eKYC とは?仕組みやメリット・デメリット、本人確認方法も解説

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  • eKYCとは、スマホなどを使ってオンライン上で本人確認を完了するための仕組みのこと
  • eKYCの導入により、スピーディーに本人確認が完了でき、コスト削減などにもつながる
  • 写真付き本人確認書類の画像と本人の容貌の画像送信が、主流の本人確認方法である

eKYCとは、オンライン上で本人確認を完了するための仕組みです。2018年の法改正により普及し始め、携帯電話やインターネット銀行の申し込み時などに導入されています。本記事ではeKYCの仕組みやメリット・デメリット、本人確認の方法などを解説します。

目次

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  1. eKYCとは
  2. eKYCの普及が進んでいる背景
  3. eKYCの2つのタイプ
  4. eKYCのメリット
  5. eKYCのデメリット・問題点
  6. eKYCによる本人確認の方法
  7. eKYCで利用できる本人確認書類
  8. eKYCが導入されているシーン
  9. まとめ

eKYCとは

eKYCは「Electronic Know Your Customer」の略で、オンラインで本人確認を行う技術です。2018年の法改正により普及が促進され、デジタルテクノロジーの活用により、本人の身元確認処理が電子的な技術を使って効率化されました。

例えば、銀行口座の開設やクレジットカードの発行依頼をする場合、従来は店舗を訪れて行う対面手続き、必要書類の郵送などの手続きが一般的でした。そのため、本人確認に手間がかかり、口座開設やカード発行までに多くの時間が必要でした。

一方、eKYCではスマホで自分の顔と免許証などを写真撮影し、それをアップロードするだけで本人確認が可能です。早ければ即日で本人確認を完了できます。

eKYCの普及が進んでいる背景

近年では、デジタル時代に沿って従来の身分証明や顧客認証の方法に変革が求められており、eKYCの利用が急速に普及しています。

eKYCは顧客の身元確認や情報認証を電子的に行う手法として、金融機関やテレコミュニケーション業界、デジタルサービスプロバイダーなど広範な分野で採用されています。ここでは、eKYCの普及が進んでいる背景について解説します。

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犯罪収益移転防止法施行規則の改正

2018年11月に「犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則」が改正され、オンラインによる本人確認が認められる条文が追加されました。この法令は、犯罪者が不正に得た収益を、合法的な経済活動に紛れ込ませることを防ぐために制定された法令です。

金融機関と金融に関連するビジネスでは、新しい顧客を取り扱う際に身元を確認するための手続きを実施する必要があります。そこで、法令の改正により、本人へのなりすましなどの不正な取引を防止し、不正収益の合法的な経済への流入が制限されました。

eKYCは法令に則って、デジタルテクノロジーを活用しながら身元確認を有効に行う手段として普及しています。電子的な方法により、本人確認がオンラインで厳密かつ短時間で実施できるようになり、顧客側もサービスが容易に受けられるようになりました。

参考:「犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則の一部を改正する命令」の公表について|金融庁

eKYCの適用範囲が拡大している

現代のビジネス環境ではデジタル化がますます普及しており、オンラインで種々のサービスにアクセスし、取引することが一般的です。これに伴い、本人の身元確認が重要になっており、効率的な実施のためにeKYCが導入されることで、適用範囲が拡大しています

eKYCは、クレジットカードや電子マネーなどのキャッシュレス決済でも活用されています。新規顧客の登録、既存顧客の正当性の確認、セキュリティ強化に役立つため、サービスのプロバイダーにとっては欠かせない要素となっています。

また、携帯電話の申し込みや、MNP(Mobile Number Portability)として顧客が既存の電話番号を別の通信事業者に移行した後も、再利用する際に本人確認の手続きが求められます。eKYCは、これらのプロセスを効率的に行うツールとして普及しています。

eKYCの2つのタイプ

現在、eKYCの機能が広く注目されていますが、eKYCには「セルフィーアップロード型」と「フェデレーション型」の2つのタイプがあります。ここでは、それぞれのタイプの特徴などについて解説します。

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セルフィーアップロード型

eKYCの「セルフィーアップロード型」とは、顧客が顔写真付きの免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類の画像に加えて、自身の顔の画像を撮影し、要求元に送信することによって、その身元確認を行う方法です。

この場合、本人確認書類は、表面・裏面・厚みの3点の撮影を求められることが多いです。また、なりすまし防止のため事前に撮影した画像は使用できず、事業者や依頼元から提供されたアプリケーションを使って撮影することが条件となっています。

セルフィーアップロード型による方法は、顧客にとって利便性が高く、強固なセキュリティを確保するための手段にもなります。そして、自分のスマートフォンやタブレット端末を使用して容易に撮影ができる点も便利です。

