会計ソフトの種類|クラウド型とインストール型の違いを解説
Check!
- 会計ソフトのクラウド型とインストール型の大きな違いは、使用できる条件である
- 会社外でも経理状況を確認したい企業には、クラウド型の会計ソフトが向いている
- 自社独自の会計処理を行いたい企業は、インストール型の会計ソフトが向いている
仕訳や決算書作成などの経理作業を効率化できる会計ソフトの種類には、クラウド型とインストール型が存在します。本記事では、会計ソフトのクラウド型とインストール型のメリット・デメリットを交え、それぞれの違いを比較表を使って分かりやすく解説します。
おすすめ記事
目次
開く
閉じる
開く
閉じる
会計ソフトのクラウド型とインストール型の違いとは
クラウド型の会計ソフトは、インターネットを介してアクセスする仕組みで、データはクラウド上に保存されます。利用はブラウザや専用アプリを使い、どこでもデバイスを問わずにアクセスできます。
一方、インストール型はローカル環境にソフトウェアをインストールして利用します。通常はパソコンにソフトをインストールし、その端末上でのみ稼働します。「パッケージ型」とも呼ばれます。
クラウド型会計ソフト | インストール型会計ソフト | |
---|---|---|
インストール | 不要 | 必要 |
インターネット環境 | 必要 | 不要 |
OS | Windows・Mac両方に対応 | ソフトによって異なる (Windows・Macどちらか) |
デバイス | PC・スマホ・タブレット等で使える | インストールしたデバイスでのみ使用可能 |
料金形態 | 月額制 or 年額制 | パッケージ購入orダウンロード購入 |
バージョンアップ | 無料 | 有料 |
自動取引の機能 | あり | なし |
インターフェース | シンプル | 複雑 |
電子申告(e-Tax) | 対応が進んでいる | 遅れ気味 |
ハードディスク容量 | 端末にデータを残さないのでほとんど容量を消費しない | インストールするため使用容量が多い |
会計ソフトのクラウド型とインストール型のメリットの違い
会計ソフトのクラウド型とインストール型には、それぞれ独自のメリットがあります。ここでは、それぞれのメリットについて解説します。企業のニーズや予算、セキュリティ要件に応じて、どちらを選択するか検討しましょう。
\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/
クラウド型 | インストール型 |
---|---|
・インターネット環境があればどこでも利用できる ・どのデバイスでも利用できる ・取引入力が自動でできる ・電子申告の対応が進んでいる ・操作が簡単な傾向がある | ・インストールしたデバイスでのみ使えるので管理が容易 ・インターネット環境を使用しないので システム障害が起こりにくい ・クラウド型と比較すると機能が多い ・クラウド型と比較すると動作速度が早い |
クラウド型のメリット
ここではまず、クラウド型会計ソフトのメリットについて解説します。近年、クラウド型の会計ソフトは、多くの企業や組織に選ばれています。クラウド型のメリットが、自社のニーズや要件にマッチするかを確認してみましょう。
インターネット環境があればどこでも利用できる
従来のインストール型と比較して、特定のローカル環境に依存することなく、インターネット環境があれば、オフィスや自宅、出張先など、どんな場所でもアクセスできます。
これにより、従来のように特定の場所に拘束される必要がなくなり、リモートワークや出張の際にもスムーズに作業ができます。また、複数の拠点を持つ企業やリモートチームでの作業にも適しており、情報共有と業務効率の向上が実現します。
どのデバイスでも利用できる
クラウド型では、ウェブブラウザやモバイルアプリを通じてアクセスできるため、パソコン、タブレット、スマートフォンなど、さまざまなデバイスで利用可能です。
場所やチームメンバーごとに異なるデバイスを使用しても問題なく連携でき、リアルタイムでデータの共有や更新ができます。これにより、業務の柔軟性と生産性が向上し、遠隔でのコラボレーションが容易になります。
取引入力が自動でできる
クラウド型の会計ソフトは、銀行やクレジットカードと連携できる機能を持っています。そのため、取引データを直接自動取り込みでき、手作業での入力が不要となります。これにより、入力ミスのリスクを軽減し、時間と労力を節約できます。
また、リアルタイムでデータが更新されるため、会計情報が常に最新の状態となり、正確な財務レポートを作成することができます。自動取引入力の利用により、業務の効率性が向上し、会計プロセスがスムーズになります。
電子申告の対応が進んでいる
