稟議書の電子化とは?メリットや導入方法、注意点を解説

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  • 稟議書の電子化とは、これまで紙で行っていた稟議業務を電子化すること
  • 電子化することで決裁フローを迅速化でき、紙の印刷・保管のコスト削減にも繋がる
  • 電子化を導入するには、ワークフローシステムやグループウェアを使うのがおすすめ

稟議書の電子化とは、これまで紙ベースで申請・承認を行っていた稟議業務をソフトウェアなどを使って電子化することです。決裁フローを迅速化でき、ペーパーレス化によりコスト削減にも繋がります。この記事では、稟議書を電子化するメリットや方法、注意点などを解説します。

目次

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  1. 稟議書の電子化とは
  2. 稟議書の電子化が進む背景
  3. 電子化の対象となる稟議書の例
  4. 紙ベースで稟議業務を行うデメリット
  5. 稟議書を電子化するメリット
  6. 稟議書電子化の導入方法
  7. 稟議書を電子化する際の注意点
  8. まとめ

稟議書の電子化とは

稟議書は、申請・承認・決裁の手続きを一連の流れとする業務です。稟議書の承認を得るワークフローは、紙ベースで行うのが従来の方法であり、さまざまな担当者の手に渡り、承認されるまで時間を要するなど課題も多くあります。

しかし、稟議書の申請業務はワークフローシステムを利用し電子化することで、業務の効率化が望めます。電子化することで、申請から決済まで一連の流れが可視化され、業務プロセスの停滞を防止できるなどさまざまな課題を解決することが期待できます。

そもそも稟議書とは

稟議書とは、備品の購入や契約の締結を行う際に、会社の承認を得るための書類を指します。稟議が必要な事項について、決定権限を持つ上司からの承認を、会社の意思決定とするため使用されます。

稟議を申請する場合は、申請者から承認者を経て決裁されるため、時間を要するのが特徴です。稟議書は、日本特有の商習慣であり、海外では意思決定のスピードが早いため、稟議書のようなビジネス文化はありません。

稟議書の電子化が進む背景

稟議書の電子化が進んでいる背景として、電子帳簿保存法の改正やリモートワークなどの働き方の多様化など、さまざまな理由があります。以下で電子化が進んでいる背景について具体的に解説します。

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電子帳簿保存法の改正

稟議書の電子化が進む背景のひとつとして、電子帳簿保存法の改正が挙げられます。稟議書の保存は特に保管期間などの定めはありませんが、法改正により、さまざまな書類の電子化によりペーパーレス化が進んでいます。

また、電子化することにより、脱ハンコの取り組みも行えるため、承認者の捺印を求められる稟議書は脱ハンコにより、大幅に工数を減らすことができます。紙ベースでの保存も不要になるため、書庫の省スペースも可能です。

参考:電子帳簿保存法の概要|国税庁

働き方の多様化

リモートワークなど、働き方の多様化により稟議書の電子化が必要性を高めています。稟議書は、紙ベースで行った場合、申請・承認・決裁といったプロセスを要するため、さまざまな担当者の手に渡ります。

その際に、コア業務に忙殺されデスクに置かれたままの状態になり、承認処理が停滞したり、申請書類を紛失したりするなどの課題が多くなる傾向があります。電子化すれば、会社以外でも申請や承認ができるため、業務ペースを効率化できます。

管理の煩雑さ

稟議書を紙をファイリングして収納する場合、物理的にスペースが必要になります。また一般的な紙は、環境の変化にも弱いことがあげられます。虫害や湿気で稟議書が読めなくなってしまうこともあるため、環境の管理が必要です。

以上のような理由から稟議書の保管は従来の紙ではなく電子での保管に移行しつつあります。

稟議書の法的な保存期間について

会社の一部資料には、法律によって保存期間が定められているものが存在します。一方で、稟議書の保存期間は現在法律で定められてはいません。ですが、稟議書は決済の履歴をさかのぼって確認する資料のため永年保管することが望ましいです。

電子化の対象となる稟議書の例

電子化の対象となる稟議書には、以下のような例があります。おもに、購入・支払い関連、経理・人事関連の稟議が電子化の対象となっています。稟議を必要とする事項は、実際に費用が発生する事案が多い傾向にあります。

稟議の内容によっては、承認者が複数設定されている場合もあるため、電子化することにより、承認の効率がスピードアップします。

  1. 物品の発注や購入
  2. システム・サービスの導入
  3. 休暇・休日出勤・残業の申請や承認
  4. 住所変更の申請
  5. 出張申請
  6. 交通費の申請
  7. 企業間での契約の締結

