電子帳簿保存法のタイムスタンプとは?改正の変更点や利用方法を解説

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  • タイムスタンプは、電子データがある時刻に作成されたことを証明する技術のことである
  • 2022年の法改正から訂正削除の確認可能なシステムの利用時はタイムスタンプが不要
  • タイムスタンプを付与する際は、タイムスタンプ機能搭載の会計ソフトがおすすめ

電子帳簿保存法のタイムスタンプとは、電子データがある時刻に作成されたものであること・改ざんされていないことを証明する技術のことです。本記事では、タイムスタンプについてよく知らない方のために、タイムスタンプの発行手順や利用方法などについて解説しています。

目次

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  1. 電子帳簿保存法のタイムスタンプとは
  2. 3つの区分におけるタイムスタンプの取り扱い
  3. タイムスタンプの発行について
  4. タイムスタンプの利用方法
  5. タイムスタンプを付与する際の注意点
  6. タイムスタンプにかかる費用
  7. タイムスタンプの利用はタイムスタンプ機能搭載会計ソフトがおすすめ
  8. まとめ
  9. 更なる業務の効率化に!関連サービス記事

電子帳簿保存法のタイムスタンプとは

タイムスタンプとは、電子データについて、それが改変されていない原本であることを明らかにするために、電子的なスタンプを付与する技術です。タイムスタンプは、第三者機関であるTSA(時刻認証業務認定事業者)から発行され、発行後は改変できない仕組みになっています。

タイムスタンプが付与されると、原本の電子データとタイムスタンプの情報から、タイムスタンプが付与された時刻よりも後にデータが改変されていない事実を証明することができます。

日本では1998年、国税関係の帳簿書類を電子データ形式で保存することを認める「電子帳簿保存法」が制定されました。しかし、電子データは改変や複製が容易なため、電子文書が原本であること証明するために導入されたのが、タイムスタンプの技術です。

参考:電子帳簿保存法の概要|国税庁

参考:タイムスタンプについて|総務省

タイムスタンプの必要性

従来、紙の書類での保存が認められていた電子商取引の書類ですが、電子帳簿保存法の改正により電子データでの保存が義務化されました。2023年末までは猶予が設けられていますが、2024年より電子データでの保存が必須となります。

電子商取引を行った場合は、受領した電子書類にタイムスタンプを付与して保管しなければなりません。タイムスタンプの付与が不要なケースもありますが、多くの場合、電子データの保管にはタイムスタンプの付与が求められます。

タイムスタンプが付与されていない電子データは、複製や偽造がされていないことを証明するのが難しく、タイムスタンプのない電子データを提出した場合、税務調査で不利な扱いを受ける可能性もあります。これらの理由から、電子商取引の際にはタイムスタンプが必要です。

電子帳簿保存法改正により変わったこと

2022年1月の電子帳簿保存法改正により、タイムスタンプのルールが変更されました。以下で、改正前と改正後の変更点について詳しく解説します。

タイムスタンプの付与期間が最長「2ヶ月と概ね7営業日以内」に変更

2022年1月の電子帳簿保存法改正において、タイムスタンプ付与の要件が緩和されました。これまで、領収書などを電子データとして保存する場合、タイムスタンプを付与するタイミングは受領から3営業日以内と厳しいものでしたが、改正後は最長「2ヶ月と概ね7営業日以内」に変更されています。

また、クラウドシステムなどを使用しているなどして、入力期限内に電子データの保存が確認でき、電子データの修正・削除の履歴が残るのであれば、タイムスタンプの付与自体が不要になりました。これにより、2022年1月の法改正で、タイムスタンプは実質的に「不要」になった形です。

スキャナ保存における自署が不要

電子帳簿保存法改正前は、国税に関する書類をスキャナで読み取った後、受領者の自署が必要でした。しかし、法改正によって自署が不要になり、自署がなくても原本と同一の効力が認められるようになりました。

これにより、原本に自署する手間が省け、原本の紛失や破損リスクも軽減されるなど、企業への業務負担がかなり少なくなりました。これは、書類の電子化に対するハードルを下げ、企業がデータの電子化に取り組みやすい環境の整備へとつながっています。

