ファクタリングとは|意味やメリットデメリットをわかりやすく解説

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  • ファクタリングでは、融資を断られた企業でも素早く資金調達ができる可能性がある
  • ファクタリングには悪徳業者が存在するため、サービスを選ぶ際は十分な注意が必要
  • ファクタリングは、一時的な資金調達や短期的な資金調達に向いている

ファクタリングは「債権買取り」のことで、経済産業省が中小企業に向けて推奨している資金調達方法です。スピーディーに資金調達できる点が魅力です。本記事では、ファクタリングの仕組みや種類、メリット・デメリットの他、ファクタリングが役立つシーンなどについて解説します。

目次

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  1. ファクタリングとは
  2. ファクタリングとその他の資金調達方法の違い
  3. ファクタリングの仕組み
  4. ファクタリングの種類
  5. ファクタリングのメリット
  6. ファクタリングのデメリット
  7. ファクタリングが役立つシーン
  8. ファクタリングの利用に必要な書類と流れ
  9. ファクタリング会社を選ぶときのポイント・注意点
  10. まとめ

ファクタリングとは

ファクタリングとは、未回収の売掛債権をファクタリング会社に売却することで、取引先からの支払いを待たずに現金化できるサービスを指します。

そもそもファクタリングとは「債権買取り」を意味し、掛け取引の仕組みを利用した資金調達方法の1つです。掛け取引では取引先からの代金の支払いを後からまとめて受けますが、この代金を回収する権利が「売掛債権(売掛金)」です。

ファクタリングでは、売掛債権の売却によってその分の現金を本来の支払い期日よりも前に受け取ることができます。「取引先からの支払いはまだ先だが、早急に資金調達をしなければならない」といったケースで有用です。

中小企業庁もファクタリングを推奨

ファクタリングは中小企業庁が利用を推奨しており、後述する「ABL(売掛債券担保融資)とともに中小企業での利用促進が図られています

その背景には、大企業に比べて中小企業は資金調達の手段が限られており調達のハードルも高いこと、それにより多くの中小企業が経営難に陥れば日本経済に打撃を与えかねないことなどがあります。

売掛債権の利用を促進するために法令や制度の整備も行われています。以下がその例です。

  1. 債権法改正:譲渡制限特約付き債権の譲渡も可能に
  2. 振興基準での努力義務の設定:親事業者・下請事業者間での基本契約で、売掛債権譲渡を行いやすくする事項を盛り込むことが努力義務に

参考:売掛債権の利用促進について|中小企業庁

参考:債権法改正により資金調達が円滑になります|経済産業省

参考:下請中小企業振興法に基づく振興基準の改正について|内閣府ホームページ

ファクタリングとその他の資金調達方法の違い

ファクタリングは事業者が資金を調達する際に有力な候補となる方法ですが、ファクタリング以外にも資金調達の方法はさまざまあります。ファクタリングは他の方法とどのように違うのか、混同されやすい以下3つの資金調達方法と比較して見ていきましょう。

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融資との違い

資金調達の方法として代表的なのが、銀行からの融資です。ファクタリングと融資の大きな違いとしては、調達できる金額と審査の仕組み・難易度が挙げられます。

融資は事業の規模や業績などをもとに融資額が決まる仕組みで、制度ごとに限度額が定められています。そのため、未来の業績への期待から高額な資金調達ができる場合も多いです。一方でファクタリングは、手元にある売掛金以上の資金は調達できません。

また、銀行融資の審査は申込者の信用力が重視されますが、ファクタリングでは売掛金の信用力、つまり売掛先の経営・財務状況などが重視されます。そのため、赤字決算・債務超過など、自社の信用情報に不安がある中小企業でも心置きなく申し込みが可能です。

手形割引との違い

日本で広く利用されてきた資金調達方法に手形割引もあります。手形割引は、銀行や手形割引専門業者に受取手形の割り引きを依頼し、手形の決済期日前に現金化させる方法です。ファクタリングと似ていますが、資金化の対象が売掛債権か手形かという違いがあります。

