予算管理システムとは?機能やメリット・デメリットについて解説!
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- 予算管理システムを導入することで予算に関するさまざまな管理業務を効率化できる
- 予算管理とは、主に売上・原価・経費・利益の4つの予算を管理していく業務である
- 予算管理システムの機能やメリット、デメリットを把握して選ぶことが重要
予算管理システムとは、予算に関するさまざまな業務を効率化させるシステムのことです。予算管理システムの導入により、業務の効率化だけでなく分析や評価の正確性が向上します。この記事では予算管理システムの機能やメリット・デメリットなどについて解説していきます。
予算管理システムとは
予算管理システムとは、集計・分析・予測といった予算管理業務を数値データベースで運用するためのシステムです。たとえば予算・実績の差異を算出し、過去の会計期間との比較や分析に役立てるといった使い方ができます。
エクセルやアクセスなどの電子帳票に基づく予算管理業務とは異なり、手作業が少ない分ミスが生じにくく、大量のデータを管理できるのが特徴です。また、部門単位で管理できるため、責任の所在を明らかにできます。
事業の採算を部門別に把握し弱点を洗い出す場合に役立つほか、経費の予算超過・超過科目などを追跡する場合にも重宝します。予算管理システムは管理会計を本格化し、経営管理の強化を図りたい場合に最適です。
予算管理とは
予算管理とは、簡単にいえば一定の会計期間における予算を管理・運用する業務です。たとえば会計期間を1年と設定した場合、年度・月次の単位で予算を決定し、期間ごとの集計を行えるよう枠決めします。
会計期間の実績が確定した後に予算との比較を行えば、差異を数値ベースで明らかにできます。差異要因の分析に役立つほか、過年度との業績比較・将来の利益予想といった業務にも活用可能です。
管理会計との親和性が高いのも大きな特徴です。財務会計・税務会計が実績に基づいて運用されるのに対し、管理会計は予算・実績の両方を意識する必要があります。企業の財務体質・運営強化のためにも、予算管理は欠かせない業務です。
クラウド型・パッケージ型
予算管理システムにはクラウド型・パッケージ型の2種類があります。両者の特徴をメリット・デメリットで分けると下表の通りです。
分類 | メリット | デメリット |
---|---|---|
クラウド型 | ・導入が手軽 ・中小企業に適している ・最新の制度に対応しているものが多い | ・会計部門が多い場合には不向き ・独自のルールを運用しにくい |
パッケージ型 | ・多くの会計部門を一元管理しやすい ・短期間で導入できる ・オフラインでも使用できる | ・機能追加にはコストと時間がかかる ・法改正に対応できない |
クラウド型は組織・事業の規模が小さく、導入作業をコンパクトにまとめたい場合に便利です。パッケージ型は運用費用がかからない上にオフラインでも使用できるため、導入時にかけられるコストや予算管理システムを使用する環境に合わせて選びましょう。
予算管理システムの機能
予算管理に関する基礎知識を踏まえ、ここからは予算管理システムで利用できる具体的な機能について解説します。詳細は以下の通りです。
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機能 | 主な内容 |
---|---|
予算計画 | 事業計画に沿って予算を分配・管理する |
実績集計 | 会計期間・部門ごとの実績を集計する |
シミュレーション | 利益・経費などの試算・予測 |
一元管理 | 全会計部門のデータを一括で集計する |
フィードバック | 評価に対する部門からのフィードバックを管理 |
差異分析 | 予算・実績の差異に対する分析 |
予算計画
予算計画とは、事業計画に沿った予算配分・戦略などの総称です。部門ごとに策定した活動内容・実施時期に合わせて、適切な予算を配分します。各部門の予算計画が全社予算の大枠を左右するため、特に重要な業務です。
一般的には前年度・前々年度といった近い年度の実績に基づいて策定されるため、過去データが高い精度で蓄積されているのが望ましいと考えられます。
予算計画をシステム上で運用すれば各部門の予算編成手続きを簡素化できるほか、入力したデータを予算実績対比などの作業に転用できるため、業務の効率化に期待できます。
