契約書の保管期間や保管する方法|契約書以外の書類の保管期間も解説
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- 契約書の保管期間は、会社法と法人税法によって義務付けられている年数が異なっている
- 個人事業主が保管する重要書類と期間は、青色申告・白色申告の場合で違いがある
- 契約書の保管方法には紙や電子データなどがあるが、それぞれメリットと注意点がある
企業において重要な役割を担う契約書は、会社法・法人税法によって義務付けられている保管の期間が異なります。誤って処分しないよう、契約書を適切に保管することが重要です。本記事では、契約書だけでなく契約書以外の書類の保管期間・保管方法についても解説します。
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法律で定められている契約書の保管期間に関する法律
企業において重要な役目を持つ契約書ですが、事業期間が長いほど管理が煩雑化するため、現在使用していないものを処分したくなるかもしれません。
しかし、契約書には会社法や法人税法といった法律による保管が義務づけられているものも存在するため、間違えて処分しないように注意する必要があります。ここでは、契約書の保管期間について解説します。
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会社法
通常の契約書における保管期間は、会社法によって契約終了後10年間と規定されています。会社法とは、会社の設立や資金調達など、企業の事業活動における基本ルールを規定した法律を指します。すべての企業は、会社法に基づいて事業を行わなければなりません。
また、保管期間は取引の安全性を考慮して設けられたものであり、万が一当事者間で契約トラブルが発生した場合、契約書は裁判の証拠として効力を発揮します。
しかし、契約終了後10年を経過した契約については、もし損害賠償などの訴訟を起こしたとしても法的安定性が確保できないため、契約書の保管義務はありません。
法人税法
税務処理に関わる書類(請求書・領収書・見積書など)は、法人税法により7年間の最低保管期間が義務づけられています。また、決算書類や税務申告書類なども含まれます。
税務署の立ち入りによる税務調査が行われた際に、法令で規定された書類が保管されていないと相応の対応ができません。そして、正しく納税していたとしても、提出を求められた書類がなければ申告内容の改ざんを疑われます。
税務調査はすべての企業が対象となる可能性があるため、税務関連書類は適正に管理しましょう。
主な契約書の保管期間
契約書の保管期間について以下の表で説明していきます。
契約書 | 保管期間 |
---|---|
健康保険・厚生年金・社会保険に関する書類 | ・2年(健康保険法施行規則34) ・起算日:保険関係が完結した日 |
労災保険に関する書類 | ・3年(労働者災害補償保険法施行規則51) ・起算日:保険関係が完結した日 |
産業廃棄物処理委託契約書 | ・5年(産業廃棄物処理法で高規則8の4の3) ・起算日:契約終了日 |
派遣元管理台帳 | ・3年(労働者派遣事業法37) ・起算日:派遣期間の終了日 |
電子取引の取引情報 | ・7年(電子帳簿保存法施行規則8) ・起算日:帳簿を閉鎖した日・書類作成日・受領日の事業年度終了翌日から2カ月を経過した日 |
売買契約書 | ・7年(法人税法施行規則第59条1項・2項) ・起算日:各事業年度の申告書提出期限の翌日 |
賃貸契約書 | ・5年(宅地建物取引業法施行規則第18条) ・起算日:賃料が発生する日 |
現在有効な契約書 | 永久(ー) |
契約書以外の書類における保管期間
契約書の保管期間と同じく、契約書以外の書類における保管期間も書類ごとに違います。起算日も書類それぞれに規定されているため、注意が必要です。ここでは、書類別の保管期間・起算日について解説します。
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契約書以外の主な書類の保管期間
5年間保管する書類
保管期間が5年の書類は、主に株式会社の事業報告書・有価証券報告書・従業員の身元保証書や誓約書が挙げられます。事業報告書は、定期株主総会で年度における会社の事業内容や状況を株主に報告する書類で、会社法により提出が義務づけられています。
