電子承認とは?システムを導入する方法やメリット・デメリットを解説

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  • 電子承認とは、電子署名や電子印鑑などを活用して申請・承認を行うワークフローである
  • 電子承認の導入で、社外からの申請・承認や内部統制の強化、コスト削減が可能になる
  • 電子承認導入の際は、導入するシステムのコストや取引先の環境を考慮する必要がある

電子承認とは、電子署名や電子印鑑などを活用して申請・承認を行うワークフローのことを言います。電子承認を導入することで、承認までの時間の短縮化やペーパーレス化によるコスト削減にも繋がります。本記事では、電子承認の方法やメリット、システム導入の流れを解説します。

目次

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  1. 電子承認とは
  2. 電子承認の方法
  3. 電子承認システムを導入するメリット
  4. 電子承認システムを導入するデメリット
  5. 電子承認システムの導入手順
  6. 電子承認を行うならワークフローシステムの導入がおすすめ
  7. まとめ

電子承認とは

電子承認とは、従来まで押印や署名などで行っていた申請・承認のワークフローを電子化したものです。電子印鑑も含めて、より幅広い意味で電子承認と呼ばれています。契約書などに利用されるPDFファイルにも、電子署名は可能です。

2005年にe文書法が施行されて以来、さまざまな法改正により多くの書類で電子承認が認められています。また、税務関係書類の一部も電子文書での保存が可能です。

しかし、従来の印鑑では、印鑑証明などで本人が押したものであることを証明していましたが、電子化された文書にもそれと同等か、それ以上の信頼性を必要とします

そこで、本人の同意と書類が本物であることの証明を、電子承認では「本人性の証明」と「非改ざん性の証明」と分けて呼んでいます。

参考:「厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令」の概要|厚生労働省

本人性の証明とは

本人性の証明とは、第三者ではなく本人が承認したものであることの証明です。紙でも契約書でも第三者が印鑑を偽造し、本人になりすまして契約を行うリスクがありますが、電子認証でも同じことが起こる可能性があります。

従来、紙の契約書などでは、本人確認のために印鑑証明が使われてきました。それが電子契約では、電子認証局の電子証明書での本人確認が、一番厳格で一番安全な本人性の証明となります。

また、本人性の証明には、契約相手にメールで署名する書類のURLを送信する方法がありますが、本人以外がメールを開くリスクがあり、厳格性に欠けてしまうことが心配されます。

非改ざん性の証明とは

電子認証では、電子化されたデータで業務が進められます。しかし、電子データはコピーや内容の変更・改ざんが容易に行えてしまう危険性が高いため、承認の際に文書が原本であること、内容の書き換えが行われていないことを証明する必要があります。

そこで、非改ざん性の証明のために、内容を変更した日時を正確に記録し、承認後に変更されていないことが証明できるタイムスタンプがよく使われています。タイムスタンプは、時刻認証局から取得した後、暗号化されて書類のメタ情報として保管されるものです。

これらの証明方法により、電子化された文書の信憑性を高めています。

電子承認の方法

よく使われる電子承認には、電子サイン・電子署名・電子印鑑の3種類があり、法的に効力を持つものや、法的効力はないが社内用として使えるものなどがあります。ここでは、この3種類について解説します。

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電子承認の方法

  1. 電子サイン
  2. 電子署名
  3. 電子印鑑

電子サイン

電子サインとは、電子上で行う承認プロセスのことで、広い意味を持っています。つまり、電子署名も、電子サインの一種ということです。しかし、狭い意味で、タブレットなどで行う手書きのサインを指すこともあります

さらに、手書きの電子サインは、電子署名法の規定に準拠していないため、電子署名としての法的効力はありません。また、民法上でも有効性の判断は不明確です。したがって、手書きの電子サインは簡易署名として使い、正式な文書には使わない方が得策です。

電子署名

電子署名は、秘密鍵と公開鍵の2つの鍵を使った署名で、電子署名法が規定する電子署名として法的効力を持っています。公開鍵はデータを暗号化する鍵で、秘密鍵は公開鍵と対になっていて、秘密鍵がないと暗号化の解除ができません。

また電子署名には、本人性の証明となる電子証明書がつけられます。電子証明書は、第三者機関である電子認証局(CA)が発行するものです。電子署名と電子証明書の2つをセットにすることで、本人性の証明ができます

したがって、安全性と信頼性の高い電子署名は、企業間の電子契約書取り交わしなどの重要な契約によく用いられています。

電子印鑑

電子印鑑は、電子データ化された印影を指し、本人性と書類の非改ざん性の証明がなく、法的な効力は持ちません。したがって、企業内では、書類の社内チェックなどに使う認印と同等程度の使い方が適切です。

電子印鑑は無料で作成でき、書類作成などでよく使われるPDFファイルやWord・Excelファイルで作った書類に簡単に捺印でき、内部の認印としてであれば、便利に使えます。また、識別情報を組み込んだ有料の電子印鑑であれば、法的効力を持ちます