実績集計
実績集計は、事業活動の実績を数値データとして集計する機能です。各部門の実績を数値ベースで集計し、全社トータルの数値として算出します。エクセル帳票のように手作業で集計する場合は対象部門が多いほど手間がかかり、ミスも多くなりがちです。
一方、予算管理システムの実績集計機能を利用すれば、多くの部門を抱える大企業でも簡単に集計できます。また、システムに取り込んだ段階でデータソースとして活用できるため、異なる会計期間の数値データとの比較や分析などに素早く転用可能です。
シミュレーション
シミュレーション機能は業績の試算・予測などを支援する機能です。たとえば第3四半期時点での実績値を元に年間ベースの売上・利益を試算したり、前年度業績との比較をシミュレーションしたりといった使い方ができます。
予算・実績のデータベース化が進んでいるほど多くのパターンでシミュレーションできる点も、特徴の1つです。決算短信作成・発表のように不確定要素を考慮しつつ業績予測する必要がある場合に役立つほか、社内会議向けの業績予測資料を作成する場合にも重宝します。
一元管理
一元管理とは全社ベースでのデータ管理を行う機能です。「実績集計」の項目で述べたように、部門が多岐に渡る場合でも全社トータルでの結果を一元で把握できます。
一元管理機能は後述する「差異分析」においても効果的です。差異に異常値が浮上した場合でも原因を追跡しやすく、勘定科目・部門・会計期間といった単位でチェックできます。
また異なる会計期間のデータも同じシステム上で管理できるため、比較が容易です。集計・分析・シミュレーションといった機能も、一元管理がベースになっています。
フィードバック
フィードバック機能は各部門に付けられた評価に対し、部門側からの所見・コメントといったフィードバックを返せる機能です。Googleスプレッドシートや共有エクセルシートといったフォームを用意せずとも、予算管理システム上で完結できるメリットがあります。
また個別連絡をなくせるため、メールの送受信・挨拶を含むテキスト作成といった手間も不要です。サーバーに対する負荷の軽減にも役立ちます。
差異分析
差異分析機能は異なる数値データ間の差異を算出し、分析しやすくする機能です。たとえば予算と実績の差異や、シミュレーションにおける予算と試算値の差異を算出するのに役立ちます。
差異は金額・比率といった複数の指標で表示できるため、傾向をグラフ化する場合にも有用です。たとえば、金額ベースでは芳しくなくとも比率上は上昇基調・%ベースでは微増でも年々増加しているといったように、複数の視点で傾向をつかむのに役立ちます。
予算管理システムのメリット
予算管理システムの各種機能・特徴を踏まえ、以下では予算管理システムのメリットについて詳しく解説します。
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予算管理システムのメリット
予算管理業務を効率化できる
予算管理業務において、予算入力用のエクセルフォーム作成および配布・資料回収・データ転記といった作業はネックになりがちです。煩雑になりやすいほか、人為的なミスが起こる場合も珍しくありません。
予算管理システムを利用して部門ごとにデータ入力する仕組みを整えれば、資料回収・転記といった単純作業を省略できます。また運用が明快になるため、業務の属人化を防げる点もメリットです。
分析や評価が正確にできる
予算管理システムは管理会計の運用強化に役立ちます。予算達成状況・数値推移などを数値データによって可視化できるため、現状分析・評価を高い精度で実現可能です。
また、予算管理システムを基軸としたKPIの設定・PDCAサイクルを確立するのにも効果的です。部門ごとの運営意識を向上させ、ミクロレベルでも成果をあげられる効果が期待できます。運用の継続に伴い精度向上が図れるため、中長期の活動促進にも有効です。
セキュリティ対策ができる
予算管理システムの導入は、セキュリティ対策の面でも有用です。予算関係のデータ交換に伴うファイル誤送信・ウイルス感染による情報漏洩など、手作業ならではの潜在リスクを低減できます。
エクセルなどのファイルを使用しない分、外部へのデータ持ち出し・流出リスクを減らせる点も魅力です。また、部門間でのデータ編集・改ざんといった内部トラブルのリスクも低減できるため、数値データの信頼性向上にも寄与します。
