個人事業主が複数事業を管理する方法|会計ソフトでの処理について解説
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- 個人事業主の場合、複数の事業を営んでいても1つの会計ソフトで管理できる
- 個人事業主が複数の所得がある場合、その種類によって確定申告の方法が異なる
- 会計ソフトは対象の利用者や提供形態によって種類があるため、ニーズに合わせて選ぶ
個人事業主で複数事業を行っている場合、1つの会計ソフトで管理することができるのでしょうか。本記事では、1つの会計ソフトで複数の事業を管理する方法や注意点、複数事業を行う個人事業主の確定申告の方法などについて解説します。
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複数の事業を1つの会計ソフトで管理するには
個人事業主の場合、1つの会計ソフトで複数の事業をそれぞれ管理することは可能です。複数の事業を行っている場合、それぞれの事業を部門ごとに分けて管理することで効果的な経営が行えます。
事業ごとに帳簿を管理する場合、会計ソフト上で各事業を「部門」などとして分けることで、取引を分類できます。確定申告の際には、各部門の収支を集計し、複数事業をまとめて処理します。
個人事業主における所得の分類
所得には10種類の分類があります。適切に分類するために正しく理解しましょう。以下に事業所得の概要と事業所得に該当しない項目について解説します。
事業所得に該当する項目
事業所得とは、以下の事業から生ずる所得のことです。
- 農業
- 漁業
- 製造業
- 卸売業
- 小売業
- サービス業
- その他の事業
ただし、 不動産の貸付けや山林の譲渡による所得は事業所得ではなく、原則として不動産所得や山林所得になります。事業所得は、事業で得た収入から経費を引くことで求められます。
参考:No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得) | 国税庁
事業所得に該当しない項目
所得は事業所得を含めた以下の10種類に分類することができます。
- 事業所得
- 雑所得
- 給与所得
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 退職所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
事業所得に該当しないものは事業所得以外の9種です。
複数の収入がある個人事業主の確定申告方法
個人事業主で複数の収入がある場合、その収入が事業所得かそうでないかによって確定申告の方法が変わってきます。以下、複数の事業収入がある個人事業主の確定申告について解説します。
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複数の事業収入がある個人事業主の決算書・確定申告
複数の事業を行っている場合
複数の事業を運営する場合、それぞれの事業で得られる所得は事業所得として計上されます。しかし、決算書や確定申告書をまとめて作成することができます。各事業の収支や経費を分けて記録し、最終的に全事業の合算を行い、1つの決算書・確定申告書にまとめます。
この際、各事業の収支が明確に分かるように整理し、正確な計算と記録を心がけることが重要です。会計ソフトの活用で、複雑な事業構造でも一元的な申告が可能となり、煩雑さを軽減できます。
事業所得以外に不動産所得がある場合
複数の事業と不動産所得がある場合、事業所得と不動産所得は別々に記録・計算し、決算書を分けて作成する必要があります。それぞれの所得を明確に区別し、収支や経費を整理して記録します。
しかし、確定申告書は1部で作成することができます。各所得を詳細に記入し、合算して総合的な所得を示すことで、一元的に申告が可能です。
事業所得以外に給与所得がある場合
複数の給与所得と事業所得を持つ場合、給与所得と事業所得は別々に決算書を作成しましょう。給与所得は源泉徴収されている場合が多く、その記録は個人の収入を反映します。一方で、事業所得は事業の経営や収支に関連します。
このように分けて記録することで、所得の性質を明確に保つことができます。確定申告書については、1部で提出可能です。
事業所得以外に雑所得がある場合
雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも当たらない所得のことを指します。例えば、賞金や副業の収入、利息・配当など多様な非常勤の所得が雑所得に該当します。
