労務管理士とは?社労士との違いや仕事内容、資格の取得方法を解説

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  • 労務管理士とは、労働基準法に基づいた労務管理に関わる民間資格を取得した人である
  • 労務管理士は民間資格、社労士は国家資格であるため2つの資格には大きな違いがある
  • 務管理士の資格を取得するメリットは、労働法規の知識を得て人事業務に活かせること

労務管理士とは、労働基準法に基づいた労務管理に関わる資格を取得し、適切な労働契約の締結や勤怠管理を行う人を指します。本記事では、労務管理士の概要や社労士との違い、労務管理士の仕事内容やメリット、資格を取得する方法などをわかりやすく解説します。

目次

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  1. 労務管理士とは
  2. 労務管理士の資格を取得する方法
  3. 労務管理士の主な仕事内容
  4. 労務管理士の資格を取得するメリット
  5. まとめ

労務管理士とは

労務管理士とは、労働基準法や労働関連の法律・制度を専門的に学び、企業や団体における労働環境の改善や問題解決に従事する民間資格を指します。従業員と企業双方の利益を考慮しながら、適切な労働条件の整備や労働トラブルの予防・解決策の立案に携わります。

本記事では、労務管理士の職務内容や資格取得に必要な要件などについて詳しく解説します。

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労務管理士の資格を取得する4つの方法

  1. 労務管理士とは
  2. 労務管理士と社労士との違いは

労務管理士とは

労務管理士は、従業員の勤怠や健康状態など、労働環境全般の管理を行います。一般社団法人日本人材育成協会と一般社団法人日本経営管理協会が試験を運営しており、民間資格のため国家資格のように基準は統一されていません。

労務管理士の資格を取得すると、労務管理に関するスキルを習得していることを証明できます。企業においては、労働法規に精通している人材がいない場合に重宝される資格です。

参考:資格試験受験に関して|労務管理士|日本人材育成協会

労務管理士と社労士の違い

労務管理士と社会保険労務士(社労士)は、どちらも日本における労働に関する専門的な資格ですが、取得に必要な要件や資格の種類に違いがあります。

社会保険労務士は社会保険労務士法に基づいた国家資格で、厚生労働省が管轄しています。労働基準法や労働関連の法律・制度を学び、労働環境の改善や労働トラブルの解決策を提供する専門家です。

一方で労務管理士は民間資格であり、民間の団体が独自の基準を設けて認定しているものです。全国各地で開催している講座やWeb講座、通信講座を受けて所定の試験に合格すれば資格を取得でき、社会保険労務士と比べて試験の難易度も低いです。

社会保険労務士の取得には、国家試験である社会保険労務士試験への合格が必要であり、試験内容は厳格です。そして、合格後には都道府県社会保険労務士会に入会するなどの要件もあります。

参考:試験制度|社会保険労務士試験オフィシャルサイト

社労士にしか扱えない業務がある

社労士は、労働基準法や労働社会保険に特化した専門的な知識を持つ資格取得者であり、社会保険労務士法に基づいた国家資格者です。社労士は労務管理士と違い、国家資格者としての独占業務を行うことができます

社労士の業務は、主に以下の3種類に分けられます。

  1. 1号業務
  2. 2号業務
  3. 3号業務

1号業務には、労働社会保険手続きをはじめとした行政機関へ提出する申請書類の作成・手続きの代行などが該当します。2号業務は労働社会保険諸法令に基づいた帳簿書類の作成を指し、企業が備えておくべき帳簿の作成を行います。

そして、3号業務では人事労務管理の専門家として、労働時間の相談指導・就業規則の作成と見直しといった、労務管理におけるアドバイス・コンサルティング業務を行います。

これらの内、1号業務と2号業務は社労士にしか扱えない独占業務ですが、3号業務に関しては労務管理士でも従事することができるとされています。

参考:社会保険労務士制度|厚生労働省

労務管理士と社会保険労務士の違い一覧

上述のように、労務管理士と社会保険労務士では資格の種類や扱える業務など異なる点が多々あります。以下で、労務管理士と社会保険労務士の違いを一覧にまとめました。

労務管理士社会保険労務士
資格の種類民間資格国家資格
運営者・一般社団法人日本経営管理協会
・一般社団法人日本人材育成協会
全国社会保険労務士会連合会
試験センター
試験の難易度比較的易しい非常に難しい
対象者20歳以上(性別・学歴・国籍・職業・
実務経験は不問)
・学歴
・実務経験
・国家試験の合格
上記3つのうち1つを満たしている必要がある
資格取得方法・公開認定講座
・Web資格認定講座
・通信講座
・書類審査
社会保険労務士試験
試験の回数随時年1回
独占業務なしあり

