オンプレミスとは|意味やクラウドとの違いをわかりやすく解説

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  • オンプレミスとは、サーバーなどの情報システムを自社で設置・管理・運用するシステム
  • オンプレミスとクラウドの違いは、自社で管理するかベンダーが管理するかの違いである
  • オンプレミスは時代遅れではないが、導入・利用しやすいクラウドが主流となりつつある

情報システムの形態には大きく分けてオンプレミスとクラウドが存在します。オンプレミスとは、サーバーやソフトウェアなどの情報システムを、自社で設置・管理・運用するシステムを指します。本記事では、オンプレミスの意味やクラウドとの違いをわかりやすく解説します。

目次

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  1. オンプレミスとは
  2. オンプレミスのメリット・デメリット
  3. クラウドのメリット・デメリット
  4. オンプレミスとクラウドどちらが向いているか
  5. オンプレミスは時代遅れなのか
  6. オンプレミスからクラウドに移行するタイミング
  7. まとめ

オンプレミスとは

情報システムの形態には、大きく分けて「オンプレミス」と「クラウド」の2種類があります。オンプレミスとは、サーバーやソフトウェアなどの情報システムを自社で設置・管理・運用するシステムのことです。

オンプレミスは英語の「On the premises(店内/構内で)」が語源で、「premises」は建物・店舗・施設を意味します。そこから転じて、「オンプレミス=社内ネットワークを使用するシステム」という意味で使われるようになりました。

以前までは、システム全般がオンプレミスでした。しかし、2000年代後半からクラウドが登場したため、両者を区別するために、オンプレミスという言葉が使われるようになりました。

昨今では、年々クラウドが主流となりつつありますが、どちらが自社に適しているかを判断するには、オンプレミスとクラウドの違いを理解しておかなければなりません

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オンプレミスとクラウドの違い

  1. クラウドとは
  2. オンプレミスとクラウドの違い

クラウドとは

クラウドとは、情報システムを自社で保有するのではなく、サービスとして提供されているシステムを利用することです。クラウドはインターネット経由でサービスを利用するため、サーバーを構築する必要がなく、システムの管理・運用はベンダーが行います。

また、クラウドで提供されるサービスを「クラウドサービス」といい、利用形態により「SaaS」「PaaS」「IaaS」の3つに分類されます。これらは提供するサービスの範囲が異なり、カスタマイズ性・拡張性などにも違いがあります。

オンプレミスとクラウドの違い

オンプレミスとクラウドには、さまざまな違いがあります。オンプレミスは初期費用が高く、導入後に人件費・機器の維持管理費・固定資産税がかかります。対して、クラウドは初期費用が安価ですが、導入後にサービス利用料がかかります。

導入までの期間は、オンプレミスが3ヵ月〜6ヵ月であるのに対し、クラウドは契約後早くて数日で利用できます。カスタマイズ性・拡張性については、オンプレミスはどちらも自由度が高いのが特徴で、クラウドは利用形態ごとに異なります

また、セキュリティ面はオンプレミスが有利ですが、障害時には自社対応を必要とするオンプレミスと比べると、クラウドが有利ともいえます。そして、オンプレミスは基幹システムとの連携性に優れており、クラウドでは連携できない場合があります

オンプレミスクラウド
初期費用・クラウドと比較して高い・オンプレミスと比較して安い
ランニングコスト・人件費、機器の維持管理費
・固定資産税がかかる
・サービス利用料
・固定資産税はかからない
導入できるまでの期間・3ヶ月〜6ヶ月の目安・契約後すぐ利用が可能
カスタマイズ性・自由度がかなり高い・SaaSは低い
・PaaS・IaaSであれば自由度は高い
拡張性・可能・SaaS・PaaSはサービスによって異なる
・IaaSは拡張性が高い
セキュリティ・高い・オンプレミスと比較して低い
基幹システムとの連携性・連携しやすい・連携できないものもある
障害対応・自社システムなので障害時に弱い・ベンダー対応のためオンプレミスと比較して強い

オンプレミスのメリット・デメリット

オンプレミスには、カスタマイズ性に優れているといったメリットがあれば、いくつかのデメリットも存在します。ここでは、オンプレミスのメリット・デメリットについて解説します。

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メリットデメリット
システムを柔軟にカスタマイズしやすい初期費用やランニングコストが高い
セキュリティの安全性が高い適切な資産管理が求められる
基幹システムと連携しやすい障害やトラブルは全て自社対応

