LTV分析とは?計算方法とメリット・デメリット、LTV向上も解説

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  • LTV分析とは支払われた金額を基に商品やサービスへの貢献度が高い顧客を分析する手法
  • LTV分析により、無駄なコスト削減や企業の収益最大化、利益構造の把握に繋がる
  • LTV向上には、単価や購入頻度を上げて長期間サービスを利用してもらうのがポイント

LTV分析とは顧客が支払った金額から利益を算出した上で、商品やサービスへの貢献度が高い顧客を分析するマーケティング手法です。無駄なコストを明確にし、企業の収益最大化に寄与します。本記事では、LTV分析のメリットやデメリット、LTV向上に必要なことを解説します。

目次

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  1. LTV分析とは
  2. LTV分析のメリット
  3. LTV分析の計算方法とそれぞれのメリット・デメリット
  4. LTV分析の方法と活かし方
  5. LTV分析のポイント
  6. LTV向上に必要なこと
  7. 機能を考慮したLTV分析ツールの利用もおすすめ
  8. まとめ

LTV分析とは

LTV分析とは、顧客との取引額・取引頻度・取引期間などの数値を指標として、顧客を分析する手法です。それにより、企業の行ったマーケティング活動の効果が把握でき、より効率的に新規顧客の獲得や、既存顧客のアップセル・クロスセルが狙えます。

LTV分析は、近年マーケティングでの注目度が高まっています。その背景にあるのは顧客の購買行動の変化です。今の時代、新規顧客の獲得による収益の向上は難しく、既存顧客の維持と、アップセル・クロスセルでの収益の向上が重要視されるようになりました。

特に、サブスクリプション型ビジネスでは、既存顧客の長期利用が直接利益拡大や事業の成長につながることから、LTV分析が積極的に活用されてきました。その成果から、さまざまな企業でよく用いられるようになっている分析手法です。

LTVとは

LTVとは「Life Time Value」の略称で、日本語では「顧客生涯価値」と呼ばれています。簡単に言えば、1人の顧客が自社の商品やサービスに支払う生涯の合計金額で、LTVの値が大きいほど、自社に大きな収益をもたらしてくれている顧客という意味になります。

また、LTVが高いほど、企業と顧客の関係性が良好であり、顧客は企業に対して愛着を感じていると考えられます。既存顧客を重視する現代のマーケティングには、非常に有効な指標として、さまざまなマーケティング分野において利用されています。

LTV分析のメリット

LTV分析でマーケティングのPDCAサイクルを回すことで、各企業は収益の最大化や無駄なコストの削減、自社の利益構造把握につなげることができます。ここでは、それら3点のメリットについて解説していきます。

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収益を最大化できる

LTV分析の最大のメリットは収益の最大化で、企業がLTV分析をする最終目的ともいえます。LTV分析を行うことで、顧客の購買履歴やサービス利用状況から、顧客一人ひとりの購買傾向やニーズが把握でき、それに応じたマーケティング戦略が立てられます。

その戦略の実行でリピート客を増やし、収益の最大化を狙います。現代のビジネスでは、新規顧客の獲得には既存顧客維持の5倍のコストがかかるといわれています。そのため、既存顧客の維持や既存顧客のアップセル・クロスセルを重視する企業が多くなっています

無駄なコストが明確になる

LTV分析では、新規顧客を獲得するためにかかったコストや、既存顧客を維持するためにかかったコストを分析でき、費用対効果の算出も可能です。それにより無駄なコストや有益なコストを明らかにでき、無駄なコスト削減のための対策立案が可能になります。

また、既存顧客の購買傾向やニーズが把握できるため、顧客に対してターゲットを絞った適切なアプローチが可能になり、プロモーションコストの削減にもつながります。

そして、既存顧客からの意見には、商品開発やマーケティング施策に有益な情報が含まれています。結果的に、既存顧客への適切なアプローチが新規顧客の獲得にもつながります。

利益構造が把握できるようになる

企業にとって自社の利益構造の把握は、ビジネスの最大目標である収益の拡大のために大変重要です。LTV分析では、商品やサービスごとの顧客単価・購入頻度・利益との関係が明らかになり、自社の製品やサービスの利益構造の把握ができるようになります。

利益構造を細かく分析すれば、自社の商品やサービスの強み・弱みの明確化や、商品原価やプロモーションコストと売上のバランスの把握ができ、それに応じた施策の立案が可能になります。また、顧客の購買傾向の把握にもつながり、施策の最適化も可能です。

