「会計」「財務」「経理」の違いとは?それぞれの業務内容を解説

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  • 「会計」「財務」「経理」はすべてお金に関わる業務だが、役割は異なる
  • 「会計」「財務」「経理」では、向いている人の特徴や必要な資格も異なる
  • どの業務を行うにあたっても、日商簿記検定2級以上を持っていると役に立つ

「会計」「財務」「経理」はすべて企業や組織のお金に関わる業務ですが、役割や実際に行う作業は異なります。また「会計」はさらに「管理会計」と「財務会計」に分かれるため、混同しやすいです。この記事では、それぞれの業務内容や向いている人の特徴、おすすめの資格などを解説します。

目次

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  1. 「会計」「財務」「経理」の違いとは
  2. 会計に向いている人の特徴
  3. 財務に向いている人の特徴
  4. 経理に向いている人の特徴
  5. なぜ「財務部」「経理部」はあるのに「会計部」はないのか
  6. 会計ソフトで業務を効率化
  7. 会計ソフトと経理ソフトの違い
  8. まとめ

「会計」「財務」「経理」の違いとは

「会計」「財務」「経理」は、いずれも企業のお金に関する業務ですが、その内容は異なります。それぞれの業務の役割を理解し、連携することで、企業のお金の管理を効率的に行うことができます。「会計」「財務」「経理」について、以下でそれぞれ解説します。

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「会計」「財務」「経理」の違いとは

  1. 会計とは
  2. 財務とは
  3. 経理とは

会計とは

会計とは、企業のお金やモノに関する日々の取引を帳簿に記録し、財務諸表や分析資料にまとめて、会社の資金管理を行う業務です。さらに、財政状況や経営成績を利害関係者に報告することも含まれています。会計の主な業務には、以下のようなものがあります。

  1. 取引の記録
  2. 帳簿の作成
  3. 財務諸表の作成
  4. 分析資料の作成
  5. 税務申告
  6. 経営分析
  7. 利害関係者への経営成績などの報告

会計業務は、利害に関連する人・組織に、会社の財政状態や経営成績を報告することを目的として行われます。決算書の開示は会社法により義務付けられており、利害関係者への経営成績などの報告は、財務諸表(決算書)を作成して社外へ開示するのが一般的です。

会計の業務内容

会計業務は、目的・用途・提示する相手などによって、「管理会計」と「財務会計」に大別されます。財務会計は、外部の利害関係者に対して決算書を開示し、会社の財政状態や経営状況を外部に報告するためのものです。

一方、管理会計は、自社の経営者や管理部門の責任者などが自社の経営状況を内部で把握するためのものです。それぞれの特徴を、以下の表で説明します。

管理会計財務会計
目的お金やモノの流れ、経営成績の情報を、
自社の経営者に報告したり、
自社内で活用したりする
利害関係者に自社の経営成績を報告し、
利害関係者が株式売却の検討や、融資の可否を
決定するなど利害の調整を行う
用途経営状況を分析し、自社の今後の経営計画に
活用する
会社の外部に、自社の情報(決算書など)を
開示する
提示する相手自社の経営者・管理部門の責任者など自社に対する利害関係者
作業方法自社に合った方法で、自社が決めて行う定められた会計ルールに従い、処理を行う

税務会計を別途行う必要もある

事業者は、国に税金を支払うために課税所得の計算や申告書の作成を行わなければなりません。そのための業務が税務会計です。

税務会計は財務会計からの流れとして、財務会計の結果、つまり決算の内容をもとに法人税の対象となる所得を明らかにするのが一般的です。ただし、個人事業主の場合は決算公表の必要がなく、帳簿付けの主な目的は所得税の計算であるため、税務会計のみを行っているとも言えるでしょう。

財務とは

財務とは、自社の今後の事業展開を見据え、事業活動に必要なお金を見積り、資金調達して予算を管理する業務です。会計や経理はすでに手元にあるお金を管理するのに対し、財務は、今後必要になるお金を管理する点で異なります。

新規事業の立ち上げや、事業の成長・拡大のためには、多額の資金・費用が必要となる場合がほとんどです。財務は、会社の状況を見据え、事前に計画を立てて資金調達する役割があります。金融機関から融資を受ける交渉や、資産運用のための投資やM&Aも行います。

財務の業務内容

財務の主な業務には、「資金調達」と「資産運用」があります。資金調達の方法には、金融機関などから融資を受けたり、株式・社債を発行したりすることなどが挙げられます。

そのためには、日頃から金融機関や投資家との関係を良好に保ち、必要に応じて資金調達できるよう準備しておくことが大切です。

資金を調達するだけでなく、会社の資産を運用して増やすのも財務の業務です。会社に今後必要となるお金の中には、すぐには使用されない余剰資金があります。この余剰資金を使って、投資をしたりM&Aを行ったりして会社の資金を増やすことは、財務の重要な業務となっています。

