労務管理システムとは?メリット・デメリット、機能や選び方を解説

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- 労働管理システムでは、従業員の労働時間や保険などの管理、労務手続きができる
- 労働管理システムの導入で、書類作成・管理の効率化や役所に提出する手間を削減できる
- 労働管理システム導入の際は、自社の業務や電子申請に対応しているかを確認する
労務管理システムとは、従業員の労働時間や社会保険・労働保険などの管理、労務手続きが行えるシステムです。本記事では、労働管理システムをよく知らない方・導入を検討している方に向けて、システムの機能や選び方、メリット・デメリットを解説します。
目次
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労務管理システムとは

労務管理システムは、企業における労務関係の処理を効率化・ペーパーレス化させるシステムです。特に、従業員数の多い企業では、従業員一人ひとりに関わる労務管理は膨大な作業量になるため、システムを用いて負担を抑えている企業が多いです。
労務担当者は日々さまざまな処理に追われますが、それらを紙ベースで行っていると効率が悪く、多くの時間やコストを費やすことになります。労務管理システムを利用すれば、あらゆる労務データをシステム上で一元管理し、スムーズに処理を行うことが可能です。
そもそも労務管理とは
労務管理とは、労働時間管理・社会保険加入管理・従業員の賃金の精算・福利厚生管理など、労働基準法などに則って従業員が働きやすいと感じる環境づくりを行う業務のことです。
雇用や労働に関わる法規則に違反するリスクを排除し、企業の信頼性・健全性を高めるとともに、より良い労働環境を整えることで生産性の向上を図ります。

労務管理とは、勤怠管理や給与計算など従業員の職場環境を管理する業務のことで、企業の生産性を向上させるために重要な業務となります。本記事では、労務管理の目的・課題・仕事内容や、労務管理をする際のポイント、労務管理に役立つ資格について解説します。
労務管理と勤怠管理の違い
労務管理と類似した業務に勤怠管理があります。勤怠管理は労務管理の一部で、従業員の就業状況を管理することです。具体的には、従業員の出退勤時間・出社日数・休憩時間などを管理します。
勤怠管理は、従業員の賃金に関わるため毎日行わなければなりません。法律を順守した従業員の適正な労働に対して正当な賃金を支払い、正しい税金や保険料を計算するために必要です。
労務管理はより広範な業務を指す言葉ですが、法規則や企業ごとの規則を遵守し、適切な労働環境を守るという労務管理の目的を達成するために、勤怠管理も重要な役割を果たしています。

労務管理と勤怠管理の違いは?必要性や業務内容、システム化について解説
この記事では労務管理と勤怠管理の違いを解説します。労務管理は、従業員の賃金や健康管理を労働法規に基づき管理することです。一方で勤怠管理は労務管理の一部で、従業員の勤務時間数など内容を正確に管理することです。近年の働き方改革などにより重要度が増しています。
労務管理システムの導入が進められる背景
労務管理は、従業員の多い企業や従業員の入社・退職が頻繁にある企業にとっては、労務管理担当者の大きな負担となる作業です。勤怠管理を紙の書類で行っていると、気付かない間に従業員の法定労働時間を超えて働かせてしまうケースが生じます。
そのような場合には、労働基準監督署からペナルティが課されることもあるため、労働時間の管理は給与の支払い、従業員の健康管理、法令遵守の観点などからも重要であり、万全の管理が必要です。
また、労務管理が適切に行われていないと、雇用や労働に関する法律に違反してしまうリスクがあります。法律に関わる重大なミスを引き起こさず、効率的に作業を行うためにはシステムの導入が有効です。
働き方改革の推進で労務管理はより重要に
働き改革とは、多様な働き方の実現、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保、長時間労働の是正などを実現するための法律改正のことで、2019年4月に施行されました。有給休暇取得の義務化・時間外労働の上限化などが定められています。
労務管理システムがあれば、書類の手作業での転記が不要になり、労務管理事務の担当者における負担が軽減されます。その結果、組織を健全に運営するための労務管理の質が高まり、組織全体の働き方改革によって職場に良い影響を与えるでしょう。
参考:働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号)の概要|厚生労働省
労務管理システムの機能

