イノベーションとは?イノベーションを起こす企業の特徴も解説

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  • イノベーションとは、産業やサービスにおいて新たな価値を生み出すことを意味する
  • イノベーションが必要な背景は、経済効果の高さや日本の人口減少による問題がある
  • イノベーションを起こす企業の特徴は、自由に提案できる体制が整っていること

イノベーションとは、今までにない革新的なモノ・コト・仕組みなどにより、新たな価値を生み出し社会に変革を起こすことを指します。本記事では、イノベーションの意味や概要から、イノベーションを起こす企業の特徴などをわかりやすく解説します。

目次

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  1. イノベーションとは
  2. イノベーションの定義や種類
  3. 日本企業にイノベーションが求められる背景
  4. 政府によるイノベーションへの取り組み
  5. イノベーションを起こす企業の特徴
  6. イノベーションが起きない原因
  7. イノベーションを起こすためのポイント
  8. まとめ

イノベーションとは

イノベーションとは、わかりやすく説明すると、今までにない革新的なモノ・コト・仕組みなどにより、新たな価値を生み出し社会に変革をもたらす取り組みのことです。

オーストリア出身の経済学者ヨーゼフ・シュンペーターが、1912年に提唱したことから始まりました。

イノベーション(Innovation)は日本語で「技術革新」と訳されますが、必ずしも技術だけとは限りません。新たな技術や製品の開発に加えて、組織や制度のような内的要因の改革にも用いられます。

イノベーションには、「ライフイノベーション」「リノベーション」など似たような言葉があるため、ここからはイノベーションとの違いについて解説します。

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ライフイノベーションとは

ライフイノベーションとは、医療や福祉・健康の分野において、新たな価値を生み出し社会に変革をもたらす取り組みを意味します。具体的には、新しい医薬品や医療機器の開発などがあげられます。

社会に変革をもたらすという点ではイノベーションと同義ですが、医療や福祉などの特定の分野に絞っているという点が異なります。

イノベーションとリノベーションの違い

リノベーション(Renovation)とは、日本語で「修復」「刷新」という意味です。主に建築物の一部を改修して価値を高めることに使われます。たとえば中古物件を購入して耐震性を高めたり、間取りを変えたりすることです。

イノベーションとは、一語しか変わりませんが、意味も使われるシーンも大きく異なるため、間違えないように注意しましょう。

イノベーションの定義や種類

イノベーションは、ヨーゼフ・シュンペーター以外の学者も提唱しており、それぞれ定義や枠組みが異なります。ここでは、「ヨーゼフ・シュンペーター」「クレイトン・クリステンセン」「ヘンリー・チェスブロウ」のイノベーションについて詳しく解説します。

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ヨーゼフ・シュンペーターのイノベーション

ヨーゼフ・シュンペーターは、オーストリアの経済学者です。1912年に発表した論文「経済発展の理論」の中で、「新結合」という言葉を用いてイノベーションを提唱しました。

経済が発展するためにはイノベーションが必要不可欠であり、イノベーションが起きるパターンには、以下の5種類があるとしています。

種類意味
プロダクト・イノベーション新しい生産物の創出
プロセス・イノベーション新しい生産方法の導入
マーケット・イノベーション新しい販売先・消費者の開拓
サプライチェーン・イノベーション新しい供給源の獲得
オーガニゼーション・イノベーション新しい組織の実現

クレイトン・クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」

クレイトン・クリステンセンは、アメリカにあるハーバード・ビジネス・スクールの教授兼実業家です。1997年に発行された著書「イノベーションのジレンマ」で、イノベーションは2種類に分類できると提唱しました。

種類内容
創造的イノベーション・持続型イノベーションとも呼ばれる
・顧客の意見を取り入れながら、既存製品の性能向上を図る
破壊的イノベーション既存の市場や概念を取っ払い、新製品・新サービスで変革をもたらすこと

イノベーションのジレンマが起こる理由

著書のタイトルでもあるイノベーションのジレンマとは、イノベーションを起こそうと顧客のニーズを取り入れて成功していた企業が、新たな時代の流れや競合に対応できず、シェアや優位性を失ってしまうことです。

