メドテックとは?具体例や期待が高まる理由をわかりやすく解説
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- メドテックとは、最先端のテクノロジーを医療分野に活用する取り組みのことである
- メドテックにより、病気の早期発見やオーダーメイド医療の発展などが期待されている
- 日本では特に再生医療やロボット工学などの分野でメドテック発展が進んできている
メドテックとは、Medical(医療)とTechnology(技術)を組み合わせた言葉で、最先端のテクノロジーを医療分野に活用する取り組みを指します。この記事では、メドテックの概要と、将来的に期待されていることや活用事例などをわかりやすく解説します。
目次
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メドテックの意味とは
メドテックとは、医療に最新の技術を取り入れ活用することを意味し、医療に大きな変革、進化をもたらすと期待されています。メドテックの名称は、medical(医療)とtechnology(技術)を組み合わせて名付けられました。
現在、医療分野に最新の技術であるIoT・AI・ビッグデータ・5Gなどを活用する取り組みが始まっており、メドテックは高齢化社会、医療格差などの諸問題を解決に導けるのではないかと期待されています。
ヘルステックとの違い
メドテックに似た言葉に、Health(健康)とTechnology(技術)を組み合わせた造語であるヘルステックがありますが、両者は意味が異なります。ヘルステックは、健康維持のためにテクノロジーを活用しようという取り組みを言います。
現在、ヘルステックは、病気の要望や健康管理、診療後のアフターサービスなどに活用されるようになりました。ヘルステックにより、異なる医療機関で共有できる電子カルテが作成できるようになり、処方薬の自動配送も行われています。
日本のメドテックの現状
日本のメドテックは、グローバル市場において技術力で優位に立ち、市場を獲得できると言われています。日本は、新型感染症のワクチン開発・供給を見てもわかるように、医療開発・承認のスピードは速くありません。
しかし、日本の製薬会社は売り上げの7%をメドテック分野の研究費に投じており、メドテック業界への進出に非常に積極的です。日本政府もベンチャー等支援戦略室やジャパンヘルスケアビジネスコンテストなど、医療産業への支援策を打ち出しています。
メドテック企業も増加しており、もともと医療とは関係のない分野で活躍していた企業が参入することもあれば、スタートアップ企業も多数あります。
このようなことから、日本企業の持つ技術力と政府の医療産業への支援策の相乗効果で、日本のメドテックは今後医療界に革新をもたらし、新たな医療技術や医療機器を生み出すであろうと期待されています。
参考:ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト – JHeC 2024|経済産業省
メドテックに期待されていること
医療にテクノロジーを取り入れることで、革新が起こり、メドテックは日本経済の成長にも貢献すると期待されています。ここからは、メドテックが、日本にどのような恩恵をもたらすと期待されているのか解説します。
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メドテックに期待されていること
日本の経済発展への貢献
日本の医療は、技術力の高い医師と品質の良い医療機器・薬に支えられ、医療市場が発展して来ました。また、健康・衛生志向も強く、人口の高齢化から医療人口も増加しており、医療市場は成長分野で伸びしろがあると考えられています。
このような中、メドテックの推進で医療に積極的にテクノロジーが取り入れられると、技術革新が起こり、日本経済の発展に貢献すると期待されています。特に日本は、医療や介護と親和性が高いロボット開発が現在まで盛んにおこなわれてきました。
世界的に見ても発展した医療市場でロボット技術を活用することにより、新たな医療機器や治療方法が生まれ、日本経済を成長させるのではないかと考えられています。
病気の早期発見
メドテックで、病気の早期発見や発症前の予防もできるようになると期待されています。現在では、患者に問診し、血液検査やレントゲン検査で病気を発見し、治療を行う対処療法が一般的です。
しかし、メドテックを活用し、過去の莫大なデータを参照することで病気の早期発見も可能になると言われています。病気を早期に発見できると治療期間も短くなるため、患者の身体への負担を軽減でき、医療費の削減にもつながります。
予防医療と自己管理の向上
メドテックで莫大なデータを参照できることは、病気発症前に行う予防医療にも役立ちます。定期検診などを通じた予防医療は以前から行われていますが、データの精度が高まることで良くない兆候や将来のリスクにより気付きやすくなります。
