署名とは|記名との違い・契約書への署名ルール・押印の必要性を解説

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  • 署名とは、手書きで自分の氏名を書き記すことであり、他人が書くことは認められない
  • 電子署名は電子サインの一部であり、法的な効力が担保されている
  • 契約書に署名するのは代表者が一般的であるが、権限委譲を受けた従業員でも可能

署名には一定の法的効力が認められているため、契約書に使用されることが一般的です。本記事では、署名について解説します。署名と記名の違い、電子署名についての他、契約書での署名ルールや電子署名時に満たす要件についても紹介します。

目次

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  1. 署名とは
  2. 電子署名とは
  3. 署名の法的効力
  4. 契約書における署名のルール
  5. 電子署名には電子契約システムの利用がおすすめ
  6. まとめ

署名とは

署名とは、自分で自分の氏名を手書きすることです。「自署」「サイン」とも言い換えられます。署名に加えて自分の印鑑を押す場合は、「署名捺印」と呼ばれます。

署名または署名捺印が必要な場面としては、契約書の締結が代表的です。なお、署名だけでも法的には有効ですが、捺印が加わることで、更に信用性が高くなります。よって重要な契約・書類の作成時には、署名よりも署名捺印が望ましいでしょう。

前述の通り、署名の要件を満たすには「自分で」氏名を書かなければなりません。本人に頼まれるなどし、代理として他人が書く場合は、代理署名と呼ばれます。

身体的・年齢的な事情などがあり、本人による署名が難しい場合は、代理署名も有効とされています。

記名との違い

署名と記名の違いは、本人の手書きかどうかです。署名は本人が氏名を手書きするのに対し、記名は本人の手書き以外の方法で氏名を記す行為を指します。たとえば次のようなものが含まれます。

  1. 第三者が本人の氏名を代筆する
  2. (本人or第三者が)名前が入った印鑑を押す
  3. (本人or第三者が)名前を書面などに印刷する

記名に加えて印鑑を押す場合は「記名押印」と呼ばれます。署名と記名には、法的効力の点でも大きな違いがあります。法的効力があるのは署名のみです。記名には原則として法的効力はありませんが、押印を付け加えれば法的効力を持たせることが可能です。

契約を正式に締結する場合は、契約書への署名(捺印)が必要です。署名は手書きであるため、筆跡鑑定をすれば本人の手跡かどうか判別できます。

よって契約書に署名を付与することで、本人が契約書を作成したという証明になります。つまり、その契約が間違いなく本人によってなされたという証拠になるのです。

たとえば訴訟などに発展した場合、証拠書類として契約書の提出が求められます。証拠書類は当然ながら信頼性が担保されていなくてはなりません。その信頼性を担保するための手段が、間違いなく本人が締結した契約であることの証明=署名捺印です。

一方、記名には、印鑑・印刷による氏名の記載または他人の代筆も含まれます。第三者が悪意を持って本人になりすまして契約書を作成した可能性が含まれるため、署名捺印のような信頼性はありません。よって、法的効力も無効となります。

電子署名とは

電子署名とは、電子文書に付与する署名です。書面契約の場合、署名は手書きで行いますが、電子文書には手書きする訳にいきません。そこで、電子証明書と公開鍵暗号技術を用いた電子署名というものを付与します。

電子証明書とは、認証局が認証する身分証明書です。電子署名には電子証明証のデータが組み込まれており、電子文書に付与することで、その文書は間違いなく本人が作成したということを証明できます。

また、公開鍵暗号技術とは公開鍵・秘密鍵の1対の鍵を利用し、データの暗号化・複号化を行なう技術です。簡潔にいえば、付与されたデータの安易な複製を防ぐための技術です。

他者による電子署名の複製はできません。よって電子署名が付与された電子文書自体も、複製ではない、すなわち本人が作成した原本であると証明できます。

電子署名は電子証明証・公開鍵暗号技術という信頼性の高い仕組みを有することから、手書きの署名と同じく、法的効力を有します。

電子サインとの違い

電子証明書と電子サインの違いは、電子証明証と公開鍵暗号技術の有無です。電子サインとは電子文書に付与される署名ですが、電子署名のような電子証明書・公開鍵暗号技術はありません。

また、署名のほかに印鑑・しるしなどを含み、書面契約でいう署名・記名の両方の性質を備えているといるのが特徴です。署名に当たるため原則として法的効力が発生し、実際に、電子サインを用いて電子契約を締結するケースは多いです。

ただし、電子サインは電子署名に比べると簡易的な署名であることから、信頼性や法的効力はあまり高くありません。

一方、電子署名とは、電子サインに認証局が認証する身分証名称(電子証明証)と公開鍵暗号技術を組み込んだものです。電子サインよりも信頼性が高く、より高い法的効力を持たせたい電子文書に用いられます。