経理とは

経理とは、「経営管理」の略で、お金の流れを管理・数値化し、経営者への情報提供を行う業務です。経理が行う主な業務には、以下のようなものがあります。

  1. 売上管理
  2. 仕入管理
  3. 給与・社会保険の管理と計算
  4. 税金の計算
  5. 決算書の作成

売上・仕入データなどを集計し、経営資料にまとめて経営陣に提出するのも経理の役割です。場合によっては、集計した経営資料をもとに、経営陣に対して財務状況の改善案の進言を行うケースもあります。経営陣は、経理が提出した資料や改善案を、健全な会社運営に役立てることができます。

経理の業務内容

経理の主な業務には、「お金の管理」「財務状況をまとめる」「資産をお金に換算する」「給与や社会保険料の計算」「税金の計算・納付」などがあります。

日々の入出金処理はもちろん、取引にともなうお金の出入りを管理し、それを正確に記録することで会社の大切なお金を管理します。

主な業務内容
お金の管理仕入管理・買掛金・売上・売掛金・現金・預金・小切手・手形の管理、
請求書・領収書の発行、経費の仕訳と清算 ほか
財務状況をまとめる財務三表(賃借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書)の作成
資産をお金に換算する減価償却 ほか
給与や社会保険料の計算年末調整・社会保険料の計算と納付 ほか
税金の計算・納付源泉所得税・法人税・法人住民税の計算と納付 ほか

会計に向いている人の特徴

会計業務は、自社の経営者や外部の利害関係者に提示する決算書の作成も担っているため、経営的な数字に強く、数値データの分析が得意であることが特に重要です。ほかにも、会計に向いている人には、以下のような特徴があります。

  1. 経営数字に関心を強く持っている人
  2. 数値データの分析が得意な人
  3. 時間管理・目標管理ができる人
  4. ルーティンワークが苦にならない人

会計業務は、取引を正確に記録し帳簿付けをするという、細かい作業の連続です。ミスが許されない業務でもあるため、責任感を持って仕事に取り組む姿勢のある人が会計業務には向いているでしょう。

また、決算書などの資料作成を複数人で行っている場合、時間管理ができていないと、一人の遅れが全体の遅れにつながります。そのため、時間管理能力が高い人も会計に向いていると言えます。

会計に有効な資格

会計を担当するのに持っていると有利な資格、役立つ資格には、以下のようなものがあります。

  1. ビジネス会計検定
  2. 日商簿記検定2級

ビジネス会計検定は3〜1級まであり、会計業務に強い資格と言われています。3級では、会計の基礎的な用語や、財務諸表を理解するための基礎的な能力が身に付きます。2級では、企業の経営戦略・事業戦略を理解するためのより実践的な能力が身に付きます。

1級では、財務諸表などの会計情報を分析して、企業を評価できるプロフェッショナルな能力が身に付きます。

また、日商簿記検定の2級では、財務諸表の仕組みが深く理解できるようになり、経営状況の的確な分析に役立ちます。

参考:ビジネス会計検定試験

参考:簿記 2級 | 商工会議所の検定試験

財務に向いている人の特徴

財務は会社の資金調達を行う業務で、金融機関や投資家からより良い条件を引き出すため、普段から金融機関や投資家と良好なコミュニケーションを築き、交渉する能力などが求められます。財務に向いている人には、以下のような特徴があります。

  1. コミュニケーション力の高い人
  2. 交渉力のある人
  3. 状況変化を予測できる人
  4. マルチタスク能力のある人

財務では、会社の経営状況の変化を予測しながら、課題を洗い出し、有効な解決策を打ち出す能力が求められます。また、複数の計画を同時に検討する能力に加え、迅速かつ的確な判断力も求められます。

そのため、物事を熟考できる人、問題解決のために粘り強く原因を究明するのが得意な人は、財務に向いているでしょう。

財務に有効な資格

財務を担当するのに持っていると役立つ、有効な資格には以下のようなものがあります。

  1. ファイナンシャルプランナー
  2. 公認会計士
  3. 日商簿記検定

ファイナンシャルプランナー(FP)は、金融のプロとして、個人や家庭に対し、将来のライフイベントに備えた資産形成などの相談・アドバイスができる資格です。

FPには3~1級がありますが、業務に役立つ実践的な知識が身に付く2級以上を目指しましょう。FPを取得していると、金融の知識と分析力があることを証明できます。

公認会計士は、企業の帳簿や財務諸表の監査を行うための国家資格です。合格率は例年10〜20%ほどの難関資格ですが、財務諸表を分析し、経営状態を把握できるスキルがあることを証明できます。

