SPOとは?SPOの意味や基準、今後の動向をわかりやすく解説

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- SPOとは、企業のサステナビリティを担保する新しい上場形態
- SPO認定には、企業の持続可能性に関する厳格な基準を満たす必要がある
- ESG投資の増加や大企業の動向から、SPOは今後、日本でも拡大していくと予想される
SPO(Sustainable Public Equity Offering)とは「サステナブル株式公開」の略で、サステナビリティに配慮した企業であることを証明する新しい上場形態です。本記事では、SPOの意味やESGと合わせた今後の動向などをわかりやすく解説します。
SPOとは

SPOは、「Sustainable Public Equity Offering(サステナブル株式公開)」の略称で、企業が上場する際に、サステナビリティに配慮していることを証明するための新しい枠組みです。
従来のIPO(新規株式公開)とは異なり、ESG(環境、社会、ガバナンス)に関する厳しい基準をクリアすることが条件となります。
具体的には、CO2排出量削減や人権問題への取り組み、ガバナンスの透明性など、企業活動全体で高いESG基準を満たす必要があります。
2021年にアメリカのシューズ会社が、初めてこの枠組みでの上場を試み、注目を集めました。持続可能な社会の実現が求められる中、企業の上場における新たな選択肢として期待されています。
SPOとIPOの違い
SPOとIPO(Initial Public Offering)の主な違いは、上場時の評価基準にあります。IPOは非公開企業が初めて株式を公開する際の一般的な形式で、主に財務状況や事業性が評価されます。
一方、SPOは従来のIPO要件に加えて、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する19の基準を満たすことが求められます。つまり、企業は財務情報だけでなく、ESGへの配慮も投資家にアピールすることになります。
持続可能な社会への関心が高まる中、SPOは投資家のESG投資ニーズに応える新しい上場形態として位置づけられています。これは単なる資金調達だけでなく、企業の社会的責任も重視する新たな上場形式といえます。
SPOとIPOにおける投資家の目的
IPOとSPOにおける投資家の目的には、共通点と相違点があります。IPO投資家は、主に新規上場による株価上昇や企業の成長性に期待して投資を行います。これは上場時点で企業価値が市場で十分に評価されていない可能性があるためです。
一方、SPO投資家は、ESGに配慮した経営を重視し、企業の長期的な価値向上と持続的成長を期待します。ただし、両者とも企業の成長性への期待と投資リターンの追求という基本的な目的は共有しています。
ESGとは

ESGは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの要素を指す略称で、企業の持続可能性を評価する指標となります。
近年、従来の財務情報だけでは、環境問題や社会貢献に対する企業姿勢が見えづらく、長期的な収益性も判断しにくくなっています。そこで、ESGへの取り組みを重視する「ESG投資」が注目されています。
SPOは、厳しいESG基準をクリアすることで、企業が自社の持続可能性を投資家にアピールする有効な手段と言えます。
企業は、SPOを通してESG経営を推進することで、投資家からの信頼獲得、企業価値向上、持続可能な社会の実現に貢献することが期待されています。
ESGとSDGsの違い
ESGは企業の持続可能性を評価する指標であり、環境、社会、ガバナンスの3つの要素に焦点を当てます。これに対して、SDGsは国際連合が採択した17の持続可能な開発目標であり、2030年までに包摂的な世界を実現するための、持続可能な指針です。
ESGは、主に企業の社会的責任や環境への取り組みを評価するために使用され、投資家や市場参加者に企業の持続可能性を示す指標として活用されます。
一方、SDGsは国際的な開発目標であり、地球環境の保護、貧困削減、平等な社会の構築など、幅広い課題に取り組むための枠組みです。SDGsは国際社会全体に適用され、政府・企業・市民社会など、さまざまなステークホルダーの連携が必要とされています。
ESGとSDGsは補填し合う関係にある
ESGとSDGsは、共に持続可能性に焦点を当てていますが、ESGは企業の評価指標を示し、SDGsは国際的な開発目標・全体的な持続可能性を推進する目標として位置づけられています。
つまり、ESGは企業が取り組む課題であり、SDGsは政府・企業・各個人を含めたすべての人が取り組む課題です。双方は補填し合う関係にあり、企業や投資家がESGを考慮し、SDGsの達成に向けて貢献することで、より持続可能な社会の実現を目指しています。
SPOを満たすための19の基準

