ChatGPTのファインチューニングとは?手順やメリットも解説

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  • ファインチューニングとは、学習済みのモデルに新しい知識を学習させるプロセスを指す
  • ファインチューニングにより、回答の精度向上や出力時間の短縮などの効果が期待できる
  • ファインチューニングを行うには大量の高品質な学習データが必要で、コストが発生する

ChatGPTでは、ファインチューニングを行うことで新しい知識をAIモデルに学習させることができます。ファインチューニングにより、高精度な回答や出力時間の短縮が可能になります。この記事では、ChatGPTのファインチューニングを行う手順やメリット、注意点などを解説します。

目次

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  1. ChatGPTのファインチューニングとは
  2. ChatGPTのファインチューニングの対象となるデータ
  3. ChatGPTのファインチューニングを行うメリット
  4. ChatGPTのファインチューニングに必要な費用と支払い方法
  5. ChatGPTのファインチューニングを行う際の注意点
  6. ファインチューニング以外のカスタム方法との違い
  7. まとめ

ChatGPTのファインチューニングとは

ChatGPTのファインチューニングとは、学習済みのChatGPTに新たな知識を追加し、特定のタスクに特化したモデルにアップデートすることです。

ChatGPTは情報収集の用途にも長けており、企業においても事前リサーチや顧客サポート、マーケティングを中心とした業務の効率化に活用されています。

しかし、学習リソースが限定的であるため、特定の分野や領域において十分な回答を得られないこともあります。ファインチューニングを実施することで、最新の情報にも対応しつつ、特定の分野やタスクに最適化されたモデルに改善できます。

参考:Fine-tuning – OpenAI API

ChatGPTとは?メリット・デメリット、始め方などを解説

ChatGPTとは、2022年11月に公開されたAIチャットサービスです。無料で利用でき、人間のような自然な受け答えができることから話題となりました。この記事ではChatGPTのメリット・デメリットや始め方、気になる危険性などについて解説します。

ChatGPTのファインチューニングの対象となるデータ

ChatGPTのファインチューニングの対象となるデータには次のようなものがあります。

  1. 直近に起きた出来事の最新情報(時事・ニュースなど)
  2. 社内データ(社内ドキュメント・ドキュメントデータなど)
  3. 専門的な知識(医療・金融・法律など)

ChatGPTの学習リソースはインターネット上の情報ですが、直近の最新情報まではカバーしきれていない可能性があります。そのため、ごく最近の情報や、専門性が高くインターネット上であまり拡散されていない情報については、信憑性が低いことがあります。

また、社内ドキュメントのような社内ネットワークに閉じられているデータについても、学習が不可能であるため、これらのデータを活用してファインチューニングを行うことで、特定の業務やタスクに特化したChatGPTを構築できます。

ChatGPTのファインチューニングを行うメリット

ChatGPTのファインチューニングを行うことで、特定の分野やタスクに特化した独自のChatGPTを構築できるため、さらなる業務効率の改善を見込めます。ここでは、ChatGPTのファインチューニングを行うメリットを解説します。

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回答の精度が上がる

ファインチューニングによって、特定分野の詳細な情報を追加することで、既存モデルに比べて回答の精度向上が見込めます。その結果、情報収集や顧客サポート、マーケティングといった、もともとChatGPTを導入していた業務のさらなる効率化が見込めます。

例えば、マーケティングにおいては、最新の市場データをChatGPTに追加することにより、時間をかけずに大量の有益な情報を収集でき、担当者によるチェック工数も減らせます。

また、収集したデータを元にマーケティング戦略の立案を依頼して、新たな視点からの市場開拓や顧客獲得にもつなげられるでしょう。このように、ファインチューニングによってChatGPTの回答精度を上げることで、業務効率の大幅な改善に期待できます。

長い文章を学習できる

ChatGPTに入力できるプロンプトには制限があるため、一度に長い文章やたくさんのテキストを処理することはできません。また、長いプロンプトは正確に理解されず、指示とは異なる内容が返ってくることもあります。

ファインチューニングでは多くのデータを正確に学習させることができるため、ChatGPTへの指示に必要な事前情報などがある場合も、プロンプトに入力する必要性が低くなり、このような制約を受けずに済みます

回答出力までの時間が短くなる

ファインチューニングによってChatGPT内の学習データを充実させることで、プロンプトの入力から回答出力までの時間短縮が見込めます。短時間で高精度の回答を得られることにより、業務の効率化につなげやすいです。