【メリット】システムを柔軟にカスタマイズしやすい

オンプレミスは既存のシステムを利用するのではなく、自社のニーズに合わせてゼロから開発するため、システムを柔軟にカスタマイズできます。また、導入後に不具合や不便な点が見つかった場合は、必要に応じて追加・修正ができます。

ユーザーの意見を反映し、改良を重ねながら運用できるため、自社に最適なシステムを作り上げることが可能です。

【メリット】セキュリティの安全性が高い

オンプレミスは自社のネットワーク内でシステムが完結するため、セキュリティの安全性が高まります。外部ネットワークの通信状況に影響されず、サイバー攻撃による情報漏洩のリスクを軽減することができます。

自社のセキュリティポリシーに合わせて、システムを自由に設計できるのはオンプレミスならではのメリットといえます。ただし、近年はクラウドのセキュリティレベルも向上しているため、オンプレミスのセキュリティレベルの方が高いとは断言できません。

【メリット】基幹システムと連携しやすい

基幹システムは事業の根幹となる業務を管理するため、現在もオンプレミスで構築している企業が多いでしょう。オンプレミスは、既存のシステムと同一のネットワーク内でシステムを構築できるため、基幹システムと連携しやすいのが特徴です。

既存の基幹システムに新しくシステムを連携・統合する場合や、複雑なネットワークを構築する場合は、クラウドよりもオンプレミスがおすすめです。

【デメリット】初期費用やランニングコストが高い

オンプレミスは、サーバーの構築費・システム開発費・ソフトウェアの購入費などを合わせると、初期費用に数百万円〜数千万円かかります

システム導入後もサーバーの電気代・運用費がかかり、システムを運用する専任のシステムエンジニアが必要なため、人件費も発生します

そして、オンプレミスはクラウドより初期費用が高い上に、ランニングコストもかかるため、費用対効果を確認してから検討する必要があります。

【デメリット】適切な資産管理が求められる

サーバーの取得価額が20万円以上の場合、固定資産税が発生します。サーバーの維持費は減価償却しながら費用化するのが一般的です。

サーバーを資産として管理する際には、税理士や専門家に相談する必要があり、ある程度の費用がかかります。サーバーの初期費用を均等に費用化したい、サーバーの構築費用を抑えたいといった場合は、レンタルサーバーを検討してみるのも良いでしょう。

【デメリット】障害やトラブルは全て自社対応

オンプレミスでは、メンテナンス・アップデートに加えて、システム障害やトラブル発生時も全て自社で対応しなければなりません

システムの保守・運用は他の業務との兼務が難しく、専任のシステムエンジニアを配置する必要があります。社内で人材の確保が難しい場合は外注しなければならず、相応のコストが発生します。

なお、オンプレミスは障害・トラブル時の対応が大変ですが、早い段階で復旧作業に取り掛かることができます。アップデートも自社のタイミングで行えるため、ベンダーの都合に合わせる必要がない点はメリットといえます。

クラウドのメリット・デメリット

続いて、クラウドのメリット・デメリットを詳しく解説します。オンプレミスとの違いに注目しながら、クラウド独自の特徴を確認していきましょう。

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メリットデメリット
初期費用が安い自由なカスタマイズができない
導入が簡単ですぐに利用開始できるランニングコストが高くなる可能性がある
障害や災害時に比較的強い拡張性などはサービスに依存する
セキュリティ対策の確認が必要

【メリット】初期費用が安い

クラウドは、ベンダーが管理しているクラウドサーバーを使用するため、サーバーの構築費用がかからず、初期費用が安いのが魅力です。

システムに関しても、ベンダーが提供するサービスを利用するため、システム開発費やセキュリティ対策に関する費用がかかりません。

【メリット】導入が簡単ですぐに利用開始できる

オンプレミスはシステムの利用開始までに、要件定義→構築→テストが必要で、導入までに3ヵ月〜6ヶ月かかります。クラウドは契約後に素早く利用開始できるため、オンプレミスと比べて導入までのスピードが早いのがメリットです。

システムをすぐに使いたい場合や、お試し運用してみたい場合は、簡単な申し込みのみで利用開始できるサービスを検討してみましょう。

【メリット】障害や災害時に比較的強い

オンプレミスは自社にサーバーを保有することから、災害時の物理的なリスクがあります。クラウドもベンダーの環境によっては物理的なリスクが発生しますが、分散管理している場合が多く、オンプレミスよりリスクが低いといえます。

