RPAとは?機能やメリット・デメリット、ツールの選び方などを解説
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- RPAを活用することで、ヒューマンエラーの防止やタスク・業務処理の迅速化ができる
- RPAはルール化された作業に向いているが、人の判断が必要な作業には不向きである
- RPAツールを導入する際は、動作形態やコストと機能が見合っているかの確認がおすすめ
RPAとは、ロボットを活用して定型業務を自動化・効率化するシステムのことを言います。RPAを導入することで、業務処理の迅速化などにつながりますが、対応が難しい業務もあるため注意が必要です。本記事では、RPAのメリット・デメリットや導入手順などを解説します。
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RPAとは
RPAとは「Robotic Process Automation」の略語です。ソフトウェアロボットやボットによって、ルーチンで繰り返すビジネスプロセスやタスクを自動化する技術を指します。RPAにより、少ない従業員でも業務プロセスの効率化や正確性の向上が可能です。
ロボットとはいえ、基本的にはPCやクラウド上での業務プロセスを効率化するためのものです。定型業務や単純な繰り返し作業を得意とする一方で、変更が多い業務やルールが複雑な業務には向かないとされていますが、近年はAIと組み合わせて自動化する例もあります。
人件費の高騰や働き方改革の動向から、企業は定型業務の再評価や自動化に注目している背景があり、RPAに注目が集まっています。RPAによって単調で時間がかかる作業から解放され、より創造的な仕事に専念できることに大きな価値があります。
RPAの仕組み
RPAの仕組みとして、まずは自動化したい作業をRPAソフトウェアに記録します。ユーザーがパソコン上で行う、画面操作やキーボード入力などをスクリプトとして記録し、ロボットが同じ手順を自動的に再現できるようにするのが目的です。
記録された操作はフローチャートのような形で表示されますが、このフローチャートは業務内容に合わせて編集できます。例えば、条件分岐やループなどの論理的な制御を追加し、ドラッグ&ドロップ・選択などの直感的な操作で編集可能です。
タスクを実行するための、指示・条件・制御フローを組み込みながらロボットを作成したら、ロボットを実行するタイミングをスケジュール指定します。このスケジュール指定によって、定型業務を特定の日時や条件に応じて自動的に実行できます。
RPAのクラスについて
RPAは、自動化する対象・要件・技術進化によって3つのクラスに分類されます。効率的な作業自動化を提供するRPAをはじめとし、より精細な業務の効率化を目指すEPAや、複雑で高度なタスクを自動化するCAがあります。以下で詳細を解説します。
クラス1:RPA(Robotic Process Automation)
RPAは、ルールベースの自動化に焦点をあてたクラスであり、いわゆる従来型のRPAです。繰り返しのタスクやルーチンなど、定型業務の自動化に適していて、扱うデータ量が大量になるほど正確な高速処理の恩恵も大きくなります。
例えば、企業内での請求書の受け入れや支払記録の照合に効果的で、特定の条件に基づいて請求書を選別することも可能です。また、顧客からの一般的な問い合わせに対する自動返信にも適しており、迅速な対応を提供できます。
その他にも、在庫管理や補充プロセスの効率化、報告書の作成・送信などの支援に活用されるケースもあります。
クラス2:EPA(Enhanced Process Automation)
RPAは定型業務のみに対応していますが、EPAではAI(人工知能)との連携によってデータを解析し、一定の非定型業務にも対応可能です。EPAでは複雑な判断や非構造化データの処理ができるため、RPAよりもさらに高度な自動化を実現します。
EPAに適した業務には顧客対応があります。例えば、AIを活用したチャットボットは、問い合わせに対して必要な情報を収集し、適切な部署へ転送するのに役立ちます。また、自然言語処理によって、非定型的な質問や要望にも応答可能です。
そして、EPAは画像や音声データの解析もできるため、製品の品質管理や欠陥の検出にも活用されており、生産ライン上での外観検査や異常音の検出にも寄与します。
クラス3:CA(Cognitive Automation)
