会計ソフトとクレジットカードを連携|メリットや注意点も解説
Check!
- 会計ソフトとクレジットカードを連携すると入力の手間が省け会計業務を効率化できる
- 個人事業主のクレジットカードによる経費計上は仕訳が複雑になるので注意する
- 自動仕訳の精度を上げるためには、事前に間違いなくパターンを登録する
会計ソフトはクレジットカードと連携できるものが増えてきています。連携することで入力の手間が省けミスが防げるため、会計業務を大幅に効率化することが可能です。この記事では、会計ソフトとクレジットカードを連携するメリットや仕訳の方法、注意点などについて解説します。
おすすめ記事
目次
開く
閉じる
開く
閉じる
会計ソフトはクレジットカードと連携可能
近年、会計ソフトはクレジットカードと連携できるものが増え、また、連携機能も進化しています。クレジットカードとの連携により、取引データを自動でソフトに取り込むことができ、企業や個人の会計プロセスを大幅に効率化することが可能です。
手動でデータを入力する場合よりもデータの正確性も向上し、時間の節約にもなります。また、AIを導入している会計ソフトでは、クレジットカードの使用履歴のデータから精度の高い自動仕訳もできます。
ただし、幅広いカードブランドや金融機関と連携できる場合もあれば、一部のクレジットカードのみサポートしている場合もあります。そのため、会計ソフトの選択の際には、ソフトに対応しているクレジットカードの種類を確認することが大切です。
クレジットカードで経費を計上するメリット・デメリット
クレジットカードで経費を計上することにはメリットとデメリットがそれぞれ存在します。ここでは、メリットとデメリットを比較して解説します。
メリット
クレジットカードでの支払いは、一般的には銀行振り込みよりも手数料が低いか、手数料がかからない場合があります。特に海外取引や国際送金の場合には、クレジットカードを利用することで高い振込手数料を回避できる可能性が高く、コスト削減に寄与します。
また、クレジットカードの利用額は翌月に請求されるのが一般的であり、経費が発生した時点で直ちに現金を用意する必要がありません。手元に現金を残せるため、予期せぬ支出に対応しやすくなります。
その他、クレジットカードのキャッシュバックやポイント還元プログラムによって、支出額の一部を還元できるのも利点です。クレジットカードで経費を計上することは、このようにコスト削減や現金管理の点でメリットがあります。
デメリット
クレジットカードで経費を計上することはメリットが大きいですが、個人口座に紐づいたクレジットカードの場合はデメリットもあります。事業用の経費と私用の支出が混在することは会計処理を複雑化させ、事業用経費の正確な把握が難しくなります。
経費の追跡や監査も困難であり、確定申告や会計帳簿の作成において混乱が生じやすく、また企業の財務レポートにおいては、レポートの信頼性も低下します。経費を厳格に管理する上では、事業用と私用の区別を明確にすることが大切です。
分割払いでは手数料が発生する点や、クレジットカードの情報やカードそのものの管理が甘いと不正利用や情報漏洩のリスクがある点も、注意すべきポイントです。しかし、いずれのデメリットも管理方法に気をつければ回避することができます。
会計ソフトとクレジットカードを連携させるメリット
会計ソフトとクレジットカードの連携は、会計業務の効率化に寄与するさまざまなメリットがあります。簡単な未払金確認・経理情報の正確性向上・入力作業の削減など、ここでは具体的なメリットを解説します。
\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/
会計ソフトとクレジットカードを連携させるメリット
会計ソフトを見るだけで未払金が確認できる
クレジットカードとの連携により、会計ソフト内で未払金や預金残高をリアルタイムで確認できるようになり、クレジットカード会社のサイトに行く手間がなくなります。
カード会社のサイトで未払金を確認するためには、毎回ログインが必要なため、1回の確認そのものは大した時間でなくとも、長期的に見ると確認作業の非効率さが目立ちます。
会計ソフトをクレジットカードと連携すると、取引情報が自動的に会計ソフトに取り込まれます。支払いの詳細や未払金など、最新の取引情報を素早く把握でき、正確な経理に役立ちます。
手入力の手間が軽減できる
クレジットカードの取引情報を自動的に会計ソフトに取り込むことは、手動入力の手間を削減できることにもつながります。
クレジットカードの明細を見ながら手入力する作業は労力がかかりますが、自動入力によって作業時間も短縮され、業務効率化を図ることができます。
クレジットカードによる取引が多くなるほど、作業軽減のメリットは大きくなります。会計業務の負担を減らした分、他の業務を行うことができ、企業経営全体の効率化を図れるのも利点です。
入力ミスが軽減できる
