労務管理士とは?社労士との違いや仕事内容、資格の取得方法を解説
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- 労務管理士とは、労働基準法に基づいた労務管理に関わる民間資格を取得した人である
- 労務管理士は民間資格、社労士は国家資格であるため2つの資格には大きな違いがある
- 務管理士の資格を取得するメリットは、労働法規の知識を得て人事業務に活かせること
労務管理士とは、労働基準法に基づいた労務管理に関わる資格を取得し、適切な労働契約の締結や勤怠管理を行う人を指します。本記事では、労務管理士の概要や社労士との違い、労務管理士の仕事内容やメリット、資格を取得する方法などをわかりやすく解説します。
労務管理士とは
労務管理士とは、労働基準法や労働関連の法律・制度を専門的に学び、企業や団体における労働環境の改善や問題解決に従事する民間資格を指します。
労務管理士は従業員と企業双方の利益を考慮しながら、適切な労働条件の整備や労働トラブルの予防・解決策の立案に携わります。
労働に関する専門的な知識とスキルを有し、労働者の権利擁護や健全な労働環境の維持を目指すことで、組織の持続的な発展に貢献する役割を果たしています。以下では、労務管理士の職務内容や資格取得に必要な要件などについて詳しく解説します。
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労務管理士の資格を取得する4つの方法
労務管理士とは
労務管理士は日本における労働に関する専門資格であり、一般社団法人の日本人材育成協会が認定を行います。企業や組織における労働環境の改善、労働トラブルの解決に従事します。
労働基準法や人事労務管理など、労働に関する法律や制度に精通し、従業員の権利擁護や公正な労働条件整備に貢献します。また、労働環境の向上や人事評価、健康・安全対策にも関与し、組織の持続的な成長と従業員の労働における幸福をサポートします。
公正な立場から労働者と企業の双方の利益を考慮しつつ、労働トラブルの解決や労働環境の改善に尽力しています。資格取得には試験をクリアする必要があり、その専門的な知識とスキルによって労働に関わるさまざまな課題に対処しています。
労務管理士と社労士の違いは
労務管理士と社会保険労務士(社労士)は、日本における労働に関する専門的な資格であり、取得に必要な要件や資格の種類に違いがあります。
社会保険労務士は社会保険労務士法に基づいた国家資格で、厚生労働省が管轄しています。労働基準法や労働関連の法律・制度を学び、労働環境の改善や労働トラブルの解決策を提供する専門家です。
一方、労務管理士は民間資格で、一般社団法人日本人材育成協会と一般社団法人日本経営管理協会が運営・管理しています。主に労働基準法や社会保険に関する知識を有し、企業の労働者に対して社会保険や労働保険の管理などを行います。
社会保険労務士の取得には、国家試験である社会保険労務士試験への合格が必要であり、試験内容は厳格です。そして、合格後には都道府県社会保険労務士会に入会するなどの要件もあります。一方、労務管理士は民間の試験に合格することで資格を取得できます。
また、職務内容にも違いがあります。両資格は労働に関連する専門的な知識を持つ点で共通していますが、社労士は国家資格であるのに対し、労務管理士は民間資格です。異なる立場から労働者や企業に貢献し、労働環境の向上と労働に関わる問題解決に寄与しています。
社労士にしか扱えない業務がある
社労士は、労働基準法や労働社会保険に特化した専門的な知識を持つ資格取得者であり、社会保険労務士法に基づいた国家資格者です。社労士は労務管理士と違い、国家資格者としての独占業務を行うことができます。
社労士の業務は、主に以下の3種類に分けられます。
- 1号業務
- 2号業務
- 3号業務
1号業務には、労働社会保険手続きをはじめとした行政機関へ提出する申請書類の作成・手続きの代行などが該当します。2号業務は労働社会保険諸法令に基づいた帳簿書類の作成を指し、企業が備えておくべき帳簿の作成を行います。
そして、3号業務では人事労務管理の専門家として、労働時間の相談指導・就業規則の作成と見直しといった、労務管理におけるアドバイス・コンサルティング業務を行います。
これらの内、1号業務と2号業務は社労士にしか扱えない独占業務ですが、3号業務に関しては労務管理士でも従事することができるとされています。
労務管理士の資格を取得する方法
労務管理士は、20歳以上であれば性別・学歴・職業・経歴に関わらず、誰でも受験することができる民間資格です。そのため、比較的易しい難易度であるとされており、受講料および受験料を支払うことで受験ができます。
労働に関する法律や制度を学び、企業や組織における労働環境の改善・問題解決に携わることができるため、幅広い年齢層に人気があります。ここでは、労務管理士の資格を取得する方法として4つの方法を解説します。