署名の法的効力

署名には法的効力があります。署名とは自筆の氏名であり、筆跡鑑定すれば本人が書いたという証明ができるためです。

なお、民法228条(文書の成立)の第4項では、以下のように示されています。

【4 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。】

契約書などの私文書は、署名の付与により、法的な証拠能力を担保できます。より高い法的効力を担保する場合は、署名に捺印を施す「署名捺印」が適当です。

参考:民事訴訟法|e-GOV法令検索

契約書における署名のルール

契約書に署名を施す際のルールをご紹介します。誤った署名は法的効力が無効となることがあります。法的効力を担保するためにも、署名の基本的なルールを理解しておきましょう。

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署名は代表者が行うのが原則

企業間の契約の場合、署名は原則として企業の代表者同士が行います。企業の場合、業務に関するあらゆる行為の権限は代表者にあるためです。業務に関するあらゆる行為には、契約における署名も含まれます。

権限委譲を受けた従業員による署名

署名は原則として企業の代表が行いますが、権限委譲を受けた従業員でも可能です。たとえば契約の頻度が高く、代表者が全て対応するのが難しい場合などが該当します。

なお、会社法14条1項は権限委譲を受けた第三者による署名について、次のように規定しています。

【第14条 事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する。

2 前項に規定する使用人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。】

なお、権限委譲を受けた代表者が署名する場合は、職務権限規程を策定するなどして、代理署名する人物を明確化しておく必要があります。誰でも署名できる状態では、署名の信頼性が低下してしまうためです。

なお、署名の権限委譲を受けるのは購買管理部・営業部などの長(部長)が一般的です。

参考:会社法 | e-Gov法令検索

署名の位置

署名の位置に関する法的規定はなく、基本的には契約書のどこに署名してもかまいません。ただし多くの契約書には、会社名・住所の記入欄の末尾に署名欄が設けられています。署名欄が設けられている場合、署名はその位置に行いましょう。

電子署名の場合は電子署名法の要件を満たす

電子署名は署名と同じく、法的効力を有します。ただし、電子署名に法的効力を持たせるには、本人性・非改ざん性の2つの要件を満たす必要があります。

参考:電子署名及び認証業務に関する法律||e-Gov法令検索

本人性

「本人性」とは、電子文書(電子契約書)が間違いなく本人によって作成されたという意味です。電子署名には電子証明証が利用されており、これにより本人性が担保されます。

非改ざん性

非改ざん性とは、契約書が改変されていないという意味です。電子契約においては、タイムスタンプが非改ざん性を担保するための手段となります。

タイムスタンプとは、契約書が作成された日時をあらわすものです。一般的には電子署名の付与時に、タイムスタンプも付与されます。タイムスタンプの付与後に契約書が改変された場合は、その履歴が残るため、改ざんの有無が一目で確認できます。

電子署名には電子契約システムの利用がおすすめ

電子署名を用いて電子契約を行う場合は、電子契約システムの利用がおすすめです。電子契約システムとは、契約に関する一連の業務を全て電子上で行えるシステムです。電子契約には次のようなメリットがあります。

  1. 契約書のプリントアウト・郵送などが不要で、契約業務を一元化できる
  2. インク代・紙代・郵送代・印紙代などのコストをカットできる
  3. 契約書の物理的な保管スペースが不要

電子契約システムの多くは、電子署名に対応しています。導入すれば、必要項目を設定・入力するだけで電子文書に簡単に電子署名を付与でき、電子署名を行うための準備を別途行う必要はありません。

契約業務の効率化を狙う場合は、電子署名を簡単に行える電子契約システムの導入を検討しましょう。

電子契約システムとは?仕組みやメリット・デメリットを解説

電子契約システムとは、企業などが契約時に交わす署名や押印等の書類でのやり取りを電子上で行うことができるシステムです。この記事では、電子契約システムの仕組みや、メリット・デメリット、選び方や導入する際の注意点などを解説します。

まとめ

署名とは、本人が氏名を手書きすることです。筆跡を鑑定すれば本人のものかどうか証明できることから、法的効力を有します。より法的効力を高めたい場合は署名捺印が適しています。

一方、電子署名とは電子文書に付与する署名です。電子証明書と公開鍵暗号技術が利用されており、署名と同じく法的効力を有します。なお、一般的に契約には電子サインが用いられますが、法的効力を担保したい場合は電子署名の利用が望ましいです。

企業間の契約において、署名は代表者が行うのが原則ですが、権限委譲を受けた他従業員による代行も可能です。なお、電子契約の場合は、電子署名やタイムスタンプによって「本人性」「非改ざん性」を担保する必要があります。

電子契約システムは電子署名機能を備えたものが多いため、別途電子署名の準備や付与にコストをかけたくない場合は、導入を検討しましょう。

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