基幹システムの入れ替えに失敗する理由は?成功のためのポイントを解説

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  • 基幹システムの入れ替えは、技術者の退職やDX推進のタイミングでの検討がおすすめ
  • 基幹システム入れ替えを失敗する原因に、現場の声を聞きすぎることなどが挙げられる
  • 基幹システム入れ替えの際は、導入目的の明確化や要件・課題の整理を行うことが重要

基幹システムの老朽化や操作性の悪さを感じている場合は、システムの入れ替えがおすすめです。しかし、システム入れ替えはポイントを抑えていないと失敗してしまうリスクもあります。本記事では、基幹システムの入れ替えや再構築を失敗しないためのポイントを解説しています。

目次

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  1. 基幹システムの入れ替え・再構築を検討するタイミング
  2. 基幹システムの寿命は14年前後
  3. 基幹システム入れ替えの失敗事例と対策
  4. 基幹システム入れ替えの進め方と失敗しないためのポイント
  5. 基幹システムの入れ替えで検討したいこと
  6. まとめ

基幹システムの入れ替え・再構築を検討するタイミング

システムの老朽化など、基幹システムの入れ替え(リプレース)や再構築を検討するタイミングはさまざまです。

老朽化だけでなく、システム会社の撤退や技術者の退職など入れ替えのきっかけとなるパターンは複数あります。以下で入れ替えを検討するタイミングを具体的に解説します。

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システムの老朽化

基幹システムを入れ替えるタイミングとなる理由としてもっとも多く挙げられるのが、システムの老朽化です。基幹システム自体が老朽化している場合は、DX推進のためにも新しいシステムを導入するのが自然な流れです

また、2018年の経済産業省によるDXレポートでは、「2025年の崖」と呼ばれる問題が発生すると予測されています。

2025年の崖とは、DXレポートによると、企業のITシステムが老朽化・肥大化・複雑化・ブラックボックス化した「レガシーシステム」となり、DX推進の妨げとなるため、世界規模でのデジタル競争に遅れを取り、日本経済にも影響を及ぼす可能性があるとされています。

企業においては、老朽化したシステムを放置することにより、維持費管理費も高額化するなど無駄なコストが発生するなどのデメリットがあります。

参考:DXレポート〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜|経済産業省

システム会社の撤退・技術者の退職

基幹システムを入れ替えるタイミングとなるきっかけには、契約中のシステム会社の倒産や撤退、システムの管理を担当していた技術者の退職などが挙げられます。

システム会社が倒産してしまった場合、急にサービスを利用できなくなる場合もあり混乱を招く可能性もあります。また、担当の技術者が退職することで、自社のシステム内容を後任に引き継ぐのが難しいといった問題が浮上することがあります。

しかし、今までのシステム内容に不満などがあった場合は、それらを解消するためのちょうど良いタイミングにもなるためシステムの入れ替えに対しても支持を集めやすいといったメリットもあります。

業務とシステムの乖離

業務の変化に対し、現行の基幹システムが対応できなくなっていなど、業務とシステムが乖離している場合、システムが機能せずレガシーシステムを生む要因となりかねません。その場合、無駄な維持費だけがかさみ、経営を圧迫する原因ともなります。

時代のニーズに合わせた業務を行っていくために、業務とシステムにギャップが現れた時点が入れ替えや再構築を検討するタイミングになります。入れ替え・再構築により、業務内容の変更に柔軟に対応できるシステムとなり、安定した運用が叶います。

従業員の不満が高まっている

ステムの使い勝手が悪いなどで、業務を行う現場担当者などから不満が高まった際には、システムの見直しが必要です。放置した場合、十分に機能しないレガシーシステムにもなりかねません。

機能の追加などで解決する場合もありますが、追加開発によってコストが大きくかかってしまうことも考えられます。そのため、基幹システムの入れ替えを検討することがもっともベストな施策です。

自社で使っているOSのサポート終了

自社で利用しているOSのサポートが終了する場合、OSをバージョンアップする必要があります。その際、OSだけではなく、アプリケーションのバージョンアップも必要となり、アドオンや、その他のカスタマイズも仕様変更を行うため、多くのコストが発生します。

そのため、OSのサポートが終了する場合は、新しい基幹システムに入れ替えるタイミングとしてよい選択肢になります。新しいOSが備わったシステムであれば、安定した動作と安全性を保持することが可能です。

DXを推進したい

基幹システムを入れ替えることで、DXの推進に役立ちます。DXとは、「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略で、デジタル化によって社会や生活のスタイルをより良いものへと変革することを意味します。

先に触れたようにDXは国をあげて推進されており、今の時代において企業の競争力を維持するために欠かせない取り組みです。DXを推進して企業にITを浸透させることにより、経営のあり方や仕組みに新たな付加価値が生まれることが期待できます。

DXを実現するにはそれに見合ったシステムを使う必要がありますが、従来のシステムでは十分に対応できない可能性が高いです。DX化を進めるにあたって、従来の基幹システムを入れ替えるのは有効な手段となります。

