電子契約書に押印は不要?|電子署名の法的効力と必要性も解説

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  • 電子契約書には押印は不要であるが、電子署名は必要である
  • タイムスタンプを利用すると、電子契約の完全性を担保できる
  • 電子契約で電子印鑑を使用すると、印影が外部に出回り悪用されるリスクが生じる

書面契約では押印が一般的ですが、電子契約では押印は不要で、電子印鑑を使用するとリスクがあります。本記事では、押印の役割について解説し、電子契約に押印が不要な理由と電子署名の必要性の他、電子印鑑を使用するリスク・電子契約書がおすすめな理由についても紹介します。

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目次

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  1. 押印・署名の役割
  2. 電子契約では押印は不要
  3. 電子署名と電子印鑑、電子サインの違い
  4. 電子契約には電子署名が必要
  5. タイムスタンプで電子契約の完全性を担保する
  6. 電子印鑑の作り方
  7. 電子契約で電子印鑑を使用するリスク
  8. 電子契約書がおすすめの理由
  9. 適切な電子契約のために電子契約システムを導入しよう
  10. まとめ

押印・署名の役割

民法において契約は、当事者同士が合意した段階で成立し、書類への押印や署名が必ず必要というわけではありません。しかし、企業が契約を結ぶ際は一般的に契約書を作成し、書類には押印と署名が行われます

これは、契約書に押印・署名することで、企業が交わした契約に関して何らかのトラブルがあった際にリスクを回避できるためです。民事訴訟になった場合、契約を結ぶ企業同士が押印・署名した契約書は、合意のもと真正に成立したものと推定されます

企業間で交わした契約について民事訴訟で争うことになった場合、契約書の押印・署名があるかないか以外にも、商談から契約を結ぶまでの経緯などもお互いの主張を裏付ける証拠になりますが、契約の正しさを証明する作業の負担は小さくできます

参考:押印についてのQ&A|法務省

捺印とは

印鑑を文書に押すという行為は押印のほか、捺印とも表現されますが、両社の意味するところは大きく違っています。捺印とは「署名捺印」を略した言葉です。捺印の意味は、自筆で自らの名前を記し、印鑑を押す行為を言います

押印とは

押印とは「記名押印」を略した言葉です。押印の意味は、他者が記した名前や印刷した名前など、自筆以外で名前が記された文書に印鑑を押す行為のことを言います。このほか、押印は単純に文書に印鑑を押す行為にも使われています。

捺印と押印は文書に印鑑を押すという同じ行為ですが、その文書が持つ法的効力は同じではありません。押印よりも、書類作成者の署名がある文書に印鑑が押された捺印のほうが法的な証明力が高いと言われています。

電子契約では押印は不要

電子契約では押印をする必要はありません。2001年施行の電子署名法では、電子契約の締結に印影を必要するとは明記されておらず、同法3条では本人によって電子署名されていれば、契約が真正に合意されたものであると推定すると記述されています。

電子契約書は、文書ファイルに第三者機関が発行する日時や契約者の情報などが書き込まれた本人確認データが付与された電子署名を行うことで、証拠力を担保できるため、書面契約の押印と同様の効力を発揮します

2001年施行の電子署名法では、電子契約の締結に印影を必要するとは明記されておらず、2020年6月の政府『押印に関するQ&A』でも特段の定めがある場合以外、押印は契約成立の要件ではないことが確認されました。

電子署名には、悪用や不正が行われないように暗号化技術が用いられています。暗号化技術を用いることで、改ざんされたとしてもその痕跡を検知することが可能で、いつ誰が電子署名をしたのかが判るようになっています。

参考:電子署名及び認証業務に関する法律|e-Gov法令検索

書面契約で押印が一般的な理由

書面契約で押印が一般的な理由は、裁判で契約書を証拠とするときに、契約書が真正に作成されたものであると立証する際に用いられる二段の推定という考え方の影響が大きいです

最高裁は、過去に「文書に本人が所有する印鑑の印影があるなら、作成者本人が文書に自分の意志で押印したのであろう」という判例を示しました。これが一段目の推定で、反証がない限り、文書への押印は自分の意志で行われたと推定されます

一段目の推定は最高裁の判例ですが、2段目の推定は法律・民事訴訟法228条第4項から来る考え方です。要約すると第4項の条文には、本人または代理人の押印や署名があるときは、その私文書は真正に成立したものと推定されるという意味のことが書かれています。

二段目の推定で押印のある契約書は、本人の意思に基づいて作成されたものであろうと推定されます。企業がなぜ書面契約で押印をするのかと言うと、押印をするとこの二段階の推定が認められる契約書を作成できるからです。

二段の推定がある契約書は、契約に関してトラブルに発展したときに証拠として使用でき、その文書を証拠に話し合いや訴訟を進められます。企業は契約書に押印することで、トラブル発生時のリスクを回避しています。

電子署名と電子印鑑、電子サインの違い

電子署名、電子印鑑、電子サインなどの言葉は似ているため、ついそれぞれの言葉の定義が曖昧になってしまうこともあるでしょう。ここでは、電子署名、電子印鑑、電子サインなど言葉の定義の違いについて解説します。