紙ベースで稟議業務を行うデメリット

紙ベースでの稟議業務は、古くから日本の商習慣として行われていたワークフローです。しかし、一連の業務が完了するまで時間を要し、管理に手間がかかるなどの課題が多くあります。以下では、紙ベースでの稟議業務についてのデメリットを具体的に解説します。

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紙ベースで稟議業務を行うデメリット

  1. 承認までに時間がかかる
  2. 保管・検索に手間がかかる

承認までに時間がかかる

紙ベースでの稟議業務に関する最大のデメリットは、承認までに時間がかかることが挙げられます。時間がかかる要因としては、稟議内容により、承認者を複数設けている場合もあり、承認者の回覧がスムーズにいかないケースが多い傾向にあります。

また、稟議書は承認処理を後回しにされやすく、承認者がコア業務に忙殺されると、デスクに置かれたままになることもあります。稟議内容により、承認担当者が異なる場合もあり、現在どの場所で停滞しているのか、把握しにくいこともデメリットです。

保管・検索に手間がかかる

稟議書は、法令で保管期間の定めは特にありませんが、会社の決裁に関する事項が記録されているため、永久保存するのが望ましいです。また、稟議書に添付されている書類には、保管期間の定めのある書類も存在します。

稟議書の書類の保管は、永久保存しておくと保管場所の確保も必要になります。期間が長くなると、書類量も膨大になり、検索が必要な場合手間がかかり、大きな業務負担になりかねません。

稟議書を電子化するメリット

稟議書は電子化することで、さまざまなメリットが得られます。システムの導入により、業務のスピードが上がり、業務負担の軽減などが期待できます。具体的にどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。

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決裁までのスピードが上がる

従来の紙ベースで行っていた稟議業務は、承認者が出張などで不在の場合、承認業務が停滞していました。稟議書のワークフローを電子化すれば、どこにいても承認業務が行えます。そのため、決裁までのスピードが上がり業務がスムーズになります。

また、社内に居ない場合でも承認業務を行えることから、リモートワークにも向いています。紙ベースでの稟議業務は、複数の担当者を回覧するプロセスを要するため不向きです。電子化すれば、リモートワークや働き方の多様化にも対応できます。

申請者・承認者の負担が減る

稟議書を電子化することで、申請者・承認者ともに負担が軽減されます。申請者はシステム上で稟議申請を行うと、自動的に承認のタスクが担当する上司に渡ります。そのため、稟議書を上司に提出しに出向く手間を省くことが可能です。

また、承認者は承認すべきタスクの内容を確認し、承認ボタンを押すだけでプロセスが完了します。そのため、溜まった稟議書を確認し、1枚ずつチェックしてハンコを押す必要がなくなります。電子化することで、脱ハンコの取り組みも可能です。

内部統制を強化できる

稟議業務を電子化することで、内部統制の強化にも役立ちます。紙ベースの稟議書の場合、上司が不在の間に勝手に承認される、といった不正が行われることも、たびたびあるケースです。

そういった不正を防止するためにも、稟議書の電子化は必要性が高いです。電子化することで、承認状況や停滞状況を可視化でき、監視体制も整います。業務プロセスを見える化することで、健全で効率的なワークフローの内部統制が可能です。

リモートワークにも対応できる

稟議書を電子化することで、リモートワークにも対応できます。紙ベースでの稟議業務は、複数の担当者を経由し、承認のハンコが必要です。そのため、書類のやりとりが難しいリモートワークには向きません。

電子化された稟議書は、申請者よりタスクとして承認者に送られるため、スムーズに決裁までプロセスが進みます。そのため、業務スピードが上がり、効率化が期待できます。電子化することで、承認のハンコも不要になるためリモートワークにも適しています。

印刷や保管のコストを削減できる

稟議書は紙ベースで行う場合、企業によってオリジナルのテンプレートがあり、コピーで申請書を作成する場合や、印刷会社に依頼するケースなどさまざまです。いずれにしても印刷コストが発生します。

稟議書を電子化することで、データ間でプロセスのやりとりを行うため、紙媒体の申請書が不要になり、用紙代や印刷代などのコストを削減できます。

また、稟議書は保管期間の定めがないため、処分しても問題ありませんが、会社の決裁事項が記載されているため、永久保存が望ましいとされています。電子化すれば、書庫を確保する必要もないため、保管料などを支払っていた場合は保管のコストも削減可能です。