また、個人でもアプリやウェアラブルデバイスを通して、自身の健康データとその他多くの人の医療データ、AI等の技術を活用して、自己管理ができるようになります。このことは、病気のリスクに気付きやすくなるだけでなく、人々の健康意識向上にも繋がります。
日本は高齢化によって医療人口が増加していますが、こうした取り組みが進むことで病気になる人の割合自体を減少させられると期待されています。
社会全体の健康維持を促進
病気の早期発見や自己管理は個人単位での健康管理・治療に関する話ですが、メドテックは感染症など大規模に健康を害す恐れのある事態の予防にも大きな役割を果たすと考えられています。
メドテックの強みの1つは莫大なデータの蓄積と分析・活用です。たとえば、感染症の流行パターンや有効な予防策を打ち出すうえでデータは非常に有効です。
こうした公衆衛生の観点からのメドテックの活用は、日本のみならず世界中のさまざまな国・地域で活躍すると予想できます。
オーダーメイド医療への転換
メドテックを推進することで、オーダーメイドの医療へと転換できるとも言われています。近年の医療は、一般的にガイドラインやエビデンスに基づき治療を行って来ました。しかし、現在はデータベースを構築し、AIで情報処理ができるようになっています。
現在、データベースを活用した遺伝子配列の解析は、一般の方でも利用できます。メドテックを活用し、患者の遺伝子配列を解析することで、医師は個人の体質や生活習慣、遺伝的要因などに合わせた医療を提供できると言われています。
医療現場の人手不足解消
メドテックで医療にテクノロジーを取り入れると、医療分野の人手不足も解消できると言われています。日本は人口の高齢化が進んでいますが、高齢者医療に対するニーズには応えきれておらず、特に看護師と介護士は深刻な人手不足です。
都市部よりも地方ではさらに人手不足で、医療地域格差も問題になっています。しかし、メドテックが推進され、ロボット技術を用いた身体動作補助ロボットや介護デバイス、ICTの導入、技術の発展がさらに進むと状況は一変するかもしれません。
看護・介護支援ロボットの開発が進み、ICTの導入で遠隔医療が進むと、少ない人数の看護師や介護士でも対応できるようになる可能性が高く、医療の人手不足を解消できると考えられています。
新薬の開発
メドテックは、新薬開発に貢献するものとしても注目されています。メドテックを活用すると、これまでの莫大な診察データや人体データ、IoTを用いて新たに入手する詳細な人体データなどでデータベースが構築可能です。
この過去の莫大な医療データベースは、疾患に有効な成分を発見する際に役立ち、データベースをもとに機械学習を行うと、新薬開発期間も短縮できると言われています。
メドテックの活用事例
メドテックは医療現場において、さまざまな分野に活用されています。ここからは、医療従事者向け・介護現場向け・消費者向け、それぞれにメドテックが活用されている事例を具体的に紹介します。
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医療従事者向け
医療従事者向けメドテックで代表的な活用例は、ビデオ通話を通じて遠隔地の患者を診察できる遠隔治療プラットフォームです。医師は、電子カルテやレセプトなどを分析・解析できるデータ分析、画像診断を支援するAI支援などのメドテックも活用しています。
このほか、医療従事者向けメドテックは、欠損した部位を再生させる再生治療と再生医療に必要な組織や細胞などの提供、医師同士が意見交換できる医師ネットワークなどにも利用されています。
活用例 | 内容 |
---|---|
遠隔診療プラットフォーム | ビデオ通話、服薬指導アプリなどのオンライン診断アプリ |
データ分析、AI支援 | 電子カルテやレセプトなどのデータ分析、AI画像診断 |
再生医療 | 細胞や組織の提供 |
医師ネットワーク | 医師の情報交換システム |
介護現場向け
介護現場向けメドテックは、要介護者の移乗や移動補助、また、排せつや入浴などを支援する介護ロボットの導入が始まっています。このほか、自宅や介護施設などにセンサーを設置し、要介護者を見守るシステムの導入も進んでいます。
活用例 | 内容 |
---|---|
介護デバイス | 移乗・移動や排泄・入浴を支援する介護ロボット |
見守りサービス | 要介護者をセンサーで見守る |
消費者向け
消費者向けメドテックには、チャットで医師に病院を受診した方が良いのかどうか相談ができるオンライン相談、オンラインでの問診とカルテの連携ができるWeb問診があります。
