個人事業主のIT導入補助金2023の申請方法|会計ソフトも対象
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- 個人事業主は「小規模事業者」の定義に該当すれば、IT補助金を申請できる
- IT補助金には申請枠が複数あり、同時に申請することができる
- 個人事業主が申請する際は、まず申請対象の条件を確認し、必要な手続きを行っていく
IT導入補助金は、生産性向上の目的でソフトウェアやWebサービス等のITツールを導入する際、その経費の一部が補助されるもので、個人事業主でも申請ができます。本記事では、IT導入補助金についてと、申請方法のほか、個人事業主が申請する際の注意点を解説します。
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IT補助金とは
IT補助金とは、中小企業や小規模事業者などが自社の課題改善のためや、ニーズに合わせたITツールの導入を行う際に、経済産業省から受けられる補助金を指します。業務の効率化や売上の最大化を目的とするITツールの利用を、サポートするための支援策です。
受けられる補助金の額は、導入費用に対し最大450万円(補助率1/2以内)となります。IT補助金の制度は、通常枠(A・B類型)・セキュリティ対策推進枠・デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)・複数社連携IT導入類型に分類されます。
また、補助対象者や補助額の下限・上限や補助率も区別されています。自身が導入を検討しているITツールはどの申請枠で、対象となるITツールなどの補助金額の上限や補助率など、理解したうえで申請を行う必要があります。
IT補助金の対象者
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者が対象です。業種により、資本金や常用の従業員数などの条件があります。個人事業主の場合は、小規模事業者の定義に該当していれば対象者となり交付申請が可能です。
- 常勤の従業員が5人以下の商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)
- 常勤の従業員が20人以下のサービス業のうち、宿泊業・娯楽業
- 常勤の従業員が20人以下の製造業そのほか
小規模事業者の定義は上記のようになっており、交付申請時点において日本国内で法人登記(法人番号が指定され国税庁が管理する法人番号公表サイトにて公表されていること)され、日本国内で事業を営む法人、又は個人であることが条件となっています。
個人事業主が利用できるIT補助金の申請枠
IT補助金の申請枠は、通常枠のA・B類型やデジタル化基盤導入類型のほかにも複数の申請枠があります。自身が導入を検討しているITツールや、目的によって申請枠は異なるため、確認が必要です。
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個人事業主が利用できるIT補助金の申請枠
通常枠A類型
IT補助金の通常枠とは、中小企業や小規模事業者、一般社団法人・社会福祉法人などがITツールを導入するための補助金であり、A類型は5万円~150万円未満の補助金を受けられます。補助率は導入費用の1/2であるため、ITツール導入費用の自己負担額は半額です。
また、要件となるプロセス数は1以上とし、賃上げ目標に関しては必須ではなく加点となります。ここでいうプロセス数とは、会計・財務・経営や顧客対応といった業務工程や業務種別を指します。
A類型を選択する場合は、小規模なITツールを導入したり、より安価なITツールを導入したりする場合に向いています。
通常枠B類型
以上で解説したA類型との違いとしては、補助額が150万円~450万円未満と高額になる点が挙げられます。補助率はA類型同様、導入費用の1/2であるため、ITツール導入費用の自己負担額は半額です。
また、要件となるプロセス数は4以上とし、賃上げ目標に関してはA類型と異なり、必須とされています。B類型を選択する場合は、大規模なITツールを導入する場合に向いています。
デジタル化基盤導入類型
通常枠A類型・B類型のほかにデジタル化基盤導入類型というものもあります。通常枠ではソフトウェアの導入にかかる費用が補助されますが、パソコンやタブレットなどのハードウェアは対象外です。