イノベーションのジレンマが起こる原因は、主に3つあります。1つ目の原因は、成功している既存事業に依存し、破壊的イノベーションへの関心が薄いためです。

たとえば、携帯電話を生産している国内企業があげられます。海外のスマートフォンが市場に参入し、イノベーションのジレンマが起こりました。

また、技術力向上と市場のニーズのバランスが崩れることも主な原因の1つです技術力向上が顧客のニーズを上回ったり、ずれたりすることで生じます。

そして、3つ目の原因は、新たな市場への参入機会を見逃すことです。1つ目、2つ目の原因とつながりますが、既存事業に依存したり、顧客のニーズを見逃したりすると、需要がある市場を見極めるタイミングが遅れてしまいます。

ヘンリー・チェスブロウのクローズドイノベーションとオープンイノベーション

アメリカの経済学者であるヘンリー・チェスブロウは、2003年に「オープンイノベーション」を提唱しました。現代のイノベーションを「オープンイノベーション」というのに対し、従来のイノベーションについては「クローズドイノベーション」としています。

意味は以下の通りです。

種類内容
クローズドイノベーション・1990年代まで主流であったイノベーションモデル
・自前主義で、研究や開発を自社で完結させること
オープンイノベーション異業種や外部機関と協力し、知識や技術を組み合わせて研究や開発をすること

日本企業にイノベーションが求められる背景

海外で提唱されたイノベーションがなぜ日本で注目され、日本企業に求められているのでしょうか。ここでは、企業が直面している日本の課題を踏まえて、イノベーションが求められている理由を解説します。

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経済効果が大きい

日本企業がイノベーションに力を入れる理由は、経済効果が大きいためです。日本の市場は縮小傾向・飽和状態にあります。

そのような状況の中でも、革新的な製品やサービスが開発できれば、注目されてブランドイメージが確立し、知名度も売上も向上するでしょう。企業が生き残り、成長して利益を上げ続けるためには、イノベーションを起こすことが必要不可欠です。

人口減少による生産性の低下

生産性の低下に対応する手段として、イノベーションを起こすことが求められています。近年、日本では人口減少に伴って労働人口が減っていることにより、生産性の低下が問題視されているためです。

また、働き方改革で長時間労働の廃止やテレワークの導入も進んでおり、従来とは違った仕事の仕方に変える必要があります。

そのため企業では、業務効率を高めるシステムやプロセスの改革、AIやIoTなど最新技術を活用した組織のイノベーションを引き起こし、生産性を上げることが求められています。

市場独占の可能性

イノベーションを引き起こすとは、今までにない価値を創出したり、新たな市場を開拓したりすることです。競合他社がいない市場の先行者となれるため、市場を独占できる可能性があります。

イノベーションを起こし、市場を独占できるのは大手企業に限りません。中小企業でもシェアを獲得できるチャンスがあり、既に競合がいる産業に参入するよりも利益を高められ、成長できる可能性を秘めています。

日本市場の縮小と海外での優位性獲得

イノベーションを起こすことは、企業が海外へ進出し、海外市場での優位性を獲得するためにも重要です。

現在の日本は、人口減少の課題を抱えています。この課題は、労働人口の不足に加えて市場の縮小も引き起こしており、日本の市場にこだわり続けると、企業の売上も低迷する一方です。そのため、海外へ進出することが求められています。

海外でも需要が見込まれる新しい技術や製品を開発し、特許が取れれば、グローバル展開しやすく、新規顧客の獲得が期待できるでしょう。

政府によるイノベーションへの取り組み

イノベーションは日本の発展にもかかわる要素です。そのため政府では、2021年から2025年にかけて実施する「第6期 科学技術・イノベーション基本計画」を策定し、日本が目指す未来社会「Society 5.0」の実現に向けて、イノベーションへの取り組みを強化しています。

