LBOとは|意味や仕組み・メリットについてわかりやすく解説

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  • LBOは、買収の負債をM&Aの対象会社自身に負担させるというものである
  • LBOは少ない資本で企業買収ができ、返済リスクが少ないといったメリットがある
  • LBOを成功させるためには、シナジー効果が見込める企業を買収する必要がある

LBO(レバレッジド・バイアウト)では、少ない資金で大きな資本を持った企業を買収でき、法人税の節税にもなるといったメリットがあります。本記事では、LBOの仕組みやメリット・デメリット・実行するスキームの他、LBOを成功させるポイントについても解説します。

目次

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  1. LBOとは
  2. LBOの仕組み
  3. LBOを実行するスキーム
  4. LBOのメリット
  5. LBOのデメリット
  6. LBOを成功させるポイント
  7. まとめ

LBOとは

LBO(Leveraged Buyout)とは、譲渡企業が保有する資産や今後見込まれるキャッシュフローを担保として、譲受企業が金融機関などから調達した資金を使用して買収する方法です。

特徴としては、融資の担保として譲渡企業の資産やキャッシュフローを提供する点です。そのため、譲受企業側が借金を返済するのではなく、譲渡企業の保有する資産や、今後見込まれる収益を返済のための資金とします。

LBOは少額の自己資金で企業の買収に必要な資金を確保する目的で実施されます。借入金の返済については譲渡企業が代行するため、少額の自己資金でも買収ができる仕組みです。

PEファンドとは

PE(プライベートエクイティ)ファンドとは、非上場企業への投資を通じて成長や改善を促し、一定期間後に利益を得る投資ファンドです。投資先企業に対して改善や成長支援を行い、価値を高めてから売却することで利益を得ることが目的とされます。

PEファンドは、機関投資家からの資金を受け取ることが一般的であり、そのため金融機関と比較して資金を充実させることができる点が特徴です。これにより、PEファンドは大規模な投資や企業買収を行う際に、十分な資金を活用することができます。

LBOはPEファンドがよく利用する手法の一つで、PEファンドが企業を買収する際にLBOを利用することがあります。

MBOとの違い

MBO(Management Buy-Out)は、経営陣が自社株や一部の事業部門を買収して独立することを指します。MBOの目的は、経営権の移行による経営の円滑化です。例えば、上場企業がよりスピード感のある経営を行うためにMBOを実施する場合があります。

LBOが外部の譲渡企業の株式を100%買い取り、完全子会社にするのに対し、MBOでは経営陣が自社株を取得するために行います。買収側が自社内であればMBO、他社など第三者の買収であればLBOと認識しておけば分かりやすいでしょう。

EBOとの違い

EBO( Employee Buy Out)は、日本語で「従業員買収」と訳されます。簡単に言えば、従業員が自社株や事業を取得して経営権を得ることを指します。中小企業の事業承継などにおいて、従来からたびたび応用されてきた手法です。

EBOとLBOとの違いは、EBOは従業員が自社株や事業を買収するための手法、LBOは他社など第三者が買収する手法である、という点です。 また、EBOは経営の効率化を目的としていますが、LBOは資本効率の向上を目的としています。

LBOの仕組み

LBOは、金融機関などからの借入金を使用して、M&A(企業買収)を行う手法です。例えば、資本金1億円の企業を買収するときに、自己資金が3,000万円しかない場合、不足分の7,000円を借金で補って自社より大きい企業の買収ができます。

LBOの最大の特徴は、借金の担保に譲渡企業の資産・キャッシュフローを提供する点です。譲受企業側が借金を自社で返済するのではなく、今後買収する譲渡企業が保有する資産や今後の収益を返済資金に充当します。

LBOでは、借入金の返済はM&Aが成功したあとに譲渡企業が代行していく、といった形態になります。

LBOに関係する会社や組織

LBOに関係する会社や組織には、対象企業(譲渡企業・譲受企業)、投資銀行などの金融機関、SPC(特別目的会社)、PEファンド、コンサルティング会社や法律事務所といったアドバイザーなどがあります。