クラウドの場合、災害時の稼働保証やクラウドバックアップを実施しているサービスもありますが、災害時の対応はサービスごとに異なるため、事前の確認が必要です。

システム障害・トラブルの際は、ベンダーが復旧作業を行います。復旧までに時間がかかる場合もありますが、ユーザーの負担が少ない点がメリットです。

【デメリット】自由なカスタマイズができない

クラウドは提供されている一律のサービスを使用するため、自由なカスタマイズはできません。中でもSaaSはカスタマイズ性が低く、PaaS・IaaSは自由度が高い反面カスタマイズするには追加費用がかかります。

また、簡単な設定のみで利用できるサービスの場合は、一切カスタマイズできない可能性もあるため注意が必要です。

【デメリット】ランニングコストが高くなる可能性がある

クラウドの初期費用は安価ですが、導入後はユーザー数に応じた従量課金制となり、月額料金が発生します。月額料金は保守費用・サポート費用込みの場合が多く、トラブルの際も追加費用がかかることはありません。

ただし、大規模なシステムやユーザー数が多い場合、月額料金が高額になります。利用期間が長くなるほどランニングコストが増加するため、トータルのコストがオンプレミスと同等あるいは高くなる可能性が高いです。

【デメリット】拡張性などはサービスに依存する

クラウドはユーザーの需要に合わせて、機能や容量を追加することができます。必要な分だけ追加できるためコストは抑えられますが、サービスのプラン内でしか拡張できないのがデメリットです。

なお、SaaS・PaaSはサービスによって拡張性が異なりますが、IaaSは拡張性が高く、CPU・ストレージの増強も簡単に行えます

【デメリット】セキュリティ対策の確認が必要

クラウドは一律のサービスを利用するため、同じサービスを利用しているユーザーにサイバー攻撃があった場合、自社も影響を受ける可能性があります。クラウドでは機密情報もオンライン上に保管するため、常に情報漏洩のリスクを抱えています。

クラウドのセキュリティレベルは日々向上していますが、ベンダーのセキュリティ対策に依存することになるため、事業規模や事業内容によっては対策が不十分な場合も考えられます

したがって、クラウドを導入する際は、ベンダーが公開する「セキュリティシート」などを参考に、ベンダーごとのセキュリティ対策を確認しておく必要があります

オンプレミスとクラウドどちらが向いているか

オンプレミスとクラウドのメリット・デメリットを理解した上で、情報システムの導入においてどちらが向いているかは、企業の業種や運用体制などによって異なります。ここでは、オンプレミスまたはクラウドが向いている企業の特徴を解説します。

オンプレミスが向いている企業

自社独自の環境を構築して運用するオンプレミスは、以下のような企業に向いています。

  1. 商慣習や社内規定に柔軟なカスタマイズ性を求める
  2. トラブル発生時には迅速な復旧で損失を防ぎたい
  3. 既存の独自開発したシステムとの連携性が必要
  4. 大規模な利用環境で強固なセキュリティを構築
  5. 導入から運用まで十分なリソースを確保できる

企業ごとの複雑な商慣習や、社内規定に柔軟な対応が可能なオンプレミスは、機能性・セキュリティ性・連携性が高いです。すでに自社開発したシステムがある場合など、オフラインでも利用可能なシステムを求める場合には、オンプレミスが適しています。

また、利用者が多く社内のコンプライアンス強化を図りたい企業にも向いています。システムの導入から運用・保守、トラブル時の対応など、自社内で専門的な知識を持った人材を確保し、十分なリソースで環境を構築できる場合にはオンプレミスがおすすめです。

クラウドが向いている企業

導入から運用開始までがオンプレミスと比べて早く済み、コスト面での負担が少ないクラウドは、以下のような企業に向いています。

  1. 社内リソースが限られていて多くの費用をかけられない
  2. 将来的な事業成長に合わせて機能や規模を拡張したい
  3. サーバーを設置する場所がなく利用者数も多くない
  4. なるべく早くシステムの運用開始につなげたい
  5. クラウド上で複数のシステムを一元管理したい

初期費用を抑えつつ人的リソースへの負担が少ないクラウドは、中小規模の企業でも導入を検討しやすいです。運用を開始できるまでの日数が算出しやすいため、素早いシステム化を求める場合にもメリットが大きくなります。