このように、スキャナ保存における自署が不要になったことで、企業は電子帳簿保存法への対応を、より効率的かつ効果的に行うことができるようになりました。

訂正や削除の確認可能なシステムの利用時はタイムスタンプが不要

改正前の電子帳簿保存法では、電子帳簿を保存する際、データの訂正や削除が行われた場合には、その操作履歴を記録するためにタイムスタンプの付与が必要でした。

しかし、法改正により、訂正・削除といった編集履歴が残る時刻証明機能のあるシステムで作成された電子データ保存時には、原則としてタイムスタンプが不要になりました。

時刻証明機能のあるシステムでは、システム上に電子データをアップロードするだけで自動的にタイムスタンプが付与されるものがほとんどですそのため、タイムスタンプを付与する手間がなくなり、効率的なデータ管理が可能になります。

参考:電子帳簿保存法が改正されました|国税庁

3つの区分におけるタイムスタンプの取り扱い

電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引では、それぞれタイムスタンプの取り扱いが異なります。以下で、詳しく解説します。

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3つの区分におけるタイムスタンプの取り扱い

  1. 電子帳簿等保存
  2. スキャナ保存
  3. 電子取引

電子帳簿等保存

会計システム上において作成した国税関係帳簿書類は、電子データの状態での保存が認められています。

たとえば、会計ソフトで作成した仕訳帳・総勘定元帳・注文書・領収書・貸借対照表・損益計算書などが、これに該当します。なお、これらの電子帳簿等の保存にタイムスタンプの付与は不要です。

スキャナ保存

自社で作成した国税関係の紙の書類や、領収書など相手方から受領した紙の書類は、スキャナを使って電子化した上で保存します。スキャナ保存には、画像の解像度や色調など、一定以上の条件を満たす必要があります。また、スキャナ保存においては、タイムスタンプの付与が必要です。

スキャン入力は、定められた一定期間の内に行わなければなりません。入力期間には、早期入力方式(概ね7営業日以内)と、業務サイクル方式(2ヶ月と概ね7営業日以内)があります。

電子取引

電子取引は、書類作成システムなどを利用して作成した国税関係書類の電子データを、電子メールなどを利用して送受信することを指します。電子取引では、要件を満たした電子データの保存が義務付けられており、タイムスタンプの付与は選択要件となっています。

スタンプ付与に関する選択条件には、以下のようなものがあり、いずれかを選択する必要があります。

  1. タイムスタンプ付与後に、相手に送信すること
  2. タイムスタンプのない書類は、受領後すぐに付与すること
  3. 要件を満たす規定のシステム上で、送受信・保存をすること
  4. 事務処理規定を設けること

参考:電子帳簿保存法が改正されました|国税庁

タイムスタンプの発行について

タイムスタンプが発行できるのは、定められた事業者のみです。タイムスタンプ発行事業者や、タイムスタンプの発行手順について、以下で詳しく解説します。

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タイムスタンプの発行ができるのはTSAだけ

タイムスタンプの発行ができるのは、時刻認証業務認定事業者(通称・TSA)と呼ばれる事業者のみです。 TSAは、一般社団法人日本データ通信協会の承認を経て登録された事業者で、現在では以下の5社がこれに該当します。

  1. セイコーソリューションズ株式会社
  2. 三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社
  3. 株式会社サイバーリンクス
  4. 株式会社TKC
  5. アマノ株式会社

タイムスタンプは、電子データの信頼性を確保するための重要な手段です。そのため、厳しい審査を通過した事業所のみが、認定タイムスタンプの付与を行えます。TSAの認証を受けた企業は、日本データ通信協会が発行した時刻認証業務認定マークを表示することが許可されます。

参考:タイムスタンプについて|総務省

タイムスタンプの発行手順

タイムスタンプの発行手順には、3つの手順を踏む必要があります。以下で、3つの手順について、それぞれ解説します。

タイムスタンプの要求

タイムスタンプは、郵便物に押される消印のようなもので、電子データに時刻情報などが含まれたスタンプを付与することで、そのデータの正当性を証明します。タイムスタンプの付与には、まずTSAへのタイムスタンプの要求が必要です。