そして、ファクタリングと手形割引の相違点は、ファクタリングが売掛債権の売買であるのに対し、手形割引は融資として取り扱われる点にあります。

手形割引では手形が期日に決済されずに不渡りになったとき、利用者がその弁済負担を負う「償還請求権あり」の契約に相当します。そのため、返済が発生するリスクがあることがファクタリングとの違いと言えます。

ビジネスローンとの違い

ビジネスローンは事業資金専用のローンのことで、法人や個人事業主が事業運営のために利用します。ビジネスローンとファクタリングの大きな違いは返済義務の有無と信用情報への影響です。

ローンは借入のため、元本と金利を合わせて返済する必要があります。また、利用により負債が増加するため、信用情報にも影響します。

ビジネスローンは、銀行・信用金庫・ノンバンク・信販会社・消費者金融などさまざまな企業が提供していますが、借金の一種であるため利用のハードルが高いと感じる人も多いです。

ABL(売掛債権担保融資)との違い

ファクタリングとABL(売掛債権担保融資)は、どちらも売掛債権を対象にした資金調達方法です。しかし、ファクタリングが売掛債権の売買なのに対し、ABLは売掛債権を担保に設定して融資を受ける方法です

また、ABLでは売掛債権だけでなく、在庫や原材料なども担保として使える場合があります。売掛債権の売却のみであるファクタリングとは異なる点です。

さらに、銀行融資と同様に審査の面でも違いがあります。ABLは融資であるために、審査では利用者の信用力が重要視され、ファクタリングよりも審査の難易度は高めです。

ファクタリングの仕組み

ファクタリングの仕組みを大きく区別すると、買取型と保証型の2つのタイプに分けられます。売掛債権を根拠として資金の提供が行われるのは同じですが、それぞれの用途・資金提供のされ方に違いがあります。

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ファクタリングの仕組み

  1. 買取型
  2. 保証型

買取型

ファクタリングサービスで一般的なのは買取型です。ここまで解説してきたファクタリングの概要と同じで、買取型は売掛債権をファクタリング会社に売却して資金化する方法を指します。

買取型では、売却が成立すれば手数料が差し引かれた金額が入金されます。「ファクタリング」というとこの買取型ファクタリングを指すのが一般的で、より手軽な資金調達方法として近年利用が広まっています。

なお、買取型には、依頼主が売掛先から回収した売掛金をファクタリング会社に支払う「2者間ファクタリング」と、売掛先企業が買掛金を直接ファクタリング会社に支払う「3者間ファクタリング」の2種類があります。

2社間のファクタリング

2社間ファクタリングは、自社とファクタリング会社だけの契約でファクタリングを行う方法を指します。この方法では売掛先を介さないため、売掛先との信頼関係を維持したい場合やファクタリングの利用を隠したいといった際に利用されるケースが多いです。

売掛先に合意を得る必要がなく、ファクタリングの利用事実も知られないため、よりスピーディーに資金を調達できるメリットがあります。しかし、後述する3社間ファクタリングよりも手数料が高く、審査も通過しにくいのがデメリットです。

売掛先に知られずファクタリングを利用したい場合や、迅速な資金調達をしたい場合には、2社間ファクタリングがおすすめと言えます。

3社間のファクタリング

3社間ファクタリングは、売掛先に売掛債権の売却を通知し、自社・売掛先・ファクタリング会社の3社で合意をしたうえで契約が締結されます。売掛先は、自社ではなくファクタリング会社に対して支払を行います。

3社間ファクタリングは、2社間ファクタリングよりも手数料が安く、審査が通過しやすいのがメリットです。また、3社間ファクタリングを提供する企業は主に大手企業であるため、安全性・信頼性が比較的高い点もメリットと言えます。