そして、他のクラウドで利用しているシステムとの連携性を高められるのも、企業によっては利便性を高める要因です。ただし、事業成長を見据えた機能や規模の拡張は可能なものの、カスタマイズ性が低くトラブル時にはベンダー任せになる点には留意しましょう。

オンプレミスは時代遅れなのか

近年はクラウドが主流となっていますが、オンプレミスのカスタマイズ性の高さも評価されており、一概に時代遅れとはいえません。また、サーバーの設置が難しい場合は、ハウジングを利用することも可能です。

システムを選ぶ際は、「手軽に始められるから」「導入実績が豊富だから」といった理由だけで選ぶのではなく、自社の特性や課題に合わせて十分に比較検討するようにしましょう

ハイブリッドクラウドという選択肢も

オンプレミス・クラウドのどちらか1つを選べない場合は、両者のメリットを組み合わせた「ハイブリッドクラウド」という選択肢もあります。

ハイブリッドクラウドとは、オンプレミス・パブリッククラウド・プライベートクラウドを組み合わせて運用する方法です。

パブリッククラウドとは、一律のサービスを他のユーザーと共同で利用する形態を指します。既存のサービスの中から必要なものを組み合わせて利用するため、運用にかかるコストの低減が可能です。

プライベートクラウドは、自社のニーズに合わせてクラウドを自由にカスタマイズできます。自社専用のクラウドを利用するため、セキュリティ面に優れているのが特徴です。

ハイブリッドクラウドでは、機密性の高いデータはオンプレミスやプライベートクラウドに保管し、その他はパブリッククラウドに保管することも可能です。オンプレミスのみの運用に比べて、コストダウンと臨機応変な運用ができる点がメリットといえます。

オンプレミスからクラウドに移行するタイミング

オンプレミスでシステムを運用している企業では、「稼働を止められない」「複雑なシステムを利用している」といった理由で、クラウド化を見送るケースが見られます。

オンプレミスのままでも問題はありませんが、クラウドにも多くのメリットがあるため、移行する際は以下のタイミングがおすすめです。

  1. 新しいシステムを導入・構築するとき
  2. 既存のネットワーク構成を変更したいとき
  3. サーバーをリプレースするとき
  4. 利用中のデータセンターに空き容量がないとき
  5. クラウドの方がメリットが多いと判断したとき

移行する際の注意点

オンプレミスからクラウドへの移行を検討する際には、従来までのオンプレミスによる環境からクラウドに変更しても、運用が可能であるかを確かめなければなりません。特に、データの引き継ぎ・コスト面・他システムとの連携などに注意が必要です。

データの引き継ぎ・予算・スケジュール管理

システムをクラウドへそのまま移行する際は、データを完全に引き継げない可能性があります。また、移行方法にはリプレイス・リホスト・リファクタなど複数あるため、自社にとって最適な方法を確認しておきましょう。

サービスによっては想定以上に時間とコストがかかる場合があり、予算とスケジュールの管理が求められます。

移行前に必要なスペック・セキュリティレベルを確認し、大まかな利用期間を決めてランニングコストを計算しておくと安心です。その際、セキュリティレベルは自社の要件を満たすものを選び、他システムとの連携についても考慮しましょう。

長期的な企業成長やランニングコストを考慮

クラウドはオンプレミスと比べて初期費用が抑えられるものの、ランニングコストが高い傾向にあります。ただし、長期的な視野で見た場合の企業成長や事業戦略を考慮し、費用対効果を十分に感じる場合には移行の効果を得られるでしょう。

また、セキュリティ対策は基本的にベンダーに一任されるとはいえ、ある程度の知識を保有した人材は必要です。よって、システムの導入にあたっては、運用体制を社内ルールとして明確化し、従業員へ周知するなどの対策も重要となります。

まとめ

オンプレミスとは、情報システムを自社で管理・運用するシステムです。オンプレミスとクラウドの違いは、自社でシステムを管理するか、ベンダーが管理するです。

オンプレミスは初期費用が高い上にランニングコストもかかりますが、カスタマイズ性が高く自社のセキュリティポリシーに合わせた設計が可能です。

クラウドは初期費用は安価ですが、システム利用料が発生するため、ランニングコストを確認しておく必要があります。そして、セキュリティはベンダーに依存するため、ベンダーごとのセキュリティ対策を確認しておきましょう。

近年はクラウドが主流ですが、オンプレミスに適した企業・システムもまだまだ存在します。クラウドが絶対的に優れていると思い込むのではなく、自社に最適なシステムを十分に比較検討することが大切です。

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