投資銀行や法律事務所、コンサルティング会社などのアドバイザーは、専門知識や経験を持ち、取引全体をサポートし、各関係者間のコミュニケーションを円滑に進める役割を果たします。

PEファンドやSPCは取引の中心となり、戦略の立案や資金調達、買収後の経営改善などを行います。異なる会社や組織が関わるため、情報共有やコミュニケーション、財務リスク管理、透明性、時間調整などを含む、円滑な連携と効果的な協力が求められます。

LBOを実行するスキーム

LBOファイナンスは、SPC(特別目的会社)といった資金調達のための会社を利用するのが特徴であるため、これを理解すればスキームの仕組みが分かりやすくなります。

LBOファイナンスにおける買収資金の借入れ手続きは、以下の通りです。SPCが何を行うかに注視することが、LBOファイナンスを理解するためのポイントです。

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SPCを設立する

SPC (Special Purpose Company)とは、日本語で特別目的会社と略されます。事業活動は行わず、特定の目的を達成するために設立するペーパー会社を指します。M&Aにおいては、調達した資金の受け皿としての役割が目的です。

SPC設立の際は、譲受企業側が出資します。また、SPCを会社法に基づいて設立する場合は、100円程度の少額で設立が可能です。SPCは会社形態としての規定はありませんが、後の譲渡企業と合併するため、株式会社として設立するのが通例です。

資金を調達する

SPC設立後に行うことは、譲渡企業の買収に必要な資金調達です。譲渡企業の資産や株式を担保に、SPCが金融機関から資金の借入れを行います。金融機関は、万が一のときに多額の損失を受ける恐れがあるため、譲渡企業に対する慎重な調査を実施します。

審査の際には、金利も含めて返済見込みがあるか否かが判定されます。LBOにおける、SPCの資金調達法は「LBOファイナンス」と言われます。また、多くのケースでローンの形態を選択するため、「LBOローン」といった呼び名もあります。

LBOファイナンスは、融資のリスクが高いと判断されることが多く、貸出金利が高めに設定されやすいのが特徴です。

対象企業を買収する

買収に必要な金額の資金が調達できたら、SPCは譲渡企業が保有する株式の100%取得を目指してM&Aを実行します。この理由は、買収後の会社経営を自由かつ円滑にするためです。

株式の売却を拒否する株主が存在する場合には、大株主が半強制的に株式を買い取る「スクイーズアウト」を行うケースもあります。譲渡企業の買収完了後は、SPCが親会社、譲渡企業が子会社の関係に位置づけられます。

買収を終えた時点では、金融機関からの借財と譲渡企業の株式を保有している会社はSPCになります。

SPCと対象企業を合併する

譲渡企業の株式取得後は、一般的にSPCと譲渡企業の合併が多くなります。その理由は、買収が完了した時点ではSPCの側にLBOローンなどの債務があり、譲渡企業のキャッシュフローを返済資金としたいためです。

ただし、譲渡企業の許認可などとの関係上、支障がある場合は合併を回避するケースもあります。合併が行われない場合、譲渡企業からの配当や経営指導料などがSPCの返済資金となります。

借入を返済する

事実上買収された譲渡企業が、融資先へ借入金返済を行います。返済する際に、LBOローンの利用に伴う多数の規制条項に違反しないよう、社内管理体制の整備が必要です。

また、LBOローンの返済や金利負担は実際に軽微なものではないため、企業経営にとって資金繰りの管理が今まで以上に重要なポイントとなります。LBOローンの返済がスムーズに実行されると、バイアウトをすることによって大きなリターンの確保が可能です。

