会計ソフトで複数の事業を管理する方法|種類や注意点を解説

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  • 1つの会計ソフトで複数の事業を管理できるものが多いが、アカウント制限などがある
  • クラウド型の会計ソフトの場合は、事業ごとにコストが発生する
  • 個人事業主が複数の事業収入がある場合、収入の種類によって確定申告の方法が異なる

複数の事業を管理したり、個人事業主で複数の事業を行っている場合、1つの会計ソフトで管理することができるのでしょうか。本記事では、1つの会計ソフトで複数の事業を管理する際の注意点や、会計ソフトの種類、複数事業を行う個人事業主の確定申告の方法について解説します。

目次

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  1. 1つの会計ソフトで複数の事業を管理できるのか
  2. 事業所得の分類
  3. 会計ソフトの種類
  4. 複数の事業収入がある個人事業主の決算書・確定申告
  5. 個人事業を複数行う際に会計ソフトを利用するメリット
  6. まとめ

1つの会計ソフトで複数の事業を管理できるのか

1つの会計ソフトで複数の事業を管理することは可能です。特に1つの会社で複数の事業を行っている場合、それぞれの事業を部門ごとに分けて管理することで効果的な経営が行えます

例えば、新しいビジネスを立ち上げつつ、同時に本や記事を執筆しているケースや、個人が専門知識を活かしてコンサルティング業務を行いつつ、同時にセミナーやワークショップで講師を務めるケースなどが考えられます。

これにより、各事業の収支や財務状況を独立して把握し、戦略的な意思決定が可能となります。ただし、クラウド型会計ソフトの場合、1つのアカウントには通常1社までしか登録できない制限があります。

また、インストール型会計ソフトでは1ライセンスが1台のパソコンに対して適用されるため、複数のライセンスが必要です。したがって、事業ごとに適切なアカウントやライセンスを確保し、部門ごとにデータを整理して管理することが重要です。

事業所得の分類

所得には10種類の分類があります。適切に分類するために正しく理解しましょう。以下に事業所得の概要と事業所得に該当しない項目について解説します。

事業所得に該当する項目

事業所得とは、以下の事業から生ずる所得のことです。

  • 農業
  • 漁業
  • 製造業
  • 卸売業
  • 小売業
  • サービス業
  • その他の事業

ただし、 不動産の貸付けや山林の譲渡による所得は事業所得ではなく、原則として不動産所得や山林所得になります。事業所得は、事業で得た収入から経費を引くことで求められます。

参考:No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得) | 国税庁

事業所得に該当しない項目

所得は事業所得を含めた以下の10種類に分類することができます。

  • 事業所得
  • 雑所得
  • 給与所得
  • 利子所得
  • 配当所得
  • 不動産所得
  • 退職所得
  • 山林所得
  • 譲渡所得
  • 一時所得

事業所得に該当しないものは事業所得以外の9種です。

参考:No.1300 所得の区分のあらまし | 国税庁

会計ソフトの種類

会計ソフトの種類は、クラウド型とインストール型に分かれます。ここでは、2つの種類のソフトについて解説します。自社の規模やニーズに合った適切なソフトを選び、経営の効率化と生産性向上を図りましょう。

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会計ソフトの種類

  1. インストール型
  2. クラウド型

インストール型

インストール型の会計ソフトは、パソコンに専用ソフトをインストールして使用するタイプです。オフライン環境で動作し、データのセキュリティやカスタマイズ性が高いのが特徴です。メリットとして、データが自社内に保管され、インターネット接続が不要です。

しかし、複数のパソコンでデータ同期が難しかったり、バックアップの重要性が高まります。1台のパソコンで複数の事業データを作成する場合、1つのライセンスで複数の部門や事業を効率的に管理できる利点があります。

クラウド型

クラウド型の会計ソフトは、ウェブブラウザを通じてインターネット経由でアクセスし、データを管理する仕組みです。データはクラウド上に保存され、複数の端末からいつでもアクセス可能であり、複数人で同時にデータを確認・更新できるのが特徴です。

また、バックアップやセキュリティなども提供されるため、専門知識が不要で使いやすいことがメリットです。しかし、複数の事業所を運営する場合、クラウド会計では事業所の数だけ料金が発生する場合があるため、コスト面を検討する必要があります。