売掛先に知られたくない特別な事情がある場合を除き、基本的には3社間ファクタリングがおすすめです。ただし、3社間ファクタリングは2社間ファクタリングに比べると契約手続きが煩雑であり、手間と時間を必要とされる点には注意です。

2者間ファクタリングと3者間ファクタリングの違い|共通点も解説

ファクタリングには、2者間ファクタリングと3者間ファクタリングの2種類の取引形態があります。それぞれの特徴を理解し、自社に適した方を選びましょう。この記事では、2者間ファクタリングと3者間ファクタリングの違いや、共通するメリット・デメリットなどを解説します。

保証型

保証型のファクタリングは、資金調達ではなく、取引先の倒産などで売掛金の回収が不能となった場合の備えとして利用されます。保険に近いサービスで、ファクタリング会社が回収不能分を支払ってくれるため、取引先の信用面で不安がある場合に有効です。

保証型ファクタリングには、売掛金の回収が困難と判断されてから保証金を受け取れるものもあれば、売掛先の支払遅延が発生した時点で保証金を受け取れる場合もあります。受け取りの条件がサービスによって異なるため、申し込む前に条件をしっかりとチェックしましょう。

ファクタリングの種類

買取型ファクタリング・保証型ファクタリングの中にも、さまざまな種類のファクタリングが存在します。利用者が属する業種・業界や利用目的によって適したサービスが異なるため、それぞれのファクタリングの特徴について詳しく解説します。

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買取ファクタリング

買取型ファクタリングは上述した「買取型ファクタリング」とほぼ同義ですが、狭義では、下記で解説する医療ファクタリングや将来債権ファクタリングに属さない、一般的なビジネスで発生した売掛債権を対象としたファクタリングを指します。

民間のファクタリング会社が扱っているファクタリングサービスのほとんどはこの買取ファクタリングで、多くの企業に適した種類です。

医療ファクタリング

医療ファクタリングは、買取ファクタリングの一種で、医療債権(診療報酬債権・介護報酬債権など)を利用する取引を指します。

日本では国民皆保険制度が導入されているため、医療費の一部は国・地方公共団体・組合などが負担しています。そのため、各医療機関や介護施設はこのような機関に関して一定の請求権を保有しています。それを活用したものが医療ファクタリングです。

買取の手続きがやや特殊であることから、民間ファクタリング会社では取引を断られるケースがあります。そのため、事前に医療ファクタリング専門業者に相談しましょう。

医療ファクタリングとは?仕組みや利用メリット・注意点を解説

医療ファクタリングとは、医療機関の診療報酬・介護報酬・調剤報酬などの債権をファクタリング会社が買い取り、資金化できるサービスです。債権を早期に資金化でき、新しい医療設備導入などにも役立ちます。この記事では、医療ファクタリングのメリットや注意点などを解説します。

将来債権ファクタリング

将来債権ファクタリングは、文字通り未請求であるが、将来発生する可能性がある債権を利用したファクタリングを指します。

例えば、契約期間1年・毎月決まった金額を支払うといった内容の業務委託契約を特定の企業と交わしている場合、まだ債権そのものは発生していない状態ではあるものの、将来発生する可能性がある請求権を保有していると言えます。

そのため、まとまった金額の資金調達に合う買取ファクタリングに対し、将来債権ファクタリングでは3~6カ月に分けて無理なく財務の改善が図れます。なお、地代・家賃なども将来債権に相当しますが、賃借人が個人の場合は原則として利用できません。

一括ファクタリング

一括ファクタリングは、従来の手形取引に代わる取引方法で、手形取引よりも手間を削減できます。また、他のファクタリング方法とは異なり、代金を支払う側が利用を決めるという点が大きな特徴です。

支払い者が主体となるため3者間の契約となり、支払い者は手形発行などの手間をかけずに手形と同じような取引形態を維持できます。

手形取引の代わりに利用されている決済手段には「でんさい(電子記録債権)」もありますが、でんさいネットへの加入が必要・償還請求権の発生など、一括ファクタリングとはやや条件が異なります。大手金融機関ではでんさいの導入を積極的に進めています。