デジタル化基盤導入枠の場合、ソフトウェアのほかにハードウェアも補助対象となります。補助額はソフトウェア購入費については下限なし~350万円、PC・タブレットなどは下限なし~10万円、レジ・券売機などは下限なし~20万円です。
要件となるプロセス数、および補助率は、ITツールは50万円部分までがプロセス数1以上で補助率3/4以内、50万~350万円部分までがプロセス数2以上、補助率2/3以内で、そのほかはITツールの使用にするもので補助率が1/2以内とされています。
対象となる経費はソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・ハードウェア関連費・導入関連費です
5万円以下の会計ソフトも申請対象になる
「デジタル化基盤導入型」からIT補助金の申請を行うと、通常枠A類型の「5万円以上の会計ソフト」という補助金の下限がなくなるため、5万円以下の会計ソフトも申請対象になります。
そのため、個人事業主でも5万円以下の会計ソフト導入を検討しやすくなります。対象の会計ソフトは、IT導入補助金の公式ホームページの「ITツール検索」から検索できます。
複数社連携IT導入類型
デジタル化基盤導入型と同時に2022年に導入されたのが、「複数社連携IT導入類型」です。複数社連携IT導入類型は、複数の中小企業・小規模事業者などが連携して、デジタル化・DX化を推進し生産性向上を図る目的で、ITツールを導入する際に対象となります。
大規模なデジタル化・DX化に向いており、商工団体など複数社による申請が条件となります。複数社連携IT導入類型の補助額の上限は、基盤導入経費は5万~350万円、消費動向等分析経費は50万×参加事業者(上限額は、基盤導入経費と合わせて3,000万円)です。
そのほかの経費として、連携団体の取りまとめに必要とする事務関連費用や謝礼・旅費なども対象となり、上限は200万円となります。
セキュリティ対策推進枠
複数社連携IT導入類型のほかに、2022年に新設された導入枠で、「セキュリティ対策推進枠」があります。デジタル化が進む一方で、サイバー攻撃なども巧妙化し、セキュリティ面で潜在リスクが高まっている現状が、新設の背景としてあります。
セキュリティ対策推進枠の場合、補助額が5万~100万円で、要件としては「独立行政法人情報処理推進機構」が公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているものが対象です。
また、補助率は1/2以内とし、セキュリティサービスの利用料最大2年分が対象となります
参考:サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト|独立行政法人情報処理推進機構 IPA
個人事業主が補助金申請時に準備する書類
- 運転免許証・運転経歴証明書、住民票のいずれか1点
- 所得税の納税証明書
- 確定申告書
個人事業主がIT補助金を申請する際、上記の書類が必要になります。上記書類のうち、所得税の納税証明書は直近の書類を、確定申告書は前年分が必要です。IT補助金2023年分を申請するなら、2022年度分を準備する必要があります。
個人事業主のIT導入補助金2023申請方法
個人事業主の方が、IT導入補助金2023を申請する方法について解説します。事前準備から、実際に申請する方法・導入後・補助金交付後について、項目ごとにひとつひとつ確認してから申請手続きを行いましょう。
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個人事業主のIT導入補助金2023申請方法
事前準備
IT導入補助金の申請を行う際は、事前準備を行うことが大切です。まずは、IT導入補助金の内容を理解することから始めます。IT導入補助金には、以上で解説したように、通常枠やデジタル化基盤導入型、セキュリティ対策推進枠などの導入枠があります。
対象となる経費や補助額、補助率も異なります。自身が導入したいITツールはどの対象に該当するのか確認し、公式サイトや公募要項にも目を通し、内容を把握しましょう。
また、個人事業主がIT補助金を利用してITツールを導入する際、IT導入支援事業者によるサポートも受けられます。必要に応じてIT支援事業者と、ITツールについて相談・選定すると良いでしょう。
「gBizIDプライム」・「SECURITY ACTION」・「みらデジ」に対応する