また、個人でも遺伝子検査サービスを利用できるようになりました。遺伝子情報の検査を行い、遺伝的な傾向を把握し、病気に対するリスクに備えられます。さらに、手首や頭などの部位に装着し、生体情報を記録するウェアラブルデバイスも導入されています。
加えて、医師によって処方され、スマートフォンなどにインストールし、患者が利用する医療用のアプリの開発にも積極的です。このようなアプリには、高血圧症やニコチン依存症の治療アプリ、認知行動療法用のメンタルヘルスアプリなどの種類があります。
活用例 | 内容 |
---|---|
オンライン医療相談、Web問診 | オンラインで病院を受診すべきか相談、オンラインで行った問診とカルテの連携 |
遺伝子検査サービス | 遺伝的傾向を把握し、病気に対するリスクを管理 |
ウェアラブルデバイス | 生体情報や睡眠時間などを記録 |
治療用アプリ | 高血圧症、ニコチン依存症治療用アプリなど |
メンタルヘルス(精神科の治療) | 認知行動療法用アプリなど |
日本で開発が進んでいるメドテックの分野
現在日本のメドテックは、世界的に見ても期待の大きい分野であると述べましたが、具体的にどのような医療にテクノロジーを取り入れた開発が進んでいるのでしょうか。ここからは、日本で開発が進んでいるメドテックの分野について解説します。
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再生医療
再生医療は、日本で開発の進んでいるメドテックです。再生医療は、身体にある幹細胞を取り出して増殖させ、怪我や病気になっている部位に注入し、機能を回復させる治療方法を言います。
2006年には京都大学の山中伸弥教授をはじめとする研究者達が、iPS細胞の作製に世界で初めて成功しています。iPS細胞は、あらゆる生体組織に成長可能な細胞で、ニュースでも大きく取り上げられました。
このiPS細胞を利用して病気や怪我で傷ついた皮膚や臓器を新たに生成し、それを移植して病気や怪我の治療を行う、という方法が普及するのではと期待されています。
参考:iPS細胞とは?|京都大学iPS細胞研究所 CiRA(サイラ)
iPSC工学
iPSC工学もメドテックで開発が進んでいる分野です。上述のようにiPS細胞はあらゆる生体組織に成長可能で、さらに増殖能力も持つ細胞です。iPSC工学で、このiPS細胞をある機能を持った細胞に変化させる研究が進んでいます。
iPSC工学の研究が進むと、iPS細胞をある機能の持った細胞に変化させ増殖し、怪我や病気で機能を失った細胞と入れ替え、機能を回復させることができるようになると言われています。
ロボット工学
日本では、ロボット工学を医療に取り入れようとする試みが活発です。ロボット工学とは、ロボットの動きに関する機構学や制御工学、ロボットのセンサーに関わる計測工学、ロボット機能や駆動に関わる電気・電子工学などを総称してロボット工学と呼んでいます。
内視鏡手術ロボットや縫合ロボットなどの手術支援ロボットの開発、看護師や介護士のための動作補助ロボットやパワードスーツ、高齢者に向けたコミュニケーションロボットなど、医療にロボット技術を取り入れ革新をもたらそうとする試みがさかんに行われています。
メドテックが抱える課題
日本の経済発展や健康増進、医療業界における人手不足の解消など、多くの期待が寄せられるメドテックですが、同時にいくつかの課題を抱えています。ここでは、メドテックが抱える課題について解説します。
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メドテックが抱える課題
研究・開発に高額なコストがかかる
メドテックで医薬品・医療機器の研究・開発を行うためには膨大なコストがかかり、その費用は数千億円にのぼることもあります。市場に投入されるまでには、繰り返し試験を行う必要があり、製造にも多くのコストがかかるためです。
このような高額な費用を捻出できる企業は限られており、高額な費用負担は新規参入の妨げとなるばかりか、既に参入している企業の技術革新に遅れを招き、メドテックの発展の障壁となります。
医薬品・医療機器の承認スピードが遅い
日本の医薬品・医療機器の承認プロセスは他国に比べて長期的かつ複雑であり、承認スピードの遅れが課題となっています。他国と比較した承認スピードの遅れは、国際競争力の遅れを招くため、重要な課題です。
開発した医薬品・医療機器が市場に投入されるまでに時間がかかるため、新しい技術の素早い導入が難しく、医療現場の改善を妨げている状況が生じています。
高度なセキュリティ対策が必要
メドテックで医薬品・医療機器の研究・開発を行うためには、ビッグデータの活用が不可欠です。ビッグデータとは、手作業で把握することが難しいほど巨大なデータのことであり、AI技術により分析・活用します。
メドテック分野におけるビッグデータには、個々の患者のプライバシーに関わるセンシティブな情報が多く含まれるため、気密性や完全性を保つための高度なセキュリティ対策が欠かせません。
