SPOとは?SPOの意味や基準、今後の動向をわかりやすく解説

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  • SPOはサステナブル株式公開の略で、上場企業が持続可能性に対して資金調達する手段
  • SPO認定は、第三者がESGを審査し環境問題など19の基準を満たしていることが条件
  • ESG投資の増加や大企業の動向から、SPOは今後、日本でも拡大していくと予想される

SPO(Sustainable Public Equity Offering)とは「サステナブル株式公開」の略で、すでに上場している企業がESGパフォーマンスの向上を目的として行う資金調達です。本記事では、SPOの意味やESGと合わせた今後の動向などをわかりやすく解説します。

目次

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  1. SPOとは
  2. ESGとは
  3. SPOを満たすための19の基準
  4. SPO・ESGの今後の動向
  5. まとめ

SPOとは

SPOは、「Sustainable Public Equity Offering(サステナブル株式公開)」の略称で、サステナブル(持続可能)な経済成長を重視する企業が、株式市場で株式を公開して資金を調達する手段です。

ESG要因(環境、社会、ガバナンス)が重要視され、企業の持続可能性や社会的責任に焦点が当てられます。SPOにより、企業は成長戦略の実行や新プロジェクトの資金調達が可能となり、投資家の株主基盤が多様化します。

また、株式市場の規制や財務情報の開示を行うことで、企業経営における透明性が高まります。昨今、投資家は企業のESG評価を重視しているため、サステナビリティに対する関心が高まっています。

以上のことから、企業はSPOによって自社の持続可能性に対する取り組みを強化し、市場からの信頼を築くことが期待されます。

SPOとIPOの違い

SPOとIPO(Initial Public Offering)は、いずれも企業が株式市場で株を公開して資金を調達する手段ですが、2つには大きな違いがあります。

SPOは持続可能性を重視する企業が行う公開であり、ESG要因(環境、社会、ガバナンス)が重要視されます。企業の社会的責任や環境への影響が評価され、投資家はこれらの要素に基づいて投資判断を行います。

さらに、SPOでは既存株主が追加投資するケースもあり、投資家は企業のESGに対する取り組みや持続可能性に着目します。一方、IPOは未公開企業が初めて株式を公開することを指し、主に企業成長と利益追求が大きな判断材料となります。

資金調達の目的と対象企業が異なる

SPOは持続可能性への投資を促進し、企業の社会的な責任を高めることに寄与します。対して、IPOは新規株式の発行が主で、既存株主における株の売却は少ないです。投資家は過去のパフォーマンスや、将来の成長見通しに焦点を当てることが多いです。

つまり、企業が知名度と信用度の向上を目的に成長資金として調達するIPOと、持続可能なプロジェクトあるいはESGパフォーマンスの向上を目指して成長と拡大を図るIPOとでは、資金調達の目的が異なります。

また、SPOはすでに上場している企業が追加の資金調達を行う手段で、IPOは未上場企業が初めて株式を公開するための手段という点でも大きな違いがあります。

ESGとは

ESGは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの要素を指す略称で、企業の持続可能性を評価する指標となります。対して、SPO(サステナブル株式公開)とは、持続可能性を重視した公開手段です。

ESGの環境要因では、企業の環境への影響や持続可能な経営が評価されます。社会要因では、社会的責任や労働条件、ダイバーシティなどが重要視されます。そして、ガバナンス要因では企業の組織体制や情報開示、株主権利保護が評価対象です。

SPOがESGに考慮した会社であることを示すために、ESG評価やレポーティングを行うことが重要です。その結果から、企業は自社のESG取り組みを公開し、投資家に向けて企業の透明性を提供します。

ESGに焦点を当てたSPOは、企業が社会的な責任や環境への配慮を強化し、長期的な持続可能性を追求する姿勢を示す、重要な機会となります。近年、投資家はESG情報に基づいて投資判断を行い、持続可能性に貢献する企業に対して支持を示す傾向が高まっています。

ESGとSDGsの違い

ESGは企業の持続可能性を評価する指標であり、環境、社会、ガバナンスの3つの要素に焦点を当てます。これに対して、SDGsは国際連合が採択した17の持続可能な開発目標であり、2030年までに包摂的な世界を実現するための、持続可能な指針です。