IT導入補助金の申請を行うためには、「gBizIDプライム」の連携、「SECURITY ACTION」の登録、「みらデジ」の経営チェックの実施が申請要件となっています。申請前にあらかじめ登録をし、申請の準備を行います。
「gBizIDプライム」とは、補助金の申請時に必要な、法人代表者や個人事業主の本人確認後に発行されるアカウントを指します。gBizIDプライムアカウントは、印鑑登録証明書と登録印鑑を押した申請書を運用センターに郵送すると、2~3週間で発行できます。
「SECURITY ACTION」とは、情報セキュリティに関する対策への取り組みを宣言する制度を指します。安全・安心なIT社会を実現するために創設されたもので、情報セキュリティポリシーを策定・継続的な見直しをし、対応していくことを宣言するものです。
「みらデジ」とは、デジタル化により、自社の業務課題設定と改善を目指す中小企業と、中小企業の取り組みを支援する各種機関の方法をサポートするために設置されたデジタル化支援ポータルサイトです。
デジタル化やDX化への取り組みに対し、経営課題をチェックする「経営チェック」を実施します。
交付申請
IT導入補助金の事前準備が整ったら、交付申請を行います。自身の事業で必要となるITツールの選定や、見積もりを進めます。必要に応じてIT導入支援事業者と相談し、導入するITツールの選定や事業計画を設定し、申請手続きを開始します。
IT導入支援事業者より、申請マイページの招待メールを受け取り、申請マイページを開設します。その後、gBizIDプライムアカウントでログインし、必要事項を入力し、再度入力内容を確認します。
最後にSMS認証による本人確認を行い提出します。その後、事務局で審査が通れば、交付決定通知がきます。
事業実施
交付決定通知を受け取ったら、ITツールを契約し支払いを行います。購入の際に発行された請求書や領収書などは大切に保管しておきましょう。
ITツールを導入後、対象の事業を実施します。申請の際に使用した「申請マイページ」で、事業実績報告をはじめ必要な項目を入力し、必要書類を添付のうえ、実績報告を提出します。受理されると補助金確定通知書が発行され、補助金の交付が受けられます。
補助金交付後
IT導入補助金は交付を受けたあとも、IT導入支援事業者からのアフターフォローを受けられます。また定期的な事業実施効果報告を作成し、提出することが義務付けられています。実施効果報告の頻度は、申請枠や内容により異なります。
なお、賃上げ目標が必須の申請枠の場合、目標値を下回った場合や、効果報告前に辞退した場合は補助金の一部、または全額の返還が求められます。
個人事業主がIT導入補助金を申請する際の注意点
個人事業主がIT導入補助金を申請する際、いくつかの注意点があります。申請の対象になっているか、また必要な書類や対象となるサービス・商品を確認しておくと良いでしょう。
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個人事業主がIT導入補助金を申請する際の注意点
申請対象か確認する
前述したように、IT導入補助金は中小企業・小規模事業者を対象が対象です。個人事業主も一定要件を満たしていれば、対象となり交付申請が可能です。個人事業主は、小規模事業者の定義に該当していれば対象者となります。
- 常勤の従業員が5人以下の商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)
- 常勤の従業員が20人以下のサービス業のうち、宿泊業・娯楽業
- 常勤の従業員が20人以下の製造業そのほか
上記以外にも、個人事業主に関わってくる要件は複数あり、交付規程に記載されたすべての要件を満たしている必要があります。
事業計画書に漏れがないか確認する
IT導入補助金の交付申請を行う際、事業計画書の添付が必要です。事業計画書はIT導入支援事業者のサポートを受けながら一緒に作成します。
実績の多いIT導入支援事業者は、高評価を得られる事業計画書の作成の知識があるため、自身の知識が少ない状態でも安心です。作成した事業計画書は、記載漏れがないかどうか提出前にチェックを行いましょう。
同時に申請できる枠があるか確認する
IT導入補助金では、補助金を交付してくれる枠は1つですが、デジタル化基盤導入型と通常枠(A類型・B類型)であれば、同時申請できます。
デジタル化基盤導入型で補助対象となるソフトウェアと、通常枠の補助対象となるクラウドサービスなど、それぞれ別枠で申請できます。同時に申請することで採択される可能性が高まります。