クラウド型の会計ソフトは、税務申告に必要なデータを電子ファイルとして作成・保存する機能が充実しています。税務署の指定フォーマットに対応しており、自動的に必要な項目を集計・整理してくれるため、手作業での申告書作成の手間を軽減します。
また、最新の税法や規制の変更にも迅速に対応し、正確な申告を保証します。これにより、会計ソフトの利用者は確定申告期間などにかかる時間と労力を節約し、スムーズに申告手続きを行うことができます。
操作が簡単な傾向がある
クラウド型の会計ソフトは、直感的なインターフェースと使いやすいデザインが特長です。ユーザーは、ウェブブラウザやモバイルアプリを通じて、簡単な操作でデータの入力や取引の管理が行えます。
また、初心者でも分かりやすいチュートリアルやサポート機能が備わっているため、導入から利用までのステップがスムーズです。これにより、専門的な会計知識がないユーザーでも容易に利用できるため、業務の効率性が向上します。
インストール型のメリット
次に、インストール型会計ソフトのメリットについて解説します。インストール型は、特にセキュリティと柔軟性を求める組織に有効なソフトです。自社のニーズや、クラウド型のメリットと比較し、導入を検討しましょう。
インストールしたデバイスでのみ使えるので管理が容易
インストール型のソフトは、特定のデバイスにソフトウェアがインストールされているため、セキュリティ管理が容易になります。使用するデバイスを限定し、不要なアクセスをブロックすることで、不正アクセスやデータ漏洩のリスクを最小限に抑えることができます。
また、データはオフライン環境で管理されるため、インターネットに接続する必要がなく、データの安全性が向上します。これにより、会計データの取り扱いが容易になり、データ管理が適切に行えます。
インターネット環境を使用しないのでシステム障害が起こりにくい
クラウド型とは異なり、ネットワークに依存しないため、インターネット接続の不安定さやサーバーダウンなどの影響を受けません。データはローカルデバイスに保存され、オフラインでアクセスできるため、データへのアクセスが安定します。
これにより、データの安全性と取引の確実性が高まり、重要な会計情報の扱いにおいて安心感が得られるでしょう。また、オフラインでの利用が可能なため、特にインターネット接続の制限がある場所や、システムの安定性が重要な企業やユーザーに適しています。
クラウド型と比較すると機能が多い
インストール型は、クラウド型に比べて機能が充実していることが多いです。クラウド型もオプションなどによって機能を追加していくことはできますが、インストール型は特定の業種や規模に適したモジュールやレポート、税務対応の機能などが標準で充実していることがあります。
これにより、企業の業務に合った高度な機能を利用できるため、業務の効率化や正確性が向上します。インストール型は、自社のニーズに最適化した会計ソフトを構築でき、生産性の向上に大きく貢献します。
クラウド型と比較すると動作速度が早い
インストール型は、ローカル環境にソフトウェアがインストールされているため、データの処理や画面表示がクラウド型よりも高速に行われます。クラウド型は、データの送受信にインターネット回線が必要なため、ネットワーク環境によっては動作が遅くなることがあります。
しかし、インストール型はオフラインでデータ処理が可能なため、データへのアクセスがスムーズで、高いパフォーマンスを実現できます。特に大量の取引データや複雑な計算が必要な場合、インストール型の会計ソフトは迅速な処理が行えます。
会計ソフトのクラウド型とインストール型のデメリットの違い
クラウド型とインストール型には、それぞれ異なるデメリットがあります。どちらの種類もメリットとデメリットがあり、選択の際には自社のニーズや環境に合わせて検討する必要があります。ここでは、双方のデメリットについて解説します。
\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/
クラウド型 | インストール型 |
---|---|
・インターネット環境に左右される ・インストール型と比較して複雑な処理に向いていない ・長期的に見ると多くの費用がかかる | ・バージョンアップの手間がかかる ・ハードディスクの使用容量が多い ・利用できるデバイスの制約がある ・法令改正の際はアップデートが必要 |
クラウド型のデメリット
クラウド型の会計ソフトには、便利なメリットが多い一方で、いくつかのデメリットも存在します。メリットだけでなく、デメリットも利用前によく考慮しておきましょう。
インターネット環境に左右される
