年末調整ソフトとは|機能やメリット・デメリット、比較ポイントも解説
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- 年末調整ソフトを導入すると、企業側と従業員側双方に多くのメリットを得ることが可能
- 国税庁から提供されている年末調整ソフトは「年調ソフト」と呼ばれ、無料で利用できる
- 年末調整ソフトの導入を検討する際には、導入方式・機能・コスト面などを比較検討する
年末調整ソフトは、年末調整に関わる業務を効率化してくれるソフトであり、国税庁からは無料の「年調ソフト」が提供されています。本記事では、年末調整ソフトの特徴と導入するメリット・デメリット、製品を選定・比較する際のポイントについて解説します。
目次
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年末調整ソフトとは
年末調整ソフトとは、年末調整に関わる業務を効率化してくれるソフトで、国税庁から無料の「年調ソフト」が提供されています。民間の年末調整ソフトもさまざまなベンダーから提供されており、企業側と従業員側双方に多くのメリットがあります。
年末調整に関わる業務は、労務管理担当者や人事担当者が行うことが多く、年末が近づくと年末調整業務が大きな負担になります。しかし、年末調整ソフトを導入することにより、業務を大幅に軽減することが可能です。
例えば、年末調整に必要な控除計算書・帳票作成を自動化し、源泉徴収票・給与支払報告書・保険控除申告書などの各種帳票は、テンプレートの利用で作成を簡素化できます。また、税制の改正などにより変更点が発生するケースも少なくありません。
そのような法令改正事項も自動的にアップデートされるため、知識が少ない状態でも年末調整ソフトの導入によりある程度カバーできます。
国税庁の無料の年末調整ソフト「年調ソフト」とは
国税庁では、Excel(エクセル)で利用可能な「年末調整計算シート」を発行していますが、手続きの電子化に向けて「年調ソフト」も提供されています。国税庁の年調ソフトは、年末調整申告書類をスマホで電子的に作成ができる、従業員向けのアプリです。
アプリは無料で利用でき、控除額の計算や扶養家族などの年齢判定、控除対象かどうかの判定が可能です。従来の紙ベースでの申告書の記入や提出は煩雑な業務の1つでしたが、年調ソフトを利用することで申告手続きや提出の負担を大幅に軽減できます。
また、年末調整に必要な事項は、マイナポータル連携や控除証明書のインポートなどが可能です。情報入力が自動化されるため、従業員にとっても利便性が高いシステムです。
参考:年末調整手続の電子化について ~年調ソフト編~ – 国税庁
民間の年末調整ソフトと「年調ソフト」の違い
国税庁の年調ソフトは無料で提供されており、従業員側でスマホに年末調整アプリをインストールし、情報を入力してアプリから送信・提出を行います。なお、管理者側では年調ソフトの提出状況を把握できないため、Excelなどを利用して別途管理する必要があります。
一方、民間の年末調整ソフトは年調ソフトと異なり、システム導入費や運用コストが発生します。また、ソフトはクラウド型・オンプレミス型があり、初期設定は管理側で行わなければなりません。
クラウド型であれば、提出状況や提出内容はWeb上で確認できるため、未提出者への催促メールを一括送信できる機能を搭載したものもあります。よって、管理する従業員の人数が多く、提出状況を効率よく確認したい場合は民間の年末調整ソフトがおすすめです。
その他にも、給与システムなどとの連携が可能であれば、さらなる業務の効率化に期待できます。
年末調整ソフトを導入するメリット
年末調整ソフトを導入することにより、企業側・従業員側の双方で多くのメリットが得られます。従来紙ベースで行っていた申告手続きを電子化することにより、煩雑であった多くの年末調整業務が効率化できます。
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企業側のメリット
年末調整ソフトを導入することにより、企業側には年末調整業務の効率化による人事業務の負担軽減や、ペーパーレス化の取り組みが推進するといったメリットがあります。以下で詳細を解説します。
年末調整業務が効率化する
年末調整業務は、従来の紙ベースでの手続きの場合、従業員に申告書を配布し、各自が取得した生命保険などの控除証明書から申告書を作成し、必要事項を記入した後に担当者へ提出を行います。
提出された申告書は担当者が情報を確認し、不備があれば差し戻しを行い、再度提出を求めます。その他にも、提出状況の管理をし、未提出者には催促を行うケースも少なくありません。
