エドテック(EdTech)とは|意味やメリットをわかりやすく解説

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  • エドテックは、教育格差やグローバル化への対応といった教育現場の課題解決に役立つ
  • エドテックでは、遠隔地でも平等に教育を提供することができ、教員の負担も軽減する
  • エドテックでは、リアルな人間関係の構築が難しく、ITリテラシーが必要になる

エドテック(EdTech)は、テクノロジーを用いて新しい教育支援をサポートするサービスです。本記事では、エドテックが注目される理由や市場規模、エドテックでできること、メリット・デメリット、導入する方法や今後の課題についてわかりやすく解説します。

目次

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  1. エドテックとは
  2. エドテックの市場規模
  3. エドテックが注目される理由
  4. エドテックでできること・未来の教育
  5. エドテックのメリット
  6. エドテックのデメリット
  7. エドテックを導入する際のポイント
  8. 日本におけるエドテックの今後の課題
  9. まとめ

エドテックとは

エドテックとは、「Edcation」と「Technology」を合わせた造語で、テクノロジーを教育分野に取り入れて変革を目指す取り組みを指します。教材からサービス、学習ツール、ビジネスモデルなど、教育に変革をもたらすものを幅広く意味します

近年では、新型感染症の影響で本来の授業が実施できなくなったことや、教育現場における働き方改革など、社会の状況の変化に合わせてテクノロジーを利用した最適な教育体制が考案されるようになりました。

エドテックの活用により、既存のシステムにとらわれない新たな価値の創造ができるため、教育領域における様々な問題の解決が期待されています。

eラーニングとの違い

eラーニングは、インターネットの環境下でPCやスマホ、タブレットなどのデバイスを用いて学ぶ学習方法です。エドテックよりも前から浸透していた学習方法で、教育現場や企業研修でも多く取り入れています。

eラーニングは学習することが目的であることに対し、エドテックは教育に関わる領域の全てにデジタルを活用し、教育現場や学習の概念に変革をもたらすことを目的としています。

エドテックの市場規模

エドテックの市場規模は、日本を含めて世界で拡大し、日本では補助金制度も用意されています。ここでは、世界と日本におけるエドテックの市場規模について解説します。

世界のエドテック市場規模

エドテックの市場規模は、世界で拡大しつつあります。特に中国は、発祥地のアメリカを上回る額でエドテックのスタートアップ企業に投資しています。また、国の政策で教育環境にエドテックサービスを推進する動きもあります。

これにより、すでにアメリカやイギリス、中国では、初等教育のカリキュラムにプログラミング組み込まれ、エドテックへ積極的であることがわかります。

日本のエドテック市場規模

日本では、エドテックツールの導入を行う企業や教育機関に対して補助金制度があり、エドテックに取り組める環境が整いつつあります。また、新型感染症の影響で対面の事業が困難になったこともあり、さらに注目されるようになりました。

このような要因から、多くのエドテック関連のツールやコンテンツが提供され、市場規模は拡大しています。しかし、日本の教育方法がアメリカなどと異なる点や、地域によってエドテックへの取り組みに差があるため、海外と比較すると普及スピードは緩やかといえます。

エドテックが注目される理由

エドテックは教育領域の価値観に変化をもたらす取り組みとして、注目が高まっています。ここでは、エドテックが注目される理由を詳しく解説します。

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教育の格差の是正

エドテックは教育格差を是正できることが期待されています。それは、学習者が学習内容を理解し、習得するまで学び続けられるためです。

例えば、教師一人に対して数十人の生徒が教わる従来の教育スタイルでは、生徒の理解度や習得スピードにばらつきが発生します。生徒によっては、授業が進むごとに理解が追いつかなくなることで学習意欲も下がるため、やがては教育格差につながる恐れがあります。

また、地域格差や経済格差から受けられる教育が違うことも、教育格差が発生する大きな課題です。なお、近年はインターネットで低価格で教育を受けられるサービスもあります。