クラウド型のソフトウェアはインターネット経由で動作し、データの送受信やアクセスに常にインターネット接続が必要です。したがって、インターネットの速度や安定性によって作業効率が影響される可能性があります。
不安定なインターネット接続だと作業が遅れることがあり、ネットワークのダウンタイムによりアクセスが制限されることもあります。特にリモート地や遠隔地など、インターネット環境が制限されている場所では作業に支障が出ることが考えられます。
インストール型と比較して複雑な処理に向いていない
クラウド型は、多くの場合、汎用的な機能を提供していますが、事業者特有の特殊な処理や複雑な管理には柔軟性が制限されることがあります。例えば、特定の業種に特化した複雑な仕訳処理などが必要な場合、クラウド型では十分なカスタマイズが難しい場合があります。
特殊なニーズに対応するためにはインストール型の会計ソフトが適している場合があります。インストール型の中には業界・業種に特有のニーズに合わせた製品もあり、また機能も豊富なため複雑な処理や特殊な業務にも対応できます。
この点では、クラウド型と比較してより柔軟であり、特殊な処理を必要とする事業者にとって適切な選択肢となるでしょう。
長期的に見ると多くの費用がかかる
クラウド型は初期費用が安く、導入ハードルは低いと言えます。初期費用無料で利用開始できるものも多くあります。ただし、月額または年額で継続的に費用がかかります。
1カ月、1年単位の費用はそれほど高額なものではありませんが、長期的に見ると買い切りが基本のインストール型と比べてコストパフォーマンスが悪くなることもあります。そのため、個人事業主などごく小規模な事業者の場合、インストール型の中から比較的安いものを選んだ方が良いこともあります。
インストール型のデメリット
ここでは、インストール型の会計ソフトのデメリットについて解説します。インストール型の会計ソフトにもいくつかのデメリットが存在します。クラウド型とインストール型のメリット・デメリットを総合的に考慮して、ソフトの導入を検討しましょう。
バージョンアップの手間がかかる
インストール型のソフトウェアは、新しいバージョンがリリースされた際に、ユーザー自身がアップデートを行わなければなりません。
まず、新しいバージョンのソフトウェアをダウンロードしてインストールする必要があります。その後、データのバックアップを取り、アップデートを行います。また、アップデートに伴って、既存のカスタマイズや設定が引き継がれない場合もあるので、注意が必要です。
一方、クラウド型の会計ソフトは、プロバイダーが自動的にソフトウェアのバージョンアップを行ってくれるため、ユーザーは手動でのアップデート作業を行う必要がありません。これにより、新しい機能やセキュリティ対策が迅速に適用されます。
ハードディスクの使用容量が多い
インストール型のソフトウェアは、ローカル環境に直接インストールされるため、ソフトウェアのデータベースがユーザーのハードディスクに保存されます。特に大規模な会計データを扱う場合、必要なディスク容量が膨大になることがあります。
これにより、ハードディスクの容量が不足する可能性が高まります。また、不十分な容量では、ソフトウェアの動作が遅くなるか、データの保存やバックアップが制限されることがあります。
一方、クラウド型の会計ソフトは、データがクラウドサーバーに保存されるため、ユーザーのハードディスク容量を大幅に節約できます。
利用できるデバイスの制約がある
インストール型のソフトウェアは、特定のデバイスにインストールされるため、そのデバイスでのみ利用可能となります。例えば、会社のオフィスPCにインストールした場合、そのPC以外ではソフトウェアを利用することができません。
リモートワークや移動中での利用を考慮する場合、制約を受ける可能性があります。また、デバイスの故障や紛失時にデータの復旧が困難になるリスクも考慮する必要があります。
一方、クラウド型の会計ソフトはインターネット接続があればどのデバイスからでも利用できるため、柔軟な利用が可能となります。
法令改正の際はアップデートが必要
法律や税制の変更が行われると、会計処理にも影響を及ぼすことがあります。しかし、インストール型のソフトウェアは、自動的に法令改正に対応できるわけではなく、ユーザー自身が手動でソフトウェアのアップデートを行わなければなりません。
これにより、法令改正への対応が遅れる可能性があります。法改正に即した会計処理が行われないと、企業の税務や申告に誤りが生じるリスクがあるため、アップデートが重要となります。
また、アップデート作業に手間や時間を要することもあり、事業者はアップデートのタイミングや内容を把握し、スムーズに対応する必要があります。
一方、クラウド型の会計ソフトは、プロバイダーが自動的にアップデートを行うため、法令改正に即した最新の機能や税務対応を迅速に提供できます。