SPO認定を受けるためには、企業の持続可能性に関する厳格な基準を満たす必要があり、その要件を以下の表にまとめました。中心となるのは、環境・社会・ガバナンス(ESG)への配慮です。
具体的には、ESG要因に関する評価、持続可能性に対する取り組みの透明性の高い開示、コーポレートガバナンスの強化、財務情報の適切な開示、将来の成長戦略や収益見通しの明確化などが求められます。
さらに、SPO認定を受けるには、ESG専任の役員が1名以上必要です。これは、企業が持続可能性に真剣に取り組む姿勢を明確に示すものです。
SPOは、企業が自社の社会的責任、環境への影響、ガバナンス強化への取り組みを投資家に示すことで、信頼性と透明性を高める効果があります。
このように、SPOは持続可能な社会の実現に向けて企業が積極的に貢献することを促進する重要な枠組みとして機能しています。
項目 | 番号 | 内容 |
---|---|---|
ESG格付け | 1 | 広く認知された第三者ESG格付け機関から評価を受け、その情報を開示する (当該機関がカバーする企業のトップ3分の1に入る必要がある) |
ミッションとパーパス | 2 | 自社のビジネスモデル、製品およびサービスが主要なステークホルダーに関連して どのように社会・環境へのポジティブインパクトを与えるかを明示する |
ミッションとパーパス | 3 | SASBやGRI等のESG情報開示基準に従い、ESGへのコミットを毎年報告 |
気候と環境 | 4 | 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に基づいて報告を行う、 あるいは初回SPO評価日から24ヶ月以内に報告を行い、 関連リスクについて開示する |
気候と環境 | 5 | 自社だけではなく、サプライチェーン全体における温室効果ガス排出量に ついて報告する |
気候と環境 | 6 | 遅くとも2040年までに、サプライチェーン全体における排出量ネット・ゼロ かつ気温上昇を1.5度までに抑えるための計画を提示する |
気候と環境 | 7 | 自社にとって最も重要な環境問題(水、廃棄物/サーキュラリティ、 生物多様性、土地利用、エネルギー利用等)に対処するための 全社方針やプログラムがある |
バリューチェーン | 8 | 最も重要な環境問題(水、廃棄物/サーキュラリティ、生物多様性、 土地利用、エネルギー利用等)への対処を求めるための方針、プログラムがある |
バリューチェーン | 9 | 国際労働機関(ILO)が定義する労働基準、または現地の法的要件の いずれか高い方に基づいて、ティア1サプライヤーの労働基準が 適切かどうか監視する方針、プログラムがある |
ピープル | 10 | 従業員の多様性(性別、性的指向・宗教・障害・年齢など)の 実現・維持にコミットする |
ピープル | 11 | 賃金格差をなくす上での進捗状況を報告する |
ピープル | 12 | 国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に従い、 人権ポリシーを設定する |
ピープル | 13 | 初回SPO評価日から24ヶ月以内に、信頼できる第三者の測定枠組みを 用いて、全従業員に対する生活賃金要件を設定し、実施する |
ガバナンス | 14 | 取締役会がESGに関する事項をどう監督するか明文化する |
ガバナンス | 15 | 取締役会の多様性を実現・維持する |
ガバナンス | 16 | 役員報酬をESG指標のパフォーマンスに連動させているか、 あるいは初回SPO評価日から1年以内に連動させ、 指標が重要なESG課題にどのように関連しているかを開示する |
ガバナンス | 17 | ESGにフォーカスした役員(チーフ・サステナビリティ・オフィサーなど) が1人以上いる |
ガバナンス | 18 | 初回SPO評価日から6ヶ月以内に、政策提言、政治献金、 業界団体への参加を、これらのサステナビリティ基準に合わせていく |
ガバナンス | 19 | 社員が匿名で倫理方針と懸念事項について報告できる手段と方針がある |
参考:Sustainability Principles and Objectives (SPO) Framework|BSR
SPOのメリット・デメリット

