原価管理システムとは?主な機能やメリット・選ぶポイントを解説

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  • 原価管理システムとは、原価を効率的よく管理できるシステムのこと
  • 原価管理システムを活用することで、複雑な原価計算や分析を効率的に行える
  • 導入前・導入時それぞれのフェーズでの比較ポイントを抑えて選ぶことが重要

原価管理システムとは、原価計算や損益分析、原価シミュレーションなどの複雑な計算を効率的に行えるシステムです。この記事では、原価管理システムの基本的な機能やシステム導入によるメリット、導入前・導入時にそれぞれ考えるべきポイントについて詳しく解説します。

目次

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  1. 原価管理システムとは
  2. 原価管理システムの基本的な機能
  3. 原価管理システムを導入するメリット
  4. 原価管理システム導入のデメリット
  5. 導入前に考えるべき比較ポイント
  6. 原価管理システムの選び方
  7. まとめ

原価管理システムとは

原価管理システムとは、原価を効率的に管理できるシステムのことを言います。原価管理システムでは原価の計算をはじめ、差異分析で予算と実績を比較したり、損益分析を行えたり、独自基準で配賦計算もできたりします。

販売管理システムや会計管理システムなどの基幹システムと連携可能な点も特徴で、原価管理システムがはじき出すリアルタイムのデータは、コストカット、価格改定、経営の判断や利益の最大化に貢献してくれます

複雑多岐にわたる原価の計算を効率的に実行でき、最新のシステムでは原価のシミュレーションも実行できるようになりました。独自の基準を用い、原価計算が複雑な製造業や建設業に特化したシステムも数多く提供されています。

原価管理とは

原価管理とは、利益最大化のために、製品の生産やサービスの提供にかかる原価を管理することです。原価管理では、はじめに標準原価を設定し生産・販売・購買計画を立て、標準原価と実際の原価と比較して差異を分析します。

そして、コストを押し上げている費目を突き止め、対応策を講じ原因を改善します。適切な価格設定やコストカットを実現することで収益向上に繋げます。良い面が目立ちますが、原価管理に課題や問題点がないわけではありません。

試作段階と製品量産以後の原価の差異があるため、量産後は対策が困難で、原価を管理するシステムが旧型や非効率だった場合は、実績の把握が遅れ対策も後手に回ります。原価を現場へと反映させづらいのも課題です。

原価管理はExcel(エクセル)で行われることが多いですが、担当者への負担は非常に大きなものがあります。Excelには編集機能がなく、同時編集もできず、原価管理の最新のデータを常に集めなければいけません。

原価管理の仕組み

適切な標準原価設定と原価計算を行い、標準原価と実際原価の差異を分析し、問題を改善していくことが原価管理の仕組みです。

原価計算と原価管理は似たような言葉ですが、その内容は同じではありません。原価計算は製品の製造やサービスの提供など、企業の事業活動で発生する原価を計算することです。両者は意味するところが違い、原価計算は原価管理を行うためのひとつの手段に過ぎません

原価管理の目的

原価管理の主たる目的は、利益を確保することにあります。原価管理を行うことで、製品の生産に係る費用を把握し、収益を最大化するための価格戦略や生産方法の最適化を図れます。

また、リスク対策も原価管理の目的です。将来の仕入価格の変動や商品の需要減少といった不測の事態が生じた場合でも、原価管理を行っていることで適切な対策を講じることができます。

原価管理システムの基本的な機能

原価管理システムは、原価の管理を効率的に実行できる便利なツールです。しかし、原価管理システムと聞いても、詳細な内容まで思い描ける方は少ないのではないでしょうか。ここからは原価管理システムに搭載されている基本的な計算機能を解説します

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原価計算機能

原価計算機能は製品の生産、サービスの提供の際に発生する費用から、原価を求められる機能です。材料費・製造費などの原価を求めるために、複数の原価計算方法が搭載されている点が特徴です

予算原価計算・標準原価計算・実際原価計算以外にも、個別原価計算で製品ごとの原価を計算したり、大量生産の際に利用される総合原価計算で原価を求めたり、さまざまな角度から原価を算出できるようになっており、コスト削減や収益向上に有効活用できます。

原価差異分析機能

原価差異分析は、目標としている標準原価と実際の原価を比較して、分析できる機能です。差異分析をすると、差異のある費目を浮き彫りにできるため、素早く適切な対応策も取れるようになります。

損益計算機能

損益計算機能は、製品別や部門別の損益や月次・四半期ごとに区切った損益を計算でき、予算編成に大いに役立つ機能です。製品別や部門別の損益計算で得たデータで各収益性を見て、利益の少ない製品や部門を明確にできるため、効率的な予算の振り分けができます。

配賦計算機能

配賦計算機能は、製品や部門を横断して発生する費用を社内独自の基準・パターンを用いて割り当てられる機能です。原価は、原材料費や減価償却費などの固定費と、光熱費や人件費などから構成される間接費に分けられます。