有価証券報告書は、会社概況や事業・設備などの状況、財務状況といった広範にわたる情報が織り込まれた書類を指します。
また、従業員の身元保証書や誓約書は、入社する社員が会社でトラブルを起こさず、誠実な労働を行うことを第三者によって保証し、会社に損害を及ぼした場合は金銭的な補償を誓約する書類です。
書類 | 起算日 | 法律 |
---|---|---|
株式会社の事業報告 | 定期株主総会の日の1週間前(取締役会を設置している会社の場合は2週間前) | 会社法第442条 |
有価証券届出書・有価証券報告 | 提出日 | 金融商品取引法第25条 |
従業員の身元保証書や誓約書 | 作成日 | 身元保証ニ関スル法律 |
10年間保管する書類
保管期間が10年の書類には、主に株主総会議事録・会計帳簿・建築業者の営業に関する図書などがあります。株主総会議事録は、株主総会で決議された内容を記載した書類で、株主や債権者からの閲覧請求・登記申請など、さまざまな場面で必要とされます。
また、会計帳簿は、総勘定元帳・仕訳帳・売上台帳などを指し、会社法により10年間の保管が義務づけられています。しかし、法人税法では保管期間が7年と定められているため、取扱いに注意しましょう。
なお、建築業者の営業に関する図書とは、建築の営業に関する書類(完成図・発注者との打ち合わせ記録・施工体系図)を指し、図書の保管は元請業者が担います。
書類 | 起算日 | 法律 |
---|---|---|
株主総会議事録(本店備え置き分) | 株主総会の日 | 会社法第318条 |
会計帳簿(仕訳帳・総勘定元帳など) | 帳簿閉鎖の日 | 会社法第432条 |
建築業者の営業に関する図書 | 目的物の引き渡し日 | 建設業法施行規則第28条 |
15年間保管する書類
建築士事務所の業務に関する図書には、配置図・2面以上の立面図・各階平面図・2面以上の断面図・基礎伏図・小屋伏図・各階床伏図・構造計算書・構造詳細図などがあります。
これらの内、建築士事務所の業務に関する図書においては、5年間保管とされていた時期があります。しかし、2005年11月に起きた構造計算書偽装による耐震偽装事件の再発防止を目的として、2007年6月20日以降は保管期間が15年へと大幅に延長されました。
書類 | 起算日 | 法律 |
---|---|---|
建築事務所の業務に関する図書 | 図書を作成した日 | 建設業法施行規則第21条 |
永久保管が望ましい書類
以下の書類は、法律によって永久保管が義務づけられていませんが、企業にとっては非常に重要な書類であるため、一般的に永久保管が望ましいと認識されています。
- 定款
- 株式に関する書類
- 登記・訴訟関係書類
- 官公庁への提出文書
- 受領した重要書類
- 社規・社則および通達文書
- 効力の永続する契約に関する文書
- 知的所有権に関する書類
- 重要な権利や財産の得喪・保全・解除および変更に関する文書
- 製品の開発・設計に関する重要文書
- 社報・社内報、重要刊行物
- 労働協約にあたる書類 (確認書・覚書)
個人事業主の重要書類の保管期間
個人事業主の場合は、会社法や法人税法が適用されません。そのため、契約書などの事業における重要な書類の保管期間には異なる規則が設定されています。
個人事業主の場合、青色申告と白色申告の2種類があり、書類の保管期間に違いがあります。この章では、それぞれについて詳しく解説します。
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青色申告の場合
青色申告は確定申告における申告方法の1つで、適正に納税するために行う申告納税制度のことです。個人事業主・法人の両者に対応しています。
所得税法では、青色申告者の書類・領収書については7年間の保存を義務づけています。青色申告者の現金預金取引等関係書類である領収書などは7年、その他の書類は5年間の保存が必要です。ここでは、個人事業主の青色申告について解説します。
7年保管の書類
青色申告の場合、事業の取引内容を記録した帳簿類を7年間保管する必要があります。帳簿類として挙げられるのは、売上帳・仕入帳・現金出納帳・仕訳帳・総勘定元帳・固定資産台帳などです。
