労務管理で行う手続き一覧|手続きのタイミングにごとに分けて解説

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  • 労務管理では、労働基準法の規定に沿って給与計算や年末調整などの手続きを適切に行う
  • 労務管理の手続きには、毎月または毎年行うものと、その時々で必要になるものがある
  • 労務管理を適切に行い、効率化するには労務管理システムの導入が有効である

労務管理の手続きには、給与計算のような毎月行うものや、入社退社といった社内手続きなどもあり、労働基準法の規定に沿って適切に行う必要があります。本記事では、労務管理で行う手続きを月毎や1年毎、必要に応じて発生する手続きごとに分かりやすく解説します。

目次

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  1. 労務管理の業務内容
  2. 労務管理で毎月行う手続き一覧
  3. 労務管理で毎年行う手続き一覧
  4. 労務管理で必要な際にその都度行う手続き一覧
  5. 労務管理の効率化には労務管理システムを
  6. まとめ

労務管理の業務内容

労務とは、給与や待遇・福利厚生など従業員の労務全般を管理することを指します。入社や退社といった社内手続きも行うため、他の管理業務と比較すると管理範囲が広いです。

労務管理は、従業員の労働内容が法令に抵触しないように管理することと、生産性の向上を目的として行われます。企業としてのコンプライアンスを守るだけでなく、従業員の健康管理にもつながるため、労務管理は非常に重要な管理業務と言えます。

人事管理や勤怠管理との違い

人事管理や勤怠管理は労務管理に含まれますが、管理対象が異なります。人事管理は、採用から育成・評価や配置を行うことが目的であり、従業員を対象にした管理です。

勤怠管理は従業員の出退勤や勤務時間の管理を行い、適正な労働時間を管理します。つまり、勤怠管理の対象は従業員の勤怠に限定されています。

それに対し、労務管理は労働そのものを対象としているため、人事管理や勤怠管理とはやや異なります。また、労務管理を行うには「法定4帳簿」を適切に整備する必要があります。

法定4帳簿とは

法定4帳簿とは、賃金台帳・労働者名簿・出勤簿・年次有給休暇管理簿の4種類の総称です。法定4帳簿の作成と保存は、労働基準法によって定められています。

しかし、必要な事項が正しく記載されていないケースや、必要な帳簿が整備されていない現状も少なくありません。

また、年次有給休暇管理簿については、2019年4月1日から作成が義務づけられていますが、未だ浸透していないという課題もあります。以下の表に、それぞれの帳簿について簡単にまとめました。

名称内容
労働者名簿労働者の氏名・生年月日・住所・性別などを記載した書類
出勤簿出勤日・労働日数・始業終業時刻・休憩時間など勤務を行った時間を記録
賃金台帳従業員に支払う給与の支払い状況や、計算期間を記載した帳簿
年次有給休暇管理簿従業員の年次有給休暇取得状況を管理するための帳簿 
有給休暇付与日・残り日数を記載

参考:労働基準法で規定された代表的な4帳簿|厚生労働省

労務管理で毎月行う手続き一覧

労務管理は、毎月給与計算の締め日を過ぎてから、給与計算や付随して行うべき手続きがあります。以下の手続きは給与計算とともに計算し手続きを行います。

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給与計算

給与計算は、会社によって締め日が異なります。締め日を過ぎた翌日から対象期間の勤怠状況を確認し、残業や休日出勤の割増賃金を加算して総支給額を決定します。総支給額をもとに、所得税・住民税・社会保険料を控除して差し引き支給額を確定します。

また、給与支給日に全従業員の口座に振り込まれるように、インターネットバンキングなどを利用して、振込予約などの手続きを行います。

源泉所得税の納付

従業員の給与から控除した源泉所得税は、給与を支払った月の翌月10日までに国に納める必要があります。ただし、給与の支給対象人数が常時10人未満の源泉徴収義務者は、半年分まとめて納付できます。

納付期限を過ぎた場合、源泉所得税額の10%相当額が「不納付加算税」として徴収されるといったペナルティが課せられる場合もあります。ただし、やむを得ない場合が認められた場合に限り、不納付加算税は免除されます。