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労務管理士の資格を取得する4つの方法
公開認定講座を受講する
公開認定講座は、労務管理士の資格取得を目指すために提供される専門的な講座です。労務管理士試験に向けた学習を希望する場合、一般社団法人の日本人材育成協会が地区ごとに開催する講座に参加します。
参加までの具体的な手順としては、まず公開認定講座の日程を確認し、自身の居住地から近い開催地を選択します。その後、選択した公開認定講座に受講申し込みを行います。
講座では、労務管理士試験に関連する労働基準法や人事労務管理、労働環境の改善などを含めた専門的な知識を学びます。カリキュラム内で行われる認定試験に合格すれば、労務管理士資格を取得することができます。
初めは所定の手続きを行うことで、2級労務管理士として認定されます。その後、資格者研修を受講して昇給審査試験に合格することで、1級労務管理士として認定されます。この点は、4つの取得方法で共通しています。
Web資格認定講座を受講する
Web資格認定講座は、オンラインで提供される専門的な講座で、特定の資格を取得するための学習プログラムです。受講者は自宅やオフィスからインターネットを通じてeラーニングで履修し、時間や場所に制約されずに資格取得が可能です。
受講手順は、一般社団法人の日本人材育成協会のオンライン申し込みページから申し込みを行い、講座が始まるとオンライン学習プラットフォームで講義や教材を提供されます。
学習は動画やテキストを活用し、自身のペースで進められます。講座終了後にはオンラインテストを受け、試験結果によって資格の取得が認定されます。Web資格認定講座の利点は、自主学習が可能なことや、時間・場所に拘束されない利便性が挙げられます。
また、オンラインで学習資料を受け取るため、紙の使用を減らすエコフレンドリーな方法でもあります。ただし、自己管理が重要であるため、学習計画の立て方や学習の継続が必要です。
Web資格認定講座は、現代のライフスタイルに適応した効果的な学習方法として利用されています。
通信講座を受講する
通信講座は、自宅や自分のペースで学習するための便利な学習方法です。基礎課程とされる通信研修を履修することで、労務管理士としてのスキル・知識を身につけることができます。そして、到達度試験に合格することで、労務管理士の資格取得が可能です。
通信講座は、忙しいスケジュールを持つ人や遠隔地に住む人、自己学習が得意な人向けといえます。ただし、柔軟な学習スケジュールを立てることができる反面、自分のペースで学ぶため、継続的に学習意欲を持続させることが重要です。
書類審査
書類審査は、3年以上の実務経験の証明と労務管理士からの推薦を必要とする審査方法です。実務経験の証明としては、経歴書または在職中の場合は事業所の職務証明が必要です。
審査時には審査料を支払い、経歴と課題論文を踏まえて協会審査委員会で慎重な審査を行い、資格登録の合否を決定します。審査に合格することで、労務管理士の資格を取得できます。
労務管理士の主な仕事内容
労務管理士は、企業や組織における労働環境の改善をはじめ、労務管理に携わる専門職です。労働基準法や労働関連の法令、労働条件、人事制度などの知識を活用し、従業員の福祉向上や労働問題の解決に貢献します。
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労務管理士の7つの主な仕事内容
労働契約の締結
新たな労働者を採用する際に、労務管理士は労働条件の相談に応じ、適切な提案を行います。労働契約書の作成にも携わり、法令遵守と明確な条文化に努めます。雇用条件や契約内容についてのアドバイスを提供し、公正で適切な労働条件の設定をサポートします。
労務管理士は、労働契約が労働基準法や法令に適合しているかを確認し、問題や紛争が発生した場合には、調停や解決策の提案にも関与します。そして、円滑な労働関係の維持に努め、労働者と雇用者の信頼関係を築く重要な役割を果たします。
労務管理士の専門知識を活かし、労働契約の締結において労働者の権利保護と雇用者の適正な労働条件の確保を追求します。労働環境の改善や問題解決にも寄与し、企業や組織の円滑な運営を支援します。
労働契約の締結は、企業の安定的な発展と労働者の幸福度向上に欠かせない要素であり、労務管理士の専門性が社会的な価値を高める重要な役割を果たしています。
労働条件の管理・変更
労務管理士は企業や組織において、労働条件を整備し、法令遵守を確認します。例えば、給与体系の構築、勤務時間の管理、休暇制度や福利厚生の導入など、労働者の福祉向上と労働環境の向上を図ります。
