自治体で電子契約の導入が進む背景|メリット・デメリットを解説

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  • 地方自治法施行規則が改正されたことで自治体での電子契約の導入が進んでいる
  • 地方自治法施行規則が改正されたことで自治体でも事業者署名型ができるようになった
  • 自治体で電子契約システムを利用する際は、機能だけでなく、操作のしさすさも確認する

2021年に地方自治法施行規則が改正されたことをきっかけに、自治体への電子契約の導入が進んでいます。本記事では、自治体への電子契約の導入が進んでいる背景と、電子契約システムを導入するメリット・デメリット・課題の他、選ぶ際のポイントも解説します。

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目次

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  1. 総務省が進める「スマート自治体」とは?
  2. 自治体に電子契約の導入が急速に進んでいる理由
  3. 自治体で電子契約を結ぶ際の要件
  4. 自治体が電子契約システムを導入するメリット
  5. 自治体が電子契約システムを導入するデメリット・課題
  6. 自治体における電子契約システムの選び方
  7. まとめ

総務省が進める「スマート自治体」とは?

「スマート自治体」とは、進化するデジタル技術を駆使し、持続可能な形で行政サービスを提供する自治体のことです。

「スマート自治体」を実現するための3原則の中に「行政手続きを紙から電子へ」というものがあります。具体的には、デジタル技術の活用によって、住民が窓口に来なくても所期の目的を実現することと自治体が紙媒体の書類をシステムに入力する負担を軽減することを目指すものです。

自治体が電子契約システムを導入することは、「スマート自治体」を実現するための貴重な一歩になるでしょう。

参考:「スマート自治体」の実現|総務省

自治体に電子契約の導入が急速に進んでいる理由

一般企業にリモートワークが広く導入されていく昨今、自治体も様々な業務がデジタル化されてきています。ここ数年で多くの自治体が、脱ハンコを目指して電子契約システムを導入・検討しているのが現状です。

ここでは、自治体に電子契約の導入が急速に進んでいる主な理由について解説します。

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地方自治法施行規則の改正

自治体に電子契約の導入が急速に進んでいる大きな理由の1つに、2021年に地方自治法の同施行規則が改正されたことが挙げられます。この改正によって電子契約システムを導入する自治体が急速に増加しました。

改正前は、自治体が電子契約をする場合、厳格な手順で発行された電子証明書の送信が必須でした。導入する契約システムには、書類の改ざんを検知したり、なりすまし防止など、厳しいセキュリティ機能を有している必要があります。

また、地方公共団体情報システム機構や認定認証事業者が発行したもの、或いは登記官によって作成されたものから、いずれかの電子証明書を取得しなければなりません。

しかし、地方自治法の同施行規則が改正されたことでそれらが不要となり、自治体が電子契約を導入するハードルが下がったことで、導入しやすくなっているのが現状です。

参考:地方自治法施行規則の一部を改正する省令等の公布及び施行について|総務省

事業者(立会人)署名型が利用可能になった

地方自治法施行規則改正前は、一般企業で導入されている事業者(立会人)署名型が、地方自治法で定められた電子証明書の要件によって自治体では利用できませんでした。そのため、自治体に電子契約システムの導入がなかなか進みませんでした。

しかし、改正後は自治体で事業者(立会人)署名型が利用できるようになったことが、自治体で電子契約が導入されるようになった理由の1つです。

ここでは、改正前に自治体に導入されていた当事者署名型と、改正後に自治体も利用可能になった事業者(立会人)署名型の2種類の電子契約における署名方式について解説します。

当事者署名型

当事者署名型は、地方自治法施行規則改正前に、自治体で導入されていた電子契約における署名方式です。

当事者署名型は、契約当事者双方が認定認証事業者によって発行された電子証明書を取得し、署名する方式です。一般的に、電子証明書の取得が必要な契約は、当事者署名型であると言えます。

当事者が署名していると強く認識させることができるため、証拠能力が高いと判断されるのが特徴です。一方で、取引先にも電子証明書を取得してもらい、同じ電子契約システムを利用してもらう必要があるため、あまり実用的でないのがデメリットです。

このように、取引先にも負担がかかるという理由から、自治体では普及しなかったと言われています。

事業者(立会人)署名型

事業者(立会人)署名型は、クラウド型署名とも呼ばれ、電子契約サービスが立会人となることで、当事者による電子証明書の取得を必要としない署名方式のことです。

以前からほとんどの一般企業で導入されている電子契約方式です。しかし、自治体は地方自治法施行規則の改正前は、地方自治法で定められた電子証明書の要件によって、事業者(立会人)署名型を利用することはできませんでした。

マイナンバーによる電子証明書が認められるようになった

国が推進するマイナンバーカードによる電子証明書が自治体の電子契約にも認められるようになったことも、自治体に電子契約が導入されやすくなった要因です。本来、当事者署名型は、当事者が電子契約書を取得する必要があります。