グローバル化を検討している

海外事業の展開など、企業でグローバル化を検討している場合、基幹システムもグローバル化への拡張対応が必要になるため、入れ替え・再構築を検討すべきタイミングとなります。

グローバル対応の基幹システムは、従来のシステムに搭載されている機能に加え、複数の国で事業を行うために欠かせない機能が求められます。多国語や通貨に対応していることをはじめ、さまざまな地域の税制や為替への対応も必須です。

基幹システムの寿命は14年前後

基幹システムの寿命とされる期間は14年前後と言われています。基幹システムが正常に動作していても、不要な機能やデータが増えていき、仕様変更などのカスタマイズが必要となる場合があります。

老朽化が進むと、ベンダーのサポート期間が終了したり、OSの期限が切れたりしてシステムに不具合が生じます。一般的にそういった不具合が発生するのは14年前後と言われています。

効率的に安全性を保って業務を行うには、基幹システムの寿命が来る前に入れ替えを検討しなければなりません。

基幹システム入れ替えの失敗事例と対策

基幹システムの入れ替えを行う際、導入の仕方によっては失敗という結果を招くことも少なくありません。過去の失敗事例を参考にすることで、入れ替えを失敗しないための対策が立てられます。

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現場の意見がまとまらない

基幹システムの入れ替えを検討する際、現場の声を無視して無理に導入することはできませんが、現場の意見を聞きすぎると自社の方針から外れてしまい、失敗を招く原因となりかねません。また、現場の意見がまとまらず、すり合わせが上手くいかないことも考えられます。

このように、現場の意見に振り回されてしまうと、システムの導入方針にブレが生じてしまいます。基幹システムの入れ替えに際しては、現場との調整をスムーズに進めるために責任者を決め丁寧に打ち合わせをしていくのが賢明です。

新システム導入の目的が曖昧

基幹システムの入れ替えを行う際は、導入の目的を明確にする必要があります。将来あるべき姿を具体的に描き、自社の方針に沿った基幹システムを導入しなければなりません。

目標が曖昧な状態で基幹システムを導入すると、システムが十分に機能せずにコストだけがかかってしまうため、失敗という結果を招く要因となりかねません。入れ替えを行う際は、明確なビジョンを持って導入することが重要なポイントです。

システムやベンダーが自社に合っていない

基幹システムを入れ替える際、システムの内容やベンダーが自社に合っていない場合、失敗を招く恐れがあります。実際に使用する従業員が使いにくいと感じたり、ベンダーのサポートが十分でなかったりする場合、新基幹システムが軌道に乗りにくくなります。

システム選定の際は、自社の目的や要件にシステムが本当にマッチしているのか、よく確認しなければなりません

また、新基幹システムを導入するにあたって、ベンダーが従業員に対し、システムの使い心地を実際に体験できる無料トライアルを企画したり、研修を行ったりといったサポートを企業と併走して行ってくれるかが重要な選定ポイントです。

既存システムの改善が指標になっている

基幹システム刷新を行う際、既存基幹システムの改善を指標としてしまうことも失敗に繋がる要因です。システム入れ替えにむけて複数のベンダーの提案を受けるうちに、既存基幹システムと比較してしまい、その改善が目標となってしまっているケースも見受けられます。

本来システム入れ替えを検討するに至るのは、システムの仕様やサポートなどに限界を感じたためなので、多くの場合、既存基幹システムの改善では原因の根本的な解決にはなりません

このような失敗をしないためには、ベンダーに基幹システムを刷新する旨やその必要性をを説明して、経営陣の意図に沿った提案をしてもらうことが重要です。

基幹システム入れ替えの進め方と失敗しないためのポイント

基幹システムを入れ替える際は、明確な導入目的・要件を整理し、社内の体制を整える必要があります。また、企業と併走して手厚いサポートを行うベンダーを選定し、システムを実装・運用すると、導入の失敗を避けられます。具体的な手順は次の通りです。

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導入を進める体制を整える

基幹システムを入れ替える際は、要件定義や複数のベンダーとの打ち合わせ、業務内容の整備などで多くの手間がかかります。また、そのために基幹システムに関わる各部門を代表するメンバーを集める必要があります。

スケジュールに合わせて必要な人員を揃え、スムーズに基幹システムを入れ替えられるように体制を整えることが重要です。人員不足などの場合、ベンダーとの調整が間に合わずに予定通り稼働できなくなる可能性があるため、十分な体制を構築しましょう。

導入目的を明確にする

既に述べたように、導入目的の明確化は最も重要なポイントの1つです。システム入れ替えのプロセスにおいては、新システム導入で達成したい目標・解決したい課題を明確にするのが最初のステップとなります。

たとえば、独自開発の従来の基幹システムを管理する技術者が退職するためメンテナンスできる人がいなくなるといったケースでは、将来にわたって安定的にメンテナンスを行うために、保守の外注や誰でもメンテナンスをしやすい仕様にすることを導入の目的とします。

このように、自社の現状を踏まえて新システム導入の目的を明確にし、方針がブレないように社内で共有しましょう。

システムに求める要件を整理する

実際に基幹システムを選定するには、システムに求める要件を洗い出しておかなければなりません。導入目的を達成するためにはどのような機能や仕様が良いのか、具体的にリストアップすることが重要です。この作業は要件定義と呼ばれます。