電子承認システムを導入するメリット

電子承認の導入には、企業にとってさまざまなメリットがあります。ここでは、以下の5つのメリットについて解説します。

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スピーディーな承認が可能

紙媒体での書類承認では、申請者が捺印後に書類を承認者に届け、承認者が確認後に捺印して、申請者に戻すという手順で行われ、時間がかかりますまた、承認者が複数いる場合や不在であれば、さらに時間がかかり、長いと完了までに1週間以上かかる場合もあります。

しかし、電子認証であれば、書類のプリントアウト・製本は不要で、申請者はデスク上で申請手続きができます。また、承認者が不在の場合や、ほかの事業所にいる場合でもシステムにアクセスできれば、いつでもどこでも閲覧・承認が可能です。

加えて、電子承認では承認の進捗状況の確認ができ、承認完了時期の予想もできます。そして、申請者はそれに合わせて次の業務を進められます。電子承認によってスピーディーな承認の受け取りが可能になるとともに、前後の業務も効率的に進められます

社外から申請・承認が可能

インターネットに接続できるタイプのシステムであれば、申請者や承認者が社内にいなくても申請や承認が可能です。たとえば、ほかの事業所や営業所だけでなく、外出中やリモートワーク中のタブレットからでも、システムにアクセスできる環境があれば可能になります。

最近では、スマートフォンからアクセスできるものもあり、社外の現場からでも承認できるようになっています。そのように、上長が即座に対応できなかった承認もスムーズに行え、上長も無理にデスクに戻る必要がなくなるため、業務の滞りが少なくなります。

ペーパーレス化で印刷コスト削減

電子承認では各種書類を、PDFファイルなどで管理・運用するため、ペーパーレス化が進み、紙代・印刷代・製本代の削減ができます。また、書類の郵送も必要なくなり、通信費の削減にもつながります。

そして、書類作成から承認までが効率的に行えたり、承認や申請のためだけに帰社して残業する必要がなくなったりします。その結果、時間コストや賃金コストの削減につながるばかりでなく、従業員のストレスの解消にもつながります。

保管スペースの削減

文書の保管は法で定められているものもあり、中には10年間保存しなければならないものもあります。企業によっては、文書が膨大な量になり、文書保管室などを準備しているところも少なくありません。このように、紙媒体の文書では保管スペースの確保が必須でした

対して、電子文書でも、電子帳簿保存法にかかわる帳簿は7年の保管が義務づけられています。しかし、電子媒体で保管できるので、保管スペースはほとんど必要ありません

また、2022年の改正で、領収書や請求書をスキャナ保存した場合の原本保存が必要なくなりました。紙での文書保存では、過去の文書を探すのに手間がかかりましたが、電子文書は一瞬で検索でき、気軽に過去案件の進め方などを参考にできるのもメリットです。

なお、保存期間の過ぎた文書の破棄も簡単に行えるようになり、廃棄にかかるコストも削減できます。

参考:No.5930 帳簿書類等の保存期間|国税庁

参考:電子帳簿保存法関係|国税庁

安全な書類の送付が可能

紙媒体の書類を相手方に渡すには、手渡しや郵送などで行いますが、電子文書はメールで送信したり、Web上で確認してもらったりするため、書類送付にコスト・時間がかかりません。その分、電子承認ではセキュリティ対策がしっかり行われていなければなりません。

現在はIT技術の進化もあり、データが複雑に暗号化されて送付され、外からの侵入を強力に防ぐシステムも多くなっています。また、データベースへのアクセス制限やアクセス監視機能によって、万一不審なアクセスがあった場合でも履歴で追跡できる機能もあります。

よって、コピーや持ち出しができる紙媒体の文書より、電子承認された文書の方が安全ともいえます。

内部統制の強化

内部統制とは、企業が経営目的達成のためのルールや仕組みの整備、運用する社内体制の整備をいいます。内部統制の基準は金融庁が4つ定義していて、電子承認ではその中の「業務の有効性と効率性」と「財務報告の信頼性」に関係しています。

「業務の有効性と効率性」では、承認業務を始めとする各種業務の効率化が図れます。また、「財務報告の信頼性」では、電子署名やタイムスタンプなどの利用により、信頼性の高い書類の下で業務が進められるようになります。

参考:財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)|金融庁

電子承認システムを導入するデメリット

メリットの多い電子承認ですが、デメリットもあります。できるだけデメリットを抑えて、自社に合ったシステムを導入することが必要です。ここでは、導入の大きな障害となるであろうデメリットについて解説します。

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導入にコストがかかる

電子承認にはシステムの導入が必要で、導入コストがかかります。必要なコストはIT化の進捗状況によって異なり、進捗が遅れている企業ほど大きいです。なお、始めての導入なら、システム以外にPCやタブレット、電子印鑑のひな形の作成などにも費用がかかります。