労務管理システムでできることは、従業員の入社と退社の手続き、従業員管理、年末調整手続き、雇用契約書の作成と締結、就業規則や福利厚生の管理、勤怠管理・給与計算などです。これらを実現する機能について、1つずつ詳しく解説します。
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機能 | 概要 |
---|---|
入社・退社の手続き | ・雇用保険の資格取得喪失書類の作成 ・提出扶養控除申告書の作成 ・提出社会保険書類の作成と提出 |
従業員情報の管理 | ・従業員リスト作成管理住所変更等の管理社員IDの管理 |
年末調整の手続き | ・源泉徴収票の作成 ・提出給与支払い書の作成・ ・提出所得税徴収高計算書の作成 ・提出扶養控除等申告書の作成と提出 ・保険料控除申告書の作成と提出 |
雇用契約書の作成・締結 | ・雇用契約書の作成 ・締結機密保持作成の作成と締結 |
就業規則や福利厚生の管理 | ・就業規則の決定 ・修正福利厚生管理の決定・追加 |
勤怠管理・給与計算 | ・従業員の出社退社の管理 ・給与明細のWeb上での管理・閲覧 |
マイナンバーの管理 | ・万全なセキュリティ管理のもと従業員のマイナンバーを管理 |
入社・退社の手続き
従業員が入社すると、社会保険なら「健康保険・厚生年金被保険者資格取得届」、雇用保険なら「雇用保険被保険者資格取得届」や雇用契約書など、さまざまな書類の作成が必要です。転職者の場合は、「給与所得者異動届出書」の作成も求められます。
保険書類関係以外にも「給与所得者の扶養控除等申告書」の作成も行わなければなりません。退職時には、「源泉徴収票」の作成や住民税に関係する書類の交付も必要です。
企業はこれらの書類を作成し、関係機関への提出が義務付けられています。労務管理システムを導入すれば、これらの作業がシステム上で簡便に行えるようになります。
従業員情報の管理
従業員の管理には、個人情報はもちろん、転居時の住所管理、扶養家族の追加と削除なども含まれます。労務管理システムを導入すれば、従来の紙の書類の処理ではなく、すべてシステム上で従業員情報の管理が行えます。
個人情報を紙の書類で処理する場合、紛失や不正閲覧などセキュリティ面での不安が残ります。労務管理システムが導入されれば、紙の書類を不正閲覧されることなく、物理的な情報漏洩のリスクを軽減できます。
年末調整の手続き
労務管理システムを利用すれば、年末調整関連の業務がオンライン上で完結します。「住宅ローン控除申告書」や「住宅ローン残高証明書(1年目は確定申告が必要)」の処理もシステム上で行えます。
年末調整は、1年に1度は必ず行わなければならない煩雑な作業です。年末調整には、基本的に以下の3種類の書類の提出が必要です。
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書
- 給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書
年末調整の手続きは作業量が多く時間を要しますが、労務管理システムを導入すれば、システム上ですべての処理が行えるため、紙の書類のやり取りが不要になり時間短縮につながります。
雇用契約書の作成・締結
従業員の入社時に必要な雇用契約書の作成や締結も、労務管理システム上で行えます。その他、機密保持契約書など重要書類の契約もシステム上で完結します。
入社時に必要な書類の作成のほとんどがシステム上で行えるため、事務処理が迅速化するのが大きなメリットです。新入社員が数百人にわたるような企業でも、年度初めの煩雑な入社手続きをスムーズに行えます。
就業規則や福利厚生の管理
会社の就業規則や福利厚生の管理がシステム上で行えます。就業規則や福利厚生は、従来の紙の処理の場合、追加や修正などが発生した際に再度プリントアウトしたり、訂正印を押印したり、用紙を差し替えたりしなければなりませんでした。
しかし、労務管理システムを導入すれば、こういった作業がすべてシステム上で行えます。修正後はすぐにメールなどで従業員に周知でき、働きやすい環境づくりへの取り組みを広めることも可能です。
勤怠管理・給与計算
労務管理システムを使用すると、従業員の勤怠管理や給与計算がシステム上で行えます。労働基準法では、賃金は直接労働者に全額支払うことが定められ、労働時間は1分単位でカウントするのが原則です。つまり、15分や30分で区切る「丸め処理」は違法となります。
法律に則って給与計算を手作業で行うのは非常に手間がかかり、正確性の維持が困難です。また、従業員ごとに基本給が異なるため、残業時間の計算も複雑化します。システム上で計算を行えば、適切かつ正確に給与を計算できます。
さらに、出勤時の打刻が正確に行われているか、規定残業時間をオーバーしていないかなどをシステム上で管理できることから、コンプライアンスの遵守にもつながります。
なお、社会保険や厚生年金に関する計算もシステム上で問題なく行えます。システムによっては勤怠管理や給与計算が別々のシステムの場合もありますが、労務管理システムで一括で可能なものも多いです。
マイナンバーの管理
システムによっては、マイナンバーの管理も行うことができます。これから労務管理システムを導入する場合は、マイナンバー管理機能も組み込まれたものを導入すれば、必要情報を従業員から収集し、万全なセキュリティ対策の元でマイナンバー管理が行えます。
マイナンバー管理を手作業で行うのは、リスクと手間がかかります。マイナンバーの管理機能では、不正閲覧防止に向けた対策も施されているため、セキュリティ面でも安心です。
労務管理システムと人事管理システムの違い