具体的には、利用者がタイムスタンプを付与する原本のハッシュ値を生成し、それをTSAに送付します。ハッシュ値は、データの正当性を検証するために使用されています。

タイムスタンプトークンの発行

TSAは、タイムスタンプを要求した事業者に対し、タイムスタンプトークンを発行します。タイムスタンプトークンとは、タイムスタンプ発行機関によって発行されるデジタル署名で、データの改ざんを検証するために使用されます。

タイムスタンプトークンには、以下のような情報が含まれています。

  1. データのハッシュ値
  2. タイムスタンプ
  3. タイムスタンプ発行機関の署名

タイムスタンプ発行機関は、依頼を受けたデータのハッシュ値を計算し、そのハッシュ値とタイムスタンプを、タイムスタンプ発行機関の署名付きでタイムスタンプトークンに格納します。そして、タイムスタンプトークンを、依頼のあった事業所へと送信します。

タイムスタンプの検証

タイムスタンプの検証は、原本のデータからハッシュ値を計算し、その値とタイムトークンに含まれているハッシュ値とを比較検証するプロセスです。

ハッシュ値が一致していれば、原本のデータがタイムスタンプの発行時刻に確かに存在し、それ以降に改ざんが行われていないことが証明できます。

タイムスタンプの検証は、データの安全性や信頼性を向上させるために重要な役割を果たしています。タイムスタンプの検証を行うことで、データの改ざんを検証し、データの正当性を証明できます。これにより、データの法的な効力を高めることが可能です。

タイムスタンプの利用方法

タイムスタンプを利用するには、いくつかの手順があります。タイムスタンプの利用方法について、以下で詳しく解説します。

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事前準備

タイムスタンプの利用には、時刻認証業務認定事業者(TSA)との直接契約、またはタイムスタンプ付与に対応した会計システム・電子契約システムといったシステムの導入が必要です。

TSAのタイムスタンプは、日本データ通信協会から認定を受けているため信頼性が高く、多くのサービスやプランから自社に合うものを選べます。料金プランには定額制・従量制の2つがあり、電子データを頻繁に利用している事業者なら定額制がおすすめです。

また、タイムスタンプの付与に対応しているシステムを導入していれば、タイムスタンプの直接付与が可能です。まずは、自社のシステムがタイムスタンプの付与が可能なシステムかを確認しましょう。設定の変更や、新たなオプション契約が発生する場合もあるため、併せて確認してください。

書類を準備

タイムスタンプを付与したい原本の書類を準備します。原本である紙の書類に不備があると、電子データも訂正しなければなりません。そのため、記載内容に不備がないか、しっかり確認しておくのが大切です。

万が一、書類に不備があった場合は、タイムスタンプ発行機関に書類の不備を報告し、タイムスタンプの発行をキャンセルしてもらうようにします。そして、書類を修正もしくは再作成し、タイムスタンプ発行機関に再提出します。

タイムスタンプ発行機関によっては、書類の不備を修正するための料金を請求する場合があります。また、書類の不備が頻繁に発生している場合、タイムスタンプ発行機関がタイムスタンプの付与を拒否する場合もあるので注意が必要です。

書類をスキャン

タイムスタンプを付与したい原本の書類をスキャナを使用して電子データ化します。スマートフォンやデジタルカメラで撮影したものも使用できますが、撮影環境によっては画像が荒く文字が見えづらくなる場合があります。

画像が不鮮明だと、タイムスタンプの付与が拒否されるケースもあるため、スキャナーを使用するにせよ、スマートフォンやデジタルカメラを使用するにせよ、画像はできる限り鮮明に撮影するよう心がけてください。

システムやクラウドにアップロード

スキャンした書類を、利用している会計システム・電子契約システムや、クラウドなどにアップロードします。システムによって操作方法や使い勝手が変わるので、自社にとって使いやすいシステムを選んでおくのがおすすめです。

