電子契約の仕組みとは|書面契約との違いやメリット、注意点を解説

Check!

  • 電子契約は法的効力があるが、当事者の意思によって締結されたことの証明が必要になる
  • 電子契約を導入すると、業務の効率化やコンプライアンス強化に繋がる
  • 電子契約を進めるには、契約書管理システムの導入がおすすめである

電子契約では、従来の紙による契約書を使用せず、電子データによって契約・保存・管理を行うことができます。本記事では、電子契約の仕組みや、法的効力について解説し、電子契約を導入するメリット・デメリットの他、導入に関する法律について紹介します。

目次

開く

閉じる

  1. 電子契約とは
  2. 電子契約と書面契約の違い
  3. 電子契約のメリット
  4. 電子契約のデメリット・注意点
  5. 電子契約の導入に関係する法律
  6. 効率的な電子契約には契約書管理システムの導入がおすすめ
  7. まとめ

電子契約とは

電子契約とは、紙を使用せずにインターネット上で契約を締結するための手続きです。従来の紙の契約書における署名やハンコに代わるものとして電子署名と呼ばれる方式を利用して、法的効力とセキュリティを確保します。

なお、単にPDFデータ化された契約書と異なり、電子契約では、アップロードされた契約データに電子署名を施すことで、正式な契約データとしての価値を保証します。電子署名は、契約の改ざんや偽造を防ぐことが可能です。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

電子契約の仕組み

電子契約の仕組みとしての流れを解説します。まず、送信者が電子契約サービスのプラットフォームに契約書をアップロードします。この際、契約の内容や条件を適切に入力し、必要な情報を整理しておくことが大切です。

アップロードされた契約書が受信者によって受け取られると、受信者はメールなどで通知され、契約内容を確認します。この段階で、契約の詳細や条件に異議がある場合、受信者は交渉や修正を行うことができます。

受信者が契約内容に同意した後、電子契約サービスを介して電子署名を行います。電子署名は、個人や法人の識別と意思表示を保証するものであり、通常は専用の鍵を使用して暗号化します。この署名が行われることによって、契約の法的効力が確立されます。

電子契約の法的効力

電子契約は、証拠力のあるものとして「電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)」で認められています。電子署名が行われることで電子的に作成した書類は法的効力を持ちます。契約書として成立するための「二段の推定」が電子署名によって適用されるからです。

  1. 一段目の推定:押印のある書面は本人の意思によって捺印されたと推定
  2. 二段目の推定:本人の意思で捺印された契約書は真正に成立した

上記は二段の推定の内容ですが、電子署名によって電子契約書は「本人の意思で捺印された契約書」として認められます。

参考:電子署名及び認証業務に関する法律|e-Gov法令検索

電子契約の種類

電子契約は本人確認方法の違いにより、「電子署名タイプ」と「電子サインタイプ」の大きく2つに分けられます。ここでは、両者の特徴を詳しく解説します。

電子署名

電子署名とは、電子契約において法的効力を持たせるための仕組みで、紙の契約書における押印に相当します。電子契約の信頼性とセキュリティ保護のために電子署名を構成する要素には、電子証明書とタイムスタンプがあります。

電子証明書は、電子署名の発信者(署名者)が本人であることを確認するための仕組みです。第三者機関である認証局が電子証明書を発行します。電子証明書は、署名者の秘密鍵と公開鍵のペアによって、署名が作成され、他の人々は公開鍵を使用して署名を検証します。

タイムスタンプは、電子データあるいはその内容が、特定の時点で存在していたことを証明するためのものです。契約の内容が後から改ざんされていないことを示すことができます。タイムスタンプは、電子契約サービスのシステム上で付与することが可能です。

電子サインタイプ

電子サインタイプは立会人型とも呼ばれ、契約締結を行う本人ではない第三者が、本人の指示に基づいて電子署名を付与する方法です。一般的には、メール認証とログイン認証を組み合わせて本人確認を行います。