このうち間接費は、製品の原価に反映させるのかが難しい科目です。しかし、配賦計算機能を使うと複雑な原価計算は不要で、独自のルールや配賦係数で加重した原価を求められ、製品ひとつに対しての原価を振り分けられます

原価管理システムを導入するメリット

原価管理システムを導入するメリットは多いです。システム導入でコストカットを期待でき、経営判断の迅速化をもたらしてくれます。原価変動リスクにも対応でき、複雑なシミュレーションも可能です。ここからは、システム導入で得られるメリットを解説します

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人件費の削減につながる

原価管理システムを導入すると、人件費の削減を期待できます。システムを導入すると、担当者がExcelでマクロを組むことや、システムの更新・保守をする必要がありません。簡単な入力作業を行うのみで、後はシステムが自動で計算をしてくれます。

データの更新・保守・管理が自動化すると、担当者の労力も減り、原価管理をExcelで行っているときのような属人化も起こりません。作業を効率化できるため、人的コストを減らせ、結果人件費の削減につながります

経営判断を迅速化できる

原価管理システムは、経営判断の迅速化を期待できるツールです。原価管理システムを導入すると、原料費や為替の変動から差異分析や損益分析のデータをリアルタイムで確認できます。このもたらされる情報から、原価に関わる変動要素に対して即時に適切な対応を取れます。

原価変動のリスクに対応できる

原価管理システムを導入すると、原価変動のリスクにも対応できるようになります。原料の仕入れ価格、為替といった原価に影響を与える要素は常に変動し、購買時の価格は一定ではありません。

そして、企業の利益も原価に連動してプラスやマイナスに振れます。しかし、常日頃から原価管理を適切に行い、システムの原価シミュレーションを活用すると、原価変動対策なども講じられます

複雑なシミュレーションが可能になる

シミュレーション機能を持つ、原価管理システムを導入すると、複雑なシミュレーションが可能になります。シミュレーション機能は非常に有用な機能で、上手く活用すると、さまざまな角度から経営戦略に役立つ分析を行えます。

シミュレーションで導き出された数値を元に購買の見直し、価格改定、コストカットなどの事業の改革も可能です。計算分析したデータは、設備投資、新分野に進出などの際にも有効に使えるでしょう。

原価管理システム導入のデメリット

原価管理ではさまざまな計算方法があるため、原価管理システムを導入する際、自社の業務に合ったシステムを選ばないと、計算方法が複雑化する可能性があります。Excel管理と異なり、導入や運営にコストがかかることもデメリットの一つになります。

しかしこれらのデメリットは、導入前に自社の目的とコストに見合ったシステムを選定することでカバーすることができます。

導入前に考えるべき比較ポイント

原価管理システムは、非常に有用で便利なソフトウェアですが、精査してシステムを選ばないと最大限の効果は得られません。ここからは、原価管理システムを導入する前に考えるべき比較ポイントを解説します

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原価管理システムを導入前の比較ポイント

  1. 自社の課題・導入の目的を明確化する
  2. 提供形態を事前に確認する

自社の課題・導入の目的を明確化する

原価管理システム導入前に、自社の課題を洗い出し、課題と導入目的を明確にしましょう。せっかく高額なシステムを導入しても、課題を解決する機能、欲しい機能がないソフトウェアでは使い物になりません。

事前に「基幹システムと連携させたい」「原価シミュレーションや配賦計算を効率化したい」など、導入目的をまとめましょう。そして、目的に対して必要になる機能を明らかにして、原価管理システムを選びましょう。


現場の意見をしっかりと取り入れる

現場の意見をしっかり取り入れることも重要なポイントです。原価管理をする際に、何に困っていて、どの作業に時間がかかるのか、現場社員の意見を反映させると、課題や問題点が明らかになります。課題や問題点が明確になると、それに見合ったシステムを選定できます。

提供形態を事前に確認する

原価管理システム選定の際は、提供形態を事前に確認しておきましょう。原価管理システムには、インターネット経由で手軽さが魅力のクラウド型、自社内でサーバーやアプリケーションを運営・管理するため、柔軟にカスタマイズできるオンプレミス型の2種類があります。

クラウド型とオンプレミス型のいずれが、自社にとって最適なサービス提供形態なのか見極めるために、導入前にそれぞれの特徴やメリット・デメリットを理解しておきましょう。そして、システム導入の効果が、最大限得られる自社に合ったシステムを選びましょう

クラウド型原価管理システム

クラウド型の原価管理システムは、インターネット環境があれば利用できる手軽さがメリットです。クラウド型は、サービス提供者がサーバーやOS、アプリケーションを管理・運営するため、自社内にシステムを構築する必要がありません。

自社内にシステムを構築し、管理・運営する必要がないため、初期費用を抑えられ、運営や保守に労力を取られません。サービスを契約するとすぐに利用できるので、原価管理システム導入に時間がかからない点もメリットです。

しかし、サービス提供者のシステムを利用するため、原価管理システムのカスタマイズ性は制限され、社内システムとの連携が上手くいかない場合もあります。トータルコストが高くなる点もデメリットです。