タイムスタンプを付与

書類をアップロードすると、TSAからタイムスタンプが付与されます。タイムスタンプの付与により、その書類が原本であり、データに改変が加えられていないことなどが証明されます。

なお、TSAでタイムスタンプを利用する際には、利用料が発生します。料金プランには定額制・従量制の2つがあり、電子データを頻繁に利用している事業者なら、定額制を利用すると良いでしょう。

タイムスタンプを付与する際の注意点

タイムスタンプの付与には、いくつか注意しておかなければならない点があります。以下で、タイムスタンプを付与する際の注意点を解説します。

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タイムスタンプの付与期間

タイムスタンプの付与期間は、「2ヶ月と概ね7営業日以内」と電子帳簿保存法で定められています。法律の要件を守って正しく書類を保存しなかった場合には、罰則が課されます

青色申告の承認取り消し・推計課税や追徴課税など、企業にとってこの罰則はダメージが大きいため注意が必要です。さらには、会社法でも100万円以下の罰金が科せられるケースもあります。

罰則や罰金が課されないよう、余裕を持った業務フローを規定し、必ず期日内にタイムスタンプの付与を終えるようにすることが重要です。

原本の取り扱い

法改正前の電子帳簿保存法では、領収書などを電子化した後も、一定期間は紙の原本を保管しておく必要がありました。しかし、2022年の法改正によって、スキャナ保存後は原本の破棄が可能です。

ただし、原本の破棄には、以下の4つの条件を満たしていることが求められます。条件を満たせない場合は、原本の保管が必要になるため、しっかり確認しておきましょう。

  1. 要件で定められた水準以上で書類を電子化できること
  2. 利用するシステムに要件を満たす機能が備わっていること
  3. 電子化したデータを7年間分保存できること
  4. データ改変などの不正に対する防止手段があること

第三者のタイムスタンプ付与によるトラブル

タイムスタンプは、発行業者になりすました第三者によって不正に付与されるケースがあります。不正なタイムスタンプが付与されると、そのデータはセキュリティが脆弱になり、改変が可能になってしまうこともあるため注意が必要です。

データ改変が可能になれば、情報漏洩のリスクが高くなります。そのため、不正スタンプのトラブルに遭わないよう、日頃からセキュリティ対策を徹底しておくことが重要です。

タイムスタンプにかかる費用

タイムスタンプにかかる費用には、月に何件利用しても料金が固定されているタイプや、利用数に応じて金額が加算されていくタイプがあります。利用数に応じて費用が加算されるタイプは、業者により多少金額は異なるものの、1件につき約10円程度の料金が発生します。

月の利用数が多い場合は、月額固定の料金プランを利用すれば、タイムスタンプの発行コストを抑えられるでしょう。

タイムスタンプの利用はタイムスタンプ機能搭載会計ソフトがおすすめ

タイムスタンプ機能搭載の会計ソフトは、電子帳簿保存法の要件を満たすためのタイムスタンプ付与をサポートします。また、データの改ざんを防止し、データの検索や参照を容易にします。これにより、企業は会計業務を効率化できるのがメリットです。

2024年1月に改正される電子帳簿保存法では、個人事業主・法人どちらにも影響があるので、法改正に対応できる会計ソフトの導入で、早めに準備を進めておくのがおすすめです。

タイムスタンプ対応の会計ソフトはまだあまり多くないものの、近年のデジタル化推進の波により、増加が予想されます。電子データでの帳簿・書類の保存をするなら、会計ソフトの導入を検討してみましょう。

まとめ

電子帳簿保存法のタイムスタンプとは、電子データの真正性を証明するための技術です。2022年の法改正により、タイムスタンプ付与の要件が緩和されたことで、企業が書類データの電子化に取り組みやすい環境が広がってきています。

電子帳簿保存法に対応した、タイムスタンプ機能搭載の会計ソフトを導入は、法律に対応しながら、業務効率化やセキュリティ性の向上にも大きく役立ちます。この記事を参考に、自社のニーズに合わせて、タイムスタンプ機能を搭載した会計ソフトの導入を検討しましょう。

更なる業務の効率化に!関連サービス記事

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