CAは、より高度なAIと連携してロボット自体が判断し、ほとんどの業務プロセスを自動化できるクラスです。RPAやEPAよりも進化した自動化の形態であり、AIの洞察力や判断能力を駆使して複雑な業務に対応します。
例えば、顧客対応ではEPAが適していますが、CAを活用すると顧客の問い合わせや要望を解析し、より柔軟な対応を提供します。また、分析力に優れるため、ビジネスデータから経営戦略への活用にも効果的です。
さらに、特定の業界における業務にも活用しやすく、金融機関ではリスク評価や投資判断に活用されたり、医療分野では医療画像解析や病気予測に活用されたりします。
RPAと他システムの違い
RPA以外にも、特定の業務を効率化するシステムやテクノロジーが存在し、AI・ITシステム・Excelマクロなどが該当します。ここでは、RPAと似たような目的を持つシステムや技術について、RPAとの違いも踏まえながら解説します。
RPAとAIの違い
RPAとAIは、自動化によって業務を効率化する目標を持つ点では共通していますが、目標を達成する手段として使われるテクノロジーは異なります。そして、それぞれの特性も異なるため、適応する場面にも違いがあります。
RPAはルールベースで動作し、設定されたルールや手順に基づいてタスクを自動化します。対して、AIはデータから学習してパターンを見つけ出す判断ベースのテクノロジーであり、データ解析に基づいたパターンを理解して最適な行動を選択します。
また、RPAは定型的な業務プロセスの自動化に適している一方で、AIは複雑なタスクや非定型業務にも対応します。したがって、企業はタスクの性質によってRPA・AIを使い分けたり、組み合わせて使ったりすることで効率性を向上できます。
RPAとITシステムの違い
RPAとITシステムは、自動化・情報技術の領域で関連しています。しかし、限定的なタスクに比較的簡単で迅速な自動化を提供するRPAに対し、ITシステムは広範な要件に対応するものの、開発コストや時間がかかるといった特徴に違いがあります。
また、ITシステムの開発にはプログラミングの知識・スキルが必要であり、専門家の関与が求められます。その点、RPAはプログラミングに詳しくなくても、視覚的なツールを使用してロボットを開発することが可能です。
ITシステムは、広範な業務プロセスや複雑な要件に対応するために設計される場合があり、コスト・時間・労力がかかります。そして、RPAはドラッグ&ドロップのような簡単な操作で開発できますが、適用範囲はシンプルなタスクや定型的な業務に限定されます。
RPAとExcelマクロの違い
Excelマクロも作業を自動化するためのツールとして有名ですが、Excelの一機能であることから、対象範囲はExcel内での作業に特化しています。対してRPAでは、Excel以外のさまざまなアプリケーションの横断的な自動化が可能です。
ただし、Excelに関連した作業の自動化にあたっては、RPAのみで完結させるのではなく、Excelマクロと連携することで効率化しやすいケースもあります。そのため、実際の業務の適用においては、使い分けや組み合わせなど効果的に活用することが推奨されます。
例えば、Excelにおける日々の売上データや顧客情報の入力の自動化は、Excelマクロの活用が適しています。一方、複数のExcelファイルからデータを収集してレポートを作成する場合や、Excel作業を含むワークフローの自動化では、RPAと連携させる方が効率的です。
RPAと産業用ロボットの違い
産業用ロボットは工場などにおいて、肉体労働を行うブルーカラー業務を自動化するために開発されたものです。そして、RPAはホワイトカラー業務と呼ばれており、デスクワークなどの事務作業を効率化させることを得意としています。
よって、根本的な作業内容の違いがあります。なお、RPAが普及した背景には、ブルーカラー業務における産業用ロボットの活躍・生産性向上が大きく関係しています。
RPAとSaaSの違い
近年広く普及しているSaaS(Software as a Service)は、クラウド型のツールです。インターネットを通じて提供元のサーバーを使用し、ソフトウェアを起動します。RPAにもクラウド型があることから混在してしまいますが、大きな違いはツールの柔軟性です。
わかりやすく言うと、SaaSは人がシステムに合わせるのに対し、RPAはシステムが人に合わせます。つまり、業務をシステム化するのか、人的な作業をルール化して実行させるのかで大きな違いがあります。また、価格面ではRPAの方が高い傾向にあります。