利用料金は、使用するほど料金が高くなる従量課金制が採用されており、利用期間や人数などを考慮して、かかるコストを確認しておく必要があります。

メリットデメリット
インターネット環境があれば手軽に利用できるカスタマイズ性が制限される
初期費用をおさえられる社内システムとの連携が上手くいかない場合もある
システムの運営・保守に労力を取られない従量課金制が採用されているケースが多い
システム導入に時間がかからない

オンプレミス型原価管理システム

オンプレミス型は、カスタマイズ性が高い点が魅力です。自社にサーバーを建て、OSやアプリケーションを自社内で管理・運営するため、技術があれば使いやすいようにいかようにもカスタマイズできます。

連携できるソフトウェアにも制限がないので、社内システムとの連携も容易です。セキュリティ対策をしっかり行い、インターネットに接続しなければ、セキュリティの強固なシステムも構築できます

ただし、オンプレミス型は自社内にシステムを構築するために、機器やソフトウェアの購入が必要で、初期費用が高額になる場合があります。システムを構築し、設定し実運用するまでには時間も必要です。システムの運営・保守のために、人員も確保しなければいけません。

メリットデメリット
カスタマイズ性が高い初期費用が高額になる場合がある
社内システムとの連携が容易システムを構築し、実運用するまでに時間がかかる
セキュリティの強固なシステムを構築できるシステムの運営・保守のために人員が必要

原価管理システムの選び方

原価管理システムには、さまざまな製品があり、使用経験がないとシステムを具体的にイメージしづらく、どのシステムを選べばいいのか迷ってしまいます。選定の参考になるように、ここからは、原価管理システムを選ぶ際に考えるべきポイントを紹介します

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ERPツールと原価管理システム単体のどちらにするか

原価管理システムの機能が実装されているERP(統合基幹業務システム)と、原価管理システム単体のどちらを導入すべきか検討しましょう。ERPは人・物・情報・資金を一元的に管理し、組織横断的に企業資源を活用するためのシステムです。

ERPは、会計管理・販売管理・在庫購買管理・生産管理・人事給与管理の5つが統合されたシステムで、原価管理もシステムのいち機能として実装されています。

原価の管理以外にも、複数にまたがる自社内のシステムを一元的に管理したい場合は、原価管理システムが実装されているERPの導入をおすすめします

業種や業界に合ったシステムか

各社から提供されているさまざまな原価管理システムから、自社の属する業種や業界に合ったシステムを選ぶことも大切です。原価管理システムには、大きく分けると特定業界用、プロジェクト管理用、汎用的なものの3タイプがあります。

特定業種用は、独自の計算を用いる製造業や建設業などのある業界に特化して設計され、プロジェクト管理用は、プロジェクトごとに人件費や労務費など計算や分析ができ、汎用的なタイプは、複雑な配賦機能はないものの原価管理やプロジェクト管理ができます。

建設業では、原価要素には外注費が加わり、原価計算を現場別原価計算で行う必要があるように、業種によって原価の計算方法と重視すべきポイントには違いがあるため、原価管理システム導入時には、業種や業界に合ったシステムか確認しましょう

他のシステムとの連携が可能か

他のシステムとの連携が可能かも確認しておきたいポイントです。生産管理、購買管理など、自社内に導入しているシステムと原価管理システムが連携できないと、導入の効果も薄まります。

連携できない場合、他のシステムからデータを出力し、手動で原価管理システムに入力する工程が必要になるケースがあります。導入時には、使用中のシステムと連携できる原価管理システムがおすすめです

モバイル端末に対応したものか

モバイル端末に対応しているかどうかも確認したい点です。どこからでも原価に関する情報にアクセスできると、外出先から社内への問い合わせは不要になります。スマホやタブレットで、外出先から原価の情報を確認できると、購買・営業など、ビジネスを有利に進められます。

機能に見合った料金か

システムの利用料金が、搭載された機能に見合った価格設定になっているかも、確認しておきたいポイントです。原価管理システムは、高機能のものになると、原価差異分析・配賦計算機能・損益計算機能などが実装されています。

高機能の原価管理システムは、利用できる機能が多い分、料金が高く導入コストがかさみます。無駄な費用を発生させないため、自社の原価管理に必要な機能だけを搭載しているシステムを選ぶことが大切です

まとめ

原価管理システムは、原価計算、標準価格と実績価格の差異分析、損益計算ができる原価の管理に非常に有用なシステムです。原価管理システムを導入すると、作業を自動化ができるため人件費の削減につながり、経営判断の迅速化にも役立ち、原価変動リスクにも対応できるようになります。

原価管理システムの選定時には、現場社員の意見を反映させ、課題や問題点を明確にし、自社に合ったシステムを選定しましょう。他のシステムとの連携ができるのか、欲しい機能が実装されているのか、機能に見合った料金なのかも重要なポイントです。

一元的にデータを管理したい場合には、原価管理機能付きのERPもあります。システム選定の際は、無料のトライアルを提供している原価管理システムも多いので、実際に使って、自社との親和性を試してから導入することをおすすめします

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