電子承認の初めての導入でコストを抑えるには、部分的に導入して徐々に広げていく方法もあります。また、ベンダーのサーバーで運用するクラウドサービスを利用すれば、利用料は発生しますが、導入コストは抑えられます。

全ての契約が電子承認化できるわけではない

便利な電子承認ですが、全ての契約で使えるわけではなく不動産関係では法律で書面を義務づけている契約が多くあります。また、訪問販売などの特定商取引における書類も書面でないといけないため、企業の中で、法的に電子承認が使えない書類の洗い出しが必要です。

また、取引先が電子承認の環境が整っていない場合や、紙面による請求書や契約書しか認めていない取引先もあります。自社に電子承認を導入することをあらかじめ取引先に知らせ、電子承認でよいか確認しておく必要があります。

電子承認システムの導入手順

電子承認の導入は会社のシステムをも変えることになるため、ただ単に導入すればいいものではありません。ここでは、電子承認を導入するにあたって必要な準備手順を解説します。

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電子化したい業務を整理

企業内で一気に電子承認化を図ろうとすると、コストがかかる上に、かえって業務の効率低下につながる場合もあります。そこで、導入前にどの業務を電子化して電子承認を取り入れるのか、業務の効率化が図れるのかを明確化することが必要です。

社内の業務の中には、法的な問題や取引先の業態によって、紙媒体でしかできない業務があったり、紙媒体の方が効率的であったりする業務もあります。また、導入に伴う各部署での課題の洗い出しによって解決方法を見つけるなど、業務の整理をすることも必要です。

導入・メンテナンス担当者を選定

電子承認の導入は、社内のIT化の進捗状況も考慮しながら進めていく必要があり、電子承認のシステム導入だけでは進めることができない部分も多いです。したがって、導入する際には導入担当者を決めておくと、導入までの各ステップがスムーズに進行します。

また、導入後には、システムメンテナンスを行うメンテナンス担当者も必要です。社内の他システムとの連携や管理、新規のアカウント発行や削除などの業務を行い、スムーズな運用ができる環境つくりに努める担当者を選定しましょう。

システムを選定

電子化したい業務が明確になり、導入担当者が決まったら、電子承認を行うためのシステムの選定に入ります。システムにはいろいろな種類があるため、その中から自社にとって最適なシステムの選定が重要です。

その後、明確になった電子化すべき業務に合わせて、必ず必要な機能が最優先になるように、そのほかの便利機能も含めて優先順位をつけ、予定している導入コストに見合う最適なシステムを選定します。

全体にかかるコストは、導入コストとランニングコストの両面からの検討が必要です。また、すでに導入しているツールとの連携や、導入後のベンダーから受けられるサポートも、検討のポイントとなります。

無料トライアルによるテスト運用

電子承認システムを取り扱うベンダーは、無料トライアル期間を提供している場合が多いため、積極的な活用がおすすめです。ただし、無料トライアルでは、機能制限やデータ数制限などがあるものもあります。

中には、思ったような機能でなかったり、使いづらかったりする場合もあります。よって、ベンダーに相談してカスタマイズしたり、ほかのシステムを試してみたりして、自社にとって最も使いやすいものを選定するのが、間違いの少ないシステム選びのコツです。

電子承認を行うならワークフローシステムの導入がおすすめ

電子承認の流れを企業内で整えるには、本人性や非改ざん性の証明に高いハードルがあり、高いセキュリティ対策も必要となります。そこで、導入コストはかかりますが、実績のあるベンダーが開発したワークフローシステムの導入がおすすめです。

ワークフローとは組織内の申請・承認・決裁とその後の一連の流れのことで、それを電子化して効率化させるのがワークフローシステムです。ワークフローシステムの基本機能には、各種申請書作成機能・承認機能・申請や承認の通知機能・管理機能などがあります。

本人性の証明や非改ざん性の証明、セキュリティ対策もしっかりと整備されており、安心して利用できるため、電子承認を進める多くの企業でワークフローシステムが導入されています。

まとめ

電子承認は、電子署名や電子印鑑などを活用することで、申請・承認のフローが効率的に進められます。また、外出先からの申請・承認も可能で、内部統制の強化にもつながるなどのメリットもあり、現在では多くの企業で採用されています。

企業が電子承認を取り入れるには、機能やセキュリティ対策に優れ、本人性や非改ざん性の担保できるワークフローシステムの導入が効果的です。

しかし、法的に電子承認が認められない文書があったり、取引先が書面の文書を希望したりする場合もあるため、電子承認に対応しているかの確認など、導入には注意が必要です。

この記事で紹介した内容を参考にしながら、導入するメリット・デメリット、注意点などを事前によく確認し、自社に合った形で電子承認を比較検討して導入しましょう。

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