自動入力のメリットは、会計情報の精度向上にもつながります。手動での入力では、入力ミスや漏れが発生する可能性がありますが、自動取り込みでは人手によるエラーが減り、データの正確性が向上します。
ただし、事業専用のクレジットカードでない場合やイレギュラーな支払いの場合は、会計ソフトが正しく判断できない可能性があるため、手動入力が推奨されます。
専門知識がなくても会計処理ができる
会計ソフトとクレジットカードを連携すれば、勘定科目も自動で仕訳してくれます。そのため簿記の知識がなくても会計作業が可能です。自動仕訳により、どの取引がどの勘定科目に対応しているのか、個別に理解する必要なく正確な仕訳ができます。
クレジットカードの取引情報を会計ソフトに自動的に取り込めるため、簿記の知識がない人も、また知識がある人も、仕訳作業にかかる時間と労力を削減可能です。
さらに、手動入力で起こりがちなエラーやミスが減るのも利点です。自動仕訳では勘定科目に加え、計上日も自動的に反映できます。
会計ソフトとクレジットカードを連携させた場合の仕訳
ここでは、会計ソフトとクレジットカードの連携における仕訳について解説します。白色申告または青色申告で10万円控除の場合と、青色申告で55万円または65万円控除の場合とで簿記方法が異なります。単式簿記・複式簿記の違いに気をつけましょう。
\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/
会計ソフトとクレジットカードを連携させた場合の仕訳
白色申告と青色申告10万円控除のケース
白色申告・青色申告の簡易帳簿(10万円控除)では、決算書において貸借対照表が求められないため、「単式簿記」での記帳が一般的です、単式簿記とは、取引を収入と支出の2つの項目のみで記録する簡単な簿記方法です。
単式簿記では、1つの取引を1つの科目で記帳し、支払いの日付・金額・勘定科目を記載します。後述する複式簿記よりも簡単ですが、税制上の観点では複式簿記の方が優遇されるため、複式簿記が推奨される場合もあります。
なお、単式簿記では会計ソフトにおいて、クレジットカード利用のタイミングで、経費の認識のみが行われます。
青色申告55万円・65万円控除のケース
青色申告の55万円控除・65万円控除を受ける場合は、「複式簿記」で記帳しなければいけません。複式簿記とは、収支と財産の増減を一括で記録する方法で、単式簿記と比較してお金の動きがより詳細に追跡できる特徴があります。
複式簿記では会計ソフトの連携機能が役立ち、クレジットカードや銀行口座を登録しておくことで取引情報が自動的に取り込まれます。借方には登録した費用科目が、貸方には登録した未払い金などの負債科目が計上されます。
ただし、AIが搭載されているソフトでも、勘定科目や適用が事実に合っているか確認する習慣を持つことが大切です。なお、令和2年分の申告からは、55万円の特別控除に加え、電子申告で10万円控除(最大65万円の所得控除)が追加されています。
個人事業主の仕訳の3つのパターン
ここでは、個人事業主がクレジットカードを利用した場合の仕訳について解説します。仕訳は事業用カードで事業経費を支払った場合を始め3つのパターンがあり、それぞれ処理の仕方が異なるので、違いを押さえておきましょう。
\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/
個人事業主の仕訳の3つのパターン
事業用のクレジットカードで事業経費を支払った場合
事業用のカードで事業経費を支払うケースでは、クレジットカードの決済日は「未払金」として処理し、預金口座からの引き落とし日は、未払金を「普通預金」で消します。以下の具体例は、事業用のクレジットカードで5,000円の資材を購入した場合です。
<決済した日の仕訳>
借方 | 貸方 |
---|---|
勘定科目:材料費 金額:5,000 | 勘定科目:未払金 金額:5,000 |
<引き落とし日の仕訳>
借方 | 貸方 |
---|---|
勘定科目:未払金 金額:5,000 | 勘定科目:普通預金 金額:5,000 |
事業用のクレジットカードで個人の支出を支払った場合
事業用カードで個人的な支出を行った場合は、「事業主貸」として仕訳します。事業主貸とは、事業用の口座から事業とは無関係な私的な支出を行った場合の勘定科目です。
前述のケースとは異なり、決済日の仕訳は不要で、引き落とし日の仕訳を行います。以下の具体例は、事業用のクレジットカードで私的な食事代3,000円を支払った場合です。
<引き落とし日の仕訳>
借方 | 貸方 |
---|---|
勘定科目:事業主貸 金額:3,000 | 勘定科目:普通預金 金額:3,000 |
個人のクレジットカードで事業経費を支払った場合
個人のカードで事業経費を支払った場合は、「事業主借」として仕訳します。事業主借とは、事業の経費を個人の財布から出した時の科目名です。
このケースでは決済日の仕訳は必要ですが、引き落とし日の仕訳は不要です。以下の具体例は、個人のクレジットカードで、会議に出席する人数分の弁当3万円を支払った場合です。