エドテックの活用により、環境に左右されない平等な教育や個々に合った学習方法が受けられれば、教育格差の是正に期待できるでしょう。

グローバル化への対応

エドテックの活用により、グローバル化に対応した人材を育成できます。グローバル化が進む現代では、将来の活躍の幅を広げるために英会話スキルやグローバルな視点を持つことが必要です。

エドテックによって、海外の講師による授業や、英語や日本語以外の言語で会話を行う機会が増えると、グローバルに対する意識の醸成ができるでしょう。

教育現場の働き方改革

エドテックは、教育現場の働き方改革にもつながることで注目されています。教員は一人当たり数十人の生徒を受け持ち、個別の状況把握や保護者との面談、課題の配布・回収など、「授業」以外の作業が膨大です。

エドテックを利用すれば、教員にかかる負担を大幅に削減できます。例えば、学習管理ツールで生徒の進捗度を自動で記録できれば、個別の学習状況の把握が簡単になります。つまり、エドテックを活かすことで、教員の働き方の満足度の向上が期待されています。

新型ウイルス・災害への対策

エドテックは、新型ウイルスや災害で授業が困難になっても、インターネット環境が整っていれば時間や場所にとらわれず学習できます。そのため、学べる環境を保つことができ、新型感染症を機にリモート授業が取り入れられた学校も多いです。

災害などの予期せぬ事態において、通学が不可能になった場合でも学習を続けることで、復興・復帰した際にスムーズに学習の再開が可能になります。

エドテックでできること・未来の教育

エドテックは教育領域における新しい価値を創造しています。ここでは、エドテックでできるようになることや、期待されている未来の教育について解説します。

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オンライン学習

オンライン学習は、エドテックの中でも認知度が高い学習方法です。インターネット環境があれば場所を問わず授業を受けられるため、災害時や学級閉鎖の場合も生徒学習を続けられます

サービスによっては、学校の授業では受けられないようなセミナーや一流大学の講義を配信している場合もあります。これにより、個人が関心のある内容を選択して学習することができ、地域による教育格差の解消にも大きく貢献するでしょう。

また、教育現場では、教師が生徒の態度に左右されず教育に集中できるため、教師のストレス低減の面でもメリットがあると言えます。

アダプティブラーニング

アダプティブラーニングとは、学習者に合わせたレベルの内容で行われる学習です。進捗度や理解度を記録し、合わせた学習内容にすることで学習者のペースで学習できます。

その結果、一人の教師が把握しきれない情報をツールによって管理できるため、生徒に手厚い学習機会を与えることができます。これにより、習得ペースによる教育格差の解消につながり、個々の能力を最大限に引き出せるでしょう。

VR・ARを使った疑似体験学習

最新のVR・ARでは、疑似体験学習が可能です。VRは完全な仮想空間を作り出し、現実では体験できない災害現場や宇宙空間を現実のように再現します。実際にイメージしにくい場面を疑似体験させることで、好奇心や嗜好力の醸成につながります。

現実の一部を仮想化するARは、テキストなどの現実の映像に仮想の画像や映像を組み合わせることで、学習者の理解度の促進や関連性の気づきを与えることが可能です。

STEAM教育の実現

STEAM教育はScience(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)Mathematics(数学)の5つの領域を対象として、従来の科目に加えて重要視されている分野の教育です。

探求と創造をサイクルさせ、クリエイティブな発想による課題解決や新たな価値の創造を目的とされています。様々な分野でAIが台頭している中、STEAMの資質を身につけた人材の育成が求められてきています。

なお、STEAM教育のためのコンテンツの配信や学習ツールの利用なども、エドテックを通して可能になります。

個人に適した学習プログラム

エドテックでは、個人に適した学習プログラムで学べます。例えば、自分の分からなかった部分は戻って復習ができ、反対に先取りして学習することもできます。教師は記録された学習状況から一人ひとりに合わせた指導が可能になるでしょう。