データを保護しやすい

稟議書を紙ベースで扱う場合、災害が発生した際、申請書が燃えたり濡れたりするリスクが高い状態です。しかし、電子化することにより、データの破損や消失のリスク対策にもなり、電子保存された稟議書は守られます。

また、紙ベースの場合、書き換えなどの不正が行われる可能性もあります。不正に対するリスクも、電子化することで改ざんが難しくなるため対策が可能です。電子化で、さまざまなリスクからデータを保護できます。

稟議書電子化の導入方法

稟議書を電子化するには、ワークフローシステム・グループウェアなどを導入する方法があります。それぞれの特徴を具体的に解説します。

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ワークフローシステムを使う

稟議書を電子化する方法のひとつが、ワークフローシステムの導入です。ワークフローシステムは、さまざまな業務の申請・承認・決裁を電子化し、可視化させることで業務のスピードアップが望めます。

ワークフローシステムは、低価格で導入できるクラウド型や、自社で運営を行うオンプレミス型があり、企業の規模や使用する人数、求める機能によってツールを選定します。稟議書に関するワークフローの流れを効率化するためのツールとして適しています。

グループウェアを使う

グループウェアは、スケジュールやワークフロー、共有ファイルなど社内業務の可視化と共有ができるツールです。チャットや掲示板など、社内の連絡や通達にも役立ちます。稟議書を電子化するには、グループウェアのワークフロー機能を活用します。

グループウェアで申請することで、パソコン以外のデバイスからもアクセスできるため、外出先からでも承認が可能です。また、リアルタイムで進捗状況が可視化できるため、停滞状況なども確認できます。

稟議書を電子化する際の注意点

稟議書を電子化すると、さまざまなメリットが得られます。しかし、電子化するに当たり、注意すべき事項がいくつかあります。導入により、メリットを得られるようにこれらの事項にも注意しなければなりません。

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システム導入・運用のコストがかかる

稟議書を電子化することで、紙ベースの申請書が不要になるため、印刷代などのコストを軽減できます。しかし、電子化するためのシステム導入に関わる費用や、ランニングコストがかかります。安価なツールもありますが、機能を追加すると高額になるケースもあります。

システムを導入する際は、あらかじめ予算を決めたり、導入する前と後での費用対効果が高いかどうかを考慮したりする必要があります。会社の規模やシステムを利用する人数によっても予算は変わるため、求める機能などをピックアップしておくと良いでしょう。

電子化すべきではないものもある

稟議書を電子化する場合、グラフや図が多用されたものなどは、紙のままのほうが見やすいケースもあります。紙と電子の稟議書が混在すると、保管や管理がしにくい状態になるため、PDF化して添付すると良いでしょう。

稟議書に付随する添付書類も、紙ベースの書類であるケースも考えられるため、なるべくデータとして保存するためには、スキャンを行いPDFで保存するのが望ましい方法です。書類内容を確認して、適切なデータでの保存を行う必要があります。

現状の業務フローや規程を見直しておく

システムを導入する際は、導入前に現状の業務フローや規定に無駄や問題がないか確認しておきましょう。課題を洗い出すことにより、必要なワークフローに絞り込むことが可能です。

絞り出した業務プロセスに見合った機能が備わったツールを選ぶことで、システム導入のコストを抑えられます。また、ワークフローを整備するには、ツールに合わせるのも最適化の手段として挙げられます。

簡単に導入できるシステムを選ぶ

稟議書を電子化できるシステムを導入する際は、簡単に導入や運用ができるシステムを選ぶと良いでしょう。たとえば、今まで使っていたExcelの稟議書をそのまま流用できるものなど、導入の際業務移行に負担がかからないものを選ぶのが望ましいです。

また、専門知識のない社員でも使えるように、シンプルな操作画面で簡単に入力や操作できるものを選定するのがおすすめです。操作方法や、トラブル発生時などのサポート体制に関しても確認しておくと安心できます。

まとめ

従来の紙ベースで行っていた稟議業務は、承認作業が停滞しやすく、時間がかかることが課題でした。しかし、電子化することで、業務のスピード感が上がり、申請書類の印刷代や、書類の保管料などのコスト削減が期待でき、脱ハンコの取り組みにも役立ちます。

稟議書を電子化する際は、ワークフローシステムやグループウェアを活用する方法がありますが、導入にはコストがかかることや現状の業務フローの見直しを確認する必要があります。健全で効率的な内部統制の強化のためにも、稟議書の電子化を進めましょう。

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