経理のクラウド化とは|注目される理由・メリットデメリットを解説
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- 経理業務のクラウド化とは、クラウド型の会計ソフトを使用することである
- クラウド型の会計ソフトを利用すると、法改正時にもスムーズに対応できる
- クラウド型会計ソフトを導入する際は、セキュリティ対策をしっかり行う必要がある
IT化が進み、クラウド型会計ソフトを利用した、経理業務のクラウド化が注目されています。本記事では、経理業務のクラウド化が注目される理由やおすすめの企業、クラウド型会計ソフトを導入するメリット・デメリットの他、クラウド型会計ソフトの選び方も解説します。
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経理業務のクラウド化とは
会計ソフトを導入する形態には、インストール型とクラウド型の2種類があります。インストール型は、自社のサーバーにソフトをインストールして運用するのに対し、クラウド型は、サービス提供会社のサーバーにある会計ソフトをインターネットを介して運用します。
したがって、クラウド型は、インターネットを利用できる場所なら、いつでもどこでも仕事ができるようになるのが大きな利点です。たとえば、在宅勤務・モバイルワーク・サードプレイスオフィス勤務などが可能で、柔軟な働き方ができるようになります。
クラウド型は導入コストが抑えられ、サーバーの管理担当者もいらないことから、高額な導入予算を確保できない中小企業でも取り入れやすい導入形態です。また、既にインストール型を導入している企業でも、クラウド型に移行しているところも多くなってきています。
経理業務のクラウド化が注目される理由
2018年に政府は「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」を示しました。政府機関に関係するものですが、内容には、コスト削減・迅速な整備・災害対策・テレワーク環境などの実現が明記され、民間企業にも当てはまる部分も多いです。
そして、2019年施行の「働き方改革関連法」では、時間外労働の上限規制や年次有給休暇の取得が義務化されました。それに対応するため、各企業は、IT技術の革新的進化を背景に、ITを活用した業務効率化を図るようになり、経理業務のクラウド化もその一つです。
従来の経理業務では、精算書や請求書・領収書・預金通帳などのデータを手作業でソフトに入力していました。しかし、このようなアナログな方法は、ミスや不正のリスクが高い・作業時間が長い・多くの人的コストがかかるなどの課題もありました。
そこで注目されたのが、インターネット通信を始めとするIT技術の進化を生かした、経理業務のクラウド化です。経理業務のクラウド化でデータが可視化され、経理業務の効率化が図られるばかりでなく、作業ミスや不正行為の防止、内部統制の強化にもつながります。
経理業務のクラウド化がおすすめな企業
多くのクラウド型の会計ソフトは、ネットバンキングやクレジットカードの入出金データを自動的に取り込んで仕訳する機能を持っています。この起用により、入力業務が大幅に削減され入力ミスも防げます。特に、これらを利用している企業のメリットは大きいです。
また、経理業務システムに蓄積されたデータは、リアルタイムで簡単に集計できます。したがって、利益・売上・経費・資産データなどを確認して、リアルタイムに経営状況をチェックしたり、経営戦略を練ったりしたい企業には大きな導入効果が期待できます。
また、簿記の専門知識を持った人材がいない企業のメリットも大きいです。クラウド型会計ソフトは、簿記の知識が浅い方でも扱いやすく設計されているのが基本で、理解できない専門用語や使い方がわからない場合は、サポートに連絡すれば教えてもらえます。
クラウド型会計ソフトのメリット
クラウド型会計ソフトの導入には、企業側にも従業員側にもさまざまなメリットがあります。ここでは、下記の6つの大きなメリットについて解説します。
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クラウド型会計ソフトのメリット
業務の効率化が図れる
1つ目のメリットは、業務の効率化が図れることです。クラウド型会計ソフトには、自動仕訳機能などの機能が備わっているものが多いです。そのため、手作業での手間や時間を短縮することができます。
また、担当者とデータが共有できたり、バックアップが取れることで経理業務を効率化できるだけでなく、データ紛失の不安を解消させることもできます。