生徒個人が自身の最適なペースで勉強に取り組めることで、本来の才能や強みの気づきが期待できます。

効率的な学習管理

エドテックは、教員にとっても効率的な学習管理方法として大きな役割を果たします。具体的には、生徒の学習状況を把握する学習管理ツールや、保護者・生徒ともやり取りできるSNS型のツールにより、これまで直接の対面のみで行っていた面談なども簡略化できます。

また、LMSツールを活用して、教材や指導計画書の作成などにおけるサポートを受けられれば、授業以外に必要だった事務作業をシステム化でき、教員の大幅な負担軽減につながります。

エドテックのメリット

エドテックは教育領域に革新をもたらすものとして、様々なメリットがあります。ここでは、エドテックのメリットを紹介します。

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場所を問わず平等な教育を提供できる

エドテックは場所を問わずに平等な教育を提供できるメリットがあります。例えばオンライン学習の場合、インターネット環境があれば海外の講義の受講や英会話のやり取りも可能になります。これにより、個々の学びたいことを積極的に学ぶことができるでしょう。

また、経済的な理由で留学ができない場合や遠方で通えない地域のセミナーでも、オンライン学習の活用でその場にいるかのような学習が可能です。その結果、教育格差の解消にもつながります。

双方向のやり取りを通して学習できる

エドテックでは、双方向のやり取りを通した学習が可能です。ただ問題を解いていくだけでは、理解できない部分や行き詰まった部分は解決できないまま終わってしまうでしょう。その際、学習内容の効果を高めるためには、教員からのアドバイスが必要不可欠です。

ツールを使用して教員と生徒がやり取りを行うことで、不明点を質問やアドバイスをしながらの学習が可能です。

また、教師から生徒へのフィードバックも行えます。生徒の学習のモチベーションにもつながるため、教師と生徒のコミュニケーションが取れることもエドテックのメリットです。

一人ひとりに合わせた学習環境を選べる

エドテックは、一人ひとりに合わせた学習環境が選べることもメリットです。静かで落ち着いた場所で学習したい人や、周囲に人がいる方が集中できる人など、求める学習環境は人によって様々です。

その点、エドテックはインターネット環境が整っていれば、個人の好きな環境で勉強ができるため、自由に学習場所を選択できます。したがって、通学が困難な生徒でも他の生徒に置いていかれることなく学習が可能になるでしょう。

閉鎖的な教育現場を可視化できる

教育現場では、生徒と教員との関係値だけでなく、保護者との連絡・連携も必要とされます。特に、生徒同士の問題やトラブルに関しては、教員でも状況把握が難しい場合も多く、保護者とのやり取りも重要な役割を持っています

したがって、通常閉鎖的である教育現場において、エドテックでSNSによる情報共有などを活用することで、学習の進捗状況や悩みなどを可視化できます。その結果、大きな問題やトラブルに発展する前に、迅速に対応できるでしょう。

教員の作業負担が大幅に軽減する

エドテックにより、教員の負担が大幅に軽減されるメリットがあります。教員は授業以外にも、普段から教材の作成や保護者とのやり取り、指導計画の作成などの事務作業に追われています。そのような業務をシステム化することで作業の大幅な簡略化が可能です。

教員は本来の「教える立場」としての役割が発揮できるため、生徒への質の高い指導や教員自身のモチベーションの向上が期待できます。

エドテックのデメリット

エドテックには、メリットだけでなくデメリットがあることも理解しておかなければなりません。ここでは、エドテックのデメリットについて解説します。

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インターネット環境が必要

エドテックは、パソコンやタブレットなどの利用を前提としており、オンライン学習を受けるにはインターネット環境を整える必要があります。そのため、インターネット接続が不安定な地域やWi-Fi環境がない家庭では、オンライン学習を受けることは難しいです。