<決済した日の仕訳>
借方 | 貸方 |
---|---|
勘定科目:会議費 金額:30,000 | 勘定科目:事業主借 金額:30,000 |
クレジットカードで経費計上する際の注意点
クレジットカードで経費計上する際には、領収書や明細の保管を始め、気をつけるべきポイントがあります。以下に解説するのは代表的な注意点ですが、クレジットカードの利用で発生した経費は、後回しにせずタイムリーに記帳することが重要です。
\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/
クレジットカードで経費計上する際の注意点
領収書や明細は保管する
経費計上の基本として、支払った経費を証明するための領収書や明細は必ず保管しておきましょう。クレジットカード決済の場合も同様で、経理処理が困難にならないよう確実に保管しておくことが大切です。
Web明細の場合はダウンロードできる期限が設けられている場合もあるため、後回しにしないよう習慣づけることも重要です。
インターネット上での支払いは、領収書や明細の発行についても確認しておきましょう。例えば、出張での宿泊について、予約サイトに宿泊費を支払った場合、領収書を発行できるのはホテルではなく、予約サイトであることが通常です。
年またぎの場合
年またぎとは、取引が一つの会計期間をまたぐ場合を指し、例えば12月のクレジットカード決済について、翌年1月に引き落とされるケースが該当します。年またぎでは、前月の帳簿と翌月の帳簿の金額に相違が生じないように気をつけましょう。
年またぎのケースでは、取引日の正確な記録がポイントです。また、海外での取引で通貨換算が発生した場合は、為替レートの影響を考慮して金額を計上します。
経費の計上では、基本的に支払いが発生してから可能な限り早く記帳するのが望ましいですが、年またぎにおいては、混乱を防ぐために特に早めに処理しておきましょう。領収書や明細の保管も、証拠としての役割に加え、会計上の混乱防止のために必ず保管します。
分割払いの場合
クレジットカードの分割払いでは、金利手数料(利息)が発生します。この利息については、勘定科目「支払利息」で処理します。
仕訳については、まず、決済日に総額を経費として計上します。借方は経費として適切な勘定科目、貸方は未払金として処理します。引き落とし日には、借方には未払金と支払利息、貸方には引き落とされた金額を銀行口座の科目で仕訳します。
このように分割払いでは、総額を経費として計上しつつ、引き落としの度に未払金を記録することで正確な経理処理が行われるようにします。
延滞損害金は経費にならない
クレジットカードでの経費計上は、残高不足にならないよう気をつけましょう。残高不足による支払いの遅れが生じた場合、カード会社から延滞損害金や遅延利息が請求されることがあります。
延滞損害金や遅延利息などの遅延料金は、事業活動に直接起因する費用ではないため、経費として計上することができません。また、経費として計上できないことから、会計ソフトの仕訳の連携においても不都合が生じます。
会計ソフトによっては、遅延料金について仕訳の連携が行われない場合があります。請求書の金額と経費として計上されるべき金額が異なると、会計ソフト内で正確な経費計上が行われず、経理処理の信頼性に影響を与えます。
キャッシュバックは「雑収入」
クレジットカードのポイントは、多くの場合は商品やサービスの割引に利用されますが、一部のカード会社では現金としてキャッシュバックできる場合もあります。
ポイントが現金として還元される場合は、事業活動に直接関連するものではなく、外部からの追加的な利益であり、「雑収入」として取り扱うようにします。
仕訳の仕方としては、借方には銀行口座にキャッシュバックがあったことを記帳し、貸方は「雑収入」として記録します。
自動仕訳のパターンは丁寧に登録する
クレジットカードの支出は多岐にわたり、複雑な経費計上が必要な場合があります。自動仕訳パターンの登録が不完全な場合、正確な計上が行われない可能性があり、後から手動で修正や追加の作業を行うことは二度手間です。
そのため、自動仕訳のパターンの登録は丁寧に行わなければいけません。さらに、AIによる勘定科目の自動生成も、複雑な取引や特殊な事例では適切に判断できない場合があります。100%信頼できるものではないため、必ず目視で確認・修正することが重要です。
経費の計上は企業の財務情報に直接影響を与える重要な作業です。正確な経費計上が行われないと、収支のバランスが崩れたり、税務上のトラブルが生じる可能性があります。AIや自動仕訳機能は効率化に役立ちますが、人手による作業は必要不可欠です。
まとめ
会計ソフトとクレジットカードを連携させることで、自動仕訳による簡易な経費計上が可能になり、繁雑な簿記作業を省力化できます。
ただし、自動仕訳の登録は慎重に行い、目視確認が不可欠です。本記事を参考にして、クレジットカードの経費計上における正確性と効率性の向上を目指しましょう。
この記事に興味を持った方におすすめ