労務管理士の資格を取得する方法

労務管理士は、20歳以上であれば性別・学歴・職業・経歴に関わらず、誰でも受験することができる民間資格です。そのため、比較的易しい難易度であるとされており、受講料および受験料を支払うことで受験ができます。

労働に関する法律や制度を学び、企業や組織における労働環境の改善・問題解決に携わることができるため、幅広い年齢層に人気があります。ここでは、労務管理士の資格を取得する4つの方法を解説します。

参考:労務管理士受験方法|日本人材育成協会

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公開認定講座を受講する

公開認定講座は、労務管理士の資格取得を目指すために提供される専門的な講座です。労務管理士試験に向けた学習を希望する場合、一般社団法人の日本人材育成協会が地区ごとに開催する講座に参加します。

参加までの具体的な手順としては、まず公開認定講座の日程を確認し、自身の居住地から近い開催地を選択します。その後、選択した公開認定講座に受講申し込みを行います。

講座では、労務管理士試験に関連する労働基準法や人事労務管理、労働環境の改善などを含めた専門的な知識を学びます。カリキュラム内で行われる認定試験に合格すれば、労務管理士資格を取得することができます。

初めは所定の手続きを行うことで、2級労務管理士として認定されます。その後、資格者研修を受講して昇給審査試験に合格することで、1級労務管理士として認定されます。この点は、4つの取得方法で共通しています。

Web資格認定講座を受講する

Web資格認定講座は、オンラインで提供される専門的な講座で、特定の資格を取得するための学習プログラムです。受講者は、自宅やオフィスからインターネットを通じてeラーニングで履修します。

一般社団法人の日本人材育成協会のオンライン申し込みページから申し込みを行うと、オンライン学習プラットフォームで講義や教材を提供されます。

学習は動画やテキストを活用し、自身のペースで進められます。講座終了後にはオンラインテストを受け、試験結果によって資格の取得が認定されます。Web資格認定講座は、インターネットさえあれば時間や場所を問わず学習できる点が最大のメリットです。

また、オンラインで学習資料を受け取るため、紙の使用を減らすエコフレンドリーな方法でもあります。ただし強制力が弱いため、自己管理が重要です。計画的な学習や、継続するための工夫が求められるでしょう。

通信講座を受講する

通信講座は、自宅に届くテキストや問題集で学習する方法です。問題の解答を提出すると、担当講師が採点・添削し、アドバイスを返してくれます。レベルによって2〜8ヶ月ほどの研修期間が定められていますが、学習のペースは自身で自由に決められます。

そして、到達度試験に合格することで、労務管理士の資格取得が可能です。通信講座もWeb講座と同様に時間や場所に縛られず、隙間時間を使って学習できますが、学習を継続するモチベーションの維持が重要です。

書類審査

書類審査は、3年以上の実務経験の証明と労務管理士からの推薦を必要とする審査方法です。実務経験の証明としては、経歴書または在職中の場合は事業所の職務証明が必要です。

審査時には審査料を支払い、経歴と課題論文を踏まえて協会審査委員会で慎重な審査を行い、資格登録の合否を決定します。審査に合格することで、労務管理士の資格を取得できます。

労務管理士の主な仕事内容

労務管理士は、企業や組織における労働環境の改善をはじめ、労務管理に携わる専門職です。労働基準法や労働関連の法令・労働条件・人事制度などの知識を活用し、従業員の福祉向上や労働問題の解決に貢献します。

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労働契約の締結

新たな労働者を採用する際に、労務管理士は労働条件の相談に応じ、適切な提案を行います。労働契約書の作成にも携わり、法令遵守と明確な条文化に努めます。また、雇用条件や契約内容についてのアドバイスを提供し、公正で適切な労働条件の設定をサポートします。

さらに、労働契約が労働基準法や法令に適合しているかを確認し、問題や紛争が発生した場合には、調停や解決策の提案も行います。

労働条件の管理・変更

人事異動や昇進があった際には、労務管理士が労働条件の変更や管理を行います。また、労働条件が変わったことによって従業員に不利益が生じていないか、法律を遵守できているかを確認します。

特に、給与の変更は従業員にとっても非常に重要な項目であり、慎重に扱わなければなりません。適切な労働条件・環境を維持することは、労務管理士が担う重要な業務の1つです。

就業規則の管理

労務管理士は、就業規則の作成や管理も行います。就業規則は常時10人以上の従業員を雇用する企業は必ず定めなければならず、「絶対的必要記載事項」「相対的必要記載事項」「任意記載事項」を含めるのが基本です。

就業規則の作成時には、内容が法律に違反していないか確認し、労働基準監督署へ提出します。また、作成後の就業規則に変更があった場合も届出が必要であり、労務管理士が変更の手続きを行います。

