給与計算における住民税の計算方法は?手引きの時期や注意点もわかりやすく解説

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  • 住民税とは「都道府県民税」と「市区町村民税」を合わせた税金
  • 住民税はまず課税標準額を算出し、所得割と均等割を足すことで算出できる
  • 住民税の税率は地方によって異なるため、従業員の引越し時などは再計算の必要がある

住民税とは「都道府県民税」と「市区町村民税」を合わせた税金で、会社は従業員の給与から天引きして納めるのが通常です。本記事では、住民税に関する基礎知識や計算方法・転職者がいる場合の注意点などをわかりやすく解説します。

目次

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  1. 住民税とは
  2. 給与計算における住民税の計算方法
  3. 住民税に関する注意点
  4. 給与計算ソフトを使って住民税の管理を楽に
  5. まとめ

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住民税とは

住民税とは都道府県民税と市町村民税を合わせたもので、個人に課される地方税の1つです。住民税は、各地方自治体の住民が利用するさまざまな行政サービスにかかる費用の一部を負担することを目的として定められています。

住民税の金額は前年の1月1日から12月31日までの合計所得によって算出され、その年の1月1日時点で住民票の籍がある自治体に対して支払います。

所得税が国税であるのに対し、住民税は地方公共団体へ納付を行います。住民税の税額は均等割と所得割の合計によって算定されますが、均等割が全国一律であるのに対し、所得割は所得や居住地に応じて税率が異なります。

参考:個人住民税|総務省

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住民税の納め方

住民税には2種類の納付方法があります。納付方法は原則として給与所得の有無によって分かれますが、それぞれに特徴を備えています。ここでは2つの納付方法について詳しく解説していきます。

普通徴収

普通徴収とは、納税義務者本人が自治体へ直接住民税の納付を行う方法です。前年の所得から算定された住民税額は税額通知書の郵送によって納税義務者本人へ通知され、納税義務者は定められた期日までに支払う義務が発生します。

普通徴収による納付は、原則として給与を受け取っていない場合に認められます。会社に所属せず収入を得ているフリーランスや自営業の方は、普通徴収による納付が可能です。

普通徴収で納付を行う場合、税額通知書に添付されている納付書を用いてコンビニや指定金融機関の窓口などで支払います。近年では、地方税共同機構が提供する納税ポータルシステム「e-LTAX」によるオンライン決済でも支払いが可能です。

参考:eLTAX 地方税ポータルシステム

特別徴収

特別徴収とは、会社が従業員の給与から住民税の天引きを行い、従業員の代わりに自治体へ納める納付方法です。納税義務者に給与を支払っている会社では、原則として特別徴収が義務付けられています。

特別徴収を行う会社では、年末調整により前年の給与額が確定した後、毎年1月末までに各市町村へ給与支払報告書を提出しなければなりません。地方自治体はその報告内容をもとに今年度の住民税額を算定し、会社宛に従業員ごとの納付額を通知するという流れになっています。

特別徴収はあらかじめ給与から住民税を確保できるため、自治体側には確実な徴収が可能になるというメリットがあります。また、納税義務者側には納付の手続きが発生せず、毎月分割で支払うことができます。一方で、会社側は徴収や納付などの事務的な負担を引き受けることになります。

給与からの天引きはいつから行うか

住民税は前年の所得に応じて算定され、毎年5月頃に納付額が決定されます。決定された納付額は税額通知書によって通知され、6月分の給与より今年度の住民税額による控除が開始されます。

なお、新卒入社の従業員に関しては前年の所得がないため、入社2年目の6月から住民税の天引きが開始となります。

給与明細に住民税の記載がないケースとは

上述のように、住民税は前年の所得に応じて算出され、翌年6月から天引きされます。そのため、前年の収入がない場合は給与からの控除はなく、明細にも記載はありません。

しかし、それ以外の理由で住民税の記載がない場合、特別徴収されていない可能性があるため、会社に確認することをおすすめします。

特に、転職した場合は一時的に普通徴収に切り替わることがあります。普通徴収になっていると納付書が届き、期日までに支払う必要があります。

給与計算における住民税の計算方法

年間の住民税額は以下の数式によって算出できます。

住民税(年間) = 所得割 + 均等割

また、給与所得者においては、住民税額をおおむね12等分した金額が毎月の給与から天引きされます。所得割・均等割の算出にかかる内容を以下の表にまとめました。

所得割均等割
内容前年の所得に応じて課税される各自治体で定めた一律の金額
都道府県民税標準税率4%1,500円
市区町村民税標準税率6%3,500円

住民税の計算手順

住民税額は自治体によって算出されますが、段階に応じた計算方法が定められています。ここでは、住民額の計算方法について手順ごとに解説していきます。

1. 「課税標準額」を算出する

課税標準額 = 所得合計 - 所得控除合計額(1,000円未満切り捨て)

住民税額を計算するにあたって、まず計算の基準となる課税標準額の算出が必要になります。課税標準額とは収入金額から各種所得控除の額を差し引いたもので、この金額に対して課税が行われます。

給与所得者の場合、まず給与収入の総額から給与所得控除額を差し引きます。給与所得控除額の計算方法は収入金額に応じて異なるため、給与等の収入総額を把握した上で個別の計算が必要です。

続いて、算出した給与所得を控除した後の額から、さらに所得控除の項目に該当する金額を差し引きます。

生命保険・介護保険・地震保険などの保険料控除に加え、年間の医療費にかかった金額が一定額を上回った場合に適用される医療費控除や、ふるさと納税を行なった場合の寄附金控除なども所得控除にあたります。