カスタマーサポートにおいては、顧客満足度の向上につなげられる点も魅力です。例えば、コールセンターに活用すれば、問い合わせに対してChatGPTが素早く回答を生成するため、オペレーターは検索の手間を省きながら、顧客に正確な回答を素早く提示できます。

顧客の待ち時間を減らすことで1人あたりの応対時間も短縮できるため、より多くの顧客対応を実現でき、顧客満足度とともに、生産性の向上にも期待できます。

トークン量を節約できる

ファインチューニングの実施は、ChatGPT使用時のトークン量の節約にもつなげられます。その理由は、少ない指示数でも、ChatGPTが正確に指示内容を理解できるためです。

ChatGPTにおけるトークンとはAIがテキストを処理する際の単位のことで、文字列を意味のあるかたまりに分けた単位です。ChatGPTのAPI料金は、トークン数に応じて課金されるため、トークン数が多いほどAPI利用料金がかかります。

ファインチューニングを行って特定分野の知識を充実化させることで、ChatGPTは簡潔な指示でも、ユーザーの意図を理解した回答を生成できるようになります。

つまり、短文のプロンプト入力で済むため、消費するトークンの量を節約でき、その結果、API料金を最小限に抑えられます。

ChatGPTのファインチューニングに必要な費用と支払い方法

ChatGPTのファインチューニングには、所定の費用がかかり、指定された方法での支払いが必要です。料金は、使用モデルや学習量によって変動するため、予算内に収まるかを十分に検討しましょう。

ここでは、ChatGPTのファインチューニングに必要な必要と支払い方法について解説します。

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ChatGPTのファインチューニングに必要な費用と支払い方法

  1. ファインチューニングの料金
  2. 支払い方法

ファインチューニングの料金

ファインチューニングの料金は、次のような項目によって変動します。

  1. 使用モデル
  2. トレーニングデータのトークン数(単語の数)
  3. 学習回数
  4. ファインチューニングの実行回数

例として2025年2月時点において、GPT-4oの2024-08-06版では、$25.000 / 1M training tokensとなっています。また、トレーニング後の入力・出力についてもそれぞれ料金がかかります。なお、料金は適宜改定されるため、最新価格については公式サイトで確認しましょう。

参考:Pricing|OpenAI

支払い方法

ファインチューニングの料金は、クレジットカードで支払えます。設定の「Billing」画面の「Add payment details」では、クレジットカードの登録ができるほか、アカウントのクレジット数も確認できます。

なお、ファインチューニングではトークン数に応じて料金が増額されるため、費用が想定外に高騰化するリスクがあります。「Usage limits」画面の「Hard limit」項目では、利用金額の上限を設定でき、思わぬ出費の防止に役立ちます。

同画面の「Soft limit」では、超えた際にメールが届く金額の設定が可能です。設定金額を超えた旨が自動でメール通知されるため、費用の使い過ぎの防止に役立ちます。

ChatGPTのファインチューニングを行う際の注意点

ChatGPTのファインチューニングは業務の効率化に役立つ一方で、学習や管理にコストがかかる点に留意しなければなりません。ここでは、ChatGPTのファインチューニングを行う際の注意点を解説します。

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質の高い学習データが大量に必要

ChatGPTのファインチューニングを成功させるには、質の高い学習データが大量に必要です。データの量・質が不足すると、ChatGPTの学習が不十分になり、求めるレベルに到達しない恐れがあります。

ファインチューニングに必要なのは、次の2つを組み合わせた「データセット」です。

  1. 学習すべき内容についての質問
  2. その回答

一般的に求められるデータセットの数は50~100個で、最低でも10個の準備が望ましいです。数が多いほどモデルの精度向上に期待できますが、その分時間と手間がかかる点に留意しましょう。

定期的な更新・メンテナンスが必要

ChatGPTは、定期的なアップデートやメンテナンスを行う必要があります。時間の経過につれて、追加したデータは古くなっていき、回答の精度も低下していくためです。情報の鮮度を保つためにも、定期的な更新・メンテナンスを行いましょう。

また、提供元であるOpenAIが、ベースとなるモデル自体をアップデートした場合は、再度のファインチューニングが必要になります。このような継続的な更新・メンテナンスには、専門知識を有したリソースが必要であり、膨大な時間と手間もかかります。

コストが発生する

前述のとおり、ChatGPTのファインチューニングには所定の料金がかかります。特に、高精度な結果を求める場合は、大量データの学習が必要です。つまり、多くのトークンを消費するためAPI料金がかさみやすく、総合的な費用も高額化しやすいです。