電子サインタイプはメールアドレスがあれば利用できるので、電子署名タイプに比べて導入ハードルが低く、電子署名を付与する契約者側にとって利便性の高い方法です。ただし、手軽なぶん電子署名タイプに比べて、信頼性や法的効力は劣ります。

信頼性の担保における第三者機関の重要性

電子署名は、第三者機関が発行する電子証明書を用いて本人認証を行うように、電子契約における信頼性の担保には第三者機関の存在が重要な役割を担っています。この第三者機関は「電子認証局」と呼ばれ、電子証明書の発行を意味する「特定認証業務」を行います

特定認証業務については、2001年4月の電子署名法施行に伴い、「任意的認証制度」が導入されています。任意的認証制度では、国や自治体が指定した調査機関の実施調査を受けて、一定基準以上と認められることで、国の認定を受けることが可能です。

認定を受けることは任意ですが、国の認定を受けた事業者を「認証認定事業者」、特定認証業務を「認証認定業務」と言い、信頼性の高さを示すものになります。

参考:電子データの信頼性確保に資する取組|総務省

参考:電子署名法の概要と認定制度について|法務省

電子契約と書面契約の違い

従来の書面契約に対して、電子契約ではデジタル環境が整っていれば迅速で効率的なプロセスが可能である点が最大の違いです。ただし、どちらも法的効力を持った契約書を作成できる点では共通しており、取引先や契約の性質によって選択するのが理想的です。

なお、収入印紙とは、税金や手数料の代わりに紙の領収書や契約書に貼付する証票です。「当事者間で課税事項を証明するために作成された文書」であることが課税の根拠となりますが、PDFやFAXなどの電子契約は「文書の作成」に該当せず、収入印紙は不要です。

電子契約方法書面契約
電子データ(PDF)形式紙の書面
電子署名・電子サイン押印印鑑・印影
電子証明書本人性の担保印鑑証明書
インターネット通信送付郵送・持参
サーバー保管物理的な保管(ファイル・書棚など)
不要収入印紙必要

電子契約のメリット

電子契約は、業務の効率化・コスト削減・契約フローの可視化・コンプライアンス強化などのさまざまなメリットがあります。ここでは、電子契約のメリットを解説します。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

業務の効率化

電子契約はインターネットを通じて行われるため、契約書類の送付や受取が瞬時に行えます。一方、書面契約では郵送などの物理的な手続きが必要で、時間がかかる場合があります。返送も含めると数週間かかる場合もあり、電子契約ではこの時間を削減できます。

また、電子契約では原本を印刷して製本する必要もありません。電子契約サービスはクラウド上でステータス管理もでき、進捗状況を把握しやすいため、遅延や漏れが置きにくいのもメリットです。

また。デジタルフォーマットで管理されるため、文書の保管・検索にも時間がかかりません。電子契約は地理的な制約もないため、国際的な取引を行う企業で採用されています。また、大量の契約を取り扱う企業にとっても効率化のメリットが大きくなります。

コスト削減

書面契約では契約書や関連文書を印刷し、郵送するために印刷コストや郵送料がかかります。電子契約ではデジタルフォーマットで取引が行われるため、印刷と郵送が不要となり、これらのコストを削減できます。

また、電子契約では保管・廃棄に関連するコストも軽減でき、書面契約のように物理的に保管スペースを確保したり、廃棄したりするためのコストもかかりません。電子契約では、印紙税の対象にならないのもコスト面におけるメリットです。

また、直接的なコストではありませんが、自動化された手続きや業務効率化によって、人的リソースや時間の節約など、間接的なコストを抑えられます。

契約フローの見える化

電子契約サービスは、契約の進行状況やステータスを表示できるように設計されています。契約フローの見える化によって、契約プロセスの進行状況が契約関係者に対して透明になり、どの段階のタスクが完了しているか確認できるため、混乱や誤解を減少させられます。