人事管理システムも、労務管理システムと似たような機能を持っています。一般的に、人事管理システムは、人材配置や人事育成、人事評価などを行って組織づくりを行う業務をサポートするシステムです。
「人事労務管理システム」と呼ばれるものもありますが、それらには、労務管理に加えて人材の最適な配置や育成を支援する機能が備わっています。

人事管理システムとは?種類や機能一覧・メリット・選び方・導入事例も解説
人事管理システムとは、従業員の情報や勤怠、労務などの人事業務に関する情報を一元管理できるシステムです。上手に活用することで業務効率化や人為的ミス防止に繋がります。本記事では、人事管理システムの機能やメリット・デメリット、選び方、導入事例を比較しながら解説しています。
労務管理システムのメリット

労務管理システムは、書類作成・管理の効率化や申請の簡略化など、導入によって多くのメリットを得られます。ここでは、労務管理システムのメリットを詳しく解説します。
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労務管理システムのメリット
書類作成・管理の効率化
システムの導入で、書類作成時の手間や人為的ミスが軽減され、紙の書類の場合は管理の際に起こりうる書類紛失などのリスクを解消できます。さらに、事務処理の効率化も図れます。
労務管理関係の書類を作成する場合、扶養家族や住所、電話番号、生年月日など、さまざまな個人情報を収集しなければなりません。また、収集した情報の管理や検索も煩雑で時間がかかります。
しかし、労務管理システムがあれば、従業員本人に個人情報をシステム上で入力してもらうことから処理が迅速に進み、情報漏洩のリスクも軽減します。情報の管理や検索もシステム上で行えるため、大幅な効率化が図れます。
役所への申請を簡単に行える
労務管理システムを導入すると、業務担当者が役所へ赴く手間や郵送を必要とせず、電子申請が可能です。社員数の多い大企業などは、書類を郵送する送料だけでも多額の料金がかかるため、電子申請によって雑費を軽減できるのもメリットです。
手作業での郵送は、送付先の記入ミスや委託先の誤配送などのリスクが伴う反面、労務管理システムの電子申請は安全かつ担当者の負担軽減も可能です。
書類を受理する厚生労働省も電子申請を推進しており、特定の法人(資本金・出資金1億円以上の大企業など)に対しては、電子申請が義務化されています。
電子申請の義務化について
2020年4月より、以下に当てはまる企業には、健康保険・厚生年金保険・労働保険・雇用保険に関する手続きについて、電子申請が義務化されています。
- 資本⾦、出資⾦⼜は銀⾏等保有株式取得機構に納付する拠出⾦の額が1億円を超える法人
- 相互会社
- 投資法人
- 特定目的会社
なお、これらの条件に当てはまらない企業も、将来的なことも見据えて電子申請への準備を進める必要があるといえます。
参考:2020年4⽉から特定の法人について 電子申請が義務化されます。|厚生労働省
労働安全衛生関係の一部手続きも義務化
2025年1月1日から、すべての企業を対象に、労働安全衛生に関する一部の手続きが電子申請での提出を原則として義務化されました。厚生労働省をはじめ、複数の公的情報に基づく対象の手続きは以下のとおりです。
- 労働者死傷病報告(安衛則様式23号・様式24号)
- 総括安全衛生管理者選任報告(安衛則様式第3号)
- 安全管理者選任報告(安衛則様式第3号)
- 衛生管理者選任報告(安衛則様式第3号)
- 産業医選任報告(安衛則様式第3号)
- 定期健康診断結果報告(安衛則様式6号)
- 心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告(安衛則様式6号の3)
- 有害な業務に係る歯科健康診断報告(安衛則様式6号の2)
- 有機溶剤等健康診断結果報告(有機則様式3号の2)
- じん肺健康管理実施状況報告(じん肺則様式8号)
これらは業種や従業員数を問わず、すべての事業所に適用され、特定の法人だけに限定したものではありません。法改正により、労働安全衛生に関わる法定手続きのデジタル化が大きく進んでいます。
参考:労働安全衛生関係の一部の手続の電子申請が義務化されます(令和7年1月1日~)|厚生労働省
手続きの負担を軽減できる
従業員も入力可能な労務管理システムを導入すれば、従業員と業務担当者間の書類の手渡し・確認にかかる負担がなくなります。多くの労務管理システムが、パソコンやスマートフォン、タブレットなどからも入力可能なマルチデバイスに対応しています。
そのため、従業員が空き時間に入力申請ができ、サテライトオフィス勤務などを含むリモートワークや出張中、在宅勤務でも入力処理が可能です。入力の手間や申請、ミスの修正なども簡単に行え、労務管理担当者の業務を軽減できます。
情報を一元管理できる
労務管理システムでは、労務管理に関わる情報を一元管理できるため、情報の変更や抽出が簡単に行えます。例えば、労働基準法が改正される際、労務・勤怠管理の情報を見直す必要があります。
労務管理システムには検索機能が備わっており、変更が必要な従業員の情報を抽出して一括で変更でき、入力ミスや漏れも防げます。さまざまな従業員の情報を一元管理し、労務管理の業務をより効率的に進めることが可能です。
他システムと連携できる
労務管理システムには、他システムと連携できる機能があります。例えば、労務管理システムと従来使用していた勤怠管理システムや会計管理システムを連携できれば、給与計算とその後の会計処理なども自動的に行えます。
従来まで別々に行っていた業務がまとめて行えるため、業務の簡略化が図れ、人為的ミスも削減されます。一連のバックオフィス業務をシームレスに連携させることが可能です。
複数拠点での労務管理が可能
労務管理システムを使えば、グループ会社など拠点が複数ある企業の場合でも、各拠点での管理を1つのシステムで行うことができます。その結果、拠点ごとに管理方法や基準がばらばらになるのを防げます。
各拠点の担当者が同じシステムを用いて業務を行うため、企業全体で労務管理の均質化を図りながら業務の属人化防止も可能です。担当者が変わった場合にも、混乱が起きにくいといえます。
労務管理システムのデメリット

