工程管理システムとは?機能やメリット・デメリット、選び方を解説

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  • 工程管理システムとは、納期に間に合うように進捗状況などを管理できるシステムである
  • 工程管理システムの導入で、作業の効率化や人為的ミス軽減に期待できる
  • 工程管理システム導入の際は、生産方式や生産スケジューラーに対応しているか確認する

工程管理システムとは、納期に間に合うように在庫や進捗状況などを適切に管理するシステムです。進捗状況を見える化でき、製造業やシステム開発などの分野で役に立ちます。本記事では、工程管理システムの機能やメリット・デメリット、自作できるかなどを解説しています。

目次

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  1. 工程管理システムとは
  2. 工程管理システムの機能
  3. 工程管理システムのメリット
  4. 工程管理システムのデメリット
  5. 工程管理システムの選び方
  6. 工程管理システムは自作できる?
  7. まとめ

工程管理システムとは

工程管理とは、工場で製品を製造する際に決められた納期に間に合うよう計画を立て、作業人員の配置や在庫・資材の管理、生産の進捗状況などを管理していくことです。工程管理システムは、この工程管理業務を適切にかつ効率的に管理できるようにしたシステムです。

工程管理システムは、タスクや生産スケジューラー、コスト計算の機能のほか、ガントチャートなどのグラフの作成に便利なフォーマットがあり、製造工程を「見える化」して従業員に共有できるのがメリットです。

業務を「見える化」することで業務上の無駄を発見しやすくなり、より効率的な生産が可能です。また、スケジュールが明確になることで顧客への対応もしやすくなり、顧客満足度が上がります。

製造業における工程管理の目的

製造業では、「高品質の製品を納期に遅れずに納品すること」と「作業効率を上げ製造コストを減らすこと」が重要です。これらを実現するために製品の品質や数量・製造期間などを適切に管理し、生産が滞ることがないようにするのが目的です。

生産を効率化してQuality(品質)・Cost(費用)・Delivery(納期)のいわゆる「QCD」を最適化することが、顧客満足度の向上に繋がります。

PDCAに基づいた工程管理の手順

工程管理に求められるのが「PDCAサイクル」の考え方です。PDCAとはPlan・Do・Check・Actionの略で、品質や業務改善を目的とする、下記の4つのプロセスのことです。このPDCAサイクルの繰り返しを徹底することで、生産性と品質の向上が可能となります。

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Plan(計画)|生産計画を立てる

目的とする製品を完成するまでに必要な、時間・コスト・人員・設備・品質に関して「いつ」「誰が」「どこで」「なにを」「なぜ」「どのように」「いくら」(5W2H)で進行するかを設定し、生産計画を立案します。

計画は数値を使って、具体的な目標を立てるのが効果的です。生産計画を適切に立案することで、工程管理も効率的に行えます。

Do(実行)|計画を実施する

立案した生産計画に従って、作業を実行します。「実行」といってもただ作業をするのではなく、計画を実行して効果があるのか、ほかの方法はないのかなどを考える段階でもあります。

どの程度計画が達成しているか、結果が分かるよう測定・記録を取るのが重要です。また、問題が発生して計画が上手く進まない場合も、次の改善に役立てるよう必ずメモをしておきましょう。

Check(確認)|計画を振り返り評価する

生産を行った結果に対して、計画通りに生産が進んでいるか、目標が達成しているかを評価します。収集した測定データなどを元に、計画からの遅延や製品の品質問題が発生していないか確認します。

問題点があった場合も成功した場合も、どちらともその理由や原因を分析し次の行動に生かせるようにしましょう。

Action(改善)|問題点を抽出し改善する

評価で明らかになった問題を解決する改善案を考え、それを実行します。実行したあとに最初のデータと比較して、どれだけ改善されているかを検証します。改善していれば、最初の立案にこだわらず改善した結果を次の計画に取り入れるのがポイントです。

PDCAはこのActionで終わりではありません。再び生産計画を立てて次のPlanの段階に移り、PDCAサイクルを継続して業務の品質を高めていきます。

Excelによる工程管理の課題

Excelで工程管理する方法は、専用のツールやシステムが不要なため、コストも安いのがメリットです。また、テンプレートを作れるので、紙やホワイトボードのようなアナログ管理より効率的です。

ただし、Excelの場合は同時編集や共有ができないため、リアルタイムで進捗状況を従業員と共有することはできません。また、自動化もしにくく、プロジェクトの規模が大きくなるにつれ関係する人員や設備などが増えると、データの収集や管理が困難になっていきます。