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電子署名と電子印鑑、電子サインの違い

  1. 電子印鑑とは
  2. 電子サインとは
  3. 電子署名とは

電子印鑑とは

電子印鑑とは、電子文書に押印できるように印影を電子データ化し表現した印鑑のことを言います。昨今、企業のペーパーレス化とデジタル化が進んでいますが、印鑑の必要性を感じる企業も多く、電子文書の押印に電子印鑑が使用されるようになりました。

電子印鑑には、印影を電子データ化したタイプや、印影データに「いつ」「どこで」「誰が」押印したのか識別情報を付与できるタイプの電子印鑑があります。簡単に電子印鑑を作成できる専用アプリ、印影に識別情報を付与できる電子印鑑専用のサービスも登場しています。

電子サインとは

電子サインとは、書面上で契約を行っていた際の同意、承認、本人確認、押印や署名、締結を電子取引で行う際の一連のプロセスのことを示します。例えば、電子署名やデジタル署名、タイムスタンプ、電子印鑑、メール認証や生体認証なども電子サインに含まれます。

電子署名とは

電子署名とは、電子署名法で定められた本人性と非改ざん性を担保できるものを指します。

代表的な手段として、電子署名が本人によってなされたことを電子証明書で証明することができます。また、電子署名について改ざんがおこなわれていないかどうか確認できるものをタイムスタンプで証明することができます。

これらを証明することで、法的効力が認められます。厳密にいうと電子署名は電子サインの一部であるということが言えます。

電子契約には電子署名が必要

特例がない限り、契約を交わす際には合意があれば契約は成立し、電子契約、書面契約ともに押印の必要はありません。しかし、企業が電子契約を交わす際には、電子署名を行うことが一般的になっています。

なぜかと言うと、電子契約に付与する電子署名は、書面契約の押印と同等の法的効力を持つため、契約後にトラブルが起こった際のリスク回避に非常に有効に働くからです。電子契約書に電子署名を付与すると、2点の事柄を明らかにできます。

電子契約書に電子署名をすると、文書を契約者当人が作成したこと、文書作成後に改ざんのないことを証明可能です。電子契約が普及し始めた現在、企業に取って電子署名は必須のものと言えるでしょう。

タイムスタンプで電子契約の完全性を担保する

電子契約に電子署名をすることで、誰がどのようなことを行ったのかを証明できますが、電子署名では「いつ」誰がどのようなことを行ったのかは明らかにできません。このため、電子契約に電子署名をして文書を作成したとしても、改ざんの疑いは拭えません。

しかし、電子契約に第三者機関が発行したタイムスタンプを電子契約に付与すると、スタンプが押された後に確かにその文書が存在していること(存在証明)、スタンプが刻印された後にその文書が改ざんされていないこと(非改ざん証明)を証明できます

このような理由もあって、企業では一般的に電子契約を交わす際には、いつ誰がどのような文書を作成したのかを証明するため、文書の改ざんがないことを証明するために電子契約書に電子署名とともにタイムスタンプを刻印して契約の完全性を担保しています

電子印鑑の作り方

電子印鑑は、大きく分けると印影を画像データ化したもの印影を画像データ化してさらに識別IDを付与したものの2種類に分類できます。前者の印鑑の陰影を画像データ化した電子印鑑には法的効力はありません。

後者の識別データを付与した電子印鑑には、一定の法的効力があります。しかし、識別IDを付与した電子印鑑も電子署名の法的効力には敵いません。このため、電子契約の際は電子署名の利用が望ましいと言えるでしょう。

WordやExcelで作る

  1. 挿入タブから図形を選択し、円を挿入する
  2. 円を塗りつぶしなしに設定する
  3. 円に名字を入力
  4. 色を赤、横書きを縦書きに設定
  5. 図として保存する

印影をスキャンして作る

  1. 白い紙にはんこを押す
  2. 紙をスキャンするまたはカメラで撮影
  3. データを取り込む

電子契約サービスを利用する

電子契約サービスを利用して電子印鑑を押印することもできます。電子契約において、電子印鑑よりも電子署名のほうがより高い法的効力を持ちますが、電子印鑑を付与することで見栄えもよくなり、未締結のものと締結済みのものを区別しやすくなります。

電子印鑑に対応した電子契約サービスおすすめ2選|選び方も解説

電子印鑑に対応した電子契約サービスを使えば、書面契約のように書類に印鑑を押す手間が省けます。また、印影に識別情報が付与できる機能もあり、セキュリティ面でも安全です。本記事では、比較ポイントや選び方を交えて電子印鑑に対応したおすすめの電子契約サービスを紹介します。

電子契約で電子印鑑を使用するリスク

電子印鑑は、大きく分けると印影を画像データ化したものと印影を画像データ化してさらに識別IDを付与したものの2種類に分類できます。前者の印鑑の陰影を画像データ化した電子印鑑には法的効力はありません。