SPOには企業にとって大きなメリットがある一方で、注意すべきデメリットも存在します。ここでは、SPOの導入による影響を、プラス面とマイナス面から解説します。
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SPOのメリット
企業にとって、SPOは資金調達手段としてだけでなく、企業価値向上のための有効な手段となりえます。まず、ESGを重視する投資家から資金調達できるため、従来よりも幅広い投資層へのアピールが可能になります。
また、ESGへの取り組みは、企業の持続的な成長やリスク管理能力の向上に繋がり、長期的な企業価値向上に貢献します。
さらに、社会的に責任ある企業としてブランドイメージを高めたり、従業員のエンゲージメントやモチベーション向上を促進する効果も期待できます。
そしてもちろん、調達した資金をESG関連の新規事業やイノベーション創出のための投資に活用できるという大きなメリットも見逃せません。
SPOのデメリット
SPOは多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。まず、ESG情報開示には、財務情報開示とは異なる専門知識やリソースが必要となるため、人的・時間的コストの増加は避けられません。
また、投資家からの期待に応えるために、積極的なESG目標設定と達成が求められ、企業にとって大きなプレッシャーとなる可能性もあります。
さらに、ESGへの取り組みを実態以上に誇張しているとの批判を避けるため、常に透明性の高い情報開示と実効性のある取り組みが求められ、これらへの継続的な対応が必要となります。
SPO・ESGの今後の動向

近年では、SPOとESGに対する世界の注目が高まっており、企業は今後の動向について将来を見通すことが重要です。
そのためには、持続可能性がビジネスにおいて不可欠な要素となり、投資家や市場参加者は企業のESG取り組みを評価することで、長期的な成長と社会的な影響を重視しています。
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SPO・ESGの今後の動向
大企業もESGを支援している
大企業が、ESGを支援している具体的な取り組みは多岐にわたります。例えば、環境への取り組みとして、再生可能エネルギーの利用や排出削減策の推進が挙げられます。
また、社会貢献活動では、地域社会に対する寄付やボランティア活動、教育支援、災害救援などを行っています。
企業のガバナンス強化には、外部取締役の任命や情報開示の向上が含まれます。ESGレポーティングを通じて、企業はESG戦略や目標・実績を投資家やステークホルダーに提供しています。
これらの取り組みにより、大企業はESGに対する支援を示し、持続可能な社会を創り出すために貢献しています。ESGへの取り組みは、企業の信頼性と持続的な成長を促進し、投資家や市場参加者による、ESG重視の投資ニーズに応えることが期待されています。
世界ではESG投資が増えている
ESG企業の価値が上がっている主な理由は、投資家の関心増加、リスク管理の強化、顧客の選好、法規制による影響が挙げられます。
投資家は企業の社会的責任と環境への影響を評価し、ESG要因を重視する傾向が高まっていますが、ESG評価の高い企業を、長期的な成長とリスク軽減の可能性が高いと見なしています。
ESG企業はリスク管理を強化し、社会的なリスクに対処することで、投資家に安定性を提供します。また、消費者の意識変化により、持続可能性に配慮した企業に対する顧客の選好が高まっており、市場での競争力を向上させています。
さらに、環境や社会に対する法規制が強化されており、ESG企業は法令遵守に積極的に対応し、支援策を受ける場合があります。
これらの要因により、ESG企業は投資家からの信頼を得やすく、社会的な影響を持続的な発展に向けたプラス要因へと変えることで、企業価値を向上させています。
日本でのSPO・ESGの拡大
日本では現在、海外ほどSPOの広がりは見られませんが、ESG投資の成長や持続可能性への関心の高まりにより、今後SPOが拡大すると予想されます。
実際に、すでにESGに対する取り組みを強化してる日本企業があり、投資家や市場参加者の社会的責任と、環境に対する影響への関心が高まっています。また、日本政府のESGに対するサポートも年々増えています。
海外の成功事例や、持続可能な企業価値の向上に着目することで、日本の企業もSPOを通じて投資家の信頼を得る機会を作り出せます。そして、ESG評価の高い企業は投資家からの注目を集め、ESG投資のポートフォリオに含まれる可能性が高まります。
さらに、持続可能性への取り組みは社会的な貢献につながり、企業の信頼性とブランド価値の向上に寄与します。これらの要因から、日本でもSPOが拡大し、持続可能な成長に向けた企業努力が加速することが期待されます。
まとめ

SPOは持続可能性を重視した株式公開の手段であり、ESG(環境、社会、ガバナンス)要因を評価して、企業の持続可能性を示す重要な指標となっています。企業はSPOによって社会的評価を高め、投資家からの信頼度・注目度も高められます。
SPOの基準には、ESG要因の評価や透明な情報開示、良好なコーポレートガバナンスの確保などが含まれています。また、SPOと認定されるためには、ESG専任の役員が1名以上必要であるなど、基準を満たすための要件が設定されています。
日本ではまだ、SPOの広がりは海外ほど顕著ではありませんが、ESG投資の成長と持続可能性への関心の高まり、海外での成功事例からも、今後SPOが拡大すると予想されます。企業はESGに対する取り組みを強化し、持続可能な成長に向けた努力が必要です。
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