各種保険の管理

新しく従業員を雇用した際に、厚生年金保険や健康保険などの社会保険への加入手続きを行うのも、労務管理士の仕事です。社会保険加入時の書類作成や手続きは複雑で手間もかかるため、正確に行うためにも労務管理士の専門知識が必要となります。

また、新規雇用時の加入手続きだけでなく、退職時には保険の資格喪失の申請も必要です。さらに、異動時の変更手続きを行う業務もあります。

社員の勤怠管理

労務管理士は、始業・終業時刻・休日労働日数・時間外労働など従業員の就業状況の管理も行います。勤怠の情報をもとに給与計算を行うため、正確な集計が必要となります。また、適切な勤怠管理によって過重労働を防ぎ、従業員の健康を守る役割もあります。

なお、法定労働時間を超えて労働させる場合や休日に労働させる場合には「36協定」を締結し、労働基準監督署に申請する必要があります。労務管理士はその手続きを請け負うこともあります。

参考:36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針|厚生労働省

社員の健康管理・労働環境の整備

従業員の健康管理や労働環境の整備も、労務管理士が携わる業務の1つです。企業が、従業員の健康を維持し、働きやすい環境を提供できるようサポートします。

具体的には、従業員に健康診断を受けさせたり、インフルエンザ予防接種補助の案内を行ったりします。また、ストレスチェックの実施も重要な業務です。ストレスチェックは、従業員が50人以上の企業に1年に1度行うことが義務化されています。

給与管理

人事・経理と連携して、給与管理を行う業務もあります。労務管理の中でも重要度の高い業務であり、従業員の労働時間・時間外労働時間・休日出勤なども含めて、正確に計算しなければなりません。

また、労働時間を算出するだけでなく、各種社会保険料や控除額、税金なども計算する必要があります。ミスがあると従業員からの信頼を失うだけでなく、法に反するリスクもあるため、慎重な対応が求められます。

労務管理士の資格を取得するメリット

労務管理士の資格は、労働関連の法律や制度、人事労務に関する幅広い知識を持つことが求められる資格です。この資格を持つことで、企業や組織において労務管理や人事業務に携わる専門家としての地位を築くことができます。

具体的なメリットとして、以下のような点が挙げられます。

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労働法規の知識を得られる

労務管理士の資格を取得することで、労働法規に関する幅広い知識を得ることができます。資格取得に向けて勉強していく中で労働基準法について深く学べるため、労務管理を行う上では非常に有利です。

また、資格取得で得られた知識は、実際の業務に活用できます。法律は年々改定が行われるため、業務を行いながら新しい知識を身につけることで、より労働法規に精通した専門家として活躍できるでしょう。

人事業務に活かせる

労務管理士の知識は、人事業務に活かすこともできます。多くの人事業務は労務管理と密接に関わっているため、労務管理士の専門知識があれば、人事業務もスムーズに行えるでしょう。

例えば、労働基準法や労働組合法など、労働に関する法律の深い知識は、人事業務において法令を遵守するために不可欠です。また、賃金・休日などの労働条件の設定や、労働契約の締結など、人事業務の根幹といえる部分を、労務管理士の知識によってサポートできます。

キャリアアップに繋がる

労務管理士の資格取得は、キャリアアップにも繋がります。この資格を持つことで、労務関連の法律や制度、人事労務に関する専門知識を身につけ、企業や組織において人事部門などで重要な役割を担うことができます。

専門的なスキルが身につくため、労働問題の適切な解決や労働環境の改善に貢献できるだけでなく、求職市場においても優位になるでしょう。さらに、労務管理士の資格取得により給与や待遇面での向上が期待でき、報酬や昇進の機会が増える可能性もあります。

未経験からでも転職しやすい

労務管理は専門的な知識を要する仕事であり、求人において未経験者はあまり歓迎されません。しかし、労務管理士の資格を取得していれば、未経験でも採用してもらえる可能性が高くなります。

転職先として労務管理を検討しているものの、経験が全くないという場合は、まず労務管理士の取得を目指してみましょう。会社によっては労務管理士資格の保有を採用条件に入れている場合もあり、転職先の選択肢が広がることは間違いありません。

まとめ

労務管理士は、労働関連の法律・制度を専門的に学ぶことで取得できる民間資格です。従業員の労働条件や勤怠、健康状態まで労働環境全般の管理を担います。労務管理士の資格を取得することで、法令遵守や労働問題の適切な解決に関する専門的なスキルを習得できます。

資格を取得し、労働法規について精通すれば、待遇の向上も期待できるでしょう。また、専門的なスキル保有者として、求職市場でも優位になり、キャリアアップに繋がることもメリットです。人事・労務に関わる人は、本記事を参考に取得を検討してみましょう。

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