フェデレーション型

フェデレーション型とは、本人確認書類に加えて、過去の本人確認情報により本人確認をする方法です。この場合における過去の本人確認情報とは、銀行やカード会社などの本人確認済みのデータを指します。

なお、本人確認の際は、本人確認書類のデータを依頼元に提供して良いか、顧客から同意を得る必要があります。また、公的な証明書類として、将来的にはマイナンバーカードのICチップ情報が利用されることが想定されます。

eKYCのメリット

従来の身分証明や顧客認証のプロセスは煩雑で時間がかかり、顧客が途中で諦めて離脱する原因でもありました。そのような中、テクノロジーの進化でeKYCが普及し、デジタルな手法によって顧客の身元確認や情報認証が効率的に行えるようになりました。

ここでは、eKYCがもたらすいくつかのメリットについて、内容や特徴を詳しく解説します。

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スピーディーに本人確認を完了できる

従来の身元確認の方法では、顧客が証明書の写しや書類を郵送したり、直接窓口に行って書類を提出したりする必要がありました。そのため、書類を揃えて郵送する段階で煩わしさを感じ、途中で作業を放棄する顧客も少なくありませんでした。

一方、eKYCでは証拠書類の画像や自身の顔写真を、スマートフォンなどを使って撮影して依頼元に送信するだけです。スピーディーに本人確認ができ、処理も迅速に完了します。これにより、顧客や依頼元の負担が軽減され、処理効率も上がります。

eKYCは、顧客と事業者の双方に多くのメリットをもたらす方法として、続々と導入が増えています。特に、手続きの簡便化や効率化、途中の離脱の防止、正確性と安全性の向上などが、eKYCが広く普及する理由となっています。

書類にかかるコスト削減につながる

通常、顧客の身元確認には多くの書類が必要とされ、書類の郵送が求められます。そのため、手間や郵送代などのコストがかかります。また、受け取る側も書類確認のための手間と時間、書類の保管場所などの費用が発生します。

その点、eKYCではデジタル的な情報の処理により、複雑な書類の確認プロセスを簡略化できます。顧客はオンラインで必要な情報を送信するだけで済み、手書きの書類・コピーの提出・郵送代などが不要となり、コストが削減につながります

安全性と信頼性を確保できる仕組み

eKYCはオンライン上で身元確認・本人確認ができるメリットに加え、正しく書類を保有していることを認識できる仕組みが採用されています。例えば、すでにデータとして保存しているものは利用できず、その場で撮影したデータでないと提出が行えないなどです。

また、動画で撮影者の目元の動き・首振り・前後の距離感などを認識し、正確な人物としての整合性を判断します。このように、対面ではない本人確認であっても、eKYCは安全性と信頼性を確保できる仕組みとなっています。

eKYCのデメリット・問題点

eKYCは、顧客の身元確認や情報認証を効率的に行う手段として注目を集めていますが、いくつかのデメリットも存在します。ここでは、eKYCで想定されるデメリットについて解説します。

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スマホに不慣れな人には難しい

eKYC処理の一環として、顧客は証拠書類や自身の写真を別のアングルから何点か撮影して送付する必要があります。スマートフォンやカメラでの撮影に不慣れな人には、これらの写真撮影が難しいと感じることがあるでしょう。

さらに、撮影した画像がぼやけていたり暗かったりすると、正確な顔認識が難しくなります。本人の確認が正しくできないことで、場合によっては再度撮影の依頼が来ることもあるため、提出者の負担となり得ます。

カメラ機能がない機種では利用できない

eKYCでは、身元確認の情報をデジタル形式で依頼元に提供する必要があります。もし、スマートフォンにカメラ機能がない場合には、写真の撮影やアップロードができないため、必要な情報を提供する際に障害が発生します。

そして、別のデバイスを使用して写真を撮影し、手動でアップロードする必要があります。これには手間と時間がかかるため、eKYCでの処理を諦めやすくなることが考えられます。

偽物を区別するための技術の進歩

近年ではAI技術が進歩し、高度な画像生成技術などを活用した偽物の制作も多様化しています。それに伴い、データによる本人確認において真正性を確保することが重要視されています。

つまり、eKYCで身分確認・本人確認をする際には、撮影者が作り物ではないか・偽物ではないかを区別する必要があります。そして、eKYCにも技術の進歩に合わせた認識精度の向上や対策が求められます

eKYCによる本人確認の方法

eKYCによる本人確認の方法はいくつかありますが、主に行われているのが「ホ方式」と呼ばれる「犯罪収益移転防止法」の「6条1項1号ホ」で定義されている方法です。この方法では、「本人確認書類の画像」と「本人の容貌の画像」の2つが必要です。

これらの画像を、依頼元や事業者が提供するソフトウェアを使用しながら撮影します。本人確認の書類や自身の顔画像を別々に撮影する場合や、本人が証明できる確認書類を持って一度に撮影して一画面に収めるケースもあります。