また、申告書は過去7年分を保管する義務があり、それに伴った保管作業も付随します。よって、年末調整に関わる業務は煩雑であり、企業側・従業員側の業務を圧迫する原因になります。
しかし、年末調整ソフトを導入して電子化することで、さまざまな煩雑する業務が大幅に効率化されます。従業員の申告情報の入力・提出から、担当者で行う提出管理や内容確認、保管作業までがすべて効率化するため、業務負担の大幅な軽減が可能です。
参考:No.2503 給与所得者の扶養控除等申告書等の保存期間|国税庁
人事業務の負担が軽減する
年末調整業務は、1年の中でも特に手間のかかる業務の1つとされ、業務に取りかかる前にはスケジュールを組み、計画的に行う必要があります。年末調整では毎年のように改正事項が発生するため、年々複雑化を続けており、内容を十分に把握しなければなりません。
担当者は従来の申告書による年末調整を行う際、従業員から提出された申告書の内容・必要書類の添付確認が必要です。仮に従業員がスケジュール通りに提出しなかったり、記入に不備があったりすると、催促や差し戻しの手間が発生して業務効率が下がります。
その点、年末調整ソフトを利用することで、煩雑な申告書の回収業務が効率化されます。一括で回収状況を確認でき、未提出者への催促もメールで行えるため、紙ベースの申告書よりもスムーズに年末調整業務が行えます。
また、改正事項も自動的なアップデートで年末調整ソフトに反映されるため、知識が少ない状態でもある程度カバーすることができます。
ペーパーレス化が促進される
年末調整ソフトを利用することで紙の申告書が不要になるため、ペーパーレス化の取り組みが促進されます。電子化により、申告書の紛失やミスによる再配布の手間が削減され、控除証明書などの添付も不要になることで、スマートな年末調整業務が実現します。
また、紙の印刷代や保管スペースの確保にかかるコストを削減できる点も大きなメリットです。
従業員側のメリット
年末調整ソフトを利用することにより、従業員側はスマホアプリで簡単に手続きができるため、場所や時間にとらわれずに年末調整業務を行えるメリットがあります。
入力作業の負担が軽減される
年末調整ソフトでは、従業員がスマホアプリに情報を入力することが可能です。画面の案内に沿って質問に回答する形式が基本であり、入力した情報が自動的に反映されます。なお、煩雑な計算や控除の判定は年末調整ソフトが自動で行うため、安心して利用できます。
また、控除証明書は金融機関または保険会社から電子データで受け取り、ソフトに反映することが可能です。2回目の申告からは、住宅ローン控除や保険に関する内容に変更がなければ入力が不要になります。
場所と時間にとらわれずアクセスできる
年末調整ソフトを利用すれば、従業員側はスマホアプリなどから手続きができるため、場所と時間にとらわれずアクセスできます。そのため、出張先やテレワーク・在宅勤務の場合でも、手続きのために出社する必要がなくなり、手間をかけずに提出することが可能です。
このように、時間の有効活用としても大きく貢献します。
年末調整ソフトを導入するデメリット
年末調整ソフトを利用することで、入力作業の簡略化や提出管理の効率化など、多くのメリットがあります。しかし、導入の仕方によっては、デメリットが発生する場合もあります。導入を失敗させないためには、デメリットについても確認が必要です。
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年末調整ソフトを導入するデメリット
使いこなすまでに時間がかかる場合がある
年末調整ソフトに限らず、企業に新しいシステムを導入する際は使いこなすまで時間がかかる場合があります。そして、従業員側に周知させるためのルール設定などが必要になります。
従業員の中には、スマホアプリの操作が苦手な者がいる場合があります。その際は、操作を熟知した担当者が操作サポートを行うような体制を整えるなど、対策の検討も必要です。よって、導入するソフトはなるべく画面がシンプルかつ操作しやすいものを選びましょう。
人の手による最終チェックが必要
年末調整ソフトを利用して申告書を作成すると、自動的に控除手続きなどが反映されますが、最終的には人による目視での最終チェックが必要です。そのため、担当者は最終チェックにおけるスケジュールを組んでおかければなりません。
年末調整ソフトの導入によって担当者を減らしたり、年末調整業務に関わる工数を少なく見積もったりすることは、間違った見解です。つまり、すべてが自動化できるわけではなく、人の手による作業も必ず発生することを考慮しなければなりません。