また、契約の期限の管理やタスクの予定に役立ち、適切なタイミングでタスクを完了することによって、契約の遅延や締結の見落としを防ぐことができます。万が一、遅延が発生しても早期に特定できるため、問題の早期解決が可能です。

コンプライアンスの強化

電子契約導入により、コンプライアンス強化も可能です。契約締結までのステータスの管理が容易なため、遅延や漏れなどのトラブルを防ぐことができます。また、電子署名と認証による契約透明性とデータの正確性が担保され、法的なリスクを低減します。

電子契約サービスによっては、特定の業界規制や法的要件に適合したテンプレートやプロセスを提供できます。例えば、医療業界・金融業界・不動産業界などは、厳格な法的要件があり、これらの要件への対応を支援するサービスも存在します。

また、電子契約では、契約プロセスの全過程を記録するため、誰が何を行ったか、いつ行ったかなどの追跡が可能です。問題の早期解決に寄与するばかりでなく、不正行為の防止にも役立ちます。

電子契約のデメリット・注意点

業務効率化やコスト削減など、メリットの大きい電子契約ですが、導入にあたっては電子契約に対応できない契約書があることや、取引先と合意形成が大切なことに注意しなければいけません。ここでは、電子契約のデメリットや注意点を解説します。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

全ての業務に対応しているわけではない

さまざまな法改正を経て、今では企業が取り交わす文書・契約書のほとんどは電子契約が可能ですが、一部電子契約できないものもあります。それは、公正証書によって契約を締結しなければならない契約書です。

具体的には、事業用定期借地契約・企業担保権の設定又は変更を目的とする契約・任意後見契約書がそれに該当します。これらは、公務員である公証人がその権限に基づいて作成した公文書で契約をしなければならず、電子契約はできません。

また、海外との契約がある場合、国や地域によって契約に関する法的要件や規制が異なり、電子契約サービスによっては、すべての法的枠組みに対応していないこともあります。契約書の種類や特定のケースを考慮して、電子契約導入を検討しましょう。

取引先との合意が必要

契約は通常、関係者間で同意が得られた場合に成立します。したがって、取引先が電子契約を拒否する場合、その契約は有効に成立しません。これは、電子契約の導入にあたり、取引先がその変更に同意する必要があることを意味します。

特に、電子契約を導入する際、これまで紙ベースの契約しか経験していない取引先に対しては、新しいプロセスの概要・安全性・有効性について説明する必要があります。取引先が不慣れな場合、操作方法のフォローやサポートの求めに応じることもあります。

電子契約の導入には、取引先とのコミュニケーションや合意形成が不可欠です。新しい契約プロセスに適応するためには、関係者との説明やサポートを提供することで、円滑な移行と運用を確保する必要があります。

業務フローの見直し・周知が必要

電子契約の導入に伴い、従来の契約プロセスを見直す必要があります。締結までのステップやタイミングが異なることがあるため、新たなプロセスを設計し、それを従業員や関係者に理解してもらう必要があります。

従業員や関係部門が新たなプロセスを理解し、遵守するためには、情報の適切な共有とコミュニケーションが不可欠です。 実際に電子契約を利用する従業員には、電子契約の特徴や利用方法を踏まえ、適切な操作と効果的な使用ができるよう教育が必要です。

電子契約の導入に関係する法律

電子契約を導入する際には、法的要件に対応するために確認しておきたい法律がいくつかあります。ここでは、電子署名法・電子帳簿保存法・e-文書法の概要と、電子契約の導入時に押さえておきたいポイントを解説します。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

電子契約の導入に関係する法律

  1. 電子署名法
  2. 電子帳簿保存法
  3. e-文書法

電子署名法

電子署名法は2001年に施行された法律で、電子署名を押印と同等に通用させることを目的としています。電子契約を導入するにあたり、覚えておきたいポイントとしては、文書の証拠力として、電子署名がある電子データは、文書の真正性が立証される点です。