参考:No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例|国税庁

住民税の納付

従業員の給与から控除した住民税は、源泉所得税と同様に給与を支払った月の翌月10日までに国に納めなくてはなりません。住民税の納付方法は、「普通徴収」と「特別徴収」があります。

企業は従業員の給与から住民税を控除し、従業員の代わりに収める「特別徴収」を原則的に行います。住民税額は毎年5月頃になると送られてくる「市民税・県民税特別徴収関係書類」に記載されており、納付書も同封されています。

参考:特別徴収にかかる手続きについて|東京都主税局

社会保険料の納付

従業員の給与から控除した社会保険料は、翌月末までに金融機関にて振り込みを行うか、指定口座より自動振替にて納付します。社会保険料は、健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料の3つです。

納付する社会保険料は、毎月20日頃に日本年金機構から送られてくる「保険料納入告知書」に記載されている金額です。期限までに納付しなかった場合は、遅延金が発生します。社会保険料は1度でも延滞すると、督促を受けます。

督促状に記載された期限までに支払いを行えばペナルティはありませんが、督促に応じなかった場合は財務調査の対象となる場合もあります。

参考:社会保険料の納入告知書(納付書)について|日本年金機構

労務管理で毎年行う手続き一覧

以上で毎月行う労務管理の手続きを解説しましたが、年に1度毎年行う手続きもあります。主に、所得税・住民税や社会保険料のもととなる書類の手続きです。以下で具体的に解説します。

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年度更新

年度更新とは、労働保険の年度更新手続きを指し、事業主が前年度の保険料を精算するために確定保険料の申告と納付を行います。また、新年度の概算保険料を納付するための申告と納付の手続きも行わなければなりません。

年度更新の手続きは、毎年6月1日から7月10日までの間に行います。期間内に手続きを行わなかった場合、政府が保険料や拠出金の金額を決定し、納付すべき保険料と拠出金の10%の追徴金が課される場合があります。

参考:労働保険の年度更新とは|厚生労働省

算定基礎届の提出

算定基礎とは、健康保険・介護保険・厚生年金保険の標準報酬月額が、実際の報酬(給与)との間に大きく差がないように、標準報酬月額を見直して提出する書類を指します。この標準報酬月額の見直しを、「算定」または「定時決定」と呼びます。

算定基礎届は毎年4〜6月の3ヵ月間の給与額から平均を取り、被保険者の標準報酬月額を決定するために毎年7月上旬に年金事務所に届け出を行います。算定基礎届の対象は、5月31日以前に入社し、資格を取得した被保険者です。

算定基礎届を行わなかった場合、健保組合や年金事務所から督促を受け、9月からの標準報酬月額を各行政の職権で決定されてしまうケースもあります。その場合、実際よりも標準報酬月額が高くなる可能性もあり、適切な社会保険料の算定ができなくなります。

参考:定時決定(算定基礎届)|日本年金機構

高年齢者・障害者雇用状況報告書の提出

高年齢者・障害者雇用状況報告書とは、高年齢者雇用および障害者の常用労働者数を報告する書類で、毎年6月1日現在の報告をすることから、通称「ロクイチ報告」とも呼ばれています。

高年齢者・障害者雇用状況報告書は、管轄のハローワークを経由して厚生労働大臣に報告することが義務づけられています。該当する企業は、「高年齢者雇用状況報告書」は、常用労働者数がおおむね31人以上が対象です。

もう一方の「障害者雇用状況報告書」は、常用労働者数がおおむね45.5人以上が対象になります。書類が届いた企業は報告義務の対象であるため、期限までに提出しなければなりません。報告しなかった場合、特に罰則等はありませんが、企業名が公表されます。

参考:高年齢者・障害者雇用状況報告の提出について|厚生労働省

年末調整

年末調整とは、毎月支払った給与から徴収される、所得税の過不足金を調整するための手続きを指します。従業員の給与・賞与から徴収する所得税は「源泉徴収」と呼ばれており、一定率の金額を天引きして預かり、納税者本人に代わって納付しています。

年末調整は、実際に徴収した源泉徴収とその年に確定した年収によって算出された本来徴収すべき所得税額を比較し、過不足金の調整を行います。余分に源泉徴収をした場合は、差額を従業員に還付します。