部門ごとの責任が明確化され、従業員のモチベーションアップになる
予算管理システムによって共通のプラットフォームが整備されると、部門別の業績・数値情報が明確化されます。部門ごとの責任が明確化される分、経営管理の意識向上が欠かせません。
そのため売上促進・コスト削減といった意識が高まりやすく、結果として従業員のモチベーションアップにつながります。また1人当たりの責任がある程度明確化されるため、手抜き・サボりといった非生産的な行動を抑止するのにも有効です。
情報共有がしやすく経営判断を迅速化できる
予算管理システムを導入すれば、部門間共通の経営管理プラットフォームが確立できます。業績チェックの度にエクセルシートを配布したり、参照用のスプレッドシートをアップロード・更新したりする必要がありません。
共通のデータベースを参照しながら議論できる分、経営判断の迅速化を促せるのも大きなメリットです。数値管理・目標達成といった意識が高まるほか、各人が経営者に近い視点で物事を判断できるようになり、結果として社員の質向上につながります。
属人化が解消される
予算管理システムを活用することで、属人化しやすい管理業務を専門知識がなくても行えるようになります。従来、予算管理に必要なデータの分析には特定のスキルや長年の経験が必要で、属人化が課題となっていました。
しかし、予算管理システムを使用することでさまざまなデータが可視化され、属人化が解消できます。
予算管理システムのデメリット
残念ながら、メリット満載の予算管理システムにもデメリットはあります。具体的なデメリットを2つピックアップして紹介します。
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予算管理システムのデメリット
導入するためのコストがかかる
予算管理システムの導入には多少なりともコストがかかります。無料タイプを導入する場合でも、データ移行に向けた準備・移行作業・データ整合性のチェックといった労働コストが必要です。
また有料タイプを選ぶ場合、運用費用は中長期的に発生します。パッケージタイプでも同様で、システムメンテナンス・アップデートなどに伴う保守料が欠かせません。そのため導入費用だけでなく、ランニングコストも意識する必要があります。
月額料金制のサブスクリプションサービスを提供している企業もあるので、自社の規模・財政状態に適したものを選びましょう。
他システムとの連携が可能か確認が必要
予算管理システムを導入する場合、既存システムとの兼ね合いを考える必要があります。特に自社で運用している会計ソフトのデータと連携できるかどうかは大事なポイントです。連携できない場合は手入力の作業を要するため、効率的ではありません。
上記を踏まえ、自社運用の既存システムと連携できるものを優先的に選びましょう。なおデータ連携はオプション機能に分類されるため、有料タイプの予算管理システムに搭載されているのが一般的です。無料タイプのシステムでは利用できない可能性があります。
予算管理システムの選び方
予算管理システムを選ぶ際には、以下8つのポイントに注目するアプローチがおすすめです。各ポイントの詳細を解説しますので、参考にお役立てください。
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予算管理システムの選び方
データ移行のしやすさ
予算管理システム導入時の作業として、特にボリューム・インパクトの大きいものがデータ移行です。データ移行時に手作業が多いと手間がかかるだけでなく、ヒューマンエラーのリスクも高まります。
具体的には、既存ファイル類からの数値データ取り込み・インポート作業を簡単に行えるものがおすすめです。数値データ取り込み・インポートの機能は、無料タイプよりも有料タイプに搭載されている場合が多いです。
導入目的に合った機能はあるか
予算管理システムの導入によって得られるメリット・効果を十分に検討しましょう。どんなに評価の高いシステムを導入しても、自社の目的に適合しない場合は宝の持ち腐れです。
たとえば使いやすさ・管理しやすさを重視する場合は、効率性の向上を望めるかどうかがポイントです。エクセル帳票に代表される従来の運用と比較し、どの程度効果があるかを見極めしましょう。
なお、製品によっては無料トライアルや月単位での契約形態を提供している場合もあります。使いやすさ・効果を試してから最終判断を下す方法もあるので、十分に検討しましょう。