LBOのメリット

LBOを実施するメリットは、譲渡企業の資産やキャッシュフローを担保に金融機関から借り入れて資金調達ができることから、少資金でハイリターンが期待できる点です。

買収に伴う利息の返済は損金に計上できるため、節税の効果にも期待が持てます。ここでは、LBOの実施によって得られる4つのメリットについて、詳しく解説します。

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少ない資本で買収ができる

LBOは、譲渡企業の資金やキャッシュフローを担保として、金融機関などから買収資金の借入ができる手法で、譲受企業側は実際よりも少ない自己資金で買収が可能となるメリットがあります。これにより、譲渡企業の企業価値が向上したときに高い利益率が得られます。

例えば、10億円の企業価値がある企業を自己資金10億円で買収し、譲渡企業の企業価値が12億円に向上すると、譲受企業側は20%の利益率を確保できます。一方、LBOによって10億円の企業を2億円で買収し、12億円に企業価値が向上した場合、利益率は100%です。

自社より大きい企業を買収できる

LBOは、譲渡企業のキャッシュフローや資金を担保にして資金を借り入れ、その資金を元に買収ができるシステムです。譲渡企業側が借入金の返済を代行し、その企業が持つ将来性や収益性の向上に期待します。

そのため、譲受企業側の自己資金が少なくても、自社より大きな企業買収をするといった大規模なM&Aが可能です。買収後に経営改善が順調に進めば、得られる利益も大きいため、ローリスクでハイリターンな手法とも言えます。

しかし、譲渡企業が借金の返済が不能になり倒産した場合は、譲受企業の信用に大きく関わるといったリスクもあります。

調達資金の返済リスクが少ない

LBOを行う際に、譲受企業は譲渡企業の買収を実行するためにSPCを設立します。上述の通り、買収のための資金調達はSPCが代行するため、そこに出資する譲受企業は調達資金の返済義務の負担は発生しません

言い換えれば、銀行などの金融機関からの融資は譲受企業としては受け合わないノンリコースローン(非遡及型融資)のため、譲受企業のリスクは出資金のみと限定された状態で買収が行えます。

これにより、ファイナンス契約における制約が限定できるため、レバレッジ効果により投資効率の向上が可能です。

法人税の節税につながる

SPCが金融機関から融資を受けた後、譲渡企業と合併すると、返済を含む金利が発生します。しかし、規定の条件を満たしていれば、この金利を経費として計上できます。これにより、法人税の節税につながります

LBOといった形態のM&Aは、譲渡企業にとってもメリットが生まれる可能性があります。企業価値に対する高い評価がされることで、株価が上昇し、譲渡企業は高い買収価格を得られるかもしれません。

LBOのデメリット

LBOにおいて、譲受企業側に生じるいくつかのデメリットがあります。リスクを事前に知っておけば、LBOによる買収完了後に起こりうる問題にも対処が可能です。ここでは、譲受企業が知っておきたい4つのデメリットを解説します。

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買収資金の返済が必要になる

LBOで買収される企業は、もともと優良企業だったにもかかわらず、LBOによって多額の債務を保有する状況になります。これにより、買収資金の返済が必要になります。

譲受企業側が、何の不手際もない企業に多額の債務を負わせることに対して、罪悪感やプレッシャーなどを抱く経営者もいるかもしれません。

その一方で、投資ファンドのように事務的に目的遂行を目指しているケースもあるため、LBOの捉え方は譲受企業側の当事者によって大きく異なると言えます。

資金繰りが悪化するリスクがある

LBOローンにおいては、投資効率を高める目的として、自己資金に加え、外部の金融機関から資金調達を行います。LBOローンは、一般的なコーポレートローンより、借入れ負債の比率が高くなることが多く、貸付側にとってリスクが大きいと言えます。

そのためLBOローンの金利は高めで、企業にとっては、その高額の利息支払いによって資金繰りが悪化するリスクがあります。

プレッシャーが生まれる

LBOによる買収が成立すると、譲渡企業はグループ傘下に入り子会社化されます。子会社の返済義務に関して、親会社が無関係ではないため、子会社を正しく誘導して返済に尽力する必要があります。