比較的新しいExcelには自動保存機能がありますが、機能がオフになっていると保存し忘れでデータが更新されないこともあります。また、誤入力を防ぐ機能がないため、誤入力により数値が狂い、工程管理が台無しになるといった人為的なミスも起こりがちです。

工程管理と生産管理の違い

工程管理と生産管理は、どちらも製造業において生産活動をコントロールするのが目的です。しかし、この2つは管理する範囲が異なっています。

工程管理は、生産計画に基づいて製造設備の確認・人員の配置・資材調達などを工程ごとに細かく管理するのが目的であり、納期を守ることに重点を置いています。

一方、生産管理は製品の企画から生産計画の立案・品質管理、人員の配置、在庫確認や出荷の手配なども含んでおり、製品の企画から受注・製造・出荷に至るまで生産工程に関わるすべての領域をカバーしています。そのため、工程管理は生産管理の一部分と言えます。

工程管理システムの種類

工程管理システムには、サービスの提供の仕方によってオンプレミス型とクラウド型の2つのタイプがあります。導入する組織の規模や予算、業務の形態などによって向いているタイプが違うため、よく考えて選びましょう。

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機能特徴
クラウド型サービス提供側がサーバを持ち、サービスを提供サーバ導入が不要なため、システムを早めに使用できるメンテナンスコストが不要
オンプレミス型自社サーバに直接ソフトウェアをインストールして使用カスタマイズ性に優れる他システムとの連携がしやすい

クラウド型工程管理システム

クラウド型は、サービス提供者のサーバーを使用するため、自社のサーバーを用意する必要がありません。そのため、導入が早くできメンテナンスや運用のための人員を置くコストが不要なのがメリットです。また、あらゆるデバイスからアクセスできるのも特徴です。

ただし、自社サーバーでない点からセキュリティへの不安がある上、提供会社のサーバートラブルで運用ができなくなる危険性もあります。また、カスタマイズがしにくいため、既存システムと連携ができるか確認が必須です。

メリットデメリット
自社サーバの導入が不要カスタマイズしにくい
メンテナンスのコストがかからない自社サーバでないため、セキュリティの不安がある
システム運用の専門スキルがなくても使える提供会社のサーバトラブルの影響を受ける

オンプレミス型工程管理システム

オンプレミス型は、自社サーバに直接ソフトウェアをインストールしてシステムを使用する方法です。自社サーバ使用でカスタマイズ性や連携性に優れているため、時間が経ち事情が変わっても機能の導入・既存システムとの連携で持続的にシステムを利用できます。

ただし、自社サーバーの導入が必要なため、初期費用が比較的高額なのに加え、導入後のメンテナンスに人員や費用がかかるのが欠点です。そのため、人手不足だったり予算が限られていたりする企業には不向きと言えます。

メリットデメリット
自社サーバーを使用するためカスタマイズ性が高い導入後もメンテナンス費用がかかる
既存システムやオリジナル機能との連携がしやすいシステム運用にスキルが必要

工程管理システムの機能

工程管理システムには主に次のような機能が搭載されています。これらの機能は多くのツールが搭載していますが、そのほか細かい部分で搭載される機能が異なります。事前に必要な機能を確認しておきましょう。

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機能主な内容
進捗管理機能生産計画の進捗状況を管理し、ガントチャートなどグラフの作成や変更を行う
コスト管理機能計画を進める際に発生するコストや利益を見える化できる
生産スケジューラー生産計画に基づき、作業者や設備・所要時間などのリソースを適切に割り当てる

進捗管理機能

進捗管理機能は計画の進捗状況を管理する機能です。システムにアクセスするだけで、どの従業員も計画の進捗状況をリアルタイムで把握でき、ほかの従業員とも共有できます。そのため、状況に合わせた柔軟かつ迅速な対応が可能です。

また、バーチャートやガントチャート・ネットワーク図などのフォーマットも簡単に作成でき、作成や変更を行う管理者の負担も軽減されます。

コスト管理機能

製品の生産では、資材の費用や人件費などといったコストが必ずかかってきます。事業を継続するには、このコストをなるべく減らし利益を上げることが重要なポイントです。

コスト管理機能は、生産計画で発生するコストや利益を可視化する機能です。また、工程管理システムの実績管理機能などを併用することにより、過去に実行された生産計画を参考にコストカットを行うのにも活用できます。