日商簿記検定は、仕訳や帳簿作成により、企業のお金の流れを把握するスキルを身につけられるため、会社にとって有効な資金調達計画を立てるのに役立ちます。商業簿記・工業簿記で企業の帳簿付けの方法を体系的に学べる2級以上を取得しておくと良いでしょう。

参考:ファイナンシャル・プランナー(FP)とは|日本FP協会

参考:公認会計士試験について|日本公認会計士協会

参考:簿記|商工会議所の検定試験

経理に向いている人の特徴

経理は、地道でコツコツした計算業務が多い仕事です。そんな経理業務に向いている人には、以下のような特徴があります。

  1. 計算や暗記が得意な人
  2. コツコツ作業が得意な人
  3. 論理的な思考が得意な人
  4. 勉強が苦にならない、向上心の高い人

経理は、常に細かい計算が必要とされる業務です。経費精算や、従業員の給与の支払いなど、経理の計算業務は多岐にわたります。そのため、計算や暗記が得意で、細かい計算業務をし続けても計算が苦にならない集中力、コツコツ作業が好きな忍耐力のあるタイプの人は経理に向いています。

また経理は、過去にない取引事例が発生した場合に、会計基準や会社法などの考え方と照らし合わせてどう処理をすべきか考える必要があるため、論理的な思考が得意な人も経理に向いています。

また、税法改正など経理業務に関わる法律はたびたび改正が行われるため、法改正のたびにその情報をインプットしなければなりません。そのため、向上心が高く、勉強が苦にならない人に向いていると言えるでしょう。

経理に有効な資格

経理を担当するのに持っていると役立つ資格には、以下のようなものがあります。

  1. 日商簿記検定
  2. MOS(Microsoft Office Specialist「マイクロソフト オフィス スペシャリスト」)

日商簿記検定では、経理業務に直結する帳簿作成の知識を身につけていることを証明できます。商業簿記と工業簿記における財務諸表の理解力が試される、2級の取得が望ましいです。

MOSは、会社の経理業務でもよく使われる表計算ソフトのExcelの資格を持っていると、評価につながります。

参考:簿記|商工会議所の検定試験

参考:マイクロソフト オフィススペシャリスト

なぜ「財務部」「経理部」はあるのに「会計部」はないのか

企業に「財務部」「経理部」はあるのに、なぜ「会計部」がないのか疑問に思っている方もいるでしょう。会計とはお金の管理全般のことを指すため業務が幅広く、それを「部」として少数の担当者で行うのは困難です。

そのため、「会計部」を置かず、経理部や経営企画部などで仕事を分担して会計業務を行うのが一般的です。

会計ソフトで業務を効率化

会計ソフトには、会計・財務・経理の業務に必要な、「帳票・伝票入力」「仕訳」「帳簿作成」「決算書作成」「財政分析」「税務申告」などの機能が搭載されています。

会計・財務・経理の業務の多くを会計ソフトで自動化できるため、業務の迅速化につながります。転記ミスなどの人的ミスも防げるため、会計ソフトの導入は業務効率化に有効な手段です。

会計ソフトと経理ソフトの違い

会計・財務・経理の業務でよく使われるソフトに、会計ソフトや経理ソフトと呼ばれているものがありますが、これはどちらも同じもので、会計処理を記録し、帳簿書類を作成するためのソフトです。

なお、会計ソフトと経費精算ソフト(経費精算システム)は内容が異なります。会計ソフトは、会社の会計業務を効率化するためのもので、担当者が入力を行います。 一方、経費精算ソフトは、経費申請・承認のためのもので、経費精算が必要な各従業員が入力を行います。

経費精算システムとは?導入のメリット・デメリットと選び方を解説

経費精算システムとは、企業における経費精算業務の自動化・効率化をしてくれるものです。この記事では、経費精算システムを利用したことがない方のために、経費精算システムの機能やそのメリットやデメリット、システムの選び方など導入前に抑えておきたいポイントを解説します。

まとめ

「会計」「財務」「経理」は、いずれも企業のお金に関する業務です。会社のお金の出入りを経理が計算・記録し、その記録をもとに会計が財務諸表などの資料にまとめ、財務が会社の資金調達・資産運用を行う点で、違いがあります。

「会計」「財務」「経理」では、それぞれの業務の性質により、向いている人のタイプが異なります。また、「会計」「財務」「経理」の業務には、日商簿記検定など持っていると役立つ資格がありますので、本記事を参考に、資格取得も視野に入れておきましょう。

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