要件定義は、その後の導入プロセスで手戻りが発生しないように時間をかけて丁寧に行うことがポイントです。方針にズレを生じさせずに導入まで進められるように、詳細な要件定義を行うと良いでしょう。

変化に対応できる柔軟性・拡張性があるかも確認

要件定義では「どのような機能が必要か」という点が特に注目されますが、「将来的な環境変化に対応できるか」という視点も忘れてはいけません。

基幹システムは、事業の成長や税制改正などによ改修が必要となる場合があります。そのため、柔軟性や拡張性があり、継続的に運用できるシステムを選定することも重要なポイントです。

入れ替えを検討しているシステムが、環境の変化に対しどのよう対応できるか確認しておきましょう。基本的な対応としては、プログラムの修正や機能改善、バージョンアップなどが挙げられますが、その際にかかる追加費用も確認しておくと安心です。

問い合わせ・打ち合わせ

要件を洗い出せたら、候補となるシステムを選定してベンダーに問い合わせを行います。その際、ベンダーに自社の導入目的や要件を示し、導入によって実現したいことを正しく伝えることが重要です。要求がうまく伝わらないと、思うように導入が進まないことがあります。

また、実際に導入するシステムが決まったら、スケジュール設定など実装に向けて打ち合わせを行います。スムーズに導入できるように打ち合わせを入念に行うと良いでしょう。

データ移行計画は特に重要

新システム実装に向けた計画において特に重要視したいのが、旧システムからのデータ移行についてです。基幹システムを初めて導入するケースとは違って、システムの入れ替えにおいてはデータを安全に新しいシステムへ移行させなければなりません。

データ移行時には、データの損失や破損を防ぐためにあらかじめバックアップを取っておくなど、計画的かつ慎重な作業が求められます。また、新しいシステムでもデータをきちんと活用できるよう、システム間のデータの整合性を確保する作業も必要です。

今まで蓄積してきたデータをシステム入れ替え後もそのまま使えるかどうかが、新システム導入成功のカギを握る要素の1つとも言えます。

システムの実装・運用

打ち合わせまで完了したら、いよいよシステム実装のプロセスに入ります。新基幹システムを実装し、テストののちリリースを行います。実装からリリースまではシステムの規模により、3〜9ヶ月ほどの期間を要します。

テスト期間中は従来の基幹システムとの併用運用となり、新基幹システムに問題がなく安定して動作できることが確認でき次第、移行となります。テストで問題があれば修正を行うなどして、確実な運用を始められるよう綿密に調整しておく必要があります。

基幹システムの入れ替えで検討したいこと

基幹システム入れ替えの進め方は以上の通りですが、新システムを選定する際に検討をおすすめしたいのが「ERPの導入」と「クラウド化」です。それぞれ以下で具体的に解説します。

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基幹システムの入れ替えで検討したいこと

  1. ERPの導入を検討
  2. クラウド化を検討

ERPの導入を検討

ERPとは、「Enterprise Resources Planning (企業資源計画)」の略で、日本語で言う総合基幹システムを指します。企業資源とはヒト・モノ・カネ・情報を指し、それらを一元管理企業全体の最適化を実現するための経営手法を具現化したものがERPシステムです。

ERPシステムは、会計・販売・生産・在庫・人事・債券など異なる業務データを一元管理することが可能です。そのため、情報資産の集約や活用、効果的な内部統制に役立つ観点から、基幹システムをERPに替える企業も増えています

クラウド化を検討

基幹システムを入れ替え・再構築する際、クラウド化を検討する企業も増えています。オンプレミス型の場合、サーバーやハードウェア導入が必要になるため、導入費用が多くかかります。また、メンテナンスやハードウェアのリプレースなどもあり、運用コストも発生します。

クラウド型はベンダーのサーバーにインターネットを通じてアクセスし、システムを利用するため、サーバーの導入や自社でのメンテナンスも不要です。常に時代に合ったシステムにアップデートされていくため、法改正などにも柔軟に対応できるのがポイントです。

オンプレミス型はセキュリティ面を強化しやすく、通信状況に左右されないといったメリットがありますが、現在ではクラウド型でも通信環境やセキュリティといった課題はクリアされているケースがほとんどです。

クラウド型の場合は月額料金が発生するため、長期的な視点で見ると会社の規模によってはオンプレミス型のほうがコストを抑えられることもありますが、リモートワークへの対応といった観点でも利便性が高いことから、クラウド型が主流になりつつあります。

まとめ

基幹システムの老朽化や操作性の悪さで、使いにくさを感じる場合は、システム入れ替えのタイミングです。しかし、システムを入れ替える際は、現場の声を聞きすぎたり、システムやベンダーが自社に合わなかったりすると、導入失敗という結果を招いてしまいます。

入れ替えを失敗しないためには、導入目的の明確化や、要件・課題の洗い出しが重要なポイントです。また、開発会社の慎重な選定や、ERPシステム、クラウド化なども視野に入れて検討すると良いでしょう。

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