労務管理システムにはいくつかのデメリットもあります。メリットだけでなく、デメリットも把握したうえで導入を検討しましょう。ここでは、労務管理システムのデメリットを詳しく解説します。
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労務管理システムのデメリット
コストパフォーマンスが悪い場合がある
労務管理システムの導入には、一定の費用がかかります。膨大な情報を簡便に処理するためのシステムであり、従業員が多い会社ほど得られる効果も大きいです。労務管理システムは、多くの従業員の中からある1つの情報を抽出したい場合などに便利です。
そのため、従業員が少ない場合、従来の方法でも労務管理にそれほど時間がかからず、効果の割に費用が高く感じられる可能性があります。従業員が数人の場合でも、処理は煩雑化しやすいため、まずは無料トライアルでシステムを試してみるのがおすすめです。
システムに慣れるまで時間がかかる
労務管理システムを操作するには、担当者にある程度パソコンの知識がないと、新しいシステムに慣れるのに負担や時間がかかります。紙の書類で事務作業をしていた従業員は、新しいシステムや仕組みに慣れるまでに時間を要するでしょう。
そのため、労務管理システムのような新しい仕組みを導入して、業務フローが浸透するまでにかかる時間なども事前に検討することが大切です。作業を簡略化するために導入したシステムが、かえって作業に時間がかかってしまっては本末転倒です。
システムを導入することが決定したら、事前に担当者向けにガイドラインなどを作成し、教育を行うとスムーズにシステムを導入できます。
アクセス集中によりトラブルが起きる可能性がある
クラウド型労務管理システムは、大勢の社員が一斉にアクセスするとトラブルが生じやすいです。部署によってアクセス可能な時間を決めるといった対策が必要ですが、万が一のトラブルが起こってしまった場合を想定して、対策を講じておくことが重要です。
例えば、トラブルが発生したとき、販売元がどのようにサポートしてくれるかを把握しておきましょう。アクセス集中などでトラブルが発生した場合には、社内の労務管理機能が停止してしまうため、サポート体制について十分に確認しておきましょう。
電子申請不可の場合がある
どの労務管理システムも、すべての申請が電子申請できるわけではありません。電子申請が不可のものが何であるかを確認してから、自社に合ったシステムの導入を検討しましょう。
どの項目を電子申請したいか、事前に社内で確認してから労務管理システムを提供する各社を比較しましょう。例えば、自社が入っている健康保険組合とシステムや電子申請が対応しているかなど、自社に適した機能があるシステムを選ぶのも重要です。
システムによって機能にばらつきがある
労務管理システムの種類によって、搭載されている機能が異なります。まずは自社に必要な機能を確認し、数多い労務管理システムの中から最適なものを選ぶのが大切です。
自社の従業員が使いやすく、自社にとって必要な機能が搭載されたシステムを選ぶと円滑に運用できます。システムの数は膨大にありますが、システムによって機能にばらつきがあるため、自社がほしい機能がすべて搭載されているものを選ぶのには時間がかかります。
特に、カタログや公式サイトなどで調べてもわかりにくい場合は、直接システムの提供会社へ問い合わせするのがおすすめです。
労務管理システムの選び方