クラウド型の会計ソフトが向いている企業
クラウド型の会計ソフトは「簿記や会計の知識に不安がある企業」「外出先や在宅ワークで経理状況を確認したい企業」に特におすすめの会計ソフトです。ここでは、クラウド型の会計ソフトが向いている企業について解説します。
\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/
クラウド型の会計ソフトが向いている企業
簿記や会計の知識に不安がある企業
クラウド型の会計ソフトは、使いやすいインターフェースや直感的な操作性を持っているため、簿記の知識が限られている担当者でも簡単に利用できます。また、入力項目や処理の手順が自動化されているため、複雑な帳簿管理を知識を持たなくても行えます。
クラウド型の会計ソフトは、データの自動整理やレポートの作成機能を提供しており、重要な財務データを迅速に把握できます。さらに、リアルタイムでのデータの共有やアクセスが可能なため、会計士や税理士とのコミュニケーションもスムーズに行えます。
これらのメリットにより、簿記や会計に自信のない企業でも、クラウド型の会計ソフトを活用して正確で効率的な会計業務を行うことができます。
外出先や在宅ワークで経理状況を確認したい企業
クラウド型の会計ソフトは、インターネット環境さえあれば、どこからでもアクセス可能です。また、スマートフォンやタブレット、ノートパソコンなど、どのデバイスからでもリアルタイムで会計データや財務状況を確認できるため、外出先や在宅での作業にも最適です。
このような環境下では、営業や出張などの移動中でも簡単に売上や経費の記録ができます。また、在宅ワークが増える中で、オフィスから離れていてもリモートで確認・更新ができるため、業務の柔軟性と効率性が向上します。
さらに、複数の従業員や会計担当者が同時にデータにアクセスできるため、情報共有が円滑に行えます。クラウド型の会計ソフトは、外出先や在宅ワークのニーズに対応し、移動性と柔軟性を重視する企業にとって理想的な選択肢です。
インストール型の会計ソフトが向いている企業
インストール型の会計ソフトは、特定の企業にとって非常に適しています。ここでは「簿記や会計の知識がある企業」「自社独自の会計処理がある企業」の2つのケースについて解説します。
\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/
インストール型の会計ソフトが向いている企業
簿記や会計の知識がある企業
インストール型は、クラウド型に比べて機能が豊富で、より本格的な会計処理に向いています。簿記の専門知識を持つスタッフがいる企業では、インストール型の会計ソフトを使うことで、複雑な帳簿処理や特殊な会計取引にも柔軟に対応できます。
また、インストール型はより高度な機能を提供でき、会計の専門家が必要とする詳細なデータ分析やレポート作成が行いやすくなります。
自社独自の会計処理がある企業
インストール型のソフトウェアは、カスタマイズが行える場合も多いです。自社独自の会計処理や特殊な取引を行う企業は、一般的な会計ソフトでは対応できない場合がありますが、インストール型の会計ソフトは、そのようなニーズに柔軟に対応できます。
さらに、インストール型ではデータがローカルに保存されるため、セキュリティ面での自社の要件にも合わせやすいです。特に機密性の高いデータを扱う企業は、外部のクラウドサービスにデータを頼らずに自社内でデータ管理できるインストール型を好む傾向があります。
自社独自の会計処理が必要な企業は、インストール型の会計ソフトを導入することで、よりカスタマイズ性が高く、セキュリティやデータ管理にも配慮した、自社の要件に最適化された会計処理が実現できるでしょう。
まとめ
近年の会計ソフトの導入においては、クラウド型が主流となっています。クラウド型の会計ソフトはインターネット環境があればどこでも利用可能であり、デバイスの制約も少なく、操作が簡単であることがメリットです。
また、取引入力が自動で行えたり、電子申告の対応が進んでいる点も高い評価を受けています。一方、インストール型の会計ソフトは、ローカル環境で動作し、簿記や会計の知識がある企業に向いています。
自社独自の会計処理が必要な場合には、インストール型が柔軟性に優れており、大規模なデータを扱う際にも動作速度が早いことが特長です。しかし、アップデートの手間やハードディスクの使用容量が多いというデメリットがあります。
会計ソフトのクラウド型とインストール型はそれぞれ異なる特徴を持ち、企業のニーズに合わせた選択が重要です。運用環境や事業の規模に応じて最適な選択を行い、効率的な会計業務を実現しましょう。
この記事に興味を持った方におすすめ