労務管理士は法律や関連法令に精通し、企業がコンプライアンスを遵守していることを確認します。経済的変動や法令改正に対応し、労働条件の見直しや変更を提案するなど、企業の成長と労働者の権益をバランス良く調整します。
また、企業と労働者のコミュニケーションを重視し、定期的に労働者の意見や要望を聴取することで、労働条件の適切な整備が行えます。円滑な労働関係の構築に努めることにより、労働紛争を未然に防止し、問題解決に寄与します。
その他にも、従業員の昇進や人事異動の際には労務管理士が労働条件の変更・管理を行います。
就業規則の管理
労務管理士は企業のニーズと法令に適合した就業規則を策定し、定期的に改定します。適切なルールを整備することで、労働者と雇用者の権利と義務を明確化し、労働環境の安定に寄与します。
法令遵守の確認も労務管理士の重要な役割です。労働法や労働関連法令に合致するよう就業規則を点検し、コンプライアンスを確保します。
労働者への通知と説明も労務管理士が担います。新規採用者や既存の従業員に対して就業規則を説明し、理解を促進することで労働条件を遵守する意識を高めます。
さらに、労働者の相談対応が重要な任務です。労働者が就業規則に疑問や問題を持つ場合、労務管理士は的確なアドバイスを提供し、円滑な解決を図ります。
法令改正への対応も労務管理士が行います。労働法の変化に対して素早く対応し、就業規則の改定や対策を提案することで企業のリスク軽減を促進します。
労務管理士の就業規則の管理により、法令遵守と労働者の権益保護が確保され、企業の労働環境が円滑に運営されることを支援します。就業規則の適切な策定と管理により、労働関係の安定と持続的な発展を目指します。
各種保険の管理
労務管理士は、社会保険の手続きや運用を担当し、従業員の健康保険・厚生年金保険などへの加入や脱退手続き、保険料の計算や納付管理を適切に行います。また、労災保険に関する手続きや事故対応も重要な役割であり、適切な手続きと権益保護をサポートします。
雇用保険に関する手続きも労務管理士が担当し、雇用契約終了時の失業給付手続きや求職活動支援に尽力します。健康診断の実施計画や結果の管理も労務管理士の責任であり、従業員の健康管理をサポートします。
保険制度の改善やコンプライアンス確保にも関与し、企業の保険制度を適正化するための提案を行います。労務管理士の専門知識と法律知識を活かし、労働者と雇用者の権益を守りながら、保険制度の適切な管理と健康的な労働環境の構築に努めます。
社員の勤怠管理
労務管理士は、勤怠管理システムの構築や運用をサポートし、従業員の出勤・退勤・休暇などの勤怠データを効率的に管理します。定期的なデータ集計と解析により、労働時間や休暇取得状況を把握し、労働環境の改善や健康管理に活用します。
勤怠規程の策定や改定にも労務管理士が関与し、法令遵守と企業ニーズを考慮した規程整備を行います。欠勤や遅刻の対応に際しても、適切な対応策を提案し、問題の解決を支援します。
労務管理士は従業員の勤怠記録の適切な保管と権利保護にも努めます。個人情報の漏洩を防止し、労働法に基づいた勤怠データの適正な管理を行い、労働者の権利を守ります。
勤怠管理を通じて、労務管理士は労働者と企業の円滑なコミュニケーションを促進し、労働環境の改善と生産性向上をサポートします。適切な勤怠管理により、企業の経営効率化と従業員の働きやすさを両立させることが重要です。
労務管理士の専門知識と経験によって、企業の労務管理がより効果的に行われることでしょう。
社員の健康管理・労働環境の整備
労務管理士は、健康診断の実施や健康リスクの早期発見に向けた計画立案と管理を行います。また、ストレスチェックの支援や健康教育・啓発活動の企画・実施によって、従業員の健康意識向上を促進します。
職場の労働環境評価や改善策の提案を通じて、従業員の快適な労働条件を整備し、安全対策や環境要因の改善に努めます。
健康経営の方針策定や評価報告書の作成に携わり、従業員の健康を重視した経営戦略の推進を支援します。
労務管理士の専門性を活かして、企業の持続的な発展と従業員の健康増進を両立させるために、健康管理や労働環境整備に貢献します。従業員の働きやすさや生産性向上に寄与し、企業の離職率低減などに対しても支援を行います。
給与管理
労務管理士は、従業員の給与計算を正確に行い、基本給や手当、賞与などの要素を考慮して給与額を算出します。法令遵守を徹底し、労働法や税法に基づいた給与計算を実施します。
給与体系の構築にも労務管理士が関与し、企業のニーズに合わせた公平で競争力のある給与体系を整備します。
経済状況や労働市場の動向を分析し、給与改定の提案を行い、従業員のモチベーション向上と人材の定着を促進します。
給与明細の作成と従業員への解説を通じて、従業員の給与に対する理解と満足度を高めます。
給与管理を通じて、労務管理士は労働者の報酬を適切に管理し、法令遵守と企業の人事戦略の両立を図ります。公正な給与体系の構築や給与改定の提案により、従業員のモチベーション向上や企業の人材育成に貢献します。