一括ファクタリングとは?利用メリットやでんさいとの違いも解説

一括ファクタリングとは、金融機関が売掛債権を一括で買い取り、納入企業に代金を振り込むサービスです。支払企業は手形発行の負担を軽減でき、納入企業はスピーディーな資金調達が可能となります。この記事では、一括ファクタリングのメリットやでんさいとの違いを解説します。

保証ファクタリング

保証ファクタリングは、前述した「保証型ファクタリング」とほぼ同義で、最も代表的な保証型ファクタリングの種類です。

ファクタリング会社へ保証料を支払えば、万一売掛先が倒産してもファクタリング会社が売掛金の支払いを肩代わりしてくれるため、売掛金の未回収リスクを避けられます。売掛先倒産後の債権関連手続きに伴う負担軽減などもメリットとして挙げられます。

ただし、保証料が発生するため、ファクタリング会社から受け取れる金額は本来の売掛金額より少なくなるといったデメリットがあります。

国際ファクタリング

国際ファクタリングは保証型ファクタリングの一種で、国内企業が海外企業に商品を販売する際、売掛金の回収を確実に実行するために海外のファクタリング業者を交えて契約を行う方法です。

基本的に、自社(輸出業者)・取引先である海外企業(輸入業者)・輸出国のファクタリング会社・輸入国のファクタリング会社の4者間で契約を行います。

輸出国のファクタリング会社は、輸入国のファクタリング会社から依頼を受け、取引先企業の信用調査や代金回収の保証を行います。取引先は自国側のファクタリング会社に代金を支払い、輸入国のファクタリング会社を経由して自社に代金が渡されます。

リバースファクタリング

リバースファクタリングは、売掛金ではなく買掛金を利用してファクタリング会社が支払いを肩代わりする取引を指します。売掛金を保有する債権者ではなく、買掛金を保有する債務者が利用するという点で通常のファクタリングとは大きく異なると言えます。

一般的に、ファクタリングは売掛金を保有する企業が利用するサービスですが、リバースファクタリングでは買掛金を用いることから、反転を意味するリバースといった用語が使われています。

リバースファクタリングを活用することで、代金の支払いに余裕ができます。そのため、買掛金が多額で支払いに難航するとき・資金繰りに余裕を持たせたいときに利用価値があります。

リバースファクタリングとは?メリット・デメリット、注意点を解説

リバースファクタリングとは、未払いの買掛金をファクタリング会社に立て替えてもらえるサービスです。買掛金の支払期日を先延ばしでき、資金繰りの改善に繋がります。この記事では、リバースファクタリングのメリット・デメリットや利用時の注意点などを解説します。

給与ファクタリング

給与ファクタリング・給料ファクタリングとは、企業の資金調達手段として普及したファクタリングを個人の資金調達に応用したサービスです。売掛債権ではなく、個人の給与を受け取る権利を売ることで、給料日前に現金を得られます。

給与ファクタリングはファクタリングの手法をとっているため、借金とは異なります。ただし、「貸金業にあたる」という見解が示されており、「貸金業登録」を行っていない業者は給与ファクタリングをサービスとして提供することはできません

また、手数料がカードローンなど他の現金調達方法よりも高くなることが多いため、利用には注意が必要です。

参考:ファクタリングに関する注意喚起|金融庁

給与ファクタリングとは?仕組みやリスク、悪徳業者の見分け方を解説

給与ファクタリングとは、給与を債権として買い取ってもらい、給料日よりも前に現金を受け取る手法を指します。しかし、給与ファクタリング業者の中には、悪徳業者も存在するため、利用には注意が必要です。本記事では、給与ファクタリングの仕組みやリスクなどを解説します。

ファクタリングのメリット

ファクタリングは比較的新しい金融サービスですが、利用者数は年々増えつつあります。何故かと言うと、ファクタリングには融資やビジネスローンにはない数多くのメリットがあるためです。ここでは、一般的な買取ファクタリングの8つのメリットについて解説します。