また、決算書類(貸借対照表・損益計算書など)の保管期限も同様に7年間です。現金預金取引等関係書類(領収書・預金通帳など)も7年保管が原則ですが、前々年度の所得合計が300万円未満の場合は、5年保管に短縮されます。
5年保管の書類
青色申告を行っている個人事業主に対しては、所得税法において、帳簿書類・決算書類・現金預金の取引などに関係する証憑書類は7年間、その他の証憑書類は5年間の保存が義務づけられています。
その他の証憑書類とは、納品書・見積書・注文書・送り状などです。また、契約書・見積書・請求書・領収書など、取引の内容を示す書類の保管期限も同じく5年間です。
白色申告の場合
白色申告は、個人事業主やフリーランスが所得税の確定申告をする際に、青色申告以外の申告を指します。青色申告が特別な申告方法で、それに反する申告方法が白色申告と理解しておけば良いでしょう。
白色申告は、税制上におけるメリットがない一方で、帳簿付けが簡単といった点が特徴です。また、白色申告を行う際、事前に開業届や申請書を提出する必要はありません。
白色申告を行う個人事業主は、収入や支出状況を記載した帳簿を7年間保管する必要はありません。なお、その他の書類(事業において作成した契約書や請求書など)の保管期限については、5年間と定められています。
契約書の原本における保管期間
契約書の原本とは、初めに作成されたオリジナルの契約書を指します。企業間取引において、当事者間で2部作成した場合はどちらも原本として扱われます。また、契約書の原本には法律上の保存義務が存在し、保管期間は法人か個人事業主によって異なります。
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契約書の原本における保管期間
法人の契約書原本の保管期間
法人における契約書原本の保管期間は、契約書の種類によって保管期間が大きく異なります。特に、1つの契約書に関して複数の法令に該当する場合には、その中から一番長い保管期間に適応する必要があります。
具体的には、会社法に従う場合には10年間の保管義務があり、法人税法に従う場合には7年間の保管義務が適応されます。なお、原本に関しては紛失や改ざんといったリスクを避けながら、厳重に保管しなければなりません。
個人事業主の契約書原本の保管期間
個人事業主の契約書原本の保管期間は、青色申告者・白色申告者ともに、所得税法に基づいて5年間保管するように定められています。また、保管期間は該当する事業年度の確定申告提出期限の翌日と定められているため、契約書の作成日からの換算ではありません。
よって、正しい保管期間を認識して保管する必要があります。
契約書の保管方法
契約書は法律で保管期間が義務づけられている重要な書類であり、その保管には十分な注意を払う必要があります。これまでの書類作成は紙を使用し、紙での保管が通例でしたが、最近では電子データの活用も拡大しています。
ここでは、契約書などにおける3種類の保管方法と特徴についてそれぞれ解説します。
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契約書の保管方法
紙で保管
紙で保管する場合の大きなメリットは、形として手元に残るため誰でも見やすく、資料の見直しや閲覧・回覧がしやすい点です。ただし、量が増えるほどに対象の資料を見つけづらくなり、保管スペースの確保も必要となります。
また、印刷する枚数分のインク代や手間・時間がかかる点もデメリットです。
メリット | デメリット |
---|---|
見たい箇所に付箋を貼ったり、手書きしたりしてメモが残せる | 保管スペースが必要になる |
ITに詳しくなくても見やすい | 見たい資料を即座に見つけられない(検索しづらい |
紙に書かれているため、誰でも読みやすい | 紙代・インク代・製本の手間など、時間やコスト面での損失が大きい |
資料を見直したり、全体を閲覧・回覧したりしやすい | 保管環境に大きく左右される |
マイクロフィルムで保管
マイクロフィルムは、書類や画像データを極小のサイズに縮小して、フィルムに記録する媒体を指します。長期保管が可能ですが、マイクロフィルムの内容を確認するには専用機器が必要です。
また、マイクロフィルムの保管データは、印刷して内容の確認が容易にできます。
メリット | デメリット |
---|---|
長期保管が可能 | 専用機器が必要であり、導入・管理にコストがかかる |