RPAツールの機能
RPAにはさまざまな機能がありますが、主要な機能は以下の表に示す内容となります。その他にも、データの加工や変換ができたり、通知やメッセージ送信の機能などを備えていたりするケースもあります。ここでは、主な機能について解説します。
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機能 | 内容 |
---|---|
レコーディング機能 | 実際の作業手順を記録・再現でき、編集で複雑なプロセスにも対応 |
スクレイピング機能 | Webサイトのデータを高速で自動収集する機能 |
フローチャート機能 | 一連の処理を編集/視覚的・直感的な操作で初心者にも扱いやすい |
スケジューリング機能 | 指定した時間に自動化処理を実行させる機能 |
トリガー機能 | 指定したイベントを検知して自動化処理を実行させる機能 |
レコーディング機能
RPAがプログラミングの知識を保有していなくても使用できる理由としては、レコーディング機能の影響が大きいです。レコーディング機能では、ユーザーが実際に作業を行うだけで、その操作を記録して自動化するためのスクリプトを生成します。
生成されたスクリプトは行った操作を正確に再現できるため、レコーディング中に行った作業を自動化します。実際の操作を記録するだけで自動化までの労力や時間もかからず、迅速に作業を自動化できる点がメリットです。
単に記録するだけでなく編集も可能であり、特定のステップを追加したり条件分岐を組み込んだりすることで、より複雑なプロセスの自動化も行えます。このように、レコーディングは手軽にロボットを作成するための機能として活用されます。
スクレイピング機能
Webサイト上のデータを自動的に収集することをスクレイピングと言いますが、RPAには画面上のテキストや表形式のデータを認識して取り込む、スクレイピング機能があります。手作業での収集は時間がかかりますが、この機能によって高速で収集することが可能です。
また、手作業よりも正確性が高く、誤りが少ないデータを収集できるのも利点であり、テキスト以外にテーブル・リスト・画像などのデータ形式も取り込めます。収集したデータは、ExcelやCSVでの保存・メール送信など、他のアプリケーションとの連携も可能です。
競合他社の商品価格・株価・天気などの情報を収集し、分析・活用できるスクレイピングですが、いくつかの注意点もあります。特に、スクレイピング行為はサイトの利用規約・著作権・法的な規制が存在する場合があるため、違反には厳重に注意しなければなりません。
フローチャート編集機能
RPAにおけるフローチャートは、ロボットの実行に必要な一連の処理を視覚化することが可能であり、処理の全体像を一目で把握できます。また、編集機能も備わっており、事前に用意された部品やアクティビティと組み合わせて、複雑なプロセスの自動化も行えます。
さらに、ワークフローチャート内での条件分岐やループ処理など、制御フローの設定も可能です。特定の条件に基づいて処理を分岐させたり、同じ処理を繰り返せたりするため、柔軟性の高いロボット開発が実現します。
制御フローはプログラミングの要素があるため難しく感じますが、RPAのフローチャート編集機能ではドラッグ&ドロップのような直感的な操作が可能です。そして、表示も視覚的で見やすく設計されており、初心者にも扱いやすいのが利点です。
スケジューリング機能
作成した自動化処理を、どのタイミングで行うのかを決める機能の1つにスケジューリング機能があります。毎日あるいは定期的で決まった時間に行う業務に適用しやすく、バッチ処理やレポート作成、データの整理、メンテナンスなどに効果的です。
スケジューリング機能では、特定のタイミングや時間帯に自動化処理を実行できる以外にも、日付・曜日・時間帯などの実行条件を柔軟に設定できます。さらに、24時間365日の稼働も行え、手作業では難しい連続的な処理もスケジュール設定で実現可能です。
また、基本的には実行のために人員や労力を割く必要がないため、タイムセービングを実現できるメリットがあります。そして、非生産時間帯に自動化処理を行わせることで生産性向上にも役立ちます。
トリガー機能
スケジューリング機能が、自動化処理を実行するタイミングを日付や時間で指定するのに対し、トリガー機能は特定のイベントが発生した際に自動処理を実行させる機能です。スケジューリング機能よりもリアルタイム性・反応性に優れています。