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負債を増やさないで資金調達ができる

債権の売却によって資金調達を行うファクタリングの場合、調達した資金が負債として取り扱われることはありません。負債を増やさずに資金調達が可能なため、債務超過のリスクが発生するなどの不安もなくなります。

負債が多額の場合は企業評価が低下し、新た借入による資金調達も困難になります。負債の増加は将来の資金調達への道を狭めると言っても過言ではなく、長期的な資金繰りの計画を立てる必要があります。

一方で、ファクタリングは負債を抱えない資金調達が可能です。長期的な返済計画を立てる必要もなく、心置きなく資金調達ができる点がファクタリングのメリットです。

最短即日で資金調達できる

銀行などに融資の申し込みを行うと、一定の審査を受けなければならないため、実際に現金を受け取れるまでにはかなりの日数を要します。資金繰りに余裕がある間は支障はありませんが、急な出費の必要がある場合は不向きです。

ファクタリングでも売掛先の業績や信用力などをベースとした審査を受ける必要がありますが、銀行融資より申し込みから現金化までの日数が短く、急な出費にも迅速に対応できます

特に2社間ファクタリングの場合は最短即日で資金調達可能のサービスもあり、すぐに現金が必要といったニーズにも対応しています。

信用情報に影響を及ぼさない

銀行などの融資を受けると、日本信用情報機構(JICC)や全国銀行協会(JBA)などの信用情報機関において、取引履歴・事故情報などの信用情報が登録されることになっています。

返済が遅滞なく終了したとしても、借入れ事実は記録として保存されるため、それ以降の融資審査に影響する可能性があります。

ファクタリングの場合、すでに保有している売掛債権の譲渡によって資金を調達するため、一般的な融資には当たらず、信用情報機関に記録が残る心配もないため心置きなく利用できます。

返済の負担が発生しない

ファクタリングは借入ではありません。他の資金調達方法と違って返済がないため、負担を抱えることなく資金繰りを改善できます。

借入の場合は返済期間が長期に及ぶこともあり、さらに支払いが終わるまで利息も発生し続けます。ファクタリングでも手数料はかかりますが、比較的シンプルな仕組みのため、長期にわたって返済の負担を背負うことはありません。

融資では不利となる要素があっても利用できる

ファクタリングは、自社に赤字・債務超過・税金滞納の事実があっても利用ができます。ファクタリングの審査では、売掛先の信頼度のほうが重要視されるため、自社の業績内容が悪くても審査において大きな影響は及ぼしません。

例えば、ビジネスローンを断られた会社でも、ファクタリングなら問題なく利用できるケースもあります。 ただし、健全な経営が確立されていないと判断されると、手数料が高くなる、審査の通過率が低くなるなどの問題が発生しやすくなります。

担保や保証人を必要としない

ファクタリングでは、先ほど述べたように利用者に対して返還義務が発生しないため、保証人や担保設定を必要としません

銀行融資との違いの解説で調達できる金額や審査の仕組み・難易度を挙げましたが、この点も融資と大きく異なる点です。そのため、ファクタリングはより気軽に利用しやすい資金調達方法として注目されています。

参考:売掛債権の利用促進について|中小企業庁

個人事業主でも利用できる

法人だけでなく、個人事業主の利用も受け付けているファクタリング会社もあります。請求書などがあれば、個人事業主でもファクタリングの利用が可能です。他の資金調達方法のハードルが高いと感じている場合も、ファクタリングなら利用しやすいです。

また、利用者自身や取引先の業種・業態も関係ありません。どのような業界の事業者でも、売掛債権を保有していれば審査に申し込むことができます。特に建設業など新たな案件に多額の初期投資が必要となる事業には向いていると言えるでしょう。