労務管理システムは、さまざまな種類のものから自社に合ったものを選ぶ必要があります。ここでは、具体的な労務管理システムの選び方について詳しく解説します。
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労務管理システムの選び方
自社の業務に対応しているか
労務管理システムを選ぶときには、そのシステムが自社の業務に合致しているかを確認するのが大切です。システム化したい業務範囲や帳票に対応しているかを必ず確かめましょう。
労務管理システムは、一部の機能が搭載されていなかったり、オプション機能のみでの対応とされていたりすることがあります。例えば、社会保険はデフォルトで含まれているが、マイナンバー管理はオプションになっている、あるいは搭載されていないなどです。
自社の業務のどの範囲まで、労務管理システムを組み入れるのかを精査しながらシステムを選ぶのがおすすめです。初めて労務管理システムを導入する場合は、自社に必要な機能が、すべて初めから組み込まれているシステムを選ぶと後で後悔しづらくなります。
提供形態が自社に合っているか
労務管理システムの提供形態には、オンプレミス型とクラウド型の2種類があります。以下では、それぞれの形態について詳しく解説します。
オンプレミス型
オンプレミス型労務管理システムとは「自社運用」ともいわれる、自社のサーバーに人事管理システムなどをインストールして運用するものです。また、ユーザー自身が所有するサーバーなどにシステムを構築します。
そのため、すでに使用しているシステムと連携しやすく、自社に適合した状態にカスタマイズできます。主に、従業員が1,000人以上の企業向けのシステムです。
メリット | デメリット |
---|---|
セキュリティを維持しやすく高速なバックアップが しやすい | サーバー設置などの初期費用が大きくかかる |
カスタマイズしやすい | 障害対策は自社で行わなければならない |
既存システムとの連携がしやすい | 本格稼働までに時間がかかる |
ネットワークパフォーマンスが高い |
クラウド型
クラウド型労務管理システムは、インターネットを介して提供されるシステムで、近年、企業への導入が増加しているシステムです。自社サーバーの用意が不要で、初期導入費用が比較的安価で済みます。
提供会社がクラウド上に用意した労務管理システムを、基本的に月額定額払いで利用できます。法改正などの対応も、アップデートやメンテナンスは提供会社側が行うため、運用負担も大幅に削減できます。
メリット | デメリット |
---|---|
初期投資や運用コストが比較的安価 | オンプレミス型よりセキュリティ面にやや不安が残る |
必要なシステムのみ利用可能 | 大企業には向かない可能性がある |
システムの増強が迅速にできる | |
災害時などリカバリーが早い |
コストを確認
労務管理システムの導入には、ある程度のコストがかかります。会社の規模や業務体制とシステムの仕様が合っていないと、コストと効果のバランスが悪いと感じることもあるため、費用対効果を感じられるシステムを選ぶことが大切です。
どのくらい業務の効率化が見込めるのか、生産性が向上するのか、導入したコストがどのくらいで回収できるのかなどを実際に計算してみるのがおすすめです。なお、無料で使えるシステムもありますが、機能が大きく制限される点に注意しましょう。