また、ファイル変更・キー操作・マウス操作・メール受信など、さまざまなイベントを自動化処理のトリガーに設定できます。そのため、さまざまな状況に対応しやすく、ワークフローの設計次第で多岐にわたるアクションを実行できるため、柔軟性も高いです。
具体的には、ファイルの操作、データの変換、通知の送信、添付ファイルの取得などのタスク実行が可能です。トリガーとするイベントは自由に設定できるため、アイデア次第で柔軟な自動化を実現できます。
RPAを導入するメリット
RPAを導入することで、業務のスピードや正確性は飛躍的に向上します。従業員の負担となっていた作業をロボットが担うことで、創造性の高い業務の推進や働き方改革への対応といったメリットも生み出します。ここでは、RPAを導入するメリットを解説します。
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RPAを導入するメリット
ヒューマンエラーの防止
繰り返しのタスクや複雑な作業手順を人が行う場合、ヒューマンエラーが発生するリスクがあります。RPAではプログラムされたルールに基づき、正確かつ一貫した方法で作業を行うため、エラーを最小限に抑えられます。
そして、データの入力ミス・抜け・漏れに関しても、正確なデータ処理が可能です。手作業の場合は、扱うデータ量が多くなるほどミスする可能性も大きくなりますが、RPAは扱うデータ量に関係なく信頼性を維持するため、業務品質の向上に寄与します。
さらに、人が行った作業に対する手動チェックやフォローアップにかかる作業時間も不要のため、作業スピードが上がるのも利点です。
タスク・業務処理の迅速化
RPAによる自動化により、タスクはいつでもすぐに実行できます。人間が手作業でタスクを行う場合、作業の進行や優先順位に応じて遅延する可能性がありますが、RPAは指定されたタイミングに従ってタスクを即座に実行するため、業務の迅速な進行が可能です。
また、コンピュータプログラムによる処理は、大量のデータに対しても高速性を維持するため、手作業での処理よりもはるかにスピードが向上します。そして、人的ミスを最小限に抑えられるのも業務全体のスピード向上に寄与します。
さらに、RPAは人力とは違い並列処理が可能です。複数のタスクやプロセスを同時に実行できるため、効率性を格段に向上できる可能性も併せ持っています。
コア業務に時間を活用できる
RPAで単純なルーチンワークや繰り返しのタスクが自動化されると、社員は煩雑な作業から解放されます。これは、自身のスキルや専門知識をより高度な業務に集中させられることを意味します。
企画・マーケティング戦略の策定・新製品やサービスの開発・業務プロセスの見直しや改善など、ビジネスにおける付加価値の高い業務に専念することが可能です。コア業務に時間とエネルギーを注げるため、新たなビジネスチャンスを掴む可能性も広がります。
RPAは単純で膨大な作業量の業務に適していますが、クリエイティブな発想や戦略的なアプローチなどでは、人ならではの柔軟性・経験値・想像力などが求められます。そのため、RPAと人間が分業した環境整備を行うことで、企業の競争力と成長を支援します。
人件費・教育コストの削減
RPAを導入することで、人間が行っていた業務をロボットが担当することになるため、人件費のコスト削減が実現します。また、単純な業務を担当する新規の従業員を雇う必要がなくなるため、採用コストも削減できます。
新たな従業員を育成するための教育コスト・時間も削減でき、RPA自体が簡単に導入可能なため、習熟度を高める大規模なトレーニングも不要です。さらに、作業量が増大してもRPAは正確かつ高速に処理を行うため、現状の人員で対応できます。
RPAによるワークフローは、一度作成してしまえば繰り返し使用できるため、一度の投資で長期間にわたって利益を得られるのも、コスト面におけるメリットです。
働き方改革に対応できる
日本の生産労働人口の減少や高齢化によって労働力不足が深刻化する中、「労働時間削減」「付加価値の質・量向上」は、働き方改革の重要な課題です。RPAの導入により、これらの課題に対応できます。
定型業務をロボットが担当することで労働力の有効活用につながるだけでなく、単純な繰り返し作業による従業員のモチベーション低下を防ぎます。また、業務自動化が実現することで、従業員の労働時間の削減や負担軽減にも寄与し、働きやすい環境作りを可能にします。
そして、定型業務から解放されることで、付加価値の高い業務にリソースを集中させられるため、働き方改革の課題に対応可能です。RPAによる業務効率化によって、同じ人員でもより多くの業務を処理でき、生産性向上につながります。