取引先の倒産リスクに備えられる

ファクタリングの利用で、売掛先の倒産リスクを避けられます。仮に売掛先が倒産した場合、売掛金の回収は非常に厳しいのが実態です。大きな損失が出て企業存続に影響を及ぼす可能性もあります。

そこでファクタリングを利用すれば、売掛債権が持つ貸し倒れリスクとともにファクタリングに譲渡することができます。買取ファクタリング契約では償還請求権が発生しないため、万が売掛先倒産した場合でも、利用者が代わりに代金を支払う必要はありません

保険の目的で利用されるのは保証型ファクタリングですが、買取ファクタリングでも未回収リスクを回避できるのです。

ファクタリングのデメリット

ファクタリングには、以上のように多くのメリットがあります。しかし、注意が必要なデメリットが存在するのも事実です。ここでは、ファクタリングを利用する前に知っておきたい4つのデメリットを解説します。

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審査に通らないと利用できない

ファクタリングは融資ではないものの、利用には審査が必要です。ファクタリングの審査は売掛先の支払い能力が重要視されるため、自社の信用力に不安があっても審査が通る可能性は十分あります。

しかし、売掛先の支払い能力が低いと判断された場合、自社の信用力が十分であっても審査に落ちてしまいます。売掛先の支払い能力は自社で対応できる範囲ではないため、審査に通ることを前提にした事業運営は避けましょう

手数料が高くなる場合がある

ファクタリングの大きなデメリットとして挙げられるのが、手数料が高くなる場合がある点です。3社間ファクタリングでは、売掛先がファクタリング会社への支払いを承諾することで未回収のリスクが抑えられるため、手数料に関しても比較的安く設定されています。

一方、2社間ファクタリングでは売掛先を仲介しないメリットがありますが、その分リスクも大きいため手数料はやや高めに設定されています。手数料はファクタリング会社によっても異なりますが、最高で20%程度融資よりも高いと理解しておきましょう。

手数料が高いことで、企業の収益に悪影響を及ぼす可能性があります。特に、高額な資金を調達する場合は、手数料の割高感がよりはっきりと露呈される点に注意しましょう。

資金調達は売掛金の金額内でのみ

買取額に下限・上限を設定していないファクタリング会社も少なからず存在しますが、いずれにせよ売掛債権の額面範囲内でしか資金を調達できない点に注意しましょう。

例えば、500万円分の売掛債権を保有している場合、500万円以内でしかファクタリングができません。それ以上の事業資金が必要な場合は、銀行融資や消費者金融などからの借入を検討しなければなりません。

悪徳事業者・違法業者が存在する

現在多くのファクタリング会社がありますが、違法な手数料を強要する悪徳業者や、事実上暴利の貸付を行う違法業者が存在します。いまだに認知度も低く、比較的新しい資金調達方法のファクタリングは、法律で細かいルールを規定しているわけではありません。

ファクタリング自体は適法なサービスですが、そのような法律の甘さを悪用して、利用者に大きなメリットがあるように見せかけ、実際には不利な契約を結ばせようとすることもあるため、十分な注意が必要です。

金融庁も注意喚起している

悪徳業者や違法業者については金融庁も注意を呼びかけています。金融庁によると、特に「給与ファクタリング」と「偽装ファクタリング」が問題になっているようです。

ファクタリングの一種として給与ファクタリングを紹介しましたが、実際には貸金業に該当します。貸金業登録を受けていないヤミ金融業者が給与ファクタリングと称して借金させているケース多いことに注意が必要です。

また、法人を対象としたサービスでも、ファクタリングに見せ掛け貸金業登録を行っていない偽装ファクタリング業者が違法な貸付けを行っている事例があります。ファクタリングは貸金業の登録がなくても営業できますが、貸付が行われる場合は貸金業の登録が必要です。

参考:ファクタリングの利用に関する注意喚起|金融庁

ファクタリングが役立つシーン

買取ファクタリングの利用で、急いで資金を調達しなければならないときでも、スピーディーに資金を調達することができます。しかし、どのようなケースでもファクタリングが推奨されるわけではありません。