ESGは、主に企業の社会的責任や環境への取り組みを評価するために使用され、投資家や市場参加者に企業の持続可能性を示す指標として活用されます。

一方、SDGsは国際的な開発目標であり、地球環境の保護、貧困削減、平等な社会の構築など、幅広い課題に取り組むための枠組みです。SDGsは国際社会全体に適用され、政府・企業・市民社会など、さまざまなステークホルダーの連携が必要とされています。

ESGとSDGsは補填し合う関係にある

ESGとSDGsは、共に持続可能性に焦点を当てていますが、ESGは企業の評価指標を示し、SDGsは国際的な開発目標・全体的な持続可能性を推進する目標として位置づけられています。

つまり、ESGは企業が取り組む課題であり、SDGsは政府・企業・各個人を含めたすべての人が取り組む課題です。双方は補填し合う関係にあり、企業や投資家がESGを考慮し、SDGsの達成に向けて貢献することで、より持続可能な社会の実現を目指しています

SPOを満たすための19の基準

SPO認定を受けることによりSPOを満たすための基準は、以下の表にまとめたとおりで、企業の持続可能性を重視することが主眼となります。ESG要因を評価し、持続可能性に対する取り組みを透明かつ客観的に示すことが必要です。

また、良好なコーポレートガバナンスの強化、適切な財務情報の開示、将来の成長戦略と収益見通しの明確化も求められます。

さらに、ESG専任の役員が1名以上必要です。この役員は企業のESG戦略を専門的に担当し、重要なESGイニシアティブを進める役割を果たします。ESG専任の役員の存在は、企業が持続可能性に真剣に取り組んでいることを示す、重要な要素となります。

SPOは持続可能性を重視する企業にとって有益な手段であり、投資家や市場参加者に対して企業の社会的責任、環境への影響、ガバナンス強化に向けた取り組みを示すことで、信頼性と透明性を高めます。

ESGに焦点を当てたSPOは、持続可能な社会の実現を目指す企業の積極的な貢献を促進する役割を果たしています。

項目番号内容
ESG格付け1広く認知された第三者ESG格付け機関から評価を受け、その情報を開示する(当該機関がカバーする企業のトップ3分の1に入る必要がある)
ミッションとパーパス2自社のビジネスモデル、製品およびサービスが主要なステークホルダーに関連してどのように社会・環境へのポジティブインパクトを与えるかを明示する
ミッションとパーパス3SASBやGRI等のESG情報開示基準に従い、ESGへのコミットを毎年報告
気候と環境4気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に基づいて報告を行う、あるいは初回SPO評価日から24ヶ月以内に報告を行い、気候関連リスクについて開示する
気候と環境5自社だけではなく、サプライチェーン全体における温室効果ガス排出量について報告する
気候と環境6遅くとも2040年までに、サプライチェーン全体における排出量ネット・ゼロかつ気温上昇を1.5度までに抑えるための計画を提示する
気候と環境7自社にとって最も重要な環境問題(水、廃棄物/サーキュラリティ、生物多様性、土地利用、エネルギー利用等)に対処するための全社方針やプログラムがある
バリューチェーン8最も重要な環境問題(水、廃棄物/サーキュラリティ、生物多様性、土地利用、エネルギー利用等)への対処を求めるための方針、プログラムがある
バリューチェーン9国際労働機関(ILO)が定義する労働基準、または現地の法的要件のいずれか高い方に基づいて、ティア1サプライヤーの労働基準が適切かどうか監視する方針、プログラムがある
ピープル10従業員の多様性(性別、性的指向・宗教・障害・年齢など)の実現・維持にコミットする
ピープル11賃金格差をなくす上での進捗状況を報告する
ピープル12国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に従い、人権ポリシーを設定する
ピープル13初回SPO評価日から24ヶ月以内に、信頼できる第三者の測定枠組みを用いて、全従業員に対する生活賃金要件を設定し、実施する
ガバナンス14取締役会がESGに関する事項をどう監督するか明文化する
ガバナンス15取締役会の多様性を実現・維持する
ガバナンス16役員報酬をESG指標のパフォーマンスに連動させているか、あるいは初回SPO評価日から1年以内に連動させ、指標が重要なESG課題にどのように関連しているかを開示する
ガバナンス17ESGにフォーカスした役員(チーフ・サステナビリティ・オフィサーなど)が1人以上いる
ガバナンス18初回SPO評価日から6ヶ月以内に、政策提言、政治献金、業界団体への参加を、これらのサステナビリティ基準に合わせていく
ガバナンス19社員が匿名で倫理方針と懸念事項について報告できる手段と方針がある