LTV分析の計算方法とそれぞれのメリット・デメリット

LTV分析には着目する項目によって異なるいくつかの計算方法があり、分析の目的に合った計算方法を用いなくてはなりません。ここでは代表的な3つの計算方法をメリットやデメリットとともに解説します。

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(顧客の年間取引額)×(収益率)×(顧客の継続年数)=LTV

メリットデメリット
収益性の高い顧客を特定しやすい顧客の離脱率や継続率の変動に対応しにくい

顧客一人ひとりの年間取引額と顧客の継続年数、そして収益率を基に算出します。したがって、事前に収益率を算出しておく必要があります。算出された値が大きな顧客は、収益性の高い優良顧客といえ、単なる売上ではなく、実際の利益として評価できます。

この指標は、シンプルな計算式で算出できるため、素早くLTVを評価して戦略を立てたい場合に使われます。しかし、顧客の離脱率や継続率の変化に対応できないというデメリットもあります。パーソナライズされた商品やサービスを提供するビジネスに役立つ指標です。

(平均購入単価)×(平均購入回数)×(収益率)=LTV

メリットデメリット
顧客全体の購買傾向の詳細を明らかにできる顧客ごとの購買行動の違いや継続期間の配慮がされていない

購入単価と購入回数に注目した計算方法です。購入単価は1回の取引で顧客が支払った合計額で、平均購入回数は平均購入頻度と平均継続期間の積で表せます。

算出された値が顧客全体の平均値となり、顧客全体の購買傾向が把握でき、それに合わせた施策立案のための指標となります。

また、収益率が加わっているため、売上だけでなく利益としての指標にもなります。しかし、結果は平均値であり、顧客ごとの購買行動の違いや継続期間は配慮されていないため、注意が必要です。これは、組織全体の課題を明確化するための指標に適しています。

(売上高−売上原価)÷ 購入者数=LTV

メリットデメリット
売上とコストの関係性が把握できる継続年数が短い、または離脱率が高いと過大評価される可能性がある

売上高から売上原価を引くことで、実際の利益が評価でき、売上とコストの関係性を把握できる計算式です。また、収益性の高い顧客の特定に役立てることもできます。売上とコスト両方に着目した指標であるため、費用対効果の意識を高める対策にもよく使われています。

しかし、顧客継続期間の配慮がされておらず、継続年数が短い顧客が多かったり、離脱率が高かったりすると、高い数値が出てしまう場合があるため、対象期間を設定することが必要になります。

LTV分析の方法と活かし方

LTV分析には複数の計算方法があり、それぞれの結果に合わせて分析をする必要があります。また、LTVの対象は「個人なのか」「顧客全体なのか」「売上・継続期間を網羅しているか」など、全て似ているようで違う部分も多いです。

よって、LTVを算出してからどのように分析をしていくのか、その活用方法を解説します。

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関連性の高い指標と組み合わせて分析する

より効果的なマーケティング戦略に活かすためには、LTV単独の分析だけでは不十分な部分があります。関連性の高い指標と組み合わせて分析することで、効果的な施策につながる洞察を得られます。LTVと関連性の高い指標には、以下のようなものがあります。

CAC

CAC(顧客獲得単価)は、1人の顧客を獲得するために必要なコストを示す指標で、以下の計算式で算出されます。

(顧客獲得コスト)÷ (顧客数)=CAC

「顧客獲得コスト」は、企業が新規顧客を獲得するためにかけた、広告出稿費や営業活動費などの総額です。「顧客数」は、実際に獲得できた新規顧客数になります。

LTVとCACを比較して、CACがLTVよりも大きくなっている場合は注意が必要です。LTVが低い顧客を獲得するために高いCACを支払うことは、長期的なビジネス成長に対する障害となります。

このような場合は、マーケティング戦略や顧客獲得プロセスを見直して、新規顧客よりも既存顧客のリピート率向上に力を入れるなど、LTVを高めるための施策が求められます。LTVとCACのバランスを保つことが重要です。

ユニットエコノミクス

ユニットエコノミクスとは、1顧客あたりの採算性を指し、「顧客獲得のために投入したコスト」と「獲得した顧客から得られる利益」のバランスを見る指標です。LTVをCACで割って求められます。