文書の真正性とは、署名者が本人の意思で作成した文書であることを意味します。電子認証局の厳格な規定に基づき発行された電子証明書を伴う電子契約書は、契約について争いが生じた場合に裁判上の証拠として、十分な信頼性を持ちます。

参考:電子署名法第3条|e-Gov法令検索

電子帳簿保存法

電子帳簿保存法は、1998年に施行されて以来、2005年・2015年・2016年・2020年・2022年と改正を経てきました。内容は、国税関係の帳簿や書類を電子データで保存する際のルールについて定めています。

各税法では、国税関係書類は原則として紙で保存しなければなりませんが、電子帳簿保存法では一定の要件を満たすことで電子保存が認められます。なお、売上・経費に関する契約書は国税関係書類に該当し、電子契約においてはデータの保存が義務付けられます。

電子データとしての効力を保つためには、電子的に作成あるいは電子的に受け取った文書は、電子データのまま保存するようにします。また、紙の契約書については、スキャナやカメラなどを用いてデータ化して保存する方法もあります。

参考:電子帳簿保存法の概要|国税庁

e-文書法

e-文書法は2005年に施行された法律で、紙での保存が義務付けられていた法定保存文書を電子データで保存することを認める内容です。電子帳簿保存法に似ていますが、電子帳簿保存法では、電子化要件の範囲が国税関係書類に限定されています。

一方でe-文書法では、国税関係書類だけでなく、建築図書・医療情報・人事関係など、さまざまな法定文書に対して電子化要件の範囲が及びます。契約書だけでなく、企業のさまざまな文書を電子化する際に注目すべき法律です。

また、e-文書法では、電子的な保存を認める要件として、見読性(明瞭な状態で見ることができる)・完全性(証拠能力の高さ)・検索性(必要なデータをすぐに引き出せる)ことを求めています。これらの要件は契約書の電子保存にも該当するので必ず確認しておきましょう。

参考:e-文書法|e-Gov法令検索

効率的な電子契約には契約書管理システムの導入がおすすめ

契約書管理システムとは、契約書の効率的な管理と運用を支援するツールです。データの漏洩や紙の劣化を防いで安全に保管でき、必要な契約書をすぐに取り出せて関係者との共有を容易にします。電子契約をより安全で効率的なものにしてくれる利点があります。

契約書はバージョン管理されるため、最新の契約書もすぐにわかり、契約期限が近づくとアラートで通知してくれる機能も便利です。システムによっては、データをアップロードするだけでAIが自動的にデータベース化してくれる機能もあり、業務効率が大幅に向上します。

契約書管理に特化したタイプや、契約締結から対応できるタイプもあり、さらに、紙の契約書のスキャンを代行してくれるサービスもあります。電子契約を導入するなら、自社のニーズに合わせて業務全体を効率化する契約書管理システムを選ぶのがおすすめです。

契約書管理システムとは?主な機能や選び方のポイントも解説

契約書管理システムとは、自治体などでもよく利用されている「契約書を適切に管理するためのシステム」のことです。この記事では、契約書管理システムの主な機能や種類、システム導入によるメリット・デメリットや、比較のポイントなどについて詳しく解説していきます。

まとめ

電子契約は効率的な契約プロセスを実現し、リアルタイムで取引相手との合意を確立します。煩雑な紙ベースの手続きや郵送を排除し、迅速なビジネス展開を促進することが可能です。

電子契約には、業務の効率化やコスト削減、契約フロー可視化、コンプライアンスの強化などを行えるメリットがあります。また、電子署名やセキュリティ対策により、契約の正当性と機密性を確保できるのも利点です。

本記事を参考に電子契約をぜひ検討してみてください。電子契約においても、契約書の管理や運用をスムーズに行うためには、契約書管理システムの導入がおすすめであるため、合わせて確認してみるといいでしょう。

Share

top