しかし、マイナンバーカードによって手軽に電子証明書として利用できるようになりました。

参考:公的個人認証サービスによる電子証明書|総務省

自治体で電子契約を結ぶ際の要件

地方自治法施行規則の改正後は、本人性と非改ざん性の2つの要件を満たす電子契約システムであれば、自治体でも利用することができます。ここでは、自治体で電子契約を結ぶ際の要件について解説します。

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自治体で電子契約を結ぶ際の2つの要件

  1. 本人性
  2. 非改ざん性

本人性

当事者による電子証明書の取得を必要としない電子契約では、本人性を厳密に担保する電子契約システムである必要があります。

電子署名が本人によって署名されたことが証明できることが必要で、署名の際に本人のパスワードやID・SMS認証などを必要とするセキュリティが高い電子契約システムであることが要件です。

本人性を担保することで、本来署名すべきでない第三者による署名・なりすましを防ぐことができます。

非改ざん性

自治体が電子契約を結ぶには、非改ざん性の確保が必要です。つまり、電子署名後に改ざんされていないことが証明できる電子契約システムを利用することです。紙の文書における署名・押印と同じ効力を電子データの文書に対しても持たせる電子サインなどを利用します。

電子サインを付与することで、本人性と非改ざん性を証明することが可能です。

自治体が電子契約システムを導入するメリット

電子契約を導入すると、手間やコストの削減など、さまざまな方面でメリットがあります。ここでは、自治体が電子契約システムを導入するメリットについて詳しく解説します。

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検索・閲覧性が向上する

自治体が電子契約システムを導入する大きなメリットの1つが、検索・閲覧性の向上です。多くの自治体では、3年程度で部署を移動するのが通例であり、紙の契約書の場合は膨大な枚数の整理・管理が必要になります。

人為的ミスなどで間違ったところに保管された場合、大量の書類から目的の書類を見つけ出すだけでも手間と時間がかかり、業務の生産性が大きく低下してしまいます。

一方で電子契約であれば、膨大な枚数の紙の整理・管理をする必要がなく、検索機能によって目的の書類を瞬時に探し出すことができます。また、手間と時間の削減だけでなく、閲覧性も向上するため、細部にわたって明確な契約ができるのもメリットです。

現在では、電子契約システムを導入することで検索・閲覧性が向上し、業務の効率化・正確性を両立することができるようになっています。

また、相手側がファイルを開いたり、電子サインをしたりなどのアクションが履歴に残るので、契約状況を一目で把握することが可能です。契約業務をデジタル化することによって、紙の契約では見えていなかったところまで可視化することができます。

承認プロセスが簡略化される

承認プロセスが簡略化されるのも電子契約システムを導入するメリットの1つです。自治体の中の承認プロセスは複雑であることが多く、時間がかかります。離れた場所にある複数課での承認が必要な場合、今までは紙の書類を回覧して承認するのが一般的でした。

そのため、全ての機関で承認を得るのに数週間以上かかることも多く、スムーズな契約ができません。一方で、電子契約システムであれば、オンラインで各機関情報を共有していつでもどこでも認証ができるので、大幅に業務の効率化ができるのがメリットです。

効率的に契約書を作成できる

電子契約システムを導入すると、効率的に契約書を作成することができます。電子契約は製本作業や印刷が不要なので手間がかかりません。また、契約書の作成もテンプレートを使用するので、ゼロから作成する必要がなく、業務の作業効率を向上することができます。

また、電子契約書に必要な電子サインはオンラインで付与できるので、署名・捺印のためだけに書類の郵送でやり取りする必要もありません。

コンプライアンスが強化される

電子契約は、自治体のコンプライアンス強化に直結します。紙の契約書の場合、紛失・改ざん防止・ページの抜き差しなど、トラブルを防止するために厳重なセキュリティ管理が必要です。

また、保管期間内の書類全てを管理する必要があるので、膨大な書類を保管するスペースが必要になります。しかし、電子契約システムを導入すれば、アクセスや閲覧に制限をかけて手軽にセキュリティを強化することが可能です。

また、契約書はデータであり、システム上で管理することができるため、物理的な管理スペースを設ける必要がないのもメリットです。これらのことから、電子契約システムを導入すれば、自治体全体のコンプライアンスが強化されると言えます。

コスト削減につながる

電子契約システムは、オンラインで契約書の作成から締結までできるので、コスト削減につながります。電子契約システムは、紙の契約書に必須であった、印刷・製本・郵送などにかかるコストが必要ありません。

電子契約システムの導入にはコストがかかりますが、ペーパーレス化や業務効率化によるコスト削減のメリットが非常に大きいので、全体的なコストの削減が期待できます。

自治体が電子契約システムを導入するデメリット・課題

自治体が電子契約システムを導入すると、メリットだけでなくデメリットも存在します。ここでは、自治体が電子契約システムを導入するデメリット・課題について詳しく解説します。