年末調整ソフトの選び方・比較ポイント
年末調整ソフトの選び方として、導入方式・機能・コスト面など、注目すべき比較ポイントがいくつか挙げられます。ここでは、年末調整ソフトの選び方・比較のポイントについて詳しく解説します。
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年末調整ソフトの選び方・比較ポイント
導入の目的を明確にしてタイプを選択
年末調整ソフトは対応業務によってソフトのタイプが分かれるため、導入の目的を明確にする必要があります。タイプは主に、以下の3つの目的で区別されます。
- 年末調整に特化
- 給与・経費精算など経理業務を効率化
- 人事・労務管理などの情報一元管理
目的ごとにソフトの内容やコストも変わるため、自社が求める要素を明確にしてから選定を行いましょう。例えば、年末調整に特化したものは低コストで導入が可能であり、年末調整業務の効率化のみを目的として導入したい企業に向いています。
対して、経理業務・労務管理などと年末調整業務を紐づけてシステムを導入したい場合は、追加のコストはかかりますが、業務負担を軽減したい部署に適したソフトを選定すると良いでしょう。
クラウド型かオンプレミス型かを確認
年末調整ソフトには、クラウド型とオンプレミス型があります。クラウド型はベンダーのサーバーにアクセスを行って入力・保存される方式で、導入費用・運用コストが抑えられるものが多いです。インターネット上で入力が行えるため、どこからでも手続きが行えます。
そして、オンプレミス型はライセンスをベンダーから買い取り、自社で準備したサーバーやハードウェアに導入して運用を行います。導入費用やメンテナンス費用など運用コストが高い傾向にありますが、自社に合わせて柔軟にカスタマイズできる点がメリットです。
クラウド型の場合、低コストで場所を問わず手続きができ、テレワークなどに向いていますが、従業員の人数が多い場合はオンプレミス型の方が費用対効果が高い可能性もあります。
自社が求める機能があるかを確認する
年末調整ソフトを導入する際は、自社が求める機能が搭載されているかを確認する必要があります。
特に、経理業務や労務管理業務などと連携したタイプを求める場合は、年末調整が反映される機能が備わっているか、または既存のシステムとの連携が可能かどうかが比較ポイントになります。
提出内容のチェックがしやすいか
年末調整ソフトを使用した電子データは、基本的にXML形式となるため登録された内容が把握しづらいです。特に、国税庁の年調ソフトではチェックが困難であることから、チェック作業を効率化したい場合には、一目で内容がわかるようなソフトの選択が重要です。
ソフトを導入しても、最終チェックで時間がかかっては導入の意味を薄れさせてしまいます。したがって、他のシステムにどのように取り込むことができるのか、どのようなPDFファイルとして出力されるのかなどを確認するのがおすすめです。
利用できる人数とサポート体制を確認
年末調整ソフトによっては、利用できる人数に制限を設けているものがあります。例えば、「従業員5名までは無料で利用可能」などです。そのため、自社が求める機能と利用したい人数を把握し、対象のソフトが適応するかを確認しましょう。
また、法令改正や税制改正があった場合など、細かな質問・疑問点が生じた場合に対応してくれるのか、サポート体制の範囲についても確認することが重要です。
機能とコストのバランスを考慮する
国税庁の年調ソフトは無料で提供されていますが、民間の年末調整ソフトにも無料や安価で利用できるものがあります。しかし、豊富な機能を求めるとオプション追加となり、結果的に高額になりかねないため、機能とコストのバランスを考慮することも大切です。
導入コスト・運用コストはベンダーによって異なりますが、自社の規模や効率化したい業務とのコストバランスを比較検討しましょう。なお、無料でお試しできるソフトを活用し、使い心地などを確認してから導入する方法もあります。
まとめ
年末調整業務は、人事担当者によって年間で非常に煩雑な業務の1つとされています。そのため、企業側・従業員側双方の業務を効率化させ、利便性が高いことから年末調整ソフトを導入する企業が増えています。
しかし、導入には電子化への理解と、コスト面などを考慮する必要があります。年末調整の手続きを効率化し、年末に他のコア業務における負担を軽減できるように、自社に適した年末調整ソフトの選定を行いましょう。
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