LTV ÷ CAC=ユニットエコノミクス

ユニットエコノミクスは、主にサブスクリプション型のビジネスを評価するために用いられます。サブスクリプションサービスでは、ユーザー数が順調に増えていても、ユーザーの獲得に必要以上のコストをかけてしまうと、事業全体の収益性は悪化してしまいます。

ユニットエコノミクスで採算性を評価する際は、その値が3より大きいことが重要であるといわれています。ユニットエコノミクスの値が3よりも低い場合は、LTVに対してCACが高いことを意味するため、ビジネスの収益性が悪化しているといえます。

この場合、LTVを向上させるか、CACを低下させる必要があります。このように、ユニットエコノミクスを用いて、さらに資本を投下してユーザー数を増やすべきか、LTVを上げる施策を打つべきかの判断をしやすくしています。

CRMツールを活用する

CRM(Customer Relationship Management)とは、日本語で「顧客関係管理」と呼ばれる、顧客との関係管理に使われるマネジメント手法の一種です。CRMツールを活用することで、LTV分析に重要な顧客情報をソフトウェア上で一元管理することができます

既存顧客の情報をはじめとして、営業活動やマーケティング支援、カスタマーサポートによって顧客満足度の向上にもつなげることができます。よって、顧客ニーズの把握だけでなく、商品購入後のアフターフォローに関しても手厚く対応することが可能です。

また、CRMツールの活用によって、顧客一人ひとりとのコミュニケーション数を増加させ、自社への信頼感を高めます。つまり、LTV分析に一番重要な顧客情報を、CRMツールを活用して一元管理し、顧客の傾向に合わせて最適なアプローチを行うことができます。

MAツールを活用する

MA(Marketing Automation)とは、顧客ごとのマーケティング活動を可視化し、その過程を自動化するマネジメント手法です。MAツールを活用すると、顧客一人ひとりに合わせたマーケティング施策を行うことができ、自動的かつ効率的に結果を導き出せます

さらに、顧客の行動履歴を参照し、属性分析やターゲットリサーチと合わせて、顧客との関係構築にも役立ちます。MAツールによって効果的なマーケティング施策を行い、顧客の購入頻度・回数を高め、既存顧客から収益増加にもつなげることができます

LTVの算出によって顧客の潜在ニーズが分かっても、それぞれの最適なタイミングで宣伝を行うことはとても難しいです。しかし、MAツールを活用すれば、顧客の行動に合わせて自動でメールを送信したり、ターゲットリストを作成したりすることが可能です。

つまり、LTVの計算と合わせてMAツールを活用することで、マーケティング活動全体の効率化につながり、LTV分析としても、既存顧客の購入頻度向上・関係強化を図ることができます。

LTV分析のポイント

LTV分析の結果は、その企業の戦略や施策を立案するための資料となる、大変重要な数値です。したがって、より正確なものにするために、いくつかのポイントを押さえる必要があります。ここでは、LTV分析をする際の重要なポイント2つについて解説します。

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目的に合わせて計算式を使い分ける

LTVの計算方法は、先に紹介した方法以外にも数多くあり、それぞれで導き出される数値が異なります。異なる計算方法で導き出された数値同士で比較しても、意味がありません。そのため、分析目的によって計算式を使い分け、出てきた結果を考察しましょう。

1つの計算式で算出された結果を考察し、必要に応じて他の計算式でも考察します。そして複数の考察を検討することで、マーケティングの全体像が見え、具体的な戦略や施策立案の資料となります。まずは、LTV分析をする目的を明確にすることが重要です。

月や年で区切る

LTV分析では、月や年で区切って計算することで、マーケティング戦略や施策を立てることもできます。年単位で区切って、ここ数年間分を比較すれば、長期に渡る顧客のニーズの変化や購買サイクルなどが分析でき、それに対応したマーケティングが可能です。

また、季節性が強い業種では、季節ごとのLTV分析で、商品の需要と仕入れのギャップを減らし、適正な在庫管理によるコストダウンも可能です。このように、時と場合に応じたLTV分析は、その時期に最適な細かな施策の立案を可能にし、利益の増収に結びつきます。

LTV向上に必要なこと

LTV分析の役割には、現状のマーケティング課題の明確化と、課題を解決するために打った戦略や施策の効果を測ることの、2つの面があります。マーケティングの課題を明確にし、戦略や施策でLTVを向上させるためには、下の5項目の改善が必要になります。