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業務フローの見直しが必要

これまで紙の契約書を利用していた場合、過去のやり取りや現在進行中のやり取りを電子契約へ移行する必要があります。契約システムが大きく変わるので、業務フローの徹底した見直しが必要であり、導入時は手間が増えることがデメリットです。

担当者だけでなく、自治体全体で電子契約システムについての理解や共通認識を持たなければ、解釈の相違や人為的ミスなどにより、却って無駄な業務を増やしかねません。電子契約システムの正規導入前の事前研修やマニュアルをしっかりと準備する必要があります。

取引先との合意が必要

電子契約システムを利用する場合、取引先に契約は電子契約であることを伝えて合意を得る必要があります。電子契約は当事者双方が電子契約システムを導入してはじめて利用できるので、取引先が紙の契約書しか扱っていない場合は対応できません。

電子契約システム導入前に、取引先にしっかりと説明し、電子契約に対応できるかの確認が必要です。電子契約に対応できる取引先には、専用のマニュアルを設けておくとスムーズに移行できます。

電子契約に対応できない契約もある

現在は、ほとんどの契約や電子契約に対応していますが、一部の契約は電子契約に対応していないのが現状です。例えば、定期借地契約書・定期借家契約書・宅建業者の媒介契約書・不動産売買における重要事項証明書などは紙の契約書でやり取りする必要があります。

これらは、権利関係の重要性が高いことから、書面での契約が義務付けられています。また、任意後見契約書・訪問販売等で交付する書面も電子契約に対応できていません。しかし、法改正によって、今後これらの中にも電子契約に対応していく可能性はあります。

説明会・問い合わせ対応

自治体は公共の窓口であるため、電子契約システムを導入した場合、特定の取引先だけでなく、近隣住民や地域の一般企業にもその旨を認知させる必要があります。

ホームページ・ポスター・フライヤーなどで積極的に周知させ、電子契約システム専用の問い合わせ窓口の設置や説明会を実施するなど、地域住民の不安に対応できる準備が重要です。

自治体における電子契約システムの選び方

現在では、多種多様な電子契約システムが展開されています。正しく、安全かつ便利に利用するなら、それぞれの自治体に合った電子契約システムを選ぶことが重要です。ここでは自治体における電子契約システムの選び方を紹介します。

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自治体における電子契約システムの4つの選び方

  1. 導入実績を確認する
  2. 機能を確認する
  3. 操作性を確認する
  4. サポート体制は十分か

導入実績を確認する

自治体が導入する電子契約システムの場合、導入実績を確認することが非常に重要です。電子契約を導入するには、自治体だけでなく、取引先や地域住民の協力が必須であるため、安心してもらえるように導入実績が豊富な電子契約システムがおすすめです。

認知度が高く、導入実績が豊富な電子契約システムは、取引先がすでに利用している場合もあるので選択肢に入れておくと良いでしょう。

機能を確認する

電子契約システムは、機能が非常に重要なポイントです。不正やミスを防止するワークフロー機能や契約書作成業務を大幅に効率化できるテンプレート機能、過去に締結した紙の契約書とデータをまとめて管理できる一元管理機能などがおすすめです。

自治体が導入するのであれば、必要な機能が揃っているかはもちろんですが、不要な機能が多いと却って扱いにくいデメリットがあるので機能面をよく精査する必要があります。

操作性を確認する

電子契約システムは、システム移行に伴う業務負担を減らすために操作性を確認する必要があります。操作性が複雑なシステムは却って効率が悪くなってしまうので、職員が扱いやすく、スムーズなデータの移行ができるか確認しておきましょう。

また、職員だけでなく、地域住民など一般の方が扱いやすいかも大切です。

サポート体制は十分か

電子契約システムを導入する際、サポート体制が十分であるかをしっかりと確認しておきましょう。使用する前の疑問や、導入後に使っていく中での課題やトラブルなどにしっかりと対応してくれるサービスを選ぶのがおすすめです。

初期設定などの導入サポートや導入コンサル、オンラインでの説明会の有無の確認、メールだけでなく電話での問い合わせにも対応可能かなどを確認しておくと良いでしょう。また、自治体だけでなく、取引先や一般の方々へのサポートも充実していると安心です。

まとめ

電子契約システムは、従来の書面での契約より、はるかに効率よく低コストで契約できるシステムです。地方自治法施行規則の改正によって、自治体でも導入しやすくなり、職員だけでなく利用者の利便性も向上しています。

一方で、システム変更時の見直しや、一部の契約にはまだ対応できていないなど、今後の課題があるのも事実です。書面での契約から電子契約に移行する場合、職員に向けたマニュアルの準備だけでなく、取引先や一般の地域住民へしっかりと周知させる必要があります。

電子契約システムの導入を検討する際は、この記事を参考に利用するシステムの選定や準備を行い、効率化やコスト削減といったシステムのメリットを実感できる環境作りを行いましょう。

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