RPAを導入するデメリット
RPAは業務効率化に寄与するものですが、扱いを誤ると大きな損失を招く可能性もあります。ここでは、RPA導入がデメリットとなってしまう可能性について、それぞれのリスク回避のための対策を踏まえて解説します。
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RPAを導入するデメリット
情報漏洩のリスクがある
RPAで自動化された業務が、ネットワークに接続されたサーバー上で実行される場合、不正アクセスやセキュリティ侵害のリスクが生じます。つまり、機密情報や個人情報が漏洩する可能性があり、サイバー攻撃によってRPAが乗っ取られる危険性もあります。
これらのリスクに対してセキュリティ対策を講じる必要がありますが、RPAのシステムを常に最新状態にしておくことが対策の1つとして挙げられます。セキュリティパッチやアップデートを適切に行い、脆弱性を最小限に抑えるようにします。
また、アクセス権限を制御することも大切であり、必要最小限のユーザーだけがシステムへアクセスできるようにすると情報漏洩のリスクを抑えられます。
その他にも、ログ監視で不審な動きを早期に検知できるようにしておくことも、信頼性の高い環境を確保する上で重要です。
指示が間違っていても作業を続けてしまう
RPAによる処理は高速かつ正確ですが、指示内容そのものが間違っていた場合でも、指示を忠実に実行してしまいます。そのため、誤ったデータ処理や業務の進行が行われ、場合によっては大きなトラブルや損失を招く可能性があります。
したがって、導入前には業務内容を正確に定義し、ロボットが実行する処理を詳細に設計することが重要です。そして、業務フローが変更された場合にも柔軟に対応できるように設計し、新たに指示を作成・変更した場合は、必ずテストを行うようにします。
RPAのプログラム内に、特定の条件やエラーが検出された場合は自動的に中断する仕組みを組み込むことで、異常な動作を早期に検知し、被害の拡大を抑えられます。
RPAに向いている業務と向いていない業務
RPAは企業の業務を効率化する上で有用ですが、どんな業務にでも適用できるわけではありません。ここでは、実際にどのような業務がRPAの自動化に向いているのか、もしくは向いていないのかについて解説します。
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RPAに向いている業務と向いていない業務
RPAに向いている業務
RPAは、あらかじめ設定した指示を忠実に実行します。そのため、業務に適用するにあたっては、繰り返し業務・ルール化された業務が推奨されます。また、ソフトウェアロボットが処理を実行するため、デジタル化された業務であることも前提となります。
同じことを繰り返す業務
単純ながらも繰り返し行われる業務は、RPAによる自動化に適しています。単純作業は作業量が膨大になるほど人的ミスや効率の低さが課題となるため、RPAによってこれらの課題を克服できる可能性が高いです。
具体例として、経理部門における帳簿入力が挙げられます。取引先・金額・日付などの情報の入力作業は定型的なものであり、手作業からRPAに置き換えることが可能です。その結果、高速かつ正確な処理が実現し、業務量の増加にも柔軟に対応できます。
その他にも、RPAを適用しやすい繰り返し業務には、請求書処理や在庫管理、顧客情報の更新、顧客対応メール、日次レポートの作成、顧客申込み処理などがあります。これらは繰り返しの多い業務であり、RPAの代替によって従業員は生産性の高い業務に集中できます。
ルール化された業務
一連のルールに従って行われる業務も、RPAによる自動化に適した業務です。RPAは特定の手順や規則に基づいて処理することを得意とするため、ルールの設定次第では複雑な条件にも対応して処理できます。
具体例として、従業員の給与計算が挙げられます。給与計算業務は、給与明細の作成、税金の計算、社会保険料の控除など、特定の計算ルールに基づいて行われます。
給与計算業務において、RPAは手作業で発生する計算ミス・抜け・漏れを防ぎ、処理速度が速いことから従業員への支払いが迅速化します。また、請求書処理・在庫管理・経費精算・申請と承認なども、ルール化された業務の代表例です。
設定次第では、顧客対応・契約管理などイレギュラーが起こりやすい業務も支援できます。