後者の識別データを付与した電子印鑑には、一定の法的効力があります。しかし、識別IDを付与した電子印鑑も電子署名の法的効力には敵いません。このため、電子契約の際は電子署名の利用が望ましいと言えるでしょう。

電子印鑑の利用は、セキュリティの観点から見ても回避すべきことと言えるでしょう。電子契約書に刻印された印影の画像データを誰かが手に入れ、悪用するといったことは十分に起こりえます。印影データから印鑑を複製することも可能です。

識別IDを付与していない電子印鑑には法的効力はありませんが、もしもの場合に悪用されることも想定して、電子契約の際は電子印鑑は使わず、電子署名で対応することをおすすめします

電子契約書がおすすめの理由

ここからは、電子契約書がおすすめな理由を紹介します。企業が電子契約書を利用すると、コスト削減と業務の効率化、コンプライアンスの強化といった大きなメリットを享受できます。

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コストが削減できる

電子契約書の導入で、コストの削減を期待できます。紙の契約書を作成する際は、用紙代・インク代・印刷代・印紙代・郵送費などの費用が発生します。なかでも印紙代は、コストを大きなものにします。

契約金額1,000万円以上5,000万円以下の場合、契約書には2万円の印紙を貼り付けなければいけません。契約金額1,000万円の契約を結ぶ2社が、各1冊ずつ契約書を作成するとなると印紙代は4万円になります。

しかし、電子契約書は印紙を貼り付ける必要がありません。電子契約書を作成すると、印紙税はかからず、契約書を作成する際に発生する印刷コストや郵送コスト、保守・管理コストも不要になります

業務が効率化する

電子契約書を導入すると、業務の効率化も実現できます。契約書を紙の生類で作成していた場合、契約書の印刷・製本や郵送、収入印紙の購入・貼り付け、冊子の保管・管理などの事務作業が必要です。

しかし、電子契約書を利用するとこれらの事務作業は不要になります。紙の書類の場合、契約書に不備があった場合は修正して、再度作成し直さなければいけません。しかし、電子契約書ならオンラインで修正し、アップロードといった作業で済みます。

このように電子契約書を利用すると、契約書作成・管理の際に発生する事務作業を削減でき、契約書作成の業務をオンライン上でできるようにもなり、契約書の作成も円滑に進められるようになるでしょう

コンプライアンスの強化になる

電子契約書の導入は、企業内のコンプライアンス強化にも繋がるでしょう。電子契約書に入力する操作をする際には「いつ」「誰が」「どのPC」で操作をしたのかといった、操作ログが記録として残ります。

このため、電子契約書は契約内容の改ざんが起こりづらく、悪用や不正が起こるリスクを最小限に抑えられるでしょう。企業におけるコンプライアンスの重要性が叫ばれる昨今、電子契約書導入の必要性は高まっています。

適切な電子契約のために電子契約システムを導入しよう

電子契約書を利用し、適切な電子契約を取引先と行いたい企業には電子契約システムはおすすめです。電子契約システムを利用すると、自社内にシステムを構築しなくても、すぐに紙の書類から電子契約書に移行できるでしょう

電子契約システムは、電子的方式で作成された契約書に電子署名やタイムスタンプを付与し、システムを通じて電子契約書を取り交わすサービスを提供しています。電子契約システムには契約の締結のほか、契約書作成並びに文書の保存ができるサービスもあります。

電子契約システムでは、Web上及び対面で契約の締結ができ、遠隔地の取引先とも契約締結も可能です。電子契約システムは検索性にも優れています。契約書の数が多いと契約内容を後から確認したい場合、文書を見つけ出す作業に非常の労力を使います。

しかし、電子契約システムでは契約名や契約内容、金額などから目的に応じて素早く検索が可能です。電子契約システムには、契約書作成の際に便利に使えるテンプレートも用意されており、法律の改正にもシステムのアップデートで対応しています

電子契約システムとは?仕組みやメリット・デメリットを解説

電子契約システムとは、企業などが契約時に交わす署名や押印等の書類でのやり取りを電子上で行うことができるシステムです。この記事では、電子契約システムの仕組みや、メリット・デメリット、選び方や導入する際の注意点などを解説します。

まとめ

電子契約に押印は不要ですが、電子契約を交わす際には書面契約の押印と同じ法的効力を発揮する電子署名を用いるのが一般的です。電子契約では、電子署名とタイムスタンプを刻印することで文書の証拠力を担保できます

電子契約書に電子署名を行うことで、契約者本人が文書を作成したことと文書作成後に改ざんがないことを明らかにします。電子契約書にタイムスタンプを付与すると、スタンプ付与後にその文書が確かに存在すること、スタンプ付与後に改ざんがないことを証明可能です。

電子契約書は、コストの削減や業務の効率化、コンプライアンスの強化ができるというメリットを持っています。紙の書類から電子契約書へと移行を検討している企業に、電子契約システムはおすすめです

電子契約システムは、電子的方式で作成された契約書に電子署名とタイムスタンプを付与し、システムを通じて電子契約書の締結ができるサービスを提供しています。電子契約システムを利用すると、すぐに紙の書類から電子契約書へと移行できます

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