日本が目指す未来社会「Society 5.0」の実現には、3つの要素が重要だとされています。ここでは、その3つの要素について見ていきましょう。

参考:第6期科学技術・イノベーション基本計画|内閣府

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政府によるイノベーションへの取り組み

  1. イノベーションの強化 
  2. 研究力の強化 
  3. 教育・人材育成

イノベーションの強化 

持続可能で強靭な社会をつくるためには、イノベーションを強化することが必要不可欠だと考えられています。そしてイノベーションを強化するためには、国民の安全安心を確保することを第一として、以下の取り組みを推進することが求められています。

  1. データやAIを活用した社会のデジタル化
  2. 2050年までにカーボンニュートラルを実現
  3. レジリエントで安全安心な社会の構築
  4. スタートアップの創出と企業・大学・公的機関の価値共創
  5. スマートシティの展開
  6. 先進技術の着実な社会実装による経済成長と社会課題の解決

参考:第6期科学技術・イノベーション基本計画|内閣府

研究力の強化 

政府は「研究力」の強化のために、研究機関や研究者が活躍できる環境整備に取り組んでいます。既存の概念にとらわれず、新しいモノを生み出したり、未知の事象に対応したりするためには、基盤となる「研究力」が重要です。

しかし、日本では論文数が減っており、研究力が低下しています。そのため、具体的に以下のような取り組みを強化しています。

  1. 博士後期課程学生の処遇向上・女性研究者の活躍推進・キャリアパスの拡大
  2. 基礎研究・学術研究の振興
  3. 大学改革の推進

参考:第6期科学技術・イノベーション基本計画|内閣府

教育・人材育成

新たな価値を創造して経済を発展させるために、政府は次世代の教育・育成にも取り組んでいます。具体的には、以下の取り組みを強化しています。

  1. 初等中等教育段階からSTEAM教育を実施し、問題発見・課題解決力を身につける
  2. 社会全体が学びを支えるための環境整備
  3. 教育分野におけるDX推進
  4. キャリアチェンジ・キャリアアップに向けた学び直しができる環境・文化の醸成

参考:第6期科学技術・イノベーション基本計画|内閣府

イノベーションを起こす企業の特徴

イノベーションは企業の成長にとって重要であるため、イノベーションを起こしたいと考えている企業も多いでしょう。しかし、どのような企業がイノベーションを起こせるのでしょうか。ここでは、企業の特徴を解説します。

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立場など関係なく自由に提案できる体制が整っている

イノベーションを起こせる企業は、立場や経歴など関係なく、誰でも自由に提案できる体制が整っている傾向にあります。イノベーションのきっかけになるアイデアは、1人のひらめきや社員同士の交流など、思わぬところから生まれる可能性があります。

そのため、社員全員が参加できる新規事業案の募集をしてアイデアを集めたり、積極的に若手や中途社員からの意見を拾い上げたりして、普段から誰でも発言しやすい社内風土を醸成することが重要です。

社外や海外とのコミュニケーションが盛ん

前述で解説した通り、社内のコミュニケーションは非常に重要です。しかし、社外のコミュニケーションが盛んな企業もイノベーションが起こりやすい傾向にあります。

カンファレンスに参加したり、異業種交流・協業したりして、新しい視点や発想に触れるほど、イノベーションにつながる新しいアイデアが生まれやすいでしょう。

また、海外の文化に触れることも大きな刺激になります。グローバル展開をする企業は海外の視点も取り入れることで、海外にも通用するイノベーションを起こせる可能性があります。

会社が失敗も成功の元と捉えてる

イノベーションが起こせる企業は、会社や経営層が失敗も成功の元と捉えている傾向にあります。イノベーションは新しい価値を創造するため、開発失敗や売れないリスクがあり、積極的に動き出せない企業もあるでしょう。

しかし、ある程度のリスクを許容して先行投資しなければ、新しい取り組みはできずイノベーションも生まれません。イノベーションを起こすには、経営層は現状とリスクを正しく把握し、修正や方向転換をうまくマネジメントしながら成功へ導くことが重要です