生産スケジューラー

生産スケジューラーは、工程ごとの手順を計画する「生産スケジュール」を管理する機能です。生産スケジュールの管理は従来紙やExcelで行われていましたが、近年受発注の内容が複雑化するにつれ、従来の方法で対応できない生産現場も出てきています。

生産スケジューラーを活用することで、複雑な生産スケジュールの作成や管理がしやすくなります。また、生産スケジュールをデバイスで可視化できるため、管理者以外の従業員との共有や急な予定の変更にも対応可能です。

工程管理システムのメリット

工程管理システムを導入すると、以下のようなメリットがあります。工程管理システムにより業務効率化や生産性向上ができ、顧客満足度を上げるのにも貢献します。

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進捗管理の負担・人為的ミスを削減できる

Excelなどを使う従来の管理方法の場合、一部の従業員が工程管理を請け負うため、担当者に負担が集中してしまいます。しかし、工程管理システムの進捗管理機能を使うと、従業員全員に複数の工程を共有できるため、進捗の管理を各従業員が請け負うことが可能です。

また、従業員すべてが進捗状況を見られることで問題やミスの早期発見がしやすくなり、より効率的な作業が行えるようになります。

進捗状況を見える化できる

工程管理システムの進捗管理機能では、システム1つで共有化できます。社内で進捗状況を見える化でき、誰もが各工程の進捗や必要な人員・資材などを把握可能です。

遅延など問題点を早期発見できて改善策を出せるため、トラブルが発生してもスムーズに対応できます。また、進捗状況を可視化することでスケジュール管理がしやすくなり、顧客からの急な要望があっても柔軟な対応ができます。

作業の効率化・コスト削減できる

スケジュールや進捗状況の管理ができ、スケジュールどおりに計画を進められるのはもちろん、各工程の内容も把握しやすくなります。無駄な作業を発見しやすくなるため、より効率的な作業を行えます。

作業の無駄が減ることで時間を短縮できる上に、少ない人員で同じ作業が対応できるようになるため、納期の短縮や人件費などコスト削減にもつながります

生産スケジューラーでさらなる作業効率・生産性向上に期待できる

生産スケジューラーを使用すると、生産計画に基づいて従業員や設備・時間などを割り当てられます。現在はもちろん、未来のことも可視化されるため、納期遅れの可能性や資材手配の問題などが発生しても適切な判断が下せます。

効率的な生産スケジュールを組めるため、より詳細な生産計画を立てられ、生産性が向上します。また、工程での所要時間が減るため、納期の前倒しにもつながります。

ノウハウの共有ができる

ベテラン社員のノウハウを工程に組み込むことで、他の社員に共有できます。これにより、経験による技術差を小さくでき、社員全体のスキルアップが見込めます。

属人化だけでなくベテラン社員の退職による品質低下も防げるため、ノウハウ共有によるメリットは非常に大きいです。

サプライチェーン管理ができる

工程管理システムは、生産管理や在庫管理・販売管理などの他のシステムと連携することもできます。そのため、資材や在庫の確認、配送状況などサプライチェーンの流れを把握・管理が可能です。

工程管理システムのデメリット

工程管理システムは業務効率化や生産性向上のための多くの機能がある反面、次のようなデメリットもあります。サービスによっても違うので、採用の際にはよく考慮しましょう。

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コストがかかる

工程管理システム導入の欠点として、コストがかかる点が挙げられます。クラウド型の場合、初期費用こそ15万円程度で済みますが、月額料金は5万円程度が相場になっています。

また、オンプレミス型の場合導入後もメンテナンスの費用や運用のための人件費も必要になってきます。予算的に厳しい企業の場合、選択に大きな制約を受けると言えるでしょう。

他システムと連携できない場合がある

生産や販売・在庫管理など別のシステムを使用していた場合、工程管理システムと連携するとより効率化を目指せます。しかし、サービスによっては既存のシステムと連携できないことがあります。

特に既存のシステムが古い場合、連携できない可能性が高いです。この場合、サービス提供会社がほかの管理システムを提供していることが多いため、新しいシステムに交換するのも手段の1つです。

工程管理システムの選び方

工程管理システムといっても、サービスによって機能などが異なっています。業種や企業の規模などによって向いている、または不向きなサービスもあるため、次のことを事前に確認しておきましょう。

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自社の生産方式や業種に合っているか

一言で製造業といっても、従業員数や設備の量・年商などはそれぞれ異なります。また、少ない種類の製品を大量生産する企業もあれば、多種の製品を少量で受注生産している企業もあり、生産形式も多種多様です。

