な意思決定のサポートができたりします。ここでは、ERPにおいてAIを活用するメリットを解説します。

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需要予測の高度化

AIの活用によって、需要予測の高度化が図れます。なぜなら、AIにERPの膨大なデータを分析・学習させることで、条件によってどれだけ需要が変化するのかをより高度に分析することができるからです。

例えば、ERPに蓄積された販売実績や購入状況(購入日時・気温・季節など)を分析することで、より実績値に近い値を導き出すことができます。これらの分析もスピーディーに行ってくれるため、すぐに販売戦略などに活かせるのがポイントです。

戦略的な意思決定のサポート

AIがデータ分析などで戦略的な意思決定をサポートしてくれるのもメリットです。AIがデータ分析や提案などをリアルタイムで行ってくれるため、現場では参照された情報を参考に、さまざまな意思決定がスピーディーにできるようになります。

また、問題があるデータの発見や処理すべき順番の提案なども可能で、問題に対して迅速な対応ができます。例えば、在庫切れが発生した際に、納品スケジュールや多店舗の在庫などを素早く判断し、迅速に対応できるようにサポートを行ってくれます。

このように、さまざまなデータをAIによって管理することで、さらなる戦略的な意思決定をサポートできるでしょう。

業務プロセスの効率化

ERPでAIを活用することで、業務プロセスも効率化します。通常、データ分析・予測・提案・改善などのすべての作業を人間が行う場合、膨大な時間と労力がかかります。

その点、AIはERPの膨大なデータを人間よりも遥かに早いスピードで処理を行うため、大幅な業務プロセスの効率化が図れるのが大きなメリットです。単純作業や入力作業、分析業務の負担が軽減するため、人件費の削減にも効果的でしょう。

不正の検知・防止

AIは不正の検知・防止ができます。AIの技術によって異常値を示すデータを表示することが可能なため、素早く不正の検知・防止を行うことができます

ERPの分析機能や人間のチェックでは気付けなかった問題にもAIは漏れなく気付き、指摘してくれるのが利点です。AIによって大きなトラブルを未然に防ぐことにより、円滑に業務を行うことが可能になるでしょう。

人材管理の最適化

AIの活用で、人材管理の最適化も図れます。人材のスキルや能力の評価など、複数のデータを集めて分析することによって、評価を多角化できるのがメリットです。

さらに、分析結果から昇給や昇格の判断基準を定めたり、適切な人材配置などに活用したりできます。適切な人材管理を行うことで、社員のモチベーション低下も防げるため、離職率の低下にも期待できるでしょう。

ERPでAIを活用する際の課題

ERPでAIを活用することで複数のメリットを得られますが、便利なAI技術を上手く活用するためにはいくつかの課題についても知っておく必要があります。これらの課題に適切に対処できるよう、対策などを考えておく必要があります。

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AIの答えが正しいとは限らない

AIが導き出す答えがすべて正しいとは限らず、必ず結果に対して人間が確認作業を行わなければなりません。学習能力の高いAIは、一度行ったことは間違いなく行う可能性が高いですが、初めて行う作業であるほど間違った結果を出すことがあります。

したがって、ERPでAIを活用する際にもAIに学習させる期間が必要であったり、そのためには膨大なデータを要したりすることもあります。

運用・管理体制を整える必要がある

AIを導入する際は、AIを適切に活用するために社内の体制を整える必要があります。新しいAI機能の使い方を覚えるのはもちろん、AIの導入によって社内の業務の進め方などが大きく変わる可能性があるため、相応の準備工数が必要です

ERPを利用する際のシステムの活用方法や専門知識の習得などに関しても、社内周知を行ったり利用規約を定めたりすることも考慮しなければなりません。

AI導入にはコストがかかる

AIを導入するのにはコストがかかります。AI搭載のシステムは大きな費用がかかる傾向があり、十分な予算を確保しなければなりません。具体的には、AIそのものにかかる費用に加え、その処理に耐えうるシステム構築をしなければならない可能性もあります。

予算を捻出するためにも、AI導入による効果をできるだけ明確にして社内の理解を得る必要があるでしょう。

公的な補助金の活用も視野に入れる

ERPでAIを活用するにはコスト面での課題がありますが、実は国や自治体が補助金や支援制度を提供しています。そのため、DX推進に力を入れていきたいのであれば、こういった制度も上手に活用していくようにしましょう。

具体的には、「IT導入補助金」や「事業再構築補助金」が挙げられます。費用面において導入を迷ってしまう場合などは、こういった制度も確認してみてください。なお、業種や条件によって対象は異なるため注意も必要です。

参考:IT導入補助金2024

参考:事業再構築補助金

まとめ

AIとは、人間の思考プロセスと同じような形で動作するプログラムです。AIはさまざまな分野で活用が進んでいますが、ERPも例外ではありません。

ERPとは企業の重要な資源であるヒト・カネ・モノ・情報を一元管理できるシステムで、AI技術組み合わせること需要予測の高度化や業務プロセスの効率化、不正の検知・防止など、企業に対して多くのメリットをもたらします

今後AIを搭載したERPの活用を検討する際は、本記事を参考にしながら、ERP・AIなどについての知識を持ち、AIを活用するメリットについて理解しておくことが大切です。AIの強みを最大限活かして企業の発展に貢献しましょう。

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