労務管理士の専門知識を活かして、給与管理を円滑に運営し、労働者と企業の双方にとって良好な労働環境を創出します。
労務管理士の資格を取得するメリット
労務管理士の資格は、労働関連の法律や制度、人事労務に関する幅広い知識を持つことが求められる資格です。この資格を持つことで、企業や組織において労務管理や人事業務に携わる専門家としての地位を築くことができます。
具体的なメリットとして、以下のような点が挙げられます。
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労務管理士の資格を取得する3つのメリット
労働法規の知識を得られる
労務管理士の資格を取得して、労働法規の知識を得ることには重要なメリットがあります。労務管理士は、労働基準法に関する幅広い知識を持ち、労働者と雇用者の権益を保護するための専門家です。
この資格を持つことで、企業や組織が法令遵守を徹底し、適切な労働条件を設定することが可能となります。法令に則った給与計算や労働時間管理、休暇取得などを実施し、法律違反から生じるリスクを回避します。
また、労務管理士は従業員に対して労働基準法に関するアドバイスを提供し、労働者の権利を保護します。適正な労働条件の整備や労働問題への対応を支援し、従業員の満足度向上とモチベーション向上に寄与します。
さらに、労働法規の知識を活用して企業に対して労働環境の改善を提案し、健全な労働関係の構築を促進します。従業員の権利尊重と適切な労働条件整備を通じて、企業の社会的評価向上や組織の成長に貢献します。
労務管理士の資格は、労働法規に精通した専門家としての地位を築くだけでなく、企業と労働者の双方にとって持続可能な働き方を実現するための重要な資格と言えるでしょう。
人事業務に活かせる
労務管理士の資格取得による人事業務に活かせる具体的なメリットは多岐にわたります。資格保有者は、人事労務の専門家としての地位を築き、経験と知識を活かして専門的なアドバイスや意見を提供できるため、人事部門での重要なポジションを確立します。
また、労働法規に精通しているため、労働法規の遵守を確保し、適切な労働契約や雇用条件の設定によって労働紛争や労働基準監督署とのトラブルを回避できます。
さらに、採用・配置・育成の改善に関する助言や戦略立案により、優秀な人材の獲得や適切な人材配置を推進し、企業の競争力向上や組織の成長に寄与します。
労務制度の構築を通じて、評価制度や昇進基準の策定により従業員のモチベーション向上に寄与します。そして、労働問題への適切な対応策提案により従業員の満足度向上と離職率低減に貢献します。
労務管理士の資格取得は、企業の人事戦略の策定や人材育成に大きな価値をもたらし、組織全体のパフォーマンス向上と健全な労働環境の実現に寄与します。
キャリアアップに繋がる
労務管理士の資格取得は、キャリアアップに繋がるメリットが数多く存在します。この資格を持つことで、労務関連の法律や制度、人事労務に関する専門知識を身につけ、企業や組織において人事部門などで重要な役割を担うことができます。
専門的なスキルの向上により、労働問題の適切な解決や労働環境の改善に貢献できるだけでなく、求職市場においても優位性を持ちます。企業は労務管理士の専門知識を高く評価し、採用において優先的に考慮する傾向があります。
さらに、労務管理士の資格取得により給与や待遇面での向上が期待され、報酬や昇進の機会が増加する可能性があります。また、独立起業の道も開けるため、自らの専門知識を活かしたコンサルティング業務や人事労務に特化した事務所の設立などが可能です。
労務管理士の資格取得は、キャリアアップの機会を広げるために有益であり、労働者としてのキャリアをより高いレベルで築き上げるための重要なステップとなるでしょう。
まとめ
労務管理士は、労働法規や人事労務の専門知識を持つ資格であり、労働者と雇用者の権益保護や適切な労働環境の実現に貢献する専門家です。取得することで、法令遵守や労働問題の適切な解決に関する専門的なスキルを習得します。
労務管理士の資格取得によるメリットとして、キャリアアップの道が開けます。人事部門での重要な役割を担う機会が増え、求職市場での競争力が向上します。給与や待遇の向上、独立起業の可能性も広がります。
資格取得は公開認定講座や通信講座、Web資格認定講座で行われ、労働法規の知識や人事労務のスキルを向上させます。
労務管理士の資格は、企業や組織にとって法令遵守や労働環境の改善をサポートし、個人にとっても専門性を高めるための重要な資格です。労働者と雇用者の双方に寄与し、持続可能な労働環境の実現に向けて大きな価値を持っています。
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