メリット・デメリットを理解したうえで、ファクタリングに合った目的で利用することが重要です。ここでは、買取ファクタリングが役立つビジネスシーンとその理由を解説します。

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一時的な要因で資金状況が悪化している

ファクタリングは、受注の急増により支払いが先行し、一時的な資金が必要なときに役立ちます。例えば、製造業において、受注が急増し生産体制の増強が必要になった場合、材料費や人件費といった費用が多くかかります。

資金が少ない中で急な支払いに対応するために、審査に1〜2カ月かかる融資をあてにするのは現実性に欠けます。この場合、最短即日で資金調達ができるファクタリングの活用がおすすめです。

また、一時的な資金状況の悪化であっても、返済能力が不安視されたりすると融資が断られることがあります。こういった場合は、金融機関ほど審査が厳しくないファクタリングが有力な選択肢となるでしょう。

短期的な資金調達が必要になった

少額の事業資金を、銀行から頻繁に借り入れをするのは回避するべきです。そういった借り入れは審査を通過しにくいだけではなく、信用評価の悪化にも結びつきます。そのため、こうした場合はファクタリングを利用しましょう。

ただし、ファクタリングは即効性の高い資金調達方法ですが、利用期間中は手数料分だけ収益が減ることになります。そのため、1〜2カ月の短期利用で、できる限りつなぎ資金としての利用がおすすめです。慢性的な資金不足にはおすすめしません。

ファクタリングの利用に必要な書類と流れ

ファクタリングの利用申し込みには、主に以下のような書類の提出を求められるのが一般的です。

  1. 登記簿謄本(法人の場合)
  2. 本人確認書類
  3. 印鑑証明
  4. 決算書や確定申告
  5. 入出金明細書
  6. 売掛債権を証明できるもの

ファクタリング会社によって必要書類が異なる場合がありますが、1つでも必要書類が欠けている場合には利用ができません。また、書類によっては準備に1週間程度かかる場合もあるため、できるだけ早目に準備する必要があります。

一般的な契約の流れとしては、最初に利用可否を知るために相談を行います。事前相談により最適なファクタリング会社を発見したら、申し込みを行います。主な申し込み方法には、インターネット・電話・窓口・郵送があります。

申し込みが終了したら、必要な書類の提出を行います。その後提出書類をもとに、ファクタリング会社の審査が行われます。審査完了後、契約内容・条件に合意できたら契約締結され、債権譲渡と資金の振り込みが行われます

ファクタリング会社を選ぶときのポイント・注意点

ファクタリング会社は、それぞれ独自の手数料や利用条件が設定されているため、簡単に比較できないのが難点です。また、新たなファクタリング会社も増加しているため、選択肢が多く自社に適したサービスを選ぶのが難しくなっています。

そこで、そのファクタリング会社が自社に合っているか、また信用できるかどうかを見極めるための7つのポイントについて解説します。

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希望の条件を満たしているか

まず、ファクタリング会社が自社の希望条件を満たしているかどうかを確認しましょう。例えば、売掛金の満額買取りが可能か・個人事業主でも利用可能かなどが挙げられます。

希望金額が多額の場合、ファクタリング会社によっては契約できないことがあります。また、個人事業主が利用できるファクタリング会社は少ないため、注意が必要です。

さらに、現金の受け取りまでにかかる時間も重要です。資金の調達に要する日数は、契約方式によってそれぞれ異なります。

2者間の場合は、最短即日から数日以内、最も早い場合だと数時間で資金調達が可能なサービスもあります。一方、3者間の場合は、売掛先に対しての通達・承諾が必要なため、最短で翌日〜数週間かかります。

手数料の妥当性はどうか

ファクタリングに関して、手数料の上限を規制する法律はありません。しかし、先ほども触れた金融庁の注意喚起において高額な手数料を強要する悪質業者の危険性が記述されているように、相場を大幅に超える場合は利用を控えるのが賢明です。