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単価を上げる

まず、LTV向上に向けて考えられるのは、商品やサービスの単価を上げることです。しかし、これは商品の価格を値上げすることを意味し、安直に行うと競合他社への顧客流出の原因となるため、実施する場合には、状況判断を誤らないような慎重さが必要です。

その解決方法の1つが、価格が高くなっても顧客が魅力を感じる、品質やサービスの向上をつけ加えることです。また、顧客ランクによって特典をつけるなどの方法も考えられます。単価を上げた結果、販売数が下がってしまってはLTVの向上にはつながりません。

また、顧客の購入単価を上げる方法には、顧客に今までの商品やサービスより単価の高いものを購入してもらうアップセルを狙ったり、購入製品と関連する商品やサービスを購入してもらうクロスセルを狙ったりするのも有効です。

購入頻度を上げる

LTV向上に必要なことの2つ目は、顧客の購入頻度を上げることです。購入頻度を上げるには、顧客と良好な関係を保ち、リピート購入をしてもらうなどの方法が考えられます。そのためには、次の購入を刺激するようなアフターフォローが必要です。

しかし、顧客へのむやみなメール送信による宣伝は逆効果で、メールを拒否されたり、自社の印象を悪くしたりする恐れがあります。よって、LTV分析を活用して顧客のニーズを把握し、そのニーズに合った情報メールの送信が必要です。

長い期間利用してもらう

LTV向上に必要なことの3つ目は、顧客離れを防ぎ、商品やサービスを顧客に長期間利用してもらうことです。販売後のフィードバックを基にして、品質の向上に努めることが重要です。また、自社の商品やサービスをサブスクリプション化するという方法もあります。

その他、顧客に自社の商品やサービスに愛着を持ってもらうことで顧客離れを防ぎ、商品やサービスの長期利用につなげることもできます。この分野では、顧客への迅速かつ的確なアプローチを可能にするCRM(顧客関係管理)システムの活用も有効的です。

コストを抑える

LTV向上に必要なことの4つ目は、新規顧客の獲得や既存顧客の維持にかかるコストを抑えることです。しかし、不用意なコスト削減は、商品の品質やサービスの低下を招き、顧客の継続年数の短縮・LTV低下にもつながるため、慎重な改善が必要です。

どこのコストを抑えるかは、マーケティング全体を見て分析・検討する必要があります。その分析・検討に多くの企業が取り入れているのが、営業活動や業務の効率化を目的とするSFA(営業支援システム)や、CRM(顧客関係管理システム)です。

顧客のロイヤリティを高める

LTV向上の5つ目は、顧客のロイヤリティを高めることです。自社の商品やサービスへの愛着の高さを表す、顧客ロイヤリティの高い企業ほど、顧客1人当たりのLTVが高くなる傾向がみられます。また、そのような顧客が新規の顧客を招いてくれる可能性も高いです。

顧客ロイヤリティ向上のために、顧客にパーソナライズした商品開発や、サービスセンターの充実などを実施する企業もあります。企業によってその方法は異なり、自社に合った方法を見つけることが大切です。

機能を考慮したLTV分析ツールの利用もおすすめ

LTV分析のための専用ツールを使えば、最適化も含めた業務の効率化が図れます。顧客一人ひとりのLTVの分析には、膨大な時間とコストがかかります。ツールではそれを自動化し、業務が速やかに進行することで、リアルタイムな改善策を見つけられます

LTV分析の専用ツールには、さまざまな種類があり、ツールごとで分析できる内容が異なります。そのため、自社がどのような分析をしたいのか、分析以外に何を期待するのかを、明確にしてからツール選択を行いましょう。

また、業種ごとに特化した専用ツールもあるため、本当に必要な機能を考慮しながら分析ツールを検討することが大切です。

まとめ

LTV分析は、顧客の購入金額・収益率・顧客継続年数などを基に、自社の商品やサービスへの顧客貢献度を分析する方法です。新規顧客の獲得が難しくなった現代では、既存顧客のアップセルやクロスセルを狙うためによく利用されている分析方法です。

LTV向上のための戦略や施策は、結果として無駄なコストの削減や収益の最大化にもつながります。しかし、LTV分析の計算式は数多くあり、適時使い分けることが大切です。それにはLTV分析ツールの利用も、視野に入れるのがおすすめです。

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