見読性(保存データを表示・印刷して容易に読めるようにすること)に優れている | 物理的な保管スペースが必要 |
紙よりも少ないスペースで保管が可能 | 高温多湿など保管環境が悪いと品質が劣化し、読み取りができなくなる恐れがある |
電子データで保管
契約書を電子データで保管する最大のメリットは、物理的な保管スペースが不要なことです。しかし、データの流出などには十分に注意する必要があり、電子データで受け取った契約書は電子データでの保管が義務づけられています。
最近は電子契約の普及率が大きく進展しているため、契約書を電子データで保管する企業が増えています。
メリット | デメリット |
---|---|
クラウド上で保管できるため、現実的な保管スペースが不要 | 万全なセキュリティ対策が必要 |
指定した条件(契約書名や取引先名など)で容易に契約書を探せる | 電子帳簿保存法のルールを理解する必要がある |
在宅勤務中でも契約書が閲覧できる | 電子契約サービス・契約書管理システムの導入・維持費がかかる |
電子データで作成された契約書の保管に関する注意点
契約書を電子データで保管すれば、書類を保管するスペースや管理費用に関する課題の解決に貢献します。ただし、契約書を電子データで保管する場合は、電子帳簿保存法への理解を深めておく必要があります。
2022年1月の改正電子帳簿保存法により、書類の電子データ化における要件が緩和された一方で、罰則に関しての規制が強化されました。ここでは、改正電子帳簿保存法に対応した契約書を電子保管する場合の注意点を解説します。
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電子データで作成された契約書の保管に関する注意点
電子データのまま保存する必要がある
2022年1月1日に施行された改正電子帳簿保存法により、電子データで作成される電子契約については、原則として電子データのまま保存することが義務づけられました。そのため、電子契約で締結した契約書を紙に印刷して保存することはできません。
電子取引の取引情報を電子データのまま保存する場合は、単にデータをフォルダーなどに保存するだけでは不十分です。つまり、電子帳簿保存法が求める真実性・可視性の要件をいずれも満たす必要があります。
真実性の確保
取引情報の真実性を満たすためには、以下の4つのうちいずれかの措置を講じることが義務づけられています。
- タイムスタンプが付与された取引情報を受け取る
- 取引情報の受け取り後、迅速にタイムスタンプを付与すると同時に、保存の実施者・監視者に関する情報確認ができる環境を整える
- 訂正や削除の確認ができるシステム、あるいは訂正や削除が不可能なシステムでの取引情報の受け取り・保存を行う
- 訂正や削除防止に関する事務処理規定を設定し、それに準じた運用を行う
可視性の確保
可視性の確保における要件では、契約書に記載された契約内容を迅速・正確に確認するための要件を規定しています。
電子データの画質が粗く読み取れない、PCやシステムの操作方法が不明確で契約書内容を確認できないといった事態にならないよう、詳細に規定されているため注意しましょう。具体的には、以下の要件を満たさなければなりません。
- ディスプレイや印刷などで、契約書内容の閲覧が可能であること
- 過去の電子契約書も検索できること
- 電子契約システムの利用関係者全員が把握できるマニュアルを用意する
まとめ
契約書には法律で定められた保管期間があるため、契約修了後に即廃棄するのは避けなければなりません。再度見直しすることがないと判断される契約書でも、会社法や法人税法などを遵守して適切に管理・保管しましょう。
契約書の保管期間には、5年・10年・15年・永久保存が設定されています。また、契約書以外の書類の保管期間は3年から永久保存まであります。書類ごとに保管期間の起算日が異なっているため、保存期間以外に起算日の確認も大切です。
契約書の保管方法には、紙・マイクロフィルム・電子データがあり、メリットやデメリットもそれぞれに違いがあります。現状の契約書における保管業務が作業効率を低下させたり、作業スペースを妨げたりしている場合は、電子保管への変更を検討してみましょう。
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