イノベーションが起きない原因

前述でイノベーションを起こす企業の特徴を解説しましたが、同じような特徴があるにもかかわらず、イノベーションが起きない企業もあります。ここでは、イノベーションが起きない原因について解説します。

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評価制度などが旧態依然としている

イノベーションが起きない原因として、従来の評価制度が足かせとなっていることで、従業員が挑戦しにくい環境であることが考えられます

イノベーションは、既存概念にとらわれない自由な発想と多少のリスクがあっても挑戦することで生まれます。しかし、評価制度が従来の減点方式のままでは、リスクが伴う行動をするのは難しいです。

そのため、イノベーションが起きないと悩んでいる場合は、決められたプロセス通りに仕事ができているかを評価するだけでなく、新しいことにもチャレンジできているかという視点も考慮して人事評価する必要があります。

情報が不足している

イノベーションが起きない原因の1つに、情報不足があげられます。情報とは、自社の現状把握や、他社の動向、顧客のニーズやトレンドなどです。

イノベーションは新しい価値を創造することであるため、競合他社よりも早く豊富な情報を手に入れて、商品・サービスの開発に落とし込めるかがポイントになります。そのため、常に自社の強みや弱みを把握し、最新のマーケティング情報をキャッチすることが重要です。

既存事業に頼りすぎている

既存事業に頼りすぎている場合もイノベーションが起こりにくい傾向があります。特に日本では、既存の製品やサービスを高めることを重視する傾向があり、後発品に対応しきれず競争力が低下することも少なくありません。

また、人員も時間も有限のため、既存事業に固執してしまえば、新しい取り組みに挑戦する機会も失うことになります。そのため、自社商品の競争力を認識し、新しい事業へ移行してイノベーションを自ら引き起こすことも必要です。

イノベーションを起こすためのポイント

イノベーションを起こすためには、企業全体でアンテナを張ったり、人材採用に力を入れたりすることが重要です。ここからは、イノベーションを起こすためのポイントについて解説します。

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イノベーションマネジメントを導入する

イノベーションマネジメントとは、経営者が主体となり、イノベーションを継続的に創出させるための戦略的活動を指します。

イノベーションはひらめきや社員交流からアイデアが出ることもあるため、偶発的のように思えます。しかし、イノベーションが起きない原因を改善し、環境を整えればイノベーションを生み出す可能性は高まります

イノベーションマネジメントを導入するためには、イノベーションを推進するための組織を作り、イノベーションする対象を決め、プロセスを管理・改善しましょう

これにより、イノベーションに向けて組織全体が取り組めているのか客観的に判断でき、効率的にイノベーションが起こせる組織風土が作り出せます。

常にアンテナを張る

イノベーションを起こすためには、顧客や消費者のニーズにアンテナを張りましょう。イノベーションにはひらめきはもちろん、ビジネス環境への理解や市場の変化にいち早く気づくことも大切です。

そのため、顧客がどんなものを求めているのかや、市場の変化を敏感に感じ取れるように、常にアンテナを張っておくことがイノベーションを起こすための鍵になります。

人材採用に注力する

人材採用に積極的になり、力を入れることも重要です。イノベーションを起こすためには、多様性を確保することもポイントです。多様な人材を集めることで、従来では誰も考えつかなかったアイデアが生まれる可能性が高まります

そのため、外国人労働者や異業種の人材を積極的に採用してみるなどの方法を検討してみましょう。

まとめ

イノベーションとは、今までにない革新的なモノ・コト・仕組みなどにより、新たな価値を生み出し社会に変革をもたらす取り組みのことです。企業は、イノベーションを起こすことで、利益・生産性の向上や市場の独占、海外進出できる可能性があります。

イノベーションが起きない原因は、評価制度が改善されていないことや、既存事業に頼りすぎていること、いち早く市場に対応するための情報が不足していることがあげられます。

イノベーションを起こすためには、社内外のコミュニケーションを活発にして、ある程度のリスクを許容してチャレンジすることが重要です。

継続的にイノベーションを創出させたいと考える場合には、イノベーションマネジメントを導入して、戦略的に事業の見直しや組織改革に取り組むとよいでしょう。

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