参考:源泉徴収義務者(給与の支払者)の方へ(令和5年分)|国税庁

労務管理で必要な際にその都度行う手続き一覧

労務管理は、毎月や毎年行う決まった手続き以外にも、必要に応じてその都度行うべき手続きもあります。従業員にさまざまな変更や申請事項が発生した際の手続きは、発生の時点で速やかに行うべき事項です。

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従業員の入退社

従業員が入退社する際は、社会保険や雇用保険、税金に関する手続きなどが必要になります。まずは、入社時に「労働条件通知書」を書面にて交付します。また、入退社の手続きとして、社会保険・雇用保険の資格取得・喪失手続きが必要です。

社会保険は入社後5日以内、退社後は翌々日から5日以内に手続きを行います。被扶養者がいる場合は合わせて届け出が必要です。また、雇用保険の手続きは入社した翌10日まで、退職日の翌々10日以内に、資格取得や喪失の手続きを行わなければなりません。

そのほか、住民税の特別徴収切り替え手続き、退職者への源泉徴収票の交付など、事案が発生するごとにその都度手続きを行います。

参考:就職したとき(健康保険・厚生年金保険の資格取得)の手続き|日本年金機構

参考:従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き|日本年金機構

参考:特別徴収にかかる手続きについて|東京都主税局

従業員の休職・異動

従業員が自己都合で長期間働くことができない状況にある場合、労働契約を継続したまま休むことを認める休職や、辞令による部署や役職の変更が行われる異動が発生した際は、その都度手続きが必要です。

休職理由が傷病休職の場合、全国健康保険協会や健康保険組合などに加入していれば、傷病手当金を受給できるため、申請手続きが発生します。

休職中に無給となった場合は給与から保険料や税金を控除できないため、徴収方法を協議する必要があります。併せて、住民税の「特別徴収に係る給与所得者異動届出書」の提出も必要です。

また、勤務する営業所が変わるなどの異動が発生した場合は、社会保険・雇用保険の手続きが必要になります。

参考:傷病手当金について|厚生労働省

参考:給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書|江戸川区役所

参考:21701-21900 第 11 被保険者に関する諸届出|厚生労働省

参考:賃金に関する基本問題~最新の法改正や新型コロナウイルス感染症への対応を交えて~|厚生労働省

従業員の被扶養者に関する手続き

健康保険の被保険者である従業員に被扶養者がいる場合や、被扶養者の追加や変更が発生した際は、「被扶養者(異動)届」を日本年金機構に提出する手続きが必要です。被扶養者の認定を受けたり、条件を外れ削除したりする場合に異動の手続きを行います。

被扶養者に指名変更があった場合も異動手続きが必要なため、手続き漏れに注意が必要です。

参考:従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き|日本年金機構

各種助成金の申請

事業主は、雇用調整助成金や働き方改革推進支援助成金など、雇用に関係するさまざまな助成金を厚生労働省より受けられます。雇用関係の助成金は、多数あるため該当する事実が発生した際に申請する必要があります。

受給対象になるかどうかは、人材の雇用に関する所定の条件を満たせば受給できますが、制度を知らない場合は申請漏れが発生しやすいです。そのため、申請時は入念に調査し、制度に関する知識の習得に努めましょう。

参考:雇用調整助成金|厚生労働省

参考:働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)|厚生労働省

給与額の変更

従業員の給与が大幅に変更があった場合、社会保険や労働保険も変更の手続きが必要です。社会保険料や厚生年金保険料は、毎年被保険者が4~6月に受けた報酬(給与)の3ヶ月分の平均から、その年度の標準報酬月額の等級が決定します。

年度途中で大幅に給与額に変更があった場合、社会保険料の水準が合わない状況になるため、月額変更届を提出します。変更届が必要なケースは、連続する3ヵ月間の平均月額報酬が、現在の標準報酬月額よりも2等級以上の変動がある場合です。

最初に給与に変動があった月から起算し、4か月目から改定されるため、すみやかに管轄の年金事務所に届け出を行いましょう。

参考:随時改定(月額変更届)|日本年金機構

業務災害・通勤災害に関する手続き

業務中や通勤中に従業員が事故や怪我をした場合、労務災害に該当します。労務災害には、業務中に仕事が原因で起きた災害である業務災害と、通勤中に起きた災害である通勤災害があります。