また、経営利益を生み出さなくてはならないといったプレッシャーもあります。今後の収益力を担保にして融資を受けているため、期待される収益を実現させなければ借入金の返済はできません。

買収の時点で想定されていたシナジー効果が発揮できないなど、何かしらの失敗要因で下方修正されると、一転して膨大な債務を抱える可能性もあります。

短期間で転売されることがある

スポンサーがファンドの場合においては、LBOは譲渡企業の企業価値を向上させ、株式の再上場か、第三者への譲渡によるリターンを目的として実施されます。そのため、短期間で企業が転売される可能性があります。

企業売買が日常的な行為ではない日本において、会社をファンドに売却するといった行為は悲観的なイメージが強い側面もあります。

そういった側面から、企業を売買の対象ではなく共同会社のようなものとして捉える見方が多いという意味でも、LBOは日本の社会的な特徴には適していない面があるとも言えます。

LBOを成功させるポイント

実際のLBOにおいては、さまざまな要因が混在するため、成功要因を一言で断定することは困難です。しかし、LBOに大きな影響を及ぼす要因は幾つかに限定されます。ここでは、実施のコツとして、LBOを成功させる3つのポイントを解説します。

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経営が安定していて負債が少ない企業を買収する

LBOでは、譲渡企業の経営が安定していて現金や現金化しやすい資産を多く保有し、負債が少ないほど買収後の成功率が高くなります。例えば、都市部の私有鉄道会社は多くの不動産を保有し、経済環境に大きく左右されない安定した利用客数が見込めます。

そういった企業の時価総額が、市場において過小評価されており、企業価値の向上が見えやすい場合は、LBOの成功率が高いと言えます。

シナジー効果が見込める企業を買収する

シナジー効果の発揮により、大幅な売上高増加・コスト削減・技術力や開発力向上などのメリットが得られます。LBOは多額の買収資金を用いるため、シナジー効果が期待できる企業や事業を買収して、買収資金を大幅に上回るメリットの獲得を目指しましょう。

シナジー効果は、主に売上増加(売上シナジー)・コスト削減(コストシナジー)・節税や金融コストの削減(財務シナジー)の要素で発揮されます。これらの要素が生じる可能性を個別に評価・分析して、可能な限りシナジー効果が見込める譲渡企業を買収しましょう。

融資先からの制約・条件をクリアする

銀行などからの融資を受ける場合には、さまざまな制約が課されることがあります。具体的には、モニタリングされる・コベナンツを結ぶ、などです。こういった制約・条件をきちんとクリアすることで、LBOを成功に結びつけられます。

LBOによって買収された譲渡企業は、金融機関からモニタリングを要求され、親会社である譲受企業は多くの資料提出や報告を時折求められます。客観的なモニタリングを受けることによって、経営上の課題を発見することも少なくありません。

コベナンツとは、譲受企業側が金融機関などから融資を受ける際に結ぶ誓約条項を指します。コベナンツには、実行の必要がある義務、許されない禁止事項、最低限クリアしなければならない財務状況などが細かに規定されています。

まとめ

この記事では、LBOについて解説しました。LBOは、少ない資金(借入金)を使って企業を買収し、その企業のキャッシュフローや資産売却などによって借入金を返済し、最終的に譲渡企業を売却または上場させることで利益を得るといった仕組みです。

LBOの最大の特徴は、譲渡企業を買収するために調達する負債(借入金など)を譲渡企業自身に負担させる点にあります。LBOの実施によって、譲受企業側は少ない資金でも自社より大きい企業の買収が可能です。

少資本での買収が可能・自社より大きな企業の買収が可能・調達資金の返済リスクが少ない・法人税の節税が可能などのメリットがあります。しかし、LBOにはリスクも存在します。LBOはメリットとデメリットを把握したうえで、買収を進めましょう

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