事業所得とは異なる性質のため、雑所得と事業所得は分けて決算書を作成することが重要です。これにより、所得源や支出の明確な区別が可能になります。確定申告書は1部で提出可能で、雑所得と事業所得の詳細をまとめて報告できます。
会計ソフトを利用すると、雑所得を正確に記録し、簡便に決算書を作成できます。この方法により、異なる所得源を整理して統一的な申告が実現できます。
分離課税の対象となる所得の確定申告は分ける
所得税において、分離課税と総合課税は異なる課税方式です。分離課税は、不動産所得などの所得を他の給与所得などとは別に計算し課税する制度です。一方、総合課税では、異なる所得を合算して課税されます。
分離課税の対象となる所得は、独立して計算されるため、その確定申告も分けて行う必要があります。たとえば、給与所得と不動産所得がある場合、給与所得は総合課税となり、不動産所得は分離課税の対象となります。
個人事業を複数行う際に会計ソフトを利用するメリット
個人事業を複数行う場合、異なる事業や所得の種類に関わる経理や確定申告は煩雑になる傾向があります。会計ソフトは、複数の事業データを一元管理でき、所得の種類ごとに帳簿を分けて取引を記録し、必要な項目を自動計算してくれます。
これにより、正確な帳簿を簡単に作成でき、経費や収益の把握が容易になります。また、確定申告の際にも必要なデータを効率的に抽出し、申告書の作成を支援します。
業務効率化に加え、誤りのリスクも低減できるため、会計ソフトの利用は個人事業主にとって大きなメリットとなります。
個人向けの会計ソフトを選ぼう
会計ソフトには、個人向けと法人向けがあります。それぞれ機能が異なるため、個人事業主は個人向けの会計ソフトを選びましょう。個人向けのソフトには、個人の青色申告、あるいは白色申告に適した機能が備わっています。
料金プランも個人向けに設定されているため、無理のない範囲で運用できるでしょう。一方、法人化した場合などには法人用のソフトに乗り換えるのがおすすめです。
個人事業主におすすめ会計ソフト7選(全13選)|アプリ対応や初心者向けソフトも
自営業の個人事業主でも青色申告や確定申告をする際は、複式簿記による記帳が必要です。今回は個人事業主におすすめの会計・経理ソフトを紹介。初心者でも簡単に使いやすい帳簿ソフトや、無料で使える会計ソフト、スマホアプリ対応のクラウドソフトも紹介します。
提供形態の種類も確認しよう
会計ソフトの種類は、提供形態によってもクラウド型とインストール型に分かれます。事業規模やニーズに合った適切な形態を選び、経営の効率化と生産性向上を図りましょう。
インストール型
インストール型の会計ソフトは、パソコンに専用ソフトをインストールして使用するタイプです。オフライン環境で動作し、データのセキュリティやカスタマイズ性が高いのが特徴です。メリットとして、データが自社内に保管され、インターネット接続が不要です。
しかし、複数のパソコンでデータ同期が難しかったり、バックアップの重要性が高まります。ほとんどの場合は買い切りで、購入時にはある程度まとまった費用が必要になります。
クラウド型
クラウド型の会計ソフトは、ウェブブラウザを通じてインターネット経由でアクセスし、データを管理する仕組みです。データはクラウド上に保存され、複数の端末からいつでもアクセス可能であり、複数人で同時にデータを確認・更新できるのが特徴です。
また、バックアップやセキュリティなども提供されるため、専門知識が不要で使いやすいことがメリットです。料金体系はインストール型と大きく異なり、初期費用はそれほどかからないものの月額や年額で継続的な利用料が発生します。
仕訳や決算書作成などの経理作業を効率化できる会計ソフトの種類には、クラウド型とインストール型が存在します。本記事では、会計ソフトのクラウド型とインストール型のメリット・デメリットを交え、それぞれの違いを比較表を使って分かりやすく解説します。
まとめ
個人事業主の場合、複数の事業を営んでいても1つの会計ソフトで管理することが可能です。しかし、収入が事業所得に該当するかしないかで確定申告の方法に違いがあるので注意が必要です。
ある程度の事業規模がある場合は、帳簿付けなども煩雑化しやすいので、会計ソフトで効率化を図るのがおすすめです。会計ソフトにはさまざまな種類があるので、ニーズに合わせたものを選びましょう。
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