業務災害が発生した際の手続きは、従業員が受診した病院が、労災指定病院である場合、「療養補償給付たる給付請求書(様式第5号)」を作成し、請求書を提出します。

労災の指定病院でない場合は、「療養補償給付たる費用請求書(様式第7号)」を作成し、病院で証明を受け、治療費の領収書を添付のうえ、管轄の労働基準監督署へ提出します。

公共交通機関での通勤災害の場合、「療養給付たる療養の給付請求書(様式第16号)」を提出し、マイカー通勤の場合は労災で処理するか、自動車保険で処理するかを選択し、担当者と連絡を取り手続きを行います。

参考:労災保険給付の概要|厚生労働省

賞与の支給

従業員に賞与を支給した場合は、「被保険者賞与支払届」などを管轄の年金事務所へ届け出を行う必要があります。届け出は、賞与支給後5日以内に行い、提出しない場合支払日の2ヵ月後に年金事務所から、賞与支払い届督促状が届きます。

賞与は所得税と社会保険料を控除して支給されますが、住民税はかかりません。毎月の給与計算のように住民税を控除に含める必要はないため、手続き時は注意しましょう。

参考:従業員に賞与を支給したときの手続き|日本年金機構

36協定の締結

従業員に法定労働時間を超えた時間外労働や休日出勤をさせる必要がある場合、労働者と従業員の間で36協定を締結し、管轄の労働基準監督署に届け出を行います。36協定届は、設定した起算日までに提出をします。

期限が過ぎた場合は再度36協定の締結し、届け出る必要があります。提出を行わずに法定労働時間を超えた時間外労働や休日出勤をさせた場合、労働基準法違反で罰則の対象となります。

参考:~ 36協定の締結・届出のポイント ~|厚生労働省

労務管理の効率化には労務管理システムを

労務管理は、毎月・毎年・その都度など、さまざまなタイミングで手続きが発生します。効率よく、漏れなく業務を行うには、労務管理システムの導入がおすすめです。具体的にどのように効率化が望めるのか以下で解説します。

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労務管理システムとは

労務管理システムとは、労務関係の業務の効率化を実現させるためのシステムです。従業員の社会保険手続きや、福利厚生や労働時間の管理などの業務を効率化させます。

申請書類の作成や申請業務をシステム内で行えるため、業務負担を軽減することが可能です。また、従業員の情報管理を一元化できるため、システム上で必要な情報を管理できます。

労働基準法に沿った労務管理の実現

労働管理システムは、労働基準法に沿った労務管理ができる仕組みが備わっているため、知識が少ない状態でも、システムがある程度サポートしてくれます。働き方の多様化している中でも、適切な勤怠管理や給与支払いなどの労務管理が可能です。

参考:労働基準法などからみた労務管理における注意点|厚生労働省

紙による手続の時間ロスを削減する

労務管理は申請書など、紙ベースでの書類作成・申請手続きなどが主な業務になります。紙の手続きの場合は記入の転記ミスなどが起きやすく、書き直しがあったり、郵送で送ったりすると時間ロスが発生します。

しかし、労務管理システムを導入することにより、書類作成の業務負担が大きく改善されます。また、作成した書類は、役所などへ電子申請も可能になり提出の手間も軽減されるため、時間ロスも軽減できます。

まとめ

労務管理の手続きは、給与計算や年末調整、従業員の入社退社の手続きなどがあり、労働基準法の規定に沿って適切に行う必要があります。また、毎月・毎年・必要に応じて発生する手続きがあり、手続きのスケジュールを管理しなければなりません。

労務管理は紙の書類による手続きが多い業務ですが、転記ミスや書類の書き直し、郵送など、紙ベースでは時間ロスや手間がかかり、業務負担が大きいです。労務管理システムを導入すれば、システム内で一元管理し、書類作成・電子申請も可能です。

労務管理システムを導入し、労務管理の業務負担を効率化し、労働基準法に沿った適切な労務管理の手続きを行いましょう。

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