また、「本人の容貌の画像」は、なりすましなどを防ぐためリアルタイムで撮影した画像やいくつかのアングルによる画像、まばたきなどの動作も求められることがあります。

eKYCで利用できる本人確認書類

eKYCにおける「本人確認書類の画像」撮影では、氏名や住所、生年月日が記載された写真付きの本人確認書類原本が必要となります。

使用できる例としては、「運転免許証」「運転経歴証明書」「パスポート」「マイナンバーカード」「在留カード」「特別永住者証明書」「住基カード」などが認められており、顔写真のない健康保険証などは使えません。

eKYCが導入されているシーン

eKYCは、近年さまざまな分野で広く活用されており、その効果が実証されています。特に、従来の身分証明や顧客認証プロセスに関する課題を克服するために、eKYCが採用されている事例が増加しています。

ここでは、eKYCが具体的にどのようなシーン・事例で活用されているのか、以下の5つにおける特徴などについて解説します。

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インターネット銀行の口座開設

最近では、日本でもいくつかのインターネット銀行があり、機能面や利便性などから注目されています。インターネット銀行の口座開設でeKYCが導入・利用されています。

新しい口座を開設したい顧客は、申込時にインターネット銀行のWebサイトやアプリを通じて、身元確認のために必要な情報を提供します。身分証明書として、運転免許証・パスポート・マイナンバーカードなど、いずれかの書類の画像を撮影します。

また、 顧客は銀行のアプリを利用し、Webカメラやスマートフォンのカメラ機能で自分自身の顔写真を撮影し、上記の必要書類の画像と一緒に銀行に送信します。提出した写真はeKYCの顔認識技術で確認を行い、承認後に口座が開設されます。

中古品のオンライン買い取り

中古品の買い取りを行うサービスでは、「古物営業法」により本人確認が必要となっています。近年、中古品の買い取りをオンラインで行うサービスが増えており、ブランド品や家電製品の買い取りが人気となっています。

また、古本や中古のスマートフォンの買い取り、古物の再販をオンラインで展開しているサービスも盛んです。このようなサービスの買い取り手続きでeKYCの利用が増えており、オンラインで簡単に中古品の買い取りを申し込むことができるようになっています。

参考:古物営業法|e-Gov法令検索

携帯電話の購入における手続き

携帯電話の普及で生活が便利になった一方で、振り込め詐欺をはじめ、携帯電話を悪用した犯罪が社会問題化しました。その対策として「携帯電話不正防止利用法」が施行され、携帯電話の不正譲渡や貸与をした者は罰せられるようになりました。

また、通信キャリアに対しては、携帯電話の契約締結や譲渡する際の本人確認が義務付けられました。

従来まで、本人確認の際には、窓口に本人が確認書類を持参して手続きする必要がありましたが、最近は通信キャリアの会社でもeKYCが導入され、スマートフォンで撮影した契約者の顔や本人確認書類で手続き完了することも可能です。

契約時のeKYC活用と合わせて、オンラインアプリによるサービスの利用時にも、eKYCによる本人確認を行っています。

参考:携帯電話不正利用防止法|総務省

インターネットチケットの購入

イベントの主催者や企業が、eKYCを導入しているケースも増えています。インターネットチケットの購入者は、顔写真や顔写真の付いた本人確認書類を撮影し、送付・登録を行うことが必要です。

これにより、入場時に登録された顔写真を使用して本人確認が行われることになり、高額転売を目的とした購入者によるチケットの買い占めなどを防止できます。その結果、イベントを楽しみにしているファンに対して、適切なチケット分配がしやすくなりました。

カーシェアリングの申し込み

移動が容易になる小型電気自動車などのカーシェアリングサービスにも、eKYCの導入が増えています。つまり、自動車を貸し出す際にも、盗難などのリスクを回避するために本人確認が必須となっています。

しかし、本人確認を対面や郵送で行うのは時間がかかるため、eKYCの導入でサービスの利便性を高めています。eKYCの活用により、スマートフォンを利用して本人確認ができるため、利用者と提供者双方の手間や時間を削減可能です。

また、カーシェアリングサービスでは運転免許証の確認が必要ですが、eKYCの導入により本人確認と同時に運転免許証のチェックができる点も便利です。

まとめ

eKYCは、オンラインで本人確認を行うための仕組みで、2018年の法改正により普及し始めました。携帯電話やインターネット銀行の申し込み時などに利用され、本人確認の処理が従来と比べて簡略化されています。

顧客が身分証明書の写真や顔の画像を撮影して送付すると、eKYC技術によって自動的に確認が行われます。これにより、店舗訪問や書類提出が不要となり、手続きを迅速かつ確実に行うことが可能です。

eKYCはデジタル時代のニーズに応える革新的な手法として、今後ますます普及しながら広範囲に利用されていくでしょう。

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