デジタル化された業務
RPAは、PCやクラウド上で活用するものである性質上、情報を電子的に処理するデジタル化された業務に適しています。例えば、請求書管理において、取引先と紙の請求書でやり取りしている場合は、RPAは紙に対して直接処理を行うことはできません。
一方、データでやり取りしている場合は、PDFから必要な情報を抽出して帳簿入力や支払い手続きを自動化できます。紙の請求書においても、スキャニングやOCR技術を活用することで、ある程度は自動化しやすくなります。
その他にも、デジタル化された業務には、オンライン注文処理、オンラインフォームの入力、データベース更新、電子契約管理、デジタルドキュメントの整理などがあります。これらは定型的な作業でもあることから、RPAによる自動化に適しています。
RPAに向いていない業務
RPAの能力を超えた業務や、モラル・感情面への配慮からRPAが適さない業務も存在します。人が判断して作業すべきことと、自動化すべきことを見極めるための参考として、ここでは、RPAが向いていない業務について解説します。
人による判断が必要な業務
企業で行われている業務は、単純なルールに従う業務ばかりでなく、複雑な状況の中で柔軟な判断が求められる業務もあります。その場合はRPAによる自動化が難しく、人の感情面に配慮することが重要な業務にも適していません。
例えば、広告・プロモーションのデザイン・文章の執筆などは、クリエイティブな作業であり、個々のターゲットに応じて柔軟な判断が求められます。そして、問題解決やトラブル対応では、複雑な状況分析や状況に応じた選択肢の検討が必要です。
また、顧客対応で問い合わせの多い内容に関しては自動化できますが、クレームやトラブルに関しては、状況の詳細な確認や感情の理解が求められます。このように、RPAの処理能力を超えた作業では、RPAに頼らない人による対応が理想的です。
複雑な処理や業務
RPAは、条件分岐の設定次第である程度の複雑な業務にも対応できるものの、その能力には限界があります。さらに、複雑さが増すほどに設定も複雑になり、時間や労力を費やす必要があるため、RPAで自動化するメリットが小さくなります。
例えば、大量のデータを分析し、傾向やパターンを見つけるような複雑なデータ分析は、さまざまなアルゴリズムや統計的手法を用いるため、RPAでの処理は困難です。また、多様な分野の情報から総合的な判断が求められるような業務にも向いていません。
複数の異なるソフトやアプリケーションを組み合わせる業務では、データの受け渡しや連携が必要です。
そして、単純な処理でも例外的な処理が頻発する業務においては、結果的に人による判断や作業を必要とする場面が多くなり、RPAによる自動化のメリットは得にくくなります。
RPAツールを導入する流れ
RPAツールは比較的簡単に扱えるツールですが、導入によって必ず効果が出ると断言できるものでもありません。導入に際しては、ツールの効果を最大化することを意識し、適切な手順で行うことが重要です。ここでは、具体的な導入の流れを解説します。
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現在の業務量・業務プロセスを見直す
業務量や業務プロセスの見直しは、RPAの導入を成功させるために不可欠です。現状の業務に対する理解を深め、どの業務がRPAに適しているかを判断します。また、業務プロセスの最適化や効率化ができる部分を発見し、効果を最大限に引き出すことが重要です。
まずは、現状の課題からRPA導入の目的を明確にしましょう。目的達成に関連している業務を洗い出し、その業務プロセスの手順を詳細に整理します。その際、各プロセスにかかる時間やリソース、必要なアプリケーションも把握しておくことが大切です。
プロセスの中で、RPAに適した定型的・ルールベース・デジタル化された作業を特定します。そして、無駄や遅延が発生しやすい箇所を特定し、RPAでの改善の機会を見つけられると導入効果が大きくなります。
自社のニーズに合ったRPAツールを選定
現状の見直しが完了したら、RPAツールの選定を行います。ツールにはさまざまな種類があるため、自社のニーズや特性に合ったツールを選定することが重要です。また、企業規模や業界によっても適したツールが異なる点も考慮しましょう。
まずは、RPA導入の目的を達成するための機能が備わっているかを確認し、自社の特性に合わせてカスタマイズできるかにも注目します。そして、従業員がツールを迅速にマスターできるような使いやすさであるかもポイントです。