十分なセキュリティ対策を行うことは、一人ひとりの患者との信頼関係を築いてより多くの情報を収集し、コンプライアンスを遵守するために重要です。
今後メドテックへの応用・発展が期待されている技術
今後、メドテックにどのような技術を取り入れ、医療に変革・進化をもたらそうと開発が進められて行くのでしょうか。ここからは、メドテックへの応用・発展が期待されている最新のテクノロジーを紹介します。
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AI
人の知性や知覚を人工的に再現する人工知能・AIは、医療への応用を期待されている技術です。AIは、微細な画像の変化に対する認識や精緻な機械学習が可能なため、画像診断や病理組織の発見の際に活用されるようになりました。
過去の莫大な医療データから精緻な機械学習を行えるため、難病治療や新薬の開発に応用することで、新たな知見を得られ、医療の革新・発展に貢献すると言われています。AIを活用した診断支援システムやAIドクターの導入も検討されています。
海外では医療へのAI導入は進んでおり、アメリカと中国においては、AIドクターは国家機関に認可されました。病院の窓口業務や調剤といった場面にも、AIは活用できるのではないかと考えられています。
IoT
IoTもメドテックへの応用が期待されている技術です。IoTは、今までネットワークに接続していなかった電子機器をインターネットに接続し、さまざまな情報の収集を行い、情報を共有することを言います。
IoTの医療現場への導入で、血圧計やレントゲン装置、介護カメラなどをインターネットに接続できます。病院にある電子機器をネットワークに接続すると、医師は患者のデータをリアルタイムで確認できるため、診断や治療の質を向上させることができるでしょう。
患者はIoTで得た情報をアプリと連動させると、医師との情報共有が容易になり、自身の健康管理にも役立てられます。IoTは、特にオンライン診療の発展に寄与すると期待されています。
また、ビデオ通話機能がある電子機器があれば、ネットワークを介して医師と患者は密にコミュニケーションを取れます。ビデオ通話で、医師は病院にいながらも、遠隔地の患者に対して診察を行えます。
ブロックチェーン
暗号通貨では複数の端末同士を直接繋ぎ、暗号技術を使って、情報をブロック単位で分散的に保存・管理するブロックチェーンの技術を使用し、通貨を保管しています。このブロックチェーン技術も、メドテックへ応用できると言われています。
ブロックチェーンは、保存された情報の改ざんが難しく、データの保存に優れている技術です。ブロックチェーンでデータを保存するときには、新しいブロックに情報を格納する場合、その一つ前のブロックにある内容を表わす不規則なハッシュ値を付けます。
あるブロックのデータを改ざんすると、ハッシュ値も変更されるため、新たにブロックの内容を書き換えるためには、ハッシュ値の再計算が必要です。さらに、次のブロックから現在のブロックまでのハッシュ値をすべて計算し直さなければなりません。
個人の健康に関する情報は、公表されると社会的に不利な状況に陥ることや偏見を持たれることもある重要な個人情報です。個人の健康に関する情報は、第三者の手に渡ると悪用も危惧されます。
しかし、メドテックで医療分野において、改ざんが非常に難しく情報の秘匿性の高いブロックチェーン技術が活用されるようになると、大切な個人の健康に関する情報を保護できるであろうと期待されています。
5G
高速大容量で低遅延という特徴を持つ新世代の移動通信規格である5Gも、メドテックの発展に寄与すると言われている技術です。5Gの高速で低遅延な特性は、遠隔知とも安定した通信を可能にし、大容量な特性は4Kや8K動画の視聴をスムーズにします。
この5Gの特性は、離島や地方における遠隔医療に大いに活用できるでしょう。医師は、遠隔地にいる患者の怪我や患部の様子を高精細な4K画像で確認でき、よりきめ細やかな診断を行えるようになります。
まとめ
メドテックは、医療に最新の技術(Technology)取り入れ活用しようとする試みのことです。メドテックは日本の経済発展に貢献すると言われており、病気の早期発見、オーダーメイド医療への転換、医療現場の人手不足解消などに寄与すると期待されています。
医療従事者向けメドテックでは、ビデオ通話を使ったオンライン診断や疾患のデータ解析、AIの診断支援などが活用されています。介護現場では、メドテックで介護ロボットや要介護者の見守りセンサーなどの導入が可能になりました。
消費者もメドテックで、オンライン医療相談が可能になり、治療アプリ、ウェアラブルデバイスを利用できます。日本においてもメドテックの開発は積極的に行われており、さらに医療に革新と発展をもたらすと期待されます。