場所を選ばす操作できる
クラウド型会計ソフトの導入で、場所を選ばずに経理データを共有し操作できることです。クラウド型会計ソフトでは、システムもデータもクラウド上にあり、インターネットを通してアクセスして利用するので、インターネット環境があればいつでもどこでも利用できます。
したがって、タブレットやスマートフォンなどでも操作ができ、データの確認や入力のためだけに会社に戻る必要がなくなります。このように、クラウド型会計ソフトの導入は、テレワーク・在宅勤務などの柔軟な働き方を可能にし、働き方改革の推進にも役立ちます。
法改正に対応できる
今回のインボイス制度のように法改正があると、会計ソフトを対応させる必要があります。インストール型では自社でアップデートするか、買い替えとなりますが、クラウド型では、サービス提供会社が対応するので、企業は手間もなければ、経済的な負担もありません。
法改正以外でもクラウド型会計ソフトは、OSへの対応やセキュリティ対策などで細かなアップデートをサービス提供会社が行っています。したがって、企業が使うソフトは常に最新版の状態となっています。このような場合でも、インストール型はコストがかかります。
バックアップの手間が省ける
電子データは常に破損する危険をはらんでいて、データのバックアップは必ず取っておかなければなりません。インストール型では自社でバックアップを取りますが、クラウド型では、すべてサービス提供会社が随時バックアップ取っていて、作業の手間が省けます。
自社のデータが保管されているクラウドサーバーは、災害時にもデータが失われないように、バックアップ体制がしっかり整えられています。万が一自社が災害に遭った場合でも、システムとデータはサービス提供会社に残っていて、早期の業務再開が可能です。
情報の反映や仕分が簡単に行える
会計ソフトの中には、金融機関やクレジットカード会社の取引明細を取り込むと同時に、自動的に仕訳を行いソフトに反映してくるものがあります。入力作業の手間が大幅に省け、ミスのない入力ができる便利な機能です。
そして、 入力された情報は連携しているシステムにリアルタイムで反映されます。また、データは可視化されているので誰でも利用でき、経理以外の分野においても有効なデータ活用が可能です。
リアルタイムで状況把握できる
会計ソフトで入力された情報はすぐにシステムに反映され、会計帳票などの確認ができます。手作業で会計処理を行っていた際によく見られた、税理士の帳票作成待ちがなくなり、リアルタイムで自社の経営状況の把握が可能です。
また、それぞれのデータからタイムリーな財務分析を、レポートにまとめられます。これにより、時を逃さない適切な経営判断が可能です。
疑問点がすぐに解消できる
多くのクラウド型会計ソフトでは、サービス提供会社からのサポートが受けられます。サポート体制の充実度はそれぞれですが、メール・チャット・電話などでのサポートが一般的です。サポート担当者と画面を共有したサポートもあるとわかりやすくて便利です。
特に導入当初は操作方法や専門用語などがわからない場面も多々あるので、気軽に使えるサポート体制が整えられている会計ソフトの導入も大切です。
クラウド型会計ソフトのデメリット
クラウド型会計ソフトには多くのメリットがありますが、デメリットもあります。そのデメリットを少しでも抑えられるようなソフトの導入や、自社環境の整備が必要です。ここでは、下記の4つの主なデメリットについて解説します。
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クラウド型会計ソフトのデメリット
インターネットにトラブルがあると作業が停滞する
クラウド型会計ソフトは、インストール型と違ってインターネットを通して利用するため、インターネットにトラブルがあると使えなくなってしまいます。同じように、社内で停電が発生すると、自社のPCや社内ネットワークもダウンして使えません。
また、回線速度の遅延や電波障害でも、作業の停滞が起こる場合があります。少なくとも社内でのトラブルを防ぐために、導入前に社内のどのパソコンにインターネットを接続するかを明確にし、ルーターやハブなどが高速回線を阻害しないように整備することが大切です。
セキュリティ対策の徹底を要する
情報漏えいが起こると、自社の社会的信用を失いかねません。電子データを扱うときには細心の注意が必要です。しかし、クラウド型ではサーバーのセキュリティはサービス提供会社に依存していますので、セキュリティ面での不安があるのが否めません。