他システムと連携できるか
予算管理は予算管理システム以外のシステムと連携して使用するため、すでに導入済みの他システムとの連携性の確認が必要です。会計ソフトをはじめ販売管理システムなど、さまざまなシステムとの連携が求められます。
予算管理に必要なシステムと連携できないと正確な予算管理ができず、管理業務の効率化も半減してしまうため、連携性は必ず確認しましょう。
サポート体制は整っているか
システム運用において、メーカー・ベンダーなどによるサポート体制は重要なポイントの1つです。特に管理会計システム導入・運用開始といった初期段階では、社内のシステム担当も十分な知識・ノウハウを習得していない場合があります。
運用開始後も社内の組織変更・会計基準の変更といった変化に合わせてカスタム・メンテナンスする作業が必要なため、特に有料パッケージ版を利用する場合は、大事なポイントです。
またシステムのアップデートにより新機能が追加されるケースがあるため、既存のノウハウだけでは対応できないケースも考えられます。予算管理システムは長期運用してこそ真価を発揮します。
自社のノウハウだけでは対応できない事象が生じた場合にサポートを受けられるかどうか、事前に確認しておきましょう。
費用が自社に見合っているか
予算管理システムは有料・無料の2タイプに分かれます。有料タイプを選ぶ場合は導入に必要な費用を確認の上、自社の条件に適合するかを入念に検討しましょう。
単一のシステムにこだわらずに複数の候補をピックアップし、メリット・デメリットを比較しながら相見積もりを取るのも効果的です。なお、有料タイプには買い切り制・月額料金制の2種類があります。
買い切り制のシステムは非常に高額である一方、基幹ソフトをカスタマイズし自社に最適化した仕様で提供されるため、融通が利く場合が多いです。月額料金制のシステムは無料タイプよりも機能性・汎用性が高く、多くの組織を統括する場合にも対応できます。
ただし、買い切り制システムと比べてカスタマイズの柔軟性は低いため、独自のルールを適用したい場合には不向きです。
複数のパターンでシミュレーションができるか
複数パターンの予算シミュレーションを設定・実施できるかどうかも見逃せないポイントです。決算予測・利益試算などを行う際には、数値変動の可能性を折り込む必要があります。
特に数値変動の可能性がいくつもある場合は、予算管理システム上でシミュレーションのパターンを複数用意できる体制が理想的です。
各種会計基準に対応しているか
予算管理システムを選ぶ際には、自社で採用している会計基準に対応しているかどうかもチェックしましょう。日本国内で認められている会計基準は以下の4種類です。
会計基準 | 概要 |
---|---|
日本会計基準 | 日本独自の会計基準。一般原則・損益計算書原則・貸借対照表原則が基本 |
米国会計基準 | 米国財務会計基準審議会が定める基準。財務会計基準書・FASB解釈指針などに基づく |
IFRS(国際会計基準) | EU圏内の上場企業に義務付けられている基準。時価評価を重視するのが特徴 |
J-IFRS | IFRSの内容をベースに、日本の経済情勢・国内事情などに合わせて調整した基準 |
外国語・外貨に対応しているか
海外に拠点がある・国外企業との取引がある企業の場合は、外国語・外貨に対応しているかどうかも確認したい事項です。特に外貨対応のシステムは基準日の為替レートを自動取得できるため、煩雑なレート換算を手作業で行う必要がありません。
作業上のロス・計算ミスを削減するためにも、外国語・外貨に対応しているシステムを選びましょう。なお予算管理システムにおいて外国語・外貨対応はオプション機能の位置づけであり、無料タイプには搭載されていない可能性があります。
まとめ
予算管理システムは、管理会計を本格運用したい企業に適しています。予算達成状況・財政状態などをチェックしやすくなるほか、部門別の業績・経費を視覚化できる・責任の所在を明確化できるといったメリットがあります。
一方で、予算管理システムの導入にはコストがかかります。無料タイプを選んだとしても移行には相当な労力・時間といったコストがかかるため、スムーズに移行できるものを選びましょう。本記事を参考に、自社にとってベストの予算管理システムを見つけてください。
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