無料トライアルでRPAツールを導入・検討
RPAツールに限らず、企業で新たにシステムやソフトウェアを導入する際には、必ずテスト運用を行うのが理想的です。そのため、可能な限りRPAツールの無料トライアルを試し、ツールの性能や運用可能性を評価してから、納得した上で導入するようにしましょう。
無料トライアルでは、実際にツールを使用して、業務を自動化する過程を体験できます。その際、使い勝手や機能の実際の動作を十分に確認するようにしましょう。また、自社の業務にどれだけ適しているかを意識して、ツールの課題や限界も把握するようにします。
RPAは便利ですが万能ではありません。そのため、完璧なツールを求めることに時間を割くよりも、ツールの適用範囲を明確にした上で、どれだけの効果が得られるかを予測した方が効率的な場合もあります。
スモールスタートから始める
RPAツールの導入にあたっては、小規模な導入から始めるスモールスタートが推奨されます。なぜなら、大規模な導入は複雑かつ予期せぬ問題にコストや時間を消費してしまうリスクがあり、スモールスタートなら問題の影響を最小限に抑えられる利点があるからです。
手順としては、単純で確実に効果を出しやすい業務を特定し、導入時はどの範囲まで自動化するかを明確にした上でテスト運用します。テスト運用が成功したら、スモールスタートの範囲内で本格的に実施し、効果を確認しましょう。
なお、スモールスタートは費用対効果を確認しやすいのも利点です。大規模な導入では複雑な要因が絡むため、大規模導入の前段階で費用対効果を確認しておく必要があります。また、ツールの操作や運用方法を学びやすい点もメリットです。
プロセスの効果検証・改善
RPAツールの導入後には、効率化の実績・問題点・費用対効果を検証し、プロセスを改善するステップが必要です。このステップを踏むことで、RPAの導入が本当に成功しているのかを判断できます。
検証を客観的なものにするためには、定量的な評価が必要です。導入前と導入後の業務処理時間・エラー率・作業コストを比較します。ユーザーや関係者のフィードバックを収集したり、導入中に起きた問題や課題を特定し、原因・影響を分析したりすることも大切です。
特定した問題に対しては、改善策を検討・実施して再評価しましょう。ツールの使い勝手が良ければ従業員の負担軽減につながり、定量的な部分以外での評価も高くなります。
RPAツールの選び方
RPAツールには多くの種類が存在し、動作形態・操作性・サポート体制の違いによって、効果も大きく異なります。以下のポイントを参考にして、自社にとって適切なツールを選ぶようにしましょう。
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必要な機能を活用できるか
まずは、自社の導入目的に合わせて必要な機能を洗い出しましょう。前述したレコーディング機能やスクレイピング機能・フローチャート編集機能などは、RPAツールの主要な機能であるため、多くのツールに搭載されています。
しかし、特に連携機能については、ツールごとに対応可能なアプリケーションやシステムが大きく異なるため、自社で導入しているシステムや業務プロセスとのマッチングを考慮した選定が必要です。
その他にも、選定するツールによって搭載機能や機能の内容が異なるため、自社の必要性に合わせて適切なツールを選定しましょう。
動作形態を確認する
RPAの動作形態には、デスクトップ型・サーバー型・クラウド型の3種類があります。それぞれにメリット・デメリットがあり、選ぶ際には自社に合ったものを導入することが大切です。ここでは各動作形態の特徴や注意点について解説します。
デスクトップ型
デスクトップ型のRPAは、パソコンに直接インストールして利用します。パソコン1台からでも導入できるため、個人レベルから中小企業の規模まで、導入が比較的容易です。サーバー型よりも低コストで負担が少ないメリットもあります。
パソコン1台にインストールする場合は、複雑なセットアップやインフラの構築も不要であり、導入プロセスがシンプルです。パソコンの管理者が自分の手でツールを管理できるため、個別のニーズに合わせたカスタマイズに適しています。
ただし、インストールしたパソコンでしか利用できないため、適用できる業務にも限界があります。また、RPAツールの効果は、パソコンの性能に依存する部分も大きく、大量のデータや複雑な業務には向かないケースがある点に留意する必要があります。
サーバー型