手数料の相場は、2社間ファクタリングで10%〜20程度、2社間ファクタリングで1%〜10%程度と言われています。

実際の手数料は業者や契約内容によって異なり、売掛先の信頼度・債権の決済日までの残り日数・金額にも左右されるため、一概に相場内で取引されるわけではありません。しかし、妥当な額だと納得できなければ売却は踏みとどまるべきでしょう。

参考:ファクタリングに関する注意喚起|金融庁

会社の信頼性はどうか

ファクタリング会社を選ぶうえでの重要ポイントとして、信頼度の高さがあります。ファクタリング会社においては貸金業登録制度もなく、異業種からも参入しやすいハードルの低さが特徴です。

違法な手数料を強要する悪徳業者なども参入しやすい環境であるため、信頼できるファクタリング会社かどうかの見極めが重要です。ファクタリング会社のホームページや口コミなどを確認し、安心して契約できる優良ファクタリング会社を選びましょう。

担当者の印象は良いか

担当者の説明が分かりやすいかどうかも重要です。多額の金額が扱われる取引であるため、分かりやすい説明があり、熱心に対応してくれる会社を選ぶことが大切です。話やメールやり取りからも、対応の良し悪しはある程度見極められます

どれほど契約条件が良かったとしても、乱暴な言葉遣いがあったり、質問を適当にあしらわれたりなどの違和感があれば、そのファクタリング会社との契約は避けるべきです。

償還請求権のない契約になっているか

償還請求権とは、売掛先の倒産など売掛金が回収できなくなった場合に、未回収の売掛金をファクタリング会社から債権者に請求できる権利です。

本来、債権譲渡であるべきファクタリングで償還請求権があるのは、実質融資ではないかといった議論も裁判所などで発生しています。

そのため、ファクタリングは基本的に償還請求権のない契約になっています。そもそも償還請求権がある契約は買取型のファクタリングに該当せず、悪徳業者である可能性もあるため、償還請求権の有無の確認が必要です。

契約書を再確認する

ファクタリング会社との契約書に記載されている支払い条件(手数料・支払期日・登記の有無など)を確認したら、それと同じ内容の控えを受け取りましょう

通常、2通作成して1通ずつ保管といった方法を取るファクタリング会社がほとんどですが、悪徳業者や違法業者だと渡してもらえないことがあります。その場合は、契約書の内容に違法性があると考えられます。

悪徳業者を見抜く

複数のファクタリング会社からの見積もりを比較することで、手数料の相場を含む一般的なファクタリングに関する契約内容の把握ができます。既に述べたように明らかに手数料が高すぎる場合には、悪徳業者である可能性が出てくるため注意が必要です。

悪徳業者と気付かずに利用してしまうと、高額な手数料の支払いを強要され、支払われる金額が債権額よりも大幅に少なくなるなど、不利益を被ってしまうため注意が必要です。

ここまで説明してきた以下のような点を見極めポイントとして、不明な点があればすぐに問い合わせしましょう。

  1. 契約書で「債権譲渡契約(売買契約)」と定められていない
  2. 契約書がない、または詳細な説明をしたがらない
  3. 手数料が著しく高い
  4. 債権額に比べて明らかに低額な買取代金である

まとめ

ファクタリングとは、売掛金の支払期日前に現金を得る資金調達方法であり、経済産業省が中小企業を中心に利用を奨励しています。

負債を増やさない資金調達・最短即日の資金調達・信用情報に悪影響がない・返済の負担がない・不利な要素があっても利用できる・担保や保証人が不要・個人事業主でも利用可能・売掛先の倒産リスクに備えられるなど、メリットの多さが特徴です。

一方で、希望条件への適合性・手数料の妥当性・業者の信頼性・担当者の印象・償還請求権の有無・契約内容など、サービス選定の際には注意点もあります。本記事を参考に優良なファクタリング会社を選び、利用を検討しましょう。

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