一方で、インストール型のソフトでは追加費用は発生しません。クラウド型は、複数人でデータを確認でき、情報共有の向上が図られることが大きなメリットとなります。

複数の事業収入がある個人事業主の決算書・確定申告

法人ではない個人事業主の場合、会計ソフトを使用して部門を分けることで、1つのライセンスやアカウントで複数の事業収入の管理が可能です。

これにより、異なる事業の収支を独立して追跡し、効率的な会計作業を実現できます。以下、複数の事業収入がある個人事業主の決算書・確定申告について解説します。

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複数の事業を行っている場合

複数の事業を運営する場合、それぞれの事業で得られる所得は事業所得として計上されます。しかし、決算書や確定申告書をまとめて作成することができます。各事業の収支や経費を分けて記録し、最終的に全事業の合算を行い、1つの決算書・確定申告書にまとめます。

この際、各事業の収支が明確に分かるように整理し、正確な計算と記録を心がけることが重要です。会計ソフトの活用で、複雑な事業構造でも一元的な申告が可能となり、煩雑さを軽減できます

事業所得以外に不動産所得がある場合

複数の事業と不動産所得がある場合、事業所得と不動産所得は別々に記録・計算し、決算書を分けて作成する必要があります。それぞれの所得を明確に区別し、収支や経費を整理して記録します。

しかし、確定申告書は1部で作成することができます。各所得を詳細に記入し、合算して総合的な所得を示すことで、一元的に申告が可能です。

事業所得以外に給与所得がある場合

複数の給与所得と事業所得を持つ場合、給与所得と事業所得は別々に決算書を作成しましょう。給与所得は源泉徴収されている場合が多く、その記録は個人の収入を反映します。一方で、事業所得は事業の経営や収支に関連します。

このように分けて記録することで、所得の性質を明確に保つことができます。確定申告書については、1部で提出可能です。

事業所得以外に雑所得がある場合

雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも当たらない所得のことを指します。例えば、賞金や副業の収入、利息・配当など多様な非常勤の所得が雑所得に該当します。

事業所得とは異なる性質のため、雑所得と事業所得は分けて決算書を作成することが重要です。これにより、所得源や支出の明確な区別が可能になります。確定申告書は1部で提出可能で、雑所得と事業所得の詳細をまとめて報告できます

会計ソフトを利用すると、雑所得を正確に記録し、簡便に決算書を作成できます。この方法により、異なる所得源を整理して統一的な申告が実現できます。

分離課税の対象となる所得の確定申告は分ける

所得税において、分離課税と総合課税は異なる課税方式です。分離課税は、不動産所得などの所得を他の給与所得などとは別に計算し課税する制度です。一方、総合課税では、異なる所得を合算して課税されます。

分離課税の対象となる所得は、独立して計算されるため、その確定申告も分けて行う必要があります。たとえば、給与所得と不動産所得がある場合、給与所得は総合課税となり、不動産所得は分離課税の対象となります。

個人事業を複数行う際に会計ソフトを利用するメリット

個人事業を複数行う場合、異なる事業や所得の種類に関わる経理や確定申告は煩雑になる傾向があります。会計ソフトは、複数の事業データを一元管理でき、所得の種類ごとに帳簿を分けて取引を記録し、必要な項目を自動計算してくれます

これにより、正確な帳簿を簡単に作成でき、経費や収益の把握が容易になります。また、確定申告の際にも必要なデータを効率的に抽出し、申告書の作成を支援します。

業務効率化に加え、誤りのリスクも低減できるため、会計ソフトの利用は個人事業主にとって大きなメリットとなります。

まとめ

1つの会計ソフトで複数の事業を管理する際の制限は、インストール型とクラウド型で異なります。インストール型は1つのライセンスで複数の事業データを管理できますが、データの共有が難しいことがあります。

一方、クラウド型は複数の事業所を運営する場合、事業所の数に応じて料金が発生する可能性があります。どちらを選ぶかは、事業の規模、データの共有ニーズ、セキュリティの重要性などを総合的に検討し、最適な選択を行いましょう。

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