サーバー型のRPAは、自社が保有するサーバーに専用のRPAツールをインストールして利用します。パソコンよりも高性能なサーバー上で動作するため、大規模な業務を自動化することに適しています。
大量のデータを扱う業務も高速で効率的に処理し、複雑な業務においても優れた性能を発揮します。複数のロボットを同時に動作させたり、複雑な業務を統合的に処理したりすることも可能で、稼働状況を一括管理できるのも便利です。
ただし、高性能なサーバーを必要とするため、導入コストは高額になります。さらに、サーバーの手配やメンテナンス、セキュリティの強化など、運用コストもかかります。また、大規模になるほど、本格的な運用までには時間がかかる点も考慮しましょう。
クラウド型
クラウド型RPAは、インターネットを通じてシステムを利用する形態のRPAツールです。自社サーバーを用意してインストールする必要がなく、クラウド上で提供されることから、インターネット環境さえあれば容易に導入できます。
さらに、専門的なIT知識を必要とせず誰でも使いやすい点や、ユーザーが手動でアップデートする必要がないのもメリットです。最新の機能やセキュリティ対策はベンダーが行うため、業務負担の軽減にもつながります。
ただし、基本的にはWebブラウザ上で行う業務を対象としており、自社内で導入されるシステムを使用した業務の自動化は難しい場合があります。また、インターネット接続に依存するため、安定した環境下での利用が重要視されます。
扱いやすい操作性か
RPAツールは現場の担当者が積極的に活用することで、業務の効率化や品質向上に寄与するものです。そのため、RPAやITに関する専門知識がない担当者でも手軽に操作できるツールを選ぶことが大切です。
使いやすさを左右するポイントとしては、マウスのドラッグ&ドロップ操作をはじめとし、簡単な操作だけでロボットを作成できることが挙げられます。そして、視覚的にわかりやすいことも重要です。
一方、使いにくいツールは導入の時点で現場の担当者の負担が大きくなり、運用時における設定・変更が煩雑化しやすいです。このような操作が複雑なツールは、現場担当者のモチベーション低下にもつながります。
費用対効果を確認する
RPAツールの機能は多種多様であり、高機能になるほど費用も高くなる傾向があります。しかし、高機能だからといって自社のニーズに適しているとは限らず、低コストのツールであっても機能不足で業務自動化が失敗に終わる可能性があります。
そのため、機能とコストのバランスが見合っているかを慎重に検討することが大切です。特に、各ツールの機能について、必要なものと不要なものを見極めてツールを選択するようにしましょう。
費用対効果については、客観的に評価できるよう定量的な要素(処理にかかる時間、エラーの多さ、コスト)を比較検討することが重要です。
サポート体制が充実しているか
RPA導入の成功に大きく影響を及ぼす要素に、サポート体制の充実度が挙げられます。予期せぬトラブルや疑問が発生した際、迅速かつ適切なサポートを受けられると、機会損失・遅延・中断・モチベーション低下など、さまざまなリスク回避につながります。
サポート体制を確認する際には、ベンダーのサポートの対応時間やコミュニケーション手段に注目しましょう。具体的には、24時間体制で電話・メール・チャットなど複数の対応方法が提供されていると、迅速に問題解決できる可能性が高くなります。
なお、ベンダーによっては導入支援を行ってくれたり、研修やトレーニングを提供してくれたりする場合もあります。
将来的な継続性があるツールか
RPAツールを選定する際は、提供元のベンダーが将来的に継続して機能拡張を行っていくか、サービス終了のリスクがないかを考慮することも重要です。RPAは比較的新しいソフトウェアであり、最近では市場競争により淘汰されサービスを終了するベンダーもあります。
ツールの導入実績や企業の財務状況から、将来的な継続性や拡張性があるかを想定したうえで選定しましょう。
まとめ
RPAはルーチン業務の自動化を可能にし、業務の効率向上や精度向上を実現します。導入により人的ミスの軽減、業務スピード向上、コア業務へのリソース集中などのメリットがあります。
RPAの導入においては、使いやすさ・費用対効果・サポート体制などを重視し、自社のニーズに合ったタイプを選びましょう。また、スモールスタートで段階的に導入することがおすすめです。
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