参考:No.1410 給与所得控除|国税庁

参考:「所得から差し引かれる金額」(所得控除)|国税庁

2. 「所得割」を算出する

所得割 = 課税標準額 × 10% - 税額控除

所得割とは所得額に応じて課される住民税のことです。所得割では、都道府県民税の4%と市町村民税の6%を合計した10%が課税されます。前のステップで算出した課税標準額に10%をかけ、そこから税額控除を差し引いたものが所得割の金額となります。

所得税が超過累進税率であるのに対し、住民税の所得割は税率が一律に定められているという特徴があります。以前は住民税にも累進税率が適用されていましたが、平成19年以降は一律合計10%の課税となっています。

税額控除には、住宅ローンを支払っている場合に適用される控除や各種寄附金などが含まれます。所得控除は税率がかかる前の所得から控除が行われるのに対し、税額控除は一旦計算した税額から控除されるという違いがあります。

3. 「所得割」と「均等割」を足す

所得割は個人の収入額によって異なりますが、均等割の金額は全国一律で定められています。令和5年時点では都道府県民税1,500円と市町村民税3,500円を合計した5,000円となっており、この金額に所得割を合計して年間の住民税額が算定されます。

普通徴収の場合は年間の住民税額を4期に分割した形で納付書が送られてくる場合が多いですが、個人の判断により一括納付も可能です。対して、特別徴収による天引きの場合は年間の税額を概ね12等分した税額を毎月徴収されるという特徴があります。

また、年間の住民税額によっては12分割した際に端数が発生します。端数が出た場合は、初回納付にあたる6月分に上乗せして徴収が行われます。

住民税に関する注意点

住民税にはいくつか注意が必要な項目があります。転職による入社があった場合や臨時的な増税がある場合には特に注意が必要です。ここでは、3つの項目について詳しく解説していきます。

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転職者がいる場合

転職により入社した社員がいる場合、前の会社に引き続き在職しているかどうかで住民税に関する手続きが変わってきます。ここでは、2つのパターンにおける手続きの違いを詳しく解説します。

転職者が在職中のケース

転職者がまだ前の会社に籍を置いている場合、元の会社が「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」の発行を行います。元の会社が市区町村に提出することで特別徴収の継続手続きが完了するため、新しい会社では継続に関する手続きを行いません。

前の会社が異動届を提出していない場合や提出が遅れた場合は、従業員本人が普通徴収によって支払うことになります。提出のタイミングによって対応が変わる場合もあるため、配慮が必要です。

転職者が元の会社を退職し、期間を経て入社するケース

転職者が前の会社を退職し、期間を経て入社してきた場合は退職のタイミングによって必要な対応が変わってきます。退職日ごとの手続き内容は以下の通りです。

元の会社の退職日手続き
1/1〜4/30原則として最終給与から残額の合計を一括徴収
5/1〜5/31最終給与から1ヶ月分を徴収
6/1〜12/31毎月の給与から1ヶ月分を徴収

復興特別税と森林環境税の上乗せ

2023年の時点では、東日本大震災からの復興という名目で復興特別税が上乗せされています。復興特別税は導入時にあらかじめ期間が定められていたため2023年度で終了しますが、2024年からはこれに変わって森林環境税という税が新たに上乗せされます。

復興特別税は都道府県民税と市区町村民税の両方からそれぞれ500円ずつ徴収されていましたが、森林環境税は均等割と合わせて1,000円が課されるという違いがあります。合計額は同じですが項目が変わる点に注意しましょう。

参考:個人の方に係る復興特別所得税のあらまし|国税庁

参考:森林環境税及び森林環境譲与税について|総務省

税率は自治体によって異なる

住民税における都道府県民税率と市町村民税率の合計は基本的に10%に設定されていますが、一部の自治体では税率が異なります。例えば、横浜市は10.025%、名古屋市は9.7%です。

住民税はその年の1月1日に居住している自治体に納付することが定められているため、転職により年度の途中で納付先や金額が変わることはありません。しかし、自治体をまたいで転居した場合、翌年度以降の住民税率が変わることがあります。

参考:個人の市民税・県民税について – 横浜市

参考:個人の市民税・県民税、所得税(暮らしの情報)- 名古屋市

給与計算ソフトを使って住民税の管理を楽に

給与計算ソフトによって給与の算出を行う場合、住民税の控除は税額通知書に記載されている金額を入力するだけで完結する場合が多いです。また、住民税異動届をはじめとする関連書類の届け出を行える給与計算ソフトもあります。

住民税や各種社会保険料の計算は、給与計算において大きな負担となります。手計算で算出する場合は毎年の料率変更や税額の確認などさまざまな作業が必要になりますが、給与計算ソフトの導入により住民税の管理を大幅に効率化できます。

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  • 所得税や住民税率は手動で変更する必要がある

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まとめ

住民税は、私たちが生活していく上で欠かせない行政サービスに役立てられる地方税です。住民税には都道府県民税と市区町村民税が含まれており、これらを合計して年間の住民税額が算定されます。

これらの複雑な処理に関する負担を軽減させるには、給与計算ソフトの使用がおすすめです。給与計算ソフトの導入によって、住民税をはじめとするさまざまな事務的負担を軽減させ、業務の効率化を目指しましょう。

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