工程管理システムも業種・生産方式など対象が異なっており、特定の業種や生産方式を持つ企業に特化しているサービスもあります。

そのため、自社の状況と違うサービスを選んでしまうと、反対に作業効率を悪くします。サービスがどんな企業を対象にしているのか、よく確認しておきましょう。

生産スケジューラーに対応しているか

次にチェックすべきなのは、生産スケジューラーに対応しているかどうかです。工程管理システムの中には対応していないものもあるため、必ず確認するようにしましょう。特に生産計画の作成や変更が負担になっている場合、生産スケジューラーは必須です。

生産スケジューラーがあると、計画や進捗状況に応じて人員や設備・資材などの割り当てをスケジューラーが行います。急な仕様変更や注文があってもスケジュールを組みやすくなるため、指示がもたつくことなく効率的な作業が行えます。

工程管理以外の機能があるか

製造工程だけでなく企業全体の効率化を狙う場合は、課題に感じている業務を効率的に行える機能を搭載しているシステムを選びましょう。

工程管理システムは進捗・コスト・スケジュールの管理をしてくれますが、システムによっては請求まで一元管理できるものもあります。
搭載機能によってはバックオフィス業務の効率化も図れるため、課題に感じている業務がある場合は、その業務に関する機能が搭載されているか確認しましょう。

他システムと連携できるか

製造業では、サプライチェーンの流れを管理することも重要です。そのため、生産管理や在庫管理といったほかのシステムと連携できるかが大切になってきます。

別のシステムを既に使用している場合、既存システムと連携できるものを選ぶと業務のより効率化が期待できます。ただし、既存システムがあまりに古い場合は連携できない可能性があります。

サービス提供会社がほかのシステムも提供していることが多く、同じ提供会社のものは連携できる場合が多いです。工程管理システムの導入を機に、新しいシステムを導入するのもおすすめです。

カスタマイズできるか

工程管理システムを導入する上で、カスタマイズできるかも重要なポイントです。社内ルールの存在や専門的な業界など、既存の工程管理システムでは不便なことがあります。カスタマイズができるものなら、自社に必要な機能のみを追加して利用しやすくできます。

また、カスタマイズしやすいシステムなら、時間が経って事情が変わった場合でも新しい機能を加えるなど柔軟な対応ができ、持続的な利用が可能です。

無料の工程管理システムを試してみる

工程管理システムのサービスの中には、提供会社からもらった資料ではよく見えても、実際使ってみると操作画面やグラフが見にくい場合や操作が難しすぎるなど、使い勝手が悪く不便に感じることが出てきます。

しかし、それまでにかかった費用や時間、契約問題を考えると、本格的に導入してからすぐに解約するわけにはいきません。提供会社によって無料トライアル期間があるので、トラブルを避けるためにも必ず無料トライアル期間を経てから導入を考えましょう。

また、工程管理システムそのものを使用したことがない場合、工程管理のフリーソフトを使用し、システム自体がどのような使用感なのか体験するのもおすすめです。

工程管理システムは自作できる?

工程管理システムを自作する場合、ExcelまたはAccessを使う方法と、プログラミングで開発する方法があります。しかし、ExcelやAccessは同時編集がしにくい上に保存容量に上限があり、大規模な生産計画などの処理が多いものには向いていません。

大規模なものやExcel・Accessで対応できない機能が欲しい場合は、プログラミングで最初から開発するのがベターです。この場合、希望通りのシステムができますが、そもそもプログラミングの知識がある人材がいないと開発自体できないのが難点です。

いずれも、特定の担当者しか操作できないなど属人化しやすい傾向があります。また、プログラミングの習得、もしくはできる人材の採用なども必要になる可能性があるため、自作をするより工程管理システムの導入がおすすめです。

まとめ

工程管理システムは、生産計画における進捗状況やスケジュール管理・コスト管理などの工程管理業務を効率よく行えるシステムです。これらの機能により進捗状況を「見える化」でき、全従業員が進捗を把握できるため、管理担当者の負担軽減も可能です。

これにより、問題点の早期発見や効率的かつ迅速なリソースの配分が行え、品質向上や納期の短縮に繋がります。また、既存システムと連携することで、より優れた業務改善にも貢献します。

工程管理システムのサービスは提供会社によって対象とする業種や企業規模が異なり、提供方式や搭載機能も異なっています。導入する前に、自社にとって必要な機能や出せる予算・設備などを事前に確認し、最適なサービスを選択しましょう。

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