ひいては、満足に学習を受けられないことで教育格差が生じる恐れがあり、平等な教育の実現が困難になります。そのため、エドテックを導入する際は、地域や家庭内のインターネット整備状況への考慮や、教育格差を生み出さないための対応策の検討が重要です。

リアルな人間関係が築きにくい

エドテックはオンライン上でのやり取りが多くなり、対面でないと伝わらない細かい表現があることから、リアルな関係を構築しにくいデメリットがあります。オンラインに頼ると、対人関係が希薄になり、オフラインのやり取りへの耐性が育たないリスクもあります。

学習内容の中には、人間関係の構築に関わることなど、オフラインで行うべきカリキュラムもあるでしょう。したがって、学習内容に応じてオンラインとオフラインを使い分けることも大切です。

ITリテラシーが必要になる

エドテックを活用するためには、ITリテラシーが必要不可欠です。教員がツールを使いこなせなければ、教育の遅延や質の低下を招くことにもつながります。そのため、教員自身にエドテックを浸透させ、ITツールに慣れるための教育が必要です。

また、学習者においては、不適切なサイトへのアクセスや別用途での端末の使用などで、本来の学習に集中できない可能性もあります。保護者の協力を得た上で、適切な学習環境づくりをサポートするなどの対応が重要です。

個々の学習方法に差が出る

エドテックは、管理者側と学習者側の双方にメリットがありますが、一人ひとりに合わせた学習環境を構築できる反面、個々の学習方法には差が出やすくなります。例えば、より良い環境で学習をしようとすると、学習以外のことも手に付きやすい状態になります。

つまり、本来行うべき学習以外に時間を費やすことも増えてしまい、エドテックの活用が上手くいかない場合があります。そのため、環境づくりも大事ですが、学習に専念できるような指導も求められます。

エドテックを導入する際のポイント

エドテックを導入する際には、以下のようなポイントに考慮することが重要です。

  1. 導入の目的、効果を十分に理解して導入計画を立てる
  2. 適切なエドテック事業者に相談する
  3. 指導にあたる側のITリテラシーを強化する

まずは、事前の入念な計画が必要不可欠です。解決するべき課題や得たい効果を洗い出し、導入の目的を明確化しましょう。目的が曖昧なまま導入すると、自校の教育現場に合わないリスクもあるため、十分な計画が必要です。

計画を立てたら、適切なエドテック事業者に相談して適切なプランや見積もりを出してもらうことが大切です。その際は、実績を確認して信頼性の高い業者を調査して、依頼すると安心です。

また、エドテックを本格的に運用する前には、指導に当たる教員のITリテラシーの教育を実施しましょう。加えて、スムーズな移行やトラブルを防止するための対策が必要不可欠です。

日本におけるエドテックの今後の課題

日本では、エドテックへの理解や利用者・提供者共に環境が整っていないことや、認知度が他国に比べて低いことが課題です。そのため、エドテックを浸透させるには、ICT環境の整備や人々の関心を引き付けるためのビジネスモデルの構築などの取り組みが必要です。

また、認知度が低い中では集客もできず、収益を上げることが難しくなります。エドテックを産業として普及させるためには、教育サービスの収益化が今後の課題です。SNSによる情報発信や推進委員会などの活動内容を調べて、ビジネスモデルを考えることも有効です。

まとめ

エドテックとは、テクノロジーを教育分野に活かしてイノベーションをもたらす取り組みです。その目的は学習に限らず、教育現場の働き方の改善や教育格差の解消など、社会が抱える問題を解決することも期待されています。

インターネット環境があれば場所を問わず授業を受けられるため、海外の大学の講義を受けられるサービスもあります。英会話スキルやグローバルな視点を醸成でき、グローバル化に対応できる人材育成につなげられます。

一方で、リアルな人間関係構築の難しさやITリテラシーの必要性の面で課題があり、対応策を検討することが大切です。エドテックを導入する際は、目的や課題の明確化が必要不可欠です。本記事を参考にエドテックを活用し、教育現場が抱える課題解決を目指しましょう。

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