参考:Sustainability Principles and Objectives (SPO) Framework|BSR

SPO・ESGの今後の動向

近年では、SPOとESGに対する世界の注目が高まっており、企業は今後の動向について将来を見通すことが重要です。

そのためには、持続可能性がビジネスにおいて不可欠な要素となり、投資家や市場参加者は企業のESG取り組みを評価することで、長期的な成長と社会的な影響を重視しています。

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大企業もESGを支援している

大企業が、ESGを支援している具体的な取り組みは多岐にわたります。例えば、環境への取り組みとして、再生可能エネルギーの利用や排出削減策の推進が挙げられます。

また、社会貢献活動では、地域社会に対する寄付やボランティア活動、教育支援、災害救援などを行っています。

企業のガバナンス強化には、外部取締役の任命や情報開示の向上が含まれます。ESGレポーティングを通じて、企業はESG戦略や目標・実績を投資家やステークホルダーに提供しています。
これらの取り組みにより、大企業はESGに対する支援を示し、持続可能な社会を創り出すために貢献しています。ESGへの取り組みは、企業の信頼性と持続的な成長を促進し、投資家や市場参加者による、ESG重視の投資ニーズに応えることが期待されています。

世界ではESG投資が増えている

ESG企業の価値が上がっている主な理由は、投資家の関心増加、リスク管理の強化、顧客の選好、法規制による影響が挙げられます。

投資家は企業の社会的責任と環境への影響を評価し、ESG要因を重視する傾向が高まっていますが、ESG評価の高い企業を、長期的な成長とリスク軽減の可能性が高いと見なしています。

ESG企業はリスク管理を強化し、社会的なリスクに対処することで、投資家に安定性を提供します。また、消費者の意識変化により、持続可能性に配慮した企業に対する顧客の選好が高まっており、市場での競争力を向上させています。

さらに、環境や社会に対する法規制が強化されており、ESG企業は法令遵守に積極的に対応し、支援策を受ける場合があります。
これらの要因により、ESG企業は投資家からの信頼を得やすく、社会的な影響を持続的な発展に向けたプラス要因へと変えることで、企業価値を向上させています。

日本でのSPO・ESGの拡大

日本では現在、海外ほどSPOの広がりは見られませんが、ESG投資の成長や持続可能性への関心の高まりにより、今後SPOが拡大すると予想されます。

実際に、すでにESGに対する取り組みを強化してる日本企業があり、投資家や市場参加者の社会的責任と、環境に対する影響への関心が高まっています。また、日本政府のESGに対するサポートも年々増えています。

海外の成功事例や、持続可能な企業価値の向上に着目することで、日本の企業もSPOを通じて投資家の信頼を得る機会を作り出せます。そして、ESG評価の高い企業は投資家からの注目を集め、ESG投資のポートフォリオに含まれる可能性が高まります。

さらに、持続可能性への取り組みは社会的な貢献につながり、企業の信頼性とブランド価値の向上に寄与します。これらの要因から、日本でもSPOが拡大し、持続可能な成長に向けた企業努力が加速することが期待されます。

まとめ

SPOは持続可能性を重視した株式公開の手段であり、ESG要因を評価して、企業の持続可能性を示す重要な指標となっています。企業はSPOによって社会的評価を高め、投資家からの信頼度・注目度も高めます。

SPOの基準には、ESG要因の評価や透明な情報開示、良好なコーポレートガバナンスの確保などが含まれています。また、SPOを成功させるためには、ESG専任の役員が1名以上必要であるなど、基準を満たすための要件が設定されています。

日本ではまだ、SPOの広がりは海外ほど顕著ではありませんが、ESG投資の成長と持続可能性への関心の高まり、海外での成功事例からも、今後SPOが拡大すると予想されます。ESGに対する取り組みを強化し、持続可能な成長に向けた努力が重要です。

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