したがって、導入前にサービス提供会社のセキュリティ対策を確認することが大変重要になります。確認事項としては、災害対策やサーバー室への侵入対策・ハードウェア機器の障害対策・不正アクセス防止・通信の暗号化・アクセスログの管理などがあります。
また、アクセス時に必要な、IDとパスワードの管理もルールを作り厳重に扱う必要があります。IDとパスワードが悪意ある第三者に知られてしまうと、情報漏えいばかりでなく、書き換えも可能となり、企業に大きな損失を与えます。
継続的にコストがかかる
インストール型は導入時に大きなコストがかかりますが、クラウド型は毎月の利用料がかかります。したがって、長期的に見ればインストール型よりもコストがかかってしまう場合もあります。
利用料は定額プランと従量課金プランのものがあります。定額プランは、使う人数が少ない企業にとって割高感がある場合があります。また、従量課金プランは、使う人数や使う機能によって課金されるタイプで、大きな企業では割高感が生まれることがあります。
操作になれるまで時間を要する場合がある
インストール型からクラウド型の会計ソフトに切り替える場合は、新しいソフトに慣れるまでに時間がかかるかもしれません。同じサービス提供会社の製品ならまだしも、異なる会社の製品にする場合はなおさらです。
クラウド型会計ソフトの選び方
ここでは、クラウド型会計ソフトの選び方を解説します。高機能なものは利用料も高くなりますので、予算に合わせて最も自社に合ったものを選ぶのが重要です。
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クラウド型会計ソフトの選び方
自社に必要な機能が備わっているか
まず、ソフトを選ぶ前に自社の経理に潜在している課題を明確にすることが大切です。それによって、自社に必要な機能がわかってきます。一般的に機能が多いほど利用料が高くなる傾向があります。逆に不必要な機能を除外して予算内におさめることもできます。
サービスや契約内容によっては機能を付加できるものもあります。たとえば、見積書・納品書・請求書・決算書作成機能を別料金で付加できるものです。今使っているほかのシステムで対応できるのであれば、これらの機能は必要ありません。
サポート体制は充実しているか
サポート体制はサービス提供会社によって大きく異なるので、必ず確認が必要なポイントです。たとえば、すべてのサポートが有料のところもあれば、すべてのサポートが無料で、チャットサポートもある場合もあります。また、メールサポートのみのところもあります。
サポートについての確認事項には、無料でどこまででき有料でどのようなサポートがあるかはもちろん、土日の対応・対応時間・対応方法などがあります。また、専門の方が訪問して指導してくれるサービスを持つ会社もあります。
使いやすい操作性か
クラウド型会計ソフトは、基本簿記の知識のあまりない初心者の方にも使いやすい仕様に設計されています。しかし、今まで使っていた会計ソフトと画面デザインが異なるため、当初は使いづらいと感じる方がみえます。
しかし、できるだけ使う人が違和感なく使えるものを選択することは、当初の操作ミスによる業務の停滞を最小限に抑えるために必要です。多くのサービス提供会社は、無料トライアル期間を設定しています。積極的に活用して、操作感の確認を行うのがおすすめです。
利用中の銀行口座やクレジットカードに対応しているか
銀行口座やクレジットカードに自動同期し、取り込みと仕訳をしてくれる会計ソフトは、入力と仕訳の手間が省け、大幅な効率化が図れます。しかし、すべてのソフトがすべての銀行口座やクレジットカードと同期できるわけではありません。
会計ソフトが、現在利用している銀行口座やクレジットカードに対応しているかの確認は大変重要なチェックポイントです。
まとめ
クラウド型の会計ソフトを使用する経理業務のクラウド化は、最近注目の導入方法で、数多くの企業が採用しています。クラウド型は、サービス提供会社のサーバーにあるソフトをインターネットを介して利用する方法で、手軽に導入できるのがメリットです。
基本的にソフトの仕様変更はできませんが、法改正などで仕様変更が必要な場合は、サービス提供会社が随時行ってくれるので手間がかからず利用できます。ただし、セキュリティもサービス提供会社に依存するので、導入前の徹底したチェックが必要です。
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