さらに、ファインチューニングのための専門人材にかかる人件費や、時間的コストも軽視できません。直接的なコストだけでなく、このような間接的コストも考慮しながら、計画的な予算・スケジュールのもとでファインチューニングを行う必要があるでしょう。

セキュリティ対策が必要

ChatGPTでファインチューニングを行う際は、情報漏洩を始めとするセキュリティリスクにも注意を払う必要があります。まず挙げられるのは、企業内の情報などをChatGPTに学習させるリスクです。

ChatGPTは学習した情報を他のユーザーへの回答のために使うことがあります。そのため、基本的にはコンテンツが学習に利用されないビジネス向けのプランを利用するのがおすすめです。これらのプランには他にもビジネスに役立つさまざまな機能やサービスが提供されます。

また、不正アクセスなどの一般的なデータセキュリティリスクもあります。インターネット環境を堅牢に保ち、アクセス権限の管理など社内統制にも気を配りましょう。

参考:ChatGPT の料金プラン|OpenAI

ファインチューニング以外のカスタム方法との違い

ChatGPTには、ファインチューニング以外にも転移学習やプロンプトエンジニアリングといったカスタム方法があります。それぞれの特徴や強みを理解して、適切なカスタマイズを行いましょう。

ここでは、ファインチューニング以外のカスタム方法との違いについて解説します。

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転移学習との違い

転移学習は、ファインチューニングと同じく、既存モデルに新しいデータを追加するカスタマイズ法です。転移学習は事前学習モデルに新しい層を追加するだけなのに対し、ファインチューニングは、新しい層と事前学習モデル全体に調整を加える点に違いがあります。

そのため、ファインチューニングのほうがより高精度な回答の出力に期待できます。

プロンプトエンジニアリングとの違い

プロンプトエンジニアリングとは、事前学習済みモデルの調整は行わず、入力の仕方(プロンプト)の工夫によって、モデルの回答を最適化する手法です。再学習を行わない点がファインチューニングと異なります。

例えば、「明日の天気を教えて」といったプロンプトを入力していたところを、「明日の東京の正午頃の天気を教えて」といったように、詳細なプロンプトに再構成することで、ユーザーの望む回答を引き出します。

ファインチューニングよりも手軽に実施できる一方で、ファインチューニングに比べると回答の精度は劣ります。

インストラクションチューニングとの違い

インストラクションチューニングは、ファインチューニングの手法の1つです。与えられた指示を理解して、最適な動作を行うための学習を指します。

ファインチューニングが特定のタスクに特化したモデルを目指すのに対し、インストラクションチューニングは、タスクに従う能力そのものを強化して、汎用性を高める点に違いがあります。これにより、高精度な回答の出力にもつなげられます。

RAGとの違い

RAGは、ChatGPTの回答生成時に、外部のデータベースを参照させる技術です。ファインチューニングは再学習によって特定分野の回答精度を向上させるのに対し、RAGは膨大なデータベースを検索して、適切な回答を生成する点に強みがあります。

ファインチューニングの学習分野は限定的になりやすいため、幅広いデータベースの検索に長けたRAGを組み合わせることで、より広範囲な情報収集が可能になり、回答の精度が向上します。

OpenAI APIとの違い

OpenAI APIは、ChatGPTに使われているAIモデルを、自社サービスなど他のプラットフォームに組み込むために提供されているツールです。例えば、カスタマーサポート向けのチャットに組み込めば、AIがオペレーターのように顧客とやり取りを行ってくれます。

OpenAI APIを用いてAIモデルに自社内のデータへのアクセス権を与えれば、AIがそれらのデータを参照できるようになります。ただし、ファインチューニングのように高度な学習ができるわけではありません。

なお、ファインチューニングしたモデルをAPIによって自社のサービスや業務アプリケーションに組み込むこともできます

参考:OpenAI API|OpenAI

参考:APIプラットフォーム|OpenAI

まとめ

ChatGPTはファインチューニングを行うことで、短時間で高精度な回答を出力できるため、業務のさらなる効率化につなげられます。また、複雑な指示も少量のプロンプトで遂行できるため、トークン量やAPI料金の節約も見込めます。

ファインチューニングには質の高い大量のデータが必要であるほか、定期的な更新・メンテナンス費用を含めてコストが高額化しやすいです。利用料金の上限を設定するなどして、費用の使いすぎを防止しましょう。

ChatGPTのファインチューニングを実施し、企業のDXを推進しながら、業務効率の改善や生産性の向上につなげましょう。

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