パソコン単体購入の申請はできない
IT導入補助金は、パソコンのみの購入は補助対象にはなりません。補助を受けるには、パソコンなどのハードウェアのほかに、ソフトウェア・ITツールの選定を行い、セットで購入する必要があります。
IT導入補助金の目的は、デジタル化・DX化による生産性の向上・業務効率化であるため、ITツール導入が条件です。補助を受ける際は、ハードウェアだけでなく、必ずITツールも選定しなければなりません。
ホームページ作成は対象外
IT導入補助金は、自社の紹介ページなど、一方的に情報を発信しているホームページの作成は補助の対象外となります。IT導入補助金を利用してホームページを作成するには、生産性の向上や業務効率化を目的としたWebサイトを構築することで、要件を満たせます。
たとえば、顧客管理システム、決済システムなどと連携し、顧客対応やクレジット決済をホームページ上で行うことを目的としたWebサイトの作成であれば、補助の対象となります。
決算や確定申告の実績が必要になる
IT導入補助金は、開業したばかりで、一度も決算・確定申告を行っていない場合は、納税証明書をはじめとする必要書類が揃わないため申請ができません。申請を行えるのは、設立から1年以上経過していることが要件になります。
IT導入補助金2023の事業スケジュール
IT導入補助金2023の事業スケジュールの日程は以下の通りです。申請書提出は、締切日の17:00をもって申請マイページ、およびIT事業者ポータルでの事務局への申請・提出が締め切られます。
また、締切の直前は申請マイページ・IT事業者ポータルへのアクセスが集中し、接続時間が通常よりかかる可能性があります。申請は、日程や時間に余裕を持って申請手続きを行うと良いでしょう。
申請枠 | 申請回 | 申請締切日 | 交付決定日 |
---|---|---|---|
通常枠(A類型・B類型) | 1次締切分 | 2023年4月25日 | 2023年5月31日 |
2次締切分 | 2023年6月2日 | 2023年7月11日 | |
3次締切分 | 2023年7月10日 | 2023年8月22日 | |
4次締切分 | 2023年7月31日 | 2023年9月12日 | |
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型) | 1次締切分 | 2023年4月25日 | 2023年4月25日 |
2次締切分 | 2023年5月16日 | 2023年6月21日 | |
3次締切分 | 2023年6月2日 | 2023年7月11日 | |
4次締切分 | 2023年6月20日 | 2023年8月1日 | |
5次締切分 | 2023年7月10日 | 2023年8月22日 | |
6次締切分 | 2023年7月31日 | 2023年9月12日 | |
セキュリティ対策推進枠 | 1次締切分 | 2023年4月25日 | 2023年5月31日 |
2次締切分 | 2023年6月2日 | 2023年7月11日 | |
3次締切分 | 2023年7月10日 | 2023年8月22日 | |
4次締切分 | 2023年7月31日 | 2023年9月12日 | |
複数社連携IT導入類型 | 1次締切分 | 2023年7月10日 | 2023年8月22日 |
2次締切分 | 2023年7月31日 | 2023年9月12日 |
まとめ
T導入補助金は、生産性向上と業務効率化を目的とした、WebサービスなどのITツールやソフトウェアを導入する際、その経費の一部が補助されるもので、中小企業や小規模事業者が対象です。
個人事業主でも小規模事業者の定義に該当すれば、IT導入補助金の申請が可能で、会計ソフトを導入したい場合にも有効です。個人事業主が申請する際は、申請対象の条件を確認し、必要書類を揃える必要があります。
また、申請枠が複数あり、同時申請できるものもあります。ほかにも、さまざまな申請を行う際に注意すべきポイントがあるため、まずはIT導入補助金の仕組みを理解することから始めなければなりません。
IT導入補助金を活用し、自社の課題を改善するために、業務プロセスのデジタル化やDX化を推進させ、より時代に合ったビジネススタイルを確立できるように、適したITツールを導入しましょう。
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