労務管理システムとは、従業員の入退社や年末調整の手続き、住所などの情報管理を効率化するためのシステムです。社会保険関連や給与計算など労務管理は多岐に渡るため、システムの導入を考える企業も多いでしょう。本記事では、労務管理システムの相場や選び方を解説しています。
従業員情報の入力方法を確認
労務管理システムを導入する前に、どんな方法で個人情報の入力を行えるのか、事前に公式サイトなどで確認しておきましょう。
例えば、URLをメール送信することで従業員に入力してもらえたり、写真を撮って読み込んで入力してもらったりなど、さまざまな入力方法が用意されている場合があります。
入力方法が豊富な場合、従業員自身でやりやすい方法を選ぶことができ、労務管理の担当者が書類を収集・転記する手間を省きつつ、業務効率化につなげられます。
他システムと連携できるか
導入を考えている労務管理システムが、既存の勤怠管理や給与計算システムと連携できると効率化が図れます。また、将来的に導入したい勤怠管理システムや給与計算システムが決まっているなら、それらのシステムと連携できる労務管理システムを選びましょう。
他システムと連携できないと、労務関連の効率化はできても、その他のデータの転記やチェックなどに関する周辺業務が残ってしまい、十分な導入効果が得られない可能性があります。
電子申請に対応しているか
労務管理システムを選ぶ際には、電子申請に対応しているか確認しましょう。電子申請に対応していると、役所への提出や郵便対応の手間が大幅に削減されます。
電子申請に対応していない場合は、労務管理システムに入力した情報を印刷し、役所に書類を届け出しなければなりません。導入予定のシステムが自社の目的に合っているかどうか、事前に把握しておくのが大事です。
サポート・セキュリティを確認
システム導入時・導入後のサポートはどこまで対応してくれるのか、従業員の個人情報管理のためのセキュリティ対策について、以下の3点を必ず確認しましょう。
- システム導入時・導入後のトラブルや疑問点にどれくらいサポートしてくれるのか
- サポート対応時間は何時までか
- 従業員の個人情報管理のためセキュリティは万全か
特に、初めて労務管理システムを利用する場合は、システムのサポート体制や対応時間が重要です。サポートとセキュリティが万全であれば、業務の大幅な効率化も図れます。
使いやすさなどを無料トライアルで確認
労務管理システムや労務管理ソフトによっては、無料トライアル期間が用意されているシステムもあります。無料トライアルは、自社の従業員が使いやすいと感じるか、自社が効率化を図るための機能がついているかを確認する際に必要なサービスです。

労務管理システムとは、入退社や年末調整の手続きなどの業務を効率化できるシステムのことを言います。労務管理システムの導入を検討する際、数や種類が多くてどれを選べばいいのか迷う場合もあるでしょう。本記事では、おすすめの労務管理システムや選び方を解説します。
労務管理システム導入時の注意点

労務管理システムは便利な反面、導入方法や選定を誤ると十分に効果を発揮できません。導入時には、次のような点に注意して検討することが重要です。
- 導入目的や目標を明確にする
- 社内での担当者や運用体制を事前に決める
- データ移行の手順・精度を確認する
- 法令遵守や個人情報保護の体制を確かめる
- 将来的な拡張性・機能追加の可能性を考慮する
これらの点を整理しておくことで、システムを最大限に活用でき、運用開始後の混乱を避けられます。目的や体制を明確にしたうえで、適切なデータ移行とセキュリティ管理を行えば、効率的かつ安全な労務管理により、長期的な導入効果を高めることも可能です。
まとめ

労務管理は、入退社時の手続き、従業員管理、雇用契約書の作成や締結、年末調整の手続き、就業規則と福利厚生の管理、退勤管理、給与計算などが主な業務です。従来までのアナログな事務処理作業には手間がかかり、労務管理の担当者への負担が大きいです。
現在では、労務管理システムの導入が多くの企業で進められており、煩雑な事務処理がシステム上で行えます。必要な従業員の情報を抽出でき、一括で処理や修正が行えるため、担当者の負担が大きく軽減され、ミスも少なくなります。
労務管理システムにはさまざまな製品があり、機能も異なります。システム導入の際は本記事の内容